東雲結子:先生、スマホの古いメールを整理していたら、何年も前に作った仮想通貨の取引所のアカウントが出てきました! でも、パスワードがどうしても思い出せなくて……。

税理士石井:おっと(汗)。ヒントか何か、残っていませんか?

東雲結子:秘密の質問が「好きな食べ物は?」なんです。当時の私……プリン、唐揚げ、ナポリタン……候補が多すぎて、思い出す前にロックされそうです。

税理士石井:ははは、当時の東雲さんの胃袋との知恵比べですね。でも、パスワードを忘れるより怖いことがあります。取引所のほうが消えてしまうことです。

東雲結子:えっ、取引所って消えるんですか?

税理士石井:2014年に破綻したマウントゴックスでは、顧客分と自社分を合わせて85万BTCが消えたと報じられました。2018年のコインチェックでは、580億円相当のNEMが流出して、被害者は約26万人です。

東雲結子:……私のナポリタン問題が、急にかわいく見えてきました。

税理士石井:しかも、暴落のきっかけは取引所の事件だけではありません。2020年3月12日のコロナ・ショックでは、ビットコインは1日で−37.17%(終値)でした。大家業でも、管理会社が倒れて敷金が戻らない話と、街全体の家賃相場が急に下がる話は、同じ「損」でも中身がまるで違いますよね。

東雲結子:原因がちがえば、備え方もちがう、ということですね。

税理士石井:その通りです。この回では、主な暴落を年表に並べ、当ブログの分類で5つの型に分けて、日本で起きたことと、暴落のあとに何が変わったかまで確かめます。

仮想通貨(暗号資産)の暴落は、ひと言で「暴落」と呼ばれても、中身はまったく違います。取引所が破綻した暴落もあれば、国の規制が引き金と報じられた急落も、世界の株と一緒に売られた急落も、借入れで膨らんだ取引が一気に解消された急落もあります。

この回では、2011年から2026年1月までの主な出来事を年表にして、その前後のビットコイン(BTC)の値動きを、日足終値で確かめます。出来事の原因は、裁判所や規制当局の資料、会社の発表、報道が書いている範囲にとどめ、それ以外は「当ブログの見方」と断ります。そのうえで、暴落の型ごとの下げ方と戻り方の違いを、投資の目線でも読んでいきます。

価格は、断りがなければデータ提供サイトの日足終値(Yahoo Finance、CoinMarketCapのデータ)で、日付は協定世界時です。出来事の前後の値動きは同じ時期に起きた動きで、その出来事だけが原因だとは限りません。数字はすべて2026年1月31日までに公表・観測されたものです。

この記事の要点 根拠となる数字
主な暴落のきっかけは、当ブログの分類で5つの型に分けられる 取引所の破綻・ハッキング、規制、相場全体の急変、連鎖倒産、レバレッジの清算
型によって下げ方が違う。相場全体の急変は1日で大きく、信用の事件は数日かけて下げた(当ブログの見方) コロナ・ショックは1日で−37.17%、FTXの破綻は2日で−22.92%、テラの崩壊は5日で−18.18%(いずれも終値)
日本ではマウントゴックスとコインチェックの事件が起き、コインチェックには行政処分が出た コインチェック:5億2,300万XEM(580億円相当)、約26万人、2018年1月29日に業務改善命令
投資の目線:値下がりのリスクと、預け先・借入れのリスクは分けて確かめる 2025年10月10〜11日:24時間で190億ドル超、160万人超が清算(CoinGlassのデータ、報道による)

仮想通貨の暴落を年表に並べると、きっかけは5つの型に分けられる

まず、主な出来事を一枚の図にまとめました。行は暴落のきっかけの型で、色も型ごとに分けています。この5つの型は当ブログの分類で、資料がこう分けているわけではありません。

図の行は上から、「取引所の破綻・ハッキング」「規制」「相場全体の急変」「連鎖倒産」「レバレッジの清算」です。いちばん出来事が多いのは取引所の行で、2011年と2014年のマウントゴックス(Mt.Gox)、2018年のコインチェック、2022年のFTXと、4つの点が並んでいます。

それぞれの点の横には、出来事の前後のビットコインの騰落率を書きました。

たとえばコロナ・ショックは「BTC −37.17%(3/11→3/12)、日中安値では−48.09%」(日中安値は3月13日の値を3月11日の終値と比べたもの)、2025年10月の清算は「BTC −6.98%(10/9→10/10)、日中安値では−14.07%」です。2022年のテラ(LUNA/UST)の崩壊は、そのあとに続いた破綻と同じ「連鎖倒産」の行に置きました。これも当ブログの整理です。

図に入りきらなかった出来事も含めて、表にまとめます。

日付 出来事 型(当ブログの分類) 前後のビットコイン(終値)
2011年6月19日 マウントゴックスでアカウントが乗っ取られ急落 取引所の破綻・ハッキング 日足データなし
2013年12月3日 中国人民銀行など5機関の通知 規制 12月4日→12月31日 −34.50%
2014年2月28日 マウントゴックスが東京地裁に民事再生を申し立て 取引所の破綻・ハッキング 1月末→2月末 −33.82%(月末値)
2017年9月4日 中国人民銀行など7機関がICOを全面禁止 規制 9月3日→9月4日 −7.56%
2018年1月26日 コインチェックからNEMが流出 取引所の破綻・ハッキング 1月25日→1月26日 −0.78%
2020年3月12日 コロナ・ショック 相場全体の急変 3月11日→3月12日 −37.17%
2021年5月21日 中国の国務院の委員会がマイニングと取引の取り締まりを表明 規制 5月20日→5月21日 −8.53%
2022年5月 テラ(LUNA/UST)の崩壊 連鎖倒産 5月7日→5月12日 −18.18%
2022年6月12日 Celsius(セルシウス)がサービスを停止 連鎖倒産 6月11日→6月18日 −32.94%
2022年6月29〜30日 Three Arrows Capital(3AC)の清算 連鎖倒産 6月27日→6月30日 −4.59%
2022年11月11日 FTXトレーディングなどが米連邦破産法第11章を申請 取引所の破綻・ハッキング 11月7日→11月9日 −22.92%
2024年8月5日 世界同時株安 相場全体の急変 8月2日→8月5日 −12.09%
2025年10月10〜11日 史上最大とされる清算 レバレッジの清算 10月9日→10月10日 −6.98%

※数値はYahoo Finance(CoinMarketCapのデータ)の日足終値(協定世界時)どうしの騰落率で、2013〜14年はStatMuse(二次情報)。比べた2日は表のとおりで、出来事の前後の動きであり、出来事だけが原因とは限らない。型は当ブログの分類。2013年の通知の公表日は、文書の日付と違う可能性がある(未確認)。

用語メモ:ICO=新しい仮想通貨(トークン)を発行して資金を集める方法。民事再生=裁判所の監督のもとで、会社を清算せずに再建をめざす手続き。Chapter 11=米国の連邦破産法第11章による再建型の手続き。

取引所の破綻・ハッキング:マウントゴックス、コインチェック、FTX

最初の型は、預けていた先が壊れる暴落です。大家業でいえば、家賃相場とは関係なく、管理会社が倒れて預けていた敷金や家賃が戻ってこない、という種類の損です。

2011年6月19日、取引所のマウントゴックスで、価格が「17.5ドルから数分で数セントに」下がりました(TechCrunchの報道。英文を当ブログが訳出)。同社のカルプレス氏は、多くのコインを持つアカウントが一つ乗っ取られたと説明し、1日1,000ドルの出金上限があったため、持ち出されたのは約1,000ドル相当にとどまったと報じられています。

そのマウントゴックスは、2014年2月28日に東京地裁に民事再生を申し立てました。報道によると、顧客分の75万BTCと自社分の約10万BTC、合わせて85万BTCが消失し、約4.73億ドル相当でした(Bloombergの報道をNPRが伝えたもの)。ビットコインの月末の終値は、1月末の829.92ドルから2月末の549.26ドルへ−33.82%です。

4月には東京地裁が破産手続きを命じたと報じられ、その後、2018年6月22日に民事再生手続きが始まり、2021年10月20日に再生計画が認可、2024年7月からビットコインなどでの弁済が始まりました(2024年6月24日の告知、管財人のサイトによる)。弁済の期限は、2025年10月27日の告知で2026年10月31日まで延びています。破綻から10年以上たっても、まだ終わっていないのです。

2018年1月26日には、日本の取引所コインチェックから、顧客の預かり資産の5億2,300万XEM(NEMという仮想通貨の単位)が流出しました。金融庁の資料では580億円相当、被害者は約26万人です。

ただ、ビットコインの終値は、1月25日の11,259.40ドルから26日の11,171.40ドルへ−0.78%と、その日の動きは小さなものでした。2月5日には6,955.27ドル(1月25日比−38.23%)まで下げていますが、これは2017年12月の天井からの下げの途中で、コインチェックの件だけで説明できる動きではありません(当ブログの見方)。

2022年11月11日と14日には、FTXトレーディングと関係会社101社が、米国で連邦破産法第11章の手続きを申し立てました(裁判所の手続きで債権の管理を担うKrollのサイトによる)。ビットコインは、申し立てより前の11月7日の20,602.82ドルから9日の15,880.78ドルへ、2日で−22.92%。11月21日の15,787.28ドルが、2021〜22年のサイクルの底になりました。

米国の証券取引委員会(SEC)は2022年12月13日、FTXの創業者を、株式の投資家から18億ドル超を集める際に投資家を欺いたとして訴えました(訴えの段階の主張)。FTXの再生計画は2025年1月3日に効力を生じました。

規制:2017年と2021年の中国の発表の日、ビットコインの終値の下げは1割に満たなかった

二つ目の型は、規制です。大家業でいえば、民泊の新しいルールや用途地域の変更で、その物件でできることが変わる種類のリスクです。

2013年12月3日の日付で、中国人民銀行など5機関は、ビットコインは「本当の意味での通貨ではない」とし、金融機関や決済機関がビットコインで値付けをしたり売買したりすることを禁じる通知を出しました(法令データベースの転載による。中国語を当ブログが訳出)。ビットコインは12月4日の1,151.17ドルが、2013〜15年のサイクルの天井になり、12月31日は754.01ドル(−34.50%)でした。

2017年9月4日には、人民銀行など7機関が、ICOについて「各種のトークン発行による資金調達活動は直ちに停止すべき」とし、取引所が法定通貨と仮想通貨を交換することも禁じました(同。中国語を当ブログが訳出)。中国の報道によると、その日の午後、取引所の火幣網では価格が20分足らずで28,629元から27,500元に下げています。

ドル建ての終値で見ると、9月3日から4日の下げは−7.56%でした。9月14日には3,154.95ドル(9月1日比−35.51%)まで下げましたが、その日の下げの理由までは、ここで使った資料では確かめられていません。

2021年5月21日には、中国の国務院金融安定発展委員会が、ビットコインのマイニングと取引の取り締まりを表明しました(中国政府のサイトによる)。9月15日付の通知では、仮想通貨に関連する業務を違法な金融活動とし、海外の取引所が中国の居住者にサービスを提供することも違法としています。

5月20日から21日の終値の下げは−8.53%でした。5月の1か月では−35.35%(月末値)下げていますが、5月11日から19日の−34.75%は、委員会の表明より前に起きています。

2017年と2021年の2回とも、発表の日の下げは終値で1割未満で、大きな下げはその前後の別の動きと重なっていました(当ブログの見方)。規制は、1日の値動きより、その国で何ができなくなるのかという形で、時間をかけて効いてくるものだと私は考えています。

相場全体の急変:コロナ・ショックは1日で−37.17%、2024年8月は3日で−12.09%

三つ目の型は、仮想通貨の外から来る急変です。街全体の家賃相場が一斉に下がるようなもので、どの物件を持っていても逃げにくい種類の下げです。

2020年3月12日、ビットコインの終値は前日の7,911.43ドルから4,970.79ドルへ、1日で37.17%下げました。13日の日中には4,106.98ドルまで下げ、3月11日の終値からは−48.09%です。2月12日の10,326.05ドルからは、1か月で−51.86%でした。

FRB(米連邦準備制度理事会)は、政策金利のFF金利(米国の短期金利)の誘導目標を、3月4日に0.5%ポイント、16日に1%ポイント引き下げ、0〜0.25%にしています(いずれも発効日)。3月31日の終値は6,438.64ドルで、3月12日の終値からは+29.53%でした(当ブログの計算)。

2024年8月5日は、世界同時株安の日でした。日本銀行が7月31日に政策金利を0.25%程度に引き上げることを決め(8月1日から)、8月5日の日経平均株価は4,451円、約12%下げて過去最大の下げ幅となりました(マネックス証券の解説による)。

ビットコインは8月2日の61,415.07ドルから5日の53,991.46ドルへ−12.09%、日中の安値49,121.24ドルでは−20.02%でした。ただ、3日後の8日には61,710.14ドルまで戻し、5日の終値から+14.30%です。

国際通貨基金(IMF)のブログ(2022年1月11日)は、ビットコインと米国の株価指数S&P500の相関係数が、2017〜19年の0.01から2020〜21年の0.36に高まったと書いています。株と仮想通貨が同じ向きに動きやすくなった、という指摘です。

逆の例もあります。2023年3月、米国のシリコンバレー銀行(SVB)の破綻で、ステーブルコイン(米ドルなどと価値が連動するよう設計された仮想通貨)のUSDCは、発行体のCircleが準備金400億ドルのうち33億ドルをSVBに預けていたことから、3月11日に0.88ドルまで下げました(ロイターの報道による)。

ところが、米財務省・FRB・米連邦預金保険公社(FDIC)が3月12日の共同声明で、預金者は13日から預金の全額を引き出せると表明し、その前後をはさむ3月10日から13日に、ビットコインは19.87%上がりました。銀行の不安が、ビットコインには追い風に見えた珍しい局面です(当ブログの見方)。

連鎖倒産:テラの崩壊から、Celsius、3ACの破綻へと続いた2022年

四つ目の型は、貸し借りでつながった会社が次々に倒れる連鎖です。大家業でいえば、サブリース会社が倒れ、そこに貸していた大家も、その大家に融資していた先も、順に苦しくなるような形です。

米国の証券取引委員会(SEC)によると、2022年5月、ステーブルコインのUSTが米ドルとの連動を失い、USTと姉妹トークンの価格は「ほぼゼロに急落」しました(英文を当ブログが訳出)。The Blockは、この崩壊で消えた価値を400億ドルと伝えています。

ビットコインは5月7日の35,501.95ドルから12日の29,047.75ドルへ、5日で18.18%下げました。テラを開発したテラフォームラボの創業者ド・クォン氏には、2025年12月11日、米ニューヨーク南部地区の連邦地裁で禁錮15年の判決が言い渡されたと報じられています。

翌月の6月12日には、Celsius(セルシウス)が、プラットフォームを事実上停止しました(SECの発表による)。7月13日には連邦破産法第11章の手続きを申し立て、再生計画は2024年1月31日に効力を生じています。ビットコインは6月11日の28,360.81ドルから18日の19,017.64ドルへ、1週間で−32.94%でした。

その月末には、シンガポールの運用会社Three Arrows Capital(3AC)が英領バージン諸島で清算を命じられたと報じられました。シンガポール金融管理局(MAS)は6月30日、3ACが虚偽の情報を提出し、運用資産が認められた上限を超えていたとして、譴責処分を発表しています。

報道によると、Voyagerは、3ACに貸した15,250BTCと3億5,000万USDCについて、債務不履行を通知しました。貸し借りの糸が、目に見える形でつながっていたわけです。

このように、2022年の5月から6月にかけて、崩壊・停止・清算が2か月足らずのうちに続きました。ただし、それぞれの破綻の原因を資料が一つの流れとしてまとめているわけではなく、「連鎖」という整理は当ブログのものです。

レバレッジの清算:2025年10月10〜11日、24時間で190億ドル超

五つ目の型が、レバレッジの清算です。借入れや証拠金で元手より大きな取引をしている人の持ち高が、値下がりで強制的に手じまいされ、その売りがさらに値下がりを呼ぶ形です。

2025年10月10〜11日には、24時間で190億ドル超の持ち高が清算され、160万人超が強制的に手じまいされました(CoinGlassのデータを伝えた報道による)。報道は、きっかけとして、10月10日(金)に発表された中国への追加の100%関税とソフトウェアの輸出規制を挙げています。

ビットコインの終値は、10月9日の121,705.59ドルから10日の113,214.37ドルへ−6.98%でした。ところが日中の安値は104,582.41ドルで、9日の終値からは−14.07%です。終値だけ見ると小さく見える下げが、1日のうちには約2倍の深さだったわけです。

レバレッジをかけた持ち高は、終値ではなく、その瞬間の価格で清算されます。大家業でいえば、ローンの返済が回らなくなった物件が、持ち主の意思と関係なく競売にかけられ、安値で売られるようなものです。その安値が近くの相場を引き下げ、また別の物件の担保割れを呼ぶ。値下がりが値下がりを呼ぶ仕組みです。

10月6日に終値の最高値124,752.53ドルをつけてから、わずか4日後のことでした。10日の終値は最高値から−9.25%で(当ブログの計算)、ビットコインはその後、2026年1月31日まで終値で最高値を更新していません。

用語メモ:レバレッジ=借入れや証拠金を使って、元手より大きな金額の取引をすること。証拠金=取引の担保として預けるお金。清算(ロスカット)=損失が一定の水準を超えたとき、持ち高が強制的に決済されること。

型によって、下げ方と戻り方が違う

5つの型の主な出来事を、下げた期間と、その後の動きで並べ直します。

出来事 型(当ブログの分類) 下げた期間(終値) 下落率 その後
コロナ・ショック 相場全体の急変 2020年3月11日→12日(1日) −37.17% 3月31日に+29.53%(12日比)
世界同時株安 相場全体の急変 2024年8月2日→5日 −12.09% 8月8日に+14.30%(5日比)
史上最大とされる清算 レバレッジの清算 2025年10月9日→10日(1日) −6.98%(日中−14.07%) 2026年1月31日まで最高値を更新せず
テラの崩壊 連鎖倒産 2022年5月7日→12日(5日) −18.18% 6月にCelsiusの停止、3ACの清算が続く
Celsiusの停止 連鎖倒産 2022年6月11日→18日(7日) −32.94% 2022年11月21日にサイクルの底
FTXの破綻 取引所の破綻 2022年11月7日→9日(2日) −22.92% 11月21日に15,787.28ドルでサイクルの底

※Yahoo Finance(CoinMarketCapのデータ)の日足終値(協定世界時)。日中の値は前日の終値との比較。「その後」の上昇率は当ブログの計算。型は当ブログの分類。

表を眺めると、相場全体の急変は1日で大きく下げ、比較的早く反発したのに対し、取引所の破綻や連鎖倒産のような信用の事件は、数日から1週間かけて下げ、2022年はそのままサイクルの底へ向かっていった、という違いが見えます(当ブログの見方)。

信用の事件は、「次はどこが危ないのか」という疑いが解けるまでに時間がかかります。大家業でも、地震のあとの一時的な空室は戻りやすい一方、管理会社の不祥事で街の評判が落ちると、入居者が戻るまでに時間がかかる。そんな違いに近いのかもしれません。

ただ、これは十数件の出来事から読んだ傾向で、次の急落が同じ形になるとは限りません。2025年10月の清算のように、終値では小さくても日中に大きく下げる新しい形もあります。

日本で起きたこと:マウントゴックスとコインチェック、そして金商法へ

日本は、仮想通貨の暴落の歴史と深く関わってきました。マウントゴックスは東京地裁に民事再生を申し立て、その後、東京地裁が破産手続きを命じたと報じられています。2018年には民事再生の手続きに移り、2024年7月からビットコインなどでの弁済が進められています。

コインチェックの流出では、関東財務局が2018年1月26日に報告を求め、29日に資金決済法にもとづく業務改善命令を出しました。命令は、原因の究明、顧客への適切な対応、経営管理の体制の強化と責任の所在の明確化、再発防止策を求め、2月13日までの報告を求めています。2月2日には立入検査が入り、3月8日には2度目の業務改善命令が出されました(関東財務局と金融庁の資料による)。

金融庁は2018年に「仮想通貨交換業等に関する研究会」を開き、その資料でも、この事案を580億円相当、被害者約26万人と整理しています。事件のあとに、ルールづくりの議論が続いたのです。

それから8年近くたった2025年12月10日、金融審議会のワーキング・グループは報告で、暗号資産を「有価証券とは別の規制対象として金商法に位置付けることが適当」とし、インサイダー取引の規制を設けるとしました。報告によると、国内の交換業者の口座は延べ1,300万口座を超え、利用者の預託金の残高は5兆円以上です(2025年10月時点、日本暗号資産等取引業協会のデータ)。

その金融商品取引法(金商法)の改正案は、2026年の通常国会に提出される予定と報じられています(日本経済新聞の報道をCoinPostが伝えたもの)。2026年1月31日の時点では、金融庁の一次資料で提出の時期を確かめることはできず、報道の段階です。

税理士として一言添えると、暴落で損失が出たときの税金の扱いも、知っておきたいところです。国税庁のFAQは、仮想通貨の取引で生じた雑所得の損失について、「給与所得など他の所得から差し引く(通算する)ことはできません」としています。損失を翌年以降に繰り越す仕組みもありません(所得税法の規定からの当ブログの整理)。詳しくは、仮想通貨の税金を取り上げる回で扱います。

暴落のあとに変わったこと:弁済、裁判、ステーブルコインの法律、ETF

暴落のあとの数年で、市場の土台にはいくつかの変化がありました。ここでは時系列で並べるだけで、どの暴落がどの変化を生んだ、とまでは言いません。

破綻した会社の後始末は、長い時間をかけて進んできました。マウントゴックスのビットコインなどでの弁済は2024年7月に始まり、期限は2026年10月31日です。Celsiusの再生計画は2024年1月31日に、FTXの再生計画は2025年1月3日に効力を生じました。テラの創業者には2025年12月に判決が出ています。

ステーブルコインについては、米国で2025年7月18日にGENIUS法が成立し、米ドルや短期の米国債のような流動性の高い資産で100%の裏付けを持つこと、準備資産の内訳を毎月公表することを求める内容です(ホワイトハウスのファクトシートによる)。テラのUSTやSVBのときのUSDCで揺らいだ「裏付け」に、法律の枠がはまった形です(当ブログの見方)。

買い手の側では、2024年1月10日に米国の証券取引委員会が現物ビットコインETF(上場投資信託)を承認し、1月11日に取引が始まりました。

2025年3月6日には、米国の大統領令で「戦略的ビットコイン準備」がつくられましたが、財源は没収済みのビットコインで、追加の取得は予算に中立な方法に限られています。2026年1月6日には、株価指数を算出するMSCIが、仮想通貨を大量に持つ企業を指数から外す案を見送っています。

こうした変化が、次の下げを浅くするのか、それとも新しい形の下げを生むのか。それは、ETFと企業の大量保有を取り上げる回で、数字から確かめます。

暴落の歴史を投資の目線で読むと、「値下がり」と「預け先・借入れ」は別のリスク

ここからは、ビットコインや仮想通貨に関連する株を持っている人、これから持つかどうかを考えている人の目線で整理します。値動きの性格と確かめる点の話で、売買を勧めるものではありません。

一つ目は、値下がりのリスクと、預け先のリスクを分けて考えることです。マウントゴックス、コインチェック、FTXの件では、価格がどうなったか以前に、預けていた資産そのものが戻るかどうかが問題になりました。大家業で、家賃相場の心配と、管理会社の信用の心配を別々に確かめるのと同じです。どこに預けているのか、その会社がどんな規制のもとにあるのかは、価格とは別に確かめておきたい点です。

日本の交換業者には、2025年10月時点で利用者の預託金が5兆円以上あります(金融審議会の報告)。それだけ多くの人が、価格の上げ下げとは別に、預け先の信用というリスクも一緒に負っている、ということでもあります(当ブログの見方)。

二つ目は、借入れの有無です。2025年10月の清算では、終値の下げは−6.98%でも、日中には−14.07%まで下げ、160万人超が強制的に手じまいされたと報じられました。現物を持っているだけなら、日中の下げは評価が一時的に下がるだけですが、レバレッジをかけていると、その瞬間の価格で持ち高を失うことがあります。

大家業でも、フルローンで買った物件は、空室が数か月続いただけで返済が苦しくなりますが、自己資金の厚い物件なら同じ空室でも持ちこたえられます。仮想通貨でも、下げに耐えられるかどうかを分けるのは、価格の予想より、借入れの重さです。

三つ目は、相場全体の急変には、ほかの資産と一緒に巻き込まれやすいことです。IMFのブログが指摘したように、2020〜21年には株との相関が高まりました。コロナ・ショックでも2024年8月でも、仮想通貨は株と同じ日に大きく下げています。株で損が出た日に、仮想通貨が穴埋めをしてくれるとは限りません。

仮想通貨に関連する株は、型によって受ける影響が違います。取引所の株は取引所の信用の事件や取引の量に、ビットコインを大量に持つストラテジー(旧マイクロストラテジー)やメタプラネットのような会社の株は価格そのものに、より強く反応しやすいと考えられます(当ブログの見方)。

ストラテジーの平均取得単価は76,037ドル(2026年1月25日時点、同社の開示)で、1月31日の終値はその3.40%上でした。MSCIは指数から外す案を見送る一方で、事業を営まない会社全般の扱いについて、より広い協議を行う予定としています。会社ごとの決算は、別の連載で詳しく読みます。

確かめる点 2026年1月時点の数字 当ブログの見方
米国の現物ビットコインETFの資金の出入り 1月は約16億ドルの純流出で、月間では過去3番目(The Block、SoSoValueの集計) 新しい買い手が売り手に回る動きが続くか
レバレッジの積み上がり 2025年10月10〜11日に24時間で190億ドル超の清算(CoinGlassのデータ、報道による) 清算の連鎖が再び起きる余地がどれだけあるか
マウントゴックスの弁済 期限は2026年10月31日(2025年10月27日の告知) 弁済がどこまで進むか
日本の制度 金商法の改正案は2026年の通常国会に提出予定と報道(一次資料での表明は未確認) 規制の枠組みと、税制の見直しの時期

※ETFと清算の数字は報道による二次資料。

暴落の型を知っておく一番の意味は、次に大きな下げが来たとき、それが「街全体の相場の下げ」なのか、「預け先や借入れの問題」なのかを、落ち着いて見分けられることだと思います。前者なら時間が味方になることもありますが、後者では、時間がたっても戻らないお金が出ることがあります。

暴落の型を知っておくと、次の急落の「中身」を見分けやすくなる

2011年から2025年までの主な暴落は、取引所の破綻・ハッキング、規制、相場全体の急変、連鎖倒産、レバレッジの清算という5つの型に分けて読むことができました(当ブログの分類)。相場全体の急変は1日で大きく下げて比較的早く反発し、信用の事件は数日かけて下げて、2022年はそのままサイクルの底へ向かいました。

パスワードを忘れたアカウントは、運がよければ手続きで取り戻せます。でも、預け先そのものが消えてしまえば、パスワードを思い出しても戻ってきません。大家業を長く続けていると、相場の上げ下げよりも、誰に何を預けているかのほうが、ずっと長く効いてくると感じます。

これから確かめたいのは、ETFの資金の出入り、レバレッジの積み上がり、マウントゴックスの弁済の行方、そして日本の金商法の改正と税制の見直しの時期です。過去5つのサイクルを数字で並べる回、金利とビットコインの関係を読む回とあわせて、暴落の地図を描き足していきます。

 

※本記事は公表資料をもとにした情報提供を目的としたもので、暗号資産(仮想通貨)や特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。価格の時期やシナリオは、過去のデータに当ブログが置いた前提を当てはめた試算で、将来の価格を予想・保証するものではありません。暗号資産は価格の変動が大きく、投資した金額を大きく下回ることがあります。

※価格は暗号資産のデータ提供サイトの日足終値(協定世界時)などの公表資料をもとに当ブログが集計・計算したもので、四捨五入の関係で合計が合わない場合があります。数値は2026年1月31日までに公表・観測されたもので、時点は本文・表に記載しています。税制は2026年1月31日時点の法令にもとづき、令和8年度税制改正大綱の内容は今後の法改正で決まります。

出典・参考

  • The Bitcoin Trials Continue: Mt. Gox Exchange Collapses Due To Compromised Account(TechCrunch、2011年6月19日)https://techcrunch.com/2011/06/19/the-bitcoin-trials-continue-mt-gox-exchange-collapses-due-to-compromised-account/
  • Bitcoin exchange MtGox files for bankruptcy(NPR、MPR Newsによる掲載、2014年2月28日)https://www.mprnews.org/story/2014/02/28/bitcoin-exchange-mtgox-files-for-bankruptcy
  • Tokyo court orders bankruptcy trustee to begin Mt. Gox liquidation(Reuters、Yahoo News AUによる掲載、2014年4月24日)https://au.news.yahoo.com/tokyo-court-orders-bankruptcy-trustee-090951624.html
  • Gox 再生管財人のサイト(お知らせの一覧、2026年1月31日までの告知)https://www.mtgox.com/
  • Notice of commencement of civil rehabilitation proceedings(Gox、2018年6月22日)https://www.mtgox.com/img/pdf/20180622_announcement_en.pdf
  • コインチェック株式会社に対する行政処分について(関東財務局、2018年1月29日)https://lfb.mof.go.jp/kantou/rizai/pagekthp0130000001_00004.html
  • 仮想通貨交換業者に対するこれまでの対応等(仮想通貨交換業等に関する研究会 資料2、金融庁、2018年4月27日)https://www.fsa.go.jp/news/30/singi/20180427-2.pdf
  • 关于防范比特币风险的通知(银发〔2013〕289号)(中国人民銀行ほか、2013年12月3日付。elawcnによる転載)https://www.elawcn.com/rule/2020/0219/596.html
  • 关于防范代币发行融资风险的公告(中国人民銀行ほか、2017年9月4日。elawcnによる転載)https://www.elawcn.com/rule/2020/0219/597.html
  • 央行:各类代币发行融资活动应当立即停止 比特币急剧跳水(中国证券报・中证网、2017年9月4日)https://cs.com.cn/xwzx/201709/t20170904_5455998.html
  • 刘鹤主持召开国务院金融稳定发展委员会第五十一次会议(中国政府网、2021年5月21日)http://www.gov.cn/xinwen/2021-05/21/content_5610192.htm
  • 关于进一步防范和处置虚拟货币交易炒作风险的通知(银发〔2021〕237号)(中国政府网、2021年9月15日付)http://www.gov.cn/zhengce/zhengceku/2021-10/08/content_5641404.htm
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  • SEC Charges Celsius Network Limited and Founder Alex Mashinsky(SEC、2023年7月13日)https://www.sec.gov/newsroom/press-releases/2023-133
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  • MAS Reprimands Three Arrows Capital for Providing False Information and Exceeding Assets Under Management Threshold(MAS、2022年6月30日)https://www.mas.gov.sg/regulation/enforcement/enforcement-actions/2022/mas-reprimands-three-arrows-capital-for-providing-false-information-and-exceeding-assets-under-management-threshold
  • Singapore reprimands 3AC for providing false information(Cointelegraph、2022年6月30日)https://cointelegraph.com/news/singapore-reprimands-3ac-for-providing-false-information
  • FTX Trading Ltd. 事件のページ(Kroll)https://restructuring.ra.kroll.com/FTX/
  • SEC Charges Samuel Bankman-Fried with Defrauding Investors in Crypto Asset Trading Platform FTX(SEC、2022年12月13日)https://www.sec.gov/newsroom/press-releases/2022-219
  • Circle assures market after stablecoin USDC breaks dollar peg(Reuters、Kitcoによる掲載、2023年3月11日)https://www.kitco.com/news/off-the-wire/2023-03-11/update-3-circle-assures-market-after-stablecoin-usdc-breaks-dollar-peg
  • Joint Statement by Treasury, Federal Reserve, and FDIC(FRB、2023年3月12日)https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20230312b.htm
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  • 日経平均株価は過去最大の値下がり マネックスのプロはこの相場をどう見る?(マネックス証券、2024年8月5日)https://info.monex.co.jp/news/2024/20240805_05.html
  • Crypto crash: $19 bn wiped out as Trump’s 100% China tariff sparks largest liquidation in history(Business Today、2025年10月11日)https://www.businesstoday.in/personal-finance/investment/story/crypto-crash-19-bn-wiped-out-as-trumps-100-china-tariff-sparks-largest-liquidation-in-history-497823-2025-10-11
  • Crypto market sees historic $19B liquidation after Trump tariffs(Global Trade Magazine、2025年10月13日)https://www.globaltrademag.com/crypto-market-sees-historic-19b-liquidation-after-trump-tariffs/
  • Fact Sheet: President Donald J. Trump Signs GENIUS Act into Law(The White House、2025年7月18日)https://www.whitehouse.gov/fact-sheets/2025/07/fact-sheet-president-donald-j-trump-signs-genius-act-into-law/
  • Establishment of the Strategic Bitcoin Reserve and United States Digital Asset Stockpile(The White House、2025年3月6日)https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/2025/03/establishment-of-the-strategic-bitcoin-reserve-and-united-states-digital-asset-stockpile/
  • Announces Results of the Consultation on the Treatment of Digital Asset Treasury Companies(MSCI、2026年1月6日)https://app2.msci.com/webapp/index_ann/DocGet?pub_key=DD3Olh5uInk%3D&lang=en&format=html
  • 暗号資産制度に関するワーキング・グループ 報告(金融審議会、2025年12月10日)https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20251210/01.pdf
  • 金融庁、資金調達目的の暗号資産発行者への情報開示義務化へ=報道(CoinPost、2025年11月17日)https://coinpost.jp/?p=666837
  • 暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)(国税庁、2025年12月26日)https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/virtual_currency_faq_03.pdf
  • BTC drops below $80,000 following $1.6 billion in monthly ETF outflows, third-worst month on record(The Block、2026年1月31日)https://www.theblock.co/post/387923/btc-drops-below-80000
  • Form 8-K(Strategy、2026年1月26日)https://assets.contentstack.io/v3/assets/bltf8d808d9b8cebd37/blt38c73b77a3b1661a/6976b57244632962826a47eb/form-8-k_01-26-2026.pdf
  • Statement on the Approval of Spot Bitcoin Exchange-Traded Products(SEC、ゲンスラー委員長の声明、2024年1月10日)https://www.sec.gov/newsroom/speeches-statements/gensler-statement-spot-bitcoin-011023
  • Bitcoin USD (BTC-USD) 日足の価格データ(Yahoo Finance、CoinMarketCapのデータ。2017年8〜9月、2018年1〜2月、2020年3月、2021年5月、2022年5〜6月、2022年11月、2023年3月、2024年8月、2025年10月)https://finance.yahoo.com/quote/BTC-USD/history/?frequency=1d&period1=1583020800&period2=1585699200
  • Bitcoin price December 2013(StatMuse Money)https://www.statmuse.com/money/ask/bitcoin-price-december-2013
  • Bitcoin monthly closing price 2014(StatMuse Money)https://www.statmuse.com/money/ask/bitcoin-monthly-closing-price-2014