東雲結子:石井先生、銀行から住宅ローンの「金利見直しのお知らせ」が届きました。変動金利って、本当に変動するんですね……。

税理士石井:ええ、名前に偽りなしです。封筒を開ける前から、ずいぶん深刻な顔をしていますね。

東雲結子:でも、転んでもただでは起きません! アメリカは利下げをしていますよね。金利が下がればビットコインは上がるはずなので、ローンの分をそこで取り返す作戦です。

税理士石井:うーん、その作戦には落とし穴があります。FRB(米連邦準備制度理事会)は2025年9月から12月に3回利下げしましたが、ビットコインは2025年8月末から2026年1月末までの月末終値で−27.36%でした。

東雲結子:えっ、利下げしているのに下がったんですか。私、お知らせの封筒を逆さまに読んでいました……?

税理士石井:ははは、封筒は正しい向きですよ。逆に、利上げが4回あった2018年は−73.56%、政策金利が5.25〜5.50%の高さで据え置かれていた2023年7月末から2024年8月末までは+101.74%でした。

東雲結子:利上げで下がって、高金利のままで倍になって、利下げでも下がる……。ビットコインさん、金利の言うことを全然聞いてくれません。

税理士石井:いい表現です。大家業でも、金利は家賃や物件価格を動かす大事な要素ですが、近くに大学ができる、大型の新築が一度に建つといった、金利の外の出来事で相場が決まる年もありますよね。ビットコインにも、4年サイクルやETF(上場投資信託)の資金、借入で膨らんだ取引の清算が重なってきました。

東雲結子:じゃあ、金利のお知らせだけで作戦を立てるのは、封筒の宛名だけ読んで、手紙の中身がわかった気になるようなもの……ですね(汗)。

税理士石井:そのとおりです。今日は、2017年から2026年1月までのFRBの利上げ・利下げの局面ごとに、ビットコインがどう動いたかを並べて、金利で説明できることと、できないことを分けてみましょう。

この回のテーマは、ビットコイン(BTC)と金利の関係です。FOMC(米連邦公開市場委員会)が決めるFF金利の誘導目標が上がった局面、下がった局面、動かなかった局面ごとに、ビットコインの値段がどう動いたかを並べます。金利はFRBが公表している変更の発効日ベース、ビットコインはデータ提供サイトのYahoo Finance(CoinMarketCapのデータ)のドル建て・月末終値(協定世界時)です。

並べてみると、「利下げなら上がる、利上げなら下がる」という単純な図式は、どの局面にもきれいには当てはまりません。2018年と2022年の利上げの局面では大きく下げましたが、2017年は利上げの中で大きく上がり、2023〜24年は高い金利のまま倍になり、2025年9月以降は利下げの中で下げています。数字は2026年1月31日までのもので、2025年10月6日の最高値(終値124,752.53ドル)は暫定、その後の底はまだ確定していません。

大家として長く金利と付き合ってきた立場から言えば、金利は大切な物差しですが、物差しが一本だけで相場を測れたことは一度もありません。この回では、金利の見方を、暗号資産や暗号資産関連株を持つ人、眺める人の投資の目線にも置き直してみます。

この記事の要点 根拠となる数字
利上げの局面で大きく下げた年はあったが、利上げの中で大きく上がった年もある 2018年(利上げ4回)−73.56%、2022年2月末→12月末−61.69%、2017年(利上げ3回)+1,368.90%(月末終値)
2023年以降は、高金利のままで倍になり、利下げの中で下げた 5.25〜5.50%で据え置きの2023年7月末→2024年8月末+101.74%、利下げ再開後の2025年8月末→2026年1月末−27.36%
株との連動は強まったとIMFは書いた ビットコインとS&P500の相関係数は2017〜19年の0.01から2020〜21年の0.36へ(IMFブログ、2022年1月11日)
投資の目線:金利は一本の物差しにすぎない。FOMCの決定と並べて、ETFの資金、清算、為替を確かめたい FF金利は3.50〜3.75%で据え置き(2026年1月28日、賛成10・反対2)、1月のETFの純流出は約16億ドル(報道)

FF金利は2022〜23年に5.25ポイント上がり、2024〜25年に1.75ポイント下がった

まず、2017年から2026年1月までの金利の動きを確かめます。

用語メモ:FRB(米連邦準備制度理事会)=米国の金融政策を担う機関。FOMC(米連邦公開市場委員会)=FRBの中で政策金利を決める会合。FF金利(フェデラル・ファンド金利)=米国の銀行どうしが短期でお金を貸し借りするときの金利で、FOMCがその誘導目標の幅を決める。bp(ベーシスポイント)=0.01%ポイント。100bpは1ポイント。

局面 変更の発効日 FF金利の誘導目標 回数・幅
2017年の利上げ 3月16日、6月15日、12月14日 12月14日に1.25〜1.50% 3回
2018年の利上げ 3月22日、6月14日、9月27日、12月20日 1.25〜1.50%→2.25〜2.50% 4回、計+1.00ポイント
2019年の利下げ 8月1日、9月19日、10月31日 2.25〜2.50%→1.50〜1.75% 3回、計−0.75ポイント
2020年の緊急利下げ 3月4日、3月16日 1.50〜1.75%→0〜0.25% 2回、計−1.50ポイント
2022〜23年の利上げ 2022年3月17日〜2023年7月27日 0〜0.25%→5.25〜5.50% 11回、計+5.25ポイント(525bp)
2024年の利下げ 9月19日、11月8日、12月19日 5.25〜5.50%→4.25〜4.50% 3回、計−1.00ポイント
2025年の利下げ 9月18日、10月30日、12月11日 4.25〜4.50%→3.50〜3.75% 3回、計−0.75ポイント
2026年1月28日のFOMC — 3.50〜3.75%で据え置き 賛成10・反対2

※数値はFRBの公表による。日付は変更が効力を持った発効日(FOMCの発表の翌日)で、2026年1月28日だけは発表日(米東部時間)。2017年3月16日より前の誘導目標は、この連載の資料にない。幅は当ブログの計算で、2024〜25年の利下げは6回、計−1.75ポイント(175bp)。

2022年3月から2023年7月にかけての11回の利上げで、FF金利の誘導目標は0〜0.25%から5.25〜5.50%へ、計5.25ポイント上がりました。その後は2024年9月まで同じ水準で据え置かれ、2024年9月19日の0.50ポイントの引き下げから利下げが始まります。2024年に3回、2025年9月から12月に3回で、2025年12月11日には3.50〜3.75%になりました。

2026年1月28日のFOMCは、3.50〜3.75%で据え置きを決めました。賛成10・反対2で、反対したミラン、ウォラーの両氏は0.25ポイントの利下げを主張しています。声明は「Uncertainty about the economic outlook remains elevated」(経済の見通しをめぐる不確実性は高いままだ)とし、インフレについては「remains somewhat elevated」(いくぶん高い状態が続いている)と書きました(英文を当ブログが訳出)。

局面ごとに見ると、ビットコインは利上げで下げた年も、上げた年もある

では、それぞれの局面でビットコインはどう動いたのか。局面の始まりの前の月末と、終わりの月末の終値を比べました。

局面 区間(月末) ビットコインの月末終値(ドル) 騰落率
2017年 利上げ3回 2016年12月→2017年12月 963.74→14,156.40 +1,368.90%
2018年 利上げ4回 2017年12月→2018年12月 14,156.40→3,742.70 −73.56%
2019年 利下げ3回 2019年7月→2019年12月 10,085.63→7,193.60 −28.67%
2020〜21年 ゼロ金利 2020年2月→2021年12月 8,599.51→46,306.45 +438.48%
2022〜23年 利上げ11回 2022年2月→2023年7月 43,193.23→29,230.11 −32.33%
うち2022年末まで 2022年2月→2022年12月 43,193.23→16,547.50 −61.69%
5.25〜5.50%で据え置き 2023年7月→2024年8月 29,230.11→58,969.90 +101.74%
2024〜25年 利下げ6回 2024年8月→2025年12月 58,969.90→87,508.83 +48.40%
うち最高値まで 2024年8月→2025年10月6日 58,969.90→124,752.53 +111.55%
うち利下げの休止(2024年12月〜2025年8月) 2024年12月→2025年8月 93,429.20→108,236.71 +15.85%
うち利下げ再開後 2025年8月→2026年1月 108,236.71→78,621.12 −27.36%
利下げ開始から2026年1月まで 2024年8月→2026年1月 58,969.90→78,621.12 +33.32%

※ビットコインはデータ提供サイト(Yahoo Finance、CoinMarketCapのデータ)の日足終値(協定世界時)の月末の値。「最高値まで」だけは2025年10月6日の日足終値。2026年1月は1月31日の終値。局面の区切りは当ブログの設定で、2022〜23年は最初の利上げの前の月末から最後の利上げの月末まで。騰落率は当ブログの計算。同じ時期に起きた動きで、金利が原因とは限らない。

表のいちばん上と2行目が、話をわかりやすくしてくれます。2017年は利上げが3回あった年に+1,368.90%、翌2018年は利上げが4回あった年に−73.56%。同じ「利上げの年」でも、結果は正反対でした。

2020〜21年のゼロ金利の期間は+438.48%と大きく上がりました。ただしこの期間には、2020年3月12日のコロナ・ショックでの1日−37.17%の急落と、2020年5月11日の半減期が含まれています。2022〜23年の利上げの局面は全体で−32.33%、うち2022年末までに−61.69%でした。

2023年以降は、金利と逆の動きが目立ちます。5.25〜5.50%の据え置き中に、ビットコインは+101.74%と倍になり、利下げが始まってから最高値までは+111.55%。ところが、2025年9月に利下げを再開してからは−27.36%です。

図は、上段にビットコインの月末終値を対数目盛で、下段にFF金利の誘導目標の上限を発効日ベースで描き、同じ時間軸で並べたものです。薄い紫の帯が利上げの局面、薄い緑の帯が利下げの局面で、上段で各局面の上に書いた数字が、局面ごとのビットコインの騰落率です。

下段の金利は、2018年末の2.50%、2020年3月からの0.25%、2023年7月からの5.50%、2025年12月からの3.75%と、階段のように動いています。上段のビットコインは、その階段とは別のリズムで山と谷をつくっており、右端の「利下げ再開後」の線は、緑の帯の中で右下がりです。

用語メモ:対数目盛=目盛りの間隔が「何倍になったか」を表すグラフの軸。1,000ドルから1万ドル、1万ドルから10万ドルが同じ間隔で表示されるので、長い期間の値動きを比べやすくなります。

2018年と2022年の下げは、利上げと4年サイクルの下落局面が重なっていた

利上げの年に大きく下げた2018年と2022年。この二つには、もう一つの共通点があります。どちらも、4年サイクルの天井をつけた翌年だったことです。

2017〜18年のサイクルでは、ビットコインは2017年12月16日に終値19,497.40ドルの天井をつけました。12月14日に発効した利上げの2日後です。そして底は2018年12月15日の3,236.76ドルで、この局面の最後の利上げ(12月20日発効)の5日前でした(日数は当ブログの計算)。

2021〜22年のサイクルの天井は2021年11月8日の67,566.83ドルで、まだゼロ金利の最中、最初の利上げ(2022年3月17日)の129日前です。底は2022年11月21日の15,787.28ドルで、利上げが続いている最中、最後の利上げ(2023年7月27日)の248日前でした(日数は当ブログの計算)。つまり、ビットコインの底は利上げが終わるのを待たずに来ていました。

2022年には、金利のほかにも大きな出来事が重なっています。5月のテラ(LUNA/UST)の崩壊、6月のCelsius(セルシウス)によるプラットフォームの停止、11月のFTXトレーディングの破綻です。どれが値動きにどれだけ効いたのかを、資料から切り分けることはできません。出来事の詳しい中身は、暴落の歴史を取り上げる回で扱います。

ここからは当ブログの見方です。2018年と2022年は、利上げの年であると同時に、半減期から始まる4年サイクルの下落局面の年でもありました。利上げとサイクルのどちらが効いたのかは、この2回だけでは分けられません。過去2回の下げを「利上げのせい」とだけ読むと、2025年9月以降の動きを説明できなくなります。

逆の読み方をしている人もいます。The Blockの要約(2025年12月16日)によると、Bitwiseのホーガン氏は、2026年に4年サイクルに従わず最高値を更新するとの見方を示し、その理由の一つに、2018年・2022年の利上げと違って金利が下がる見通しであることを挙げました(二次資料)。この見方の当否は、2026年の値動きが答えることになります。

高金利のまま倍になり、利下げの中で下がった:2023年以降の「逆転」

2023年7月末から2024年8月末まで、FF金利は5.25〜5.50%に据え置かれていました。その間にビットコインは29,230.11ドルから58,969.90ドルへ、+101.74%と倍になっています。

この期間には、2024年1月10日の米証券取引委員会(SEC)による現物ビットコインETF(上場投資信託)の承認(取引開始は1月11日)と、2024年4月20日の半減期が入っています。ETFと企業の大量保有がもたらした変化は、新しい買い手を取り上げる回で詳しく見ますが、高い金利のままでも、別の買い手が現れれば値段は上がることを、この1年余りは示しました。

利下げは2024年9月19日に始まりました。2024年8月末の58,969.90ドルから、2025年10月6日の最高値124,752.53ドルまでは+111.55%です。最高値は、2025年9月18日の利下げの18日後、10月30日の利下げの24日前でした(日数は当ブログの計算)。

ところが、そこから流れが変わります。2025年8月末の108,236.71ドルから2026年1月31日の78,621.12ドルまで、利下げを3回重ねる中で−27.36%。この間には、2025年10月10〜11日に24時間で190億ドルを超える建玉が強制的に清算された出来事(CoinGlassのデータを報じた報道による)や、米国の現物ETFからの資金の流出(2025年12月に約10.9億ドル、2026年1月に約16億ドル、SoSoValueの集計を報じた報道による)が重なっています。

利下げが始まった2024年8月末から2026年1月末までを通して見ると、+33.32%です。始点と終点の選び方ひとつで、「利下げで上がった」とも「利下げなのに下がった」とも言えてしまう。数字を読むときに、ぜひ気をつけたいところです。

用語メモ:清算(ロスカット)=借入や証拠金で膨らませた取引で、損失が一定を超えたときに、取引所などが強制的に決済すること。レバレッジ=借入や証拠金を使って、手元の資金より大きな金額を取引すること。

金融市場が急に揺れた日は、ビットコインも大きく動いた

金利の水準とは別に、金融市場が急に揺れた日のビットコインも確かめておきます。

2020年3月12日、コロナ・ショックの日のビットコインは、前日の7,911.43ドルから4,970.79ドルへ、1日で−37.17%の下落でした(日足終値)。翌13日には日中に4,106.98ドル(前日終値比−48.09%)をつけています。FRBはこの前後に緊急の利下げを2回行い(3月4日発効で−0.50ポイント、3月16日発効で−1.00ポイント)、FF金利は0〜0.25%になりました。

日本の読者にとって記憶に新しいのは、2024年8月5日でしょう。日本銀行は7月31日に、無担保コール翌日物の金利を0.25%程度に引き上げることを決めました(8月1日から、賛成7・反対2)。同じ7月31日に、FRBはFF金利を5.25〜5.50%で据え置いています。そして8月5日、日経平均株価は4,451円、約12%下げ、過去最大の下げ幅になりました(マネックス証券の解説による)。

この日のビットコインは、8月2日の61,415.07ドルから8月5日の53,991.46ドルへ−12.09%、日中の安値49,121.24ドルでは−20.02%でした。ただし、8月8日には61,710.14ドルと、5日の終値から+14.30%戻しています。この局面はよく「円キャリー取引の巻き戻し」と呼ばれますが、確認できた資料が示しているのは、日銀の利上げ、日経平均の過去最大の下げ、円高という事実までです。

反対向きの例もあります。2023年3月、米国のシリコンバレー銀行(SVB)が破綻し、準備金400億ドルのうち33億ドルをSVBに預けていたステーブルコインのUSDCは、一時0.88ドルまで下がりました(ロイターの報道、CoinGeckoのデータ)。米財務省・FRB・FDIC(米連邦預金保険公社)が3月12日に、預金者は3月13日から預金の全額を引き出せるとする共同声明を出した前後で、ビットコインは3月10日から13日に+19.87%上昇しています。

当ブログの見方では、金融市場が急に揺れた日には、ビットコインも株と同じように大きく売られることがありました。ただし、その後の向きは、金利の水準よりも、そのとき何が起きていたかで決まっていたように見えます。

株との連動:IMFは「相関が0.01から0.36に上がった」と書いた

金利がビットコインに効く道筋の一つは、株式市場を通る道だと考えられます(当ブログの見方)。その点で参考になるのが、IMF(国際通貨基金)が2022年1月11日に公表したブログです。

IMFのブログは、ビットコインと米国の代表的な株価指数S&P500のリターンの相関係数が、「0.01 in 2017–19」(2017〜19年に0.01)から「0.36 for 2020–21」(2020〜21年に0.36)に上がったとし、「Spillovers … have risen significantly」(波及は大きく高まった。英文を当ブログが訳出し、「…」は原文の省略)と書きました。2020年以降、ビットコインは株と同じ方向に動く場面が増えた、という指摘です。

一方、Bitwiseのホーガン氏のメモを報じたThe Block(2025年12月16日)によると、同氏は株式との相関は「rarely exceeded levels considered statistically meaningful」(統計的に意味があるとされる水準をめったに超えなかった、英文を当ブログが訳出)とし、2026年は相関が下がるとの見方を示しました(The Blockの要約、二次資料)。相関は、どの期間を、どの頻度のデータで測るかで変わります。当ブログは独自に相関を計算していません。

用語メモ:相関係数=二つの値動きの向きがどれだけそろっているかを、−1から1の数で表したもの。1に近いほど同じ向きに動き、0に近いほど関係が薄い。S&P500=米国の代表的な株価指数。

円建てで見ると、金利と為替の両方が値動きに加わる

日本でビットコインを持つ人には、もう一つ金利の影響の通り道があります。為替です。

円建てのビットコインの終値は、2025年10月8日の18,838,562円が天井で、2026年1月31日は12,166,224円、下落率は−35.42%でした。ドル建ての−36.98%より小さいのは、その間に円安が進んだためです。終値どうしから逆算したドル円は、10月6日の150.36円から1月31日の154.74円へ動いています(当ブログの計算)。

※円建ての価格は、Yahoo Finance(BTC-JPY)のCoinMarketCapによる円換算で、日本の取引所の価格ではありません。

金利の動きは為替にも影響し、為替は円建ての損益を動かします(当ブログの見方)。ドル建てのチャートだけを見ていると、この部分は見えません。大家業でいえば、外貨建ての家賃を受け取っているようなもので、家賃そのものが変わらなくても、為替で手取りが増えたり減ったりします。

3つのシナリオを、金利の物差しで点検する

当ブログは、2025年10月6日の天井(終値124,752.53ドル、暫定)からの下落局面について、3つのシナリオを置いています。いずれも過去のデータや名前のある見方に当ブログが置いた仮定で、予想ではありません。ここでは、金利がそれぞれのシナリオをどう崩しうるかに注目します。

当ブログのシナリオ(BTC) 底の時期・水準(ドル、終値) 崩れる条件(金利に関わるものを中心に)
S-A「4年サイクルどおり、過去並みの下落」 2026年10月5日〜11月16日、約1万9,300〜2万9,200ドル(過去3回の天井→底の364〜406日、−76.63%〜−84.53%) 下落が−76.63%より浅い(買いが続く)か−84.53%より深い、底の時期がずれる、2026年に最高値を更新する
S-B「4年のリズムは続くが、下落は浅い」 時期はS-Aと同じ、6万5,000〜7万5,000ドル(フィデリティのティマー氏の「Support is at $65-75k.」、2025年12月18日、二次資料) 終値で6.5万ドルを割る、規制や取引所の信用の事故、早い底入れと最高値の更新
S-C「サイクルが崩れる」 深い下落なし(Grayscale・Bitwise・Standard Charteredの見方)。天井の回復には1月31日の終値から+58.68% 2026年に終値で天井を超えない、ETFからの流出が続く、金利が支えにならない(1月28日に据え置き、2025年9月以降は利下げ中に−27.36%)、企業の買いが細る

※当ブログの仮定と試算で、予想ではない。S-Aの水準=天井×(1+過去3回の下落率)。各シナリオの組み立ては、次の底のシナリオを取り上げる回で詳しく扱う。

金利の物差しで見ると、S-Cを支える材料として名前が挙がってきた「利下げ」は、2026年1月31日までのところ、ビットコインを押し上げてはいません。2025年9月以降の利下げの中での−27.36%と、1月28日の据え置きは、S-Cの「崩れる条件」の一つにすでに触れている、というのが当ブログの見方です。

一方で、S-Aの「過去並みの下落」の根拠になっている3回のうち、2018年と2022年は利上げの年でした。いまは金利が下がってきた局面なので、過去と同じ深さになる条件はそろっていない、と読むこともできます。ただ、3回の中でいちばん深い2013〜15年の−84.53%は、FF金利が0〜0.25%のまま動かなかった時期の下落でした(FRBの公表では、2008年12月16日から2015年12月17日まで変更なし)。どちらの読み方も、金利だけでは決着がつきません。

金利を見る投資の目線:FOMCの結果だけでなく、重なっているものを確かめる

ここからは、暗号資産や暗号資産関連株を持っている人、眺めている人にとって、この回の数字が何を意味するかを考えます。売り買いの判断ではなく、性格とリスク、確かめる点の整理です。

まず、「利下げならビットコインは上がる」という見方は、2017年から2026年1月までのデータでは成り立っていません。利下げの中で下げた局面(2019年の−28.67%、2025年9月以降の−27.36%)もあれば、利上げの中で大きく上がった局面(2017年の+1,368.90%)もありました。金利は値動きを説明する材料の一つで、合図ではない、と私は考えています。

時間の長さの違いも、頭に置いておきたいところです。2022〜23年の利上げは2022年3月から2023年7月まで、5.25〜5.50%の据え置きは2023年7月から2024年9月まで続きました。金利の局面は年単位で動きますが、その間にビットコインは、1年で−73.56%(2018年)にも+1,368.90%(2017年)にもなっています。金利の向きが変わるのを待つ間に、価格はその何倍も動きうるということです。

1月28日の声明が、インフレを「いくぶん高い」と書いたことも覚えておきたい点です。インフレが高いままなら利下げは続かないかもしれず、景気が崩れれば利下げが急がれるかもしれません。どちらの道になるかを当ブログは予想しませんが、どちらの道でも、ビットコインの値段は金利以外の要因と合わせて決まってきた、というのがこの回の数字の教えです。

次に、レバレッジです。借入や証拠金で取引を膨らませている場合、金利の変化は借入のコストと、清算の起きやすさの両方から効いてきます。2025年10月10〜11日のように、24時間で190億ドルを超える清算が起きることもあります。大家業でいえば、変動金利のローンを目いっぱい借りて物件を買い、金利と家賃の両方が逆に振れたときに、底値で手放さざるをえなくなる構図です。

税理士として一つ付け加えると、レバレッジをかけた証拠金取引の利益も、2026年1月31日時点のルールでは、現物の取引と同じく総合課税の対象です(国税庁のFAQ)。令和8年度の税制改正大綱は、特定暗号資産のデリバティブ取引を、先物取引と同じ分離課税と損失の繰越の対象にする方向を示しましたが、金融商品取引法の改正が前提で、法律になるのはこれからです。詳しくは、税金を取り上げる回で整理します。

暗号資産関連株を見ている人は、会社の資金の集め方にも目を向けたいところです。ビットコインを買うために株式や借入でお金を集める会社は、ビットコインの価格に加えて、資金の集めやすさを通じて金利の影響も受けやすいと考えられます(当ブログの見方)。会社ごとの中身は、米国や日本の暗号資産関連株を読む別の連載で取り上げています。

確かめたい数字は、次の表のとおりです。

確かめる点 2026年1月時点の数字 当ブログの見方
FF金利の誘導目標とFOMCの票決 3.50〜3.75%で据え置き(1月28日、賛成10・反対2) 利下げを主張する票の数と、インフレの書きぶりの変化を見たい
米国の現物ETFの資金の出入り 1月に約16億ドルの純流出(The Block、SoSoValueの集計) 金利よりも直接、需給に効いてきた
円建ての価格と為替 1月31日 12,166,224円、逆算したドル円154.74円 円建ての損益は、ドル建ての値動きと為替の合計
株式市場との連動 IMFの相関係数 0.01(2017〜19年)→0.36(2020〜21年) 株が大きく崩れる日には、ビットコインも売られうる

円で暮らす私たちにとって、手元に残るお金は円建ての損益で決まります。ドル建てでは大きく下げていても、円安のおかげで円建ての下げは小さい、ということが起こりうるのは、先ほど見たとおりです。

金利はビットコインの追い風にも向かい風にもなったが、一人で値動きを決めたことはない

この回の数字を振り返ります。FF金利は、2022〜23年の11回の利上げで5.25ポイント上がり、2024〜25年の6回の利下げで1.75ポイント下がりました。その中でビットコインは、利上げの2018年に−73.56%、2022年2月末から12月末に−61.69%と大きく下げた一方、利上げの2017年には+1,368.90%、5.25〜5.50%の据え置き中には+101.74%と上がり、利下げを再開した2025年9月以降は−27.36%でした(いずれも月末終値)。

2018年と2022年の下げは、4年サイクルの下落局面と重なっていて、金利の効き目だけを取り出すことはできません。2023年以降は、ETFの承認や半減期、清算、ETFの資金の流出といった出来事が、金利と逆向きに値段を動かした場面が目立ちます。IMFは株との連動が強まったと書きましたが、それも金利がビットコインに届く道筋の一つにすぎない、というのが当ブログの見方です。

これから見ていきたいのは、FOMCの決定と票決、声明のインフレの書きぶり、米国の現物ETFの資金の出入り、そして円相場です。変動金利のお知らせと同じで、金利の数字は封筒の宛名のようなものです。中身を読むには、その時期に何が重なっていたかを一つずつ確かめる必要があります。

4年サイクルの全体像を取り上げる回、暴落の歴史を取り上げる回、新しい買い手を取り上げる回、次の底のシナリオを取り上げる回、そして税金を取り上げる回もあわせてどうぞ。

 

※本記事は公表資料をもとにした情報提供を目的としたもので、暗号資産(仮想通貨)や特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。価格の時期やシナリオは、過去のデータに当ブログが置いた前提を当てはめた試算で、将来の価格を予想・保証するものではありません。暗号資産は価格の変動が大きく、投資した金額を大きく下回ることがあります。

※価格は暗号資産のデータ提供サイトの日足終値(協定世界時)などの公表資料をもとに当ブログが集計・計算したもので、四捨五入の関係で合計が合わない場合があります。数値は2026年1月31日までに公表・観測されたもので、時点は本文・表に記載しています。税制は2026年1月31日時点の法令にもとづき、令和8年度税制改正大綱の内容は今後の法改正で決まります。

出典・参考

  • Federal Reserve Board: Open Market Operations(FRB、2025年12月11日までの変更を参照)https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/openmarket.htm
  • Federal Reserve issues FOMC statement(FRB、2026年1月28日)https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20260128a.htm
  • ビットコイン価格:Yahoo Finance「BTC-USD」月足(CoinMarketCapのデータ、2014年9月〜2025年12月の値を参照)https://finance.yahoo.com/quote/BTC-USD/history/?frequency=1mo&period1=1388534400&period2=1767225600
  • ビットコイン価格:Yahoo Finance「BTC-USD」日足(2026年1月)https://finance.yahoo.com/quote/BTC-USD/history/?frequency=1d&period1=1767225600&period2=1769904000
  • ビットコイン価格:Yahoo Finance「BTC-USD」日足(2025年)https://finance.yahoo.com/quote/BTC-USD/history/?frequency=1d&period1=1735689600&period2=1767225600
  • ビットコイン価格:Yahoo Finance「BTC-USD」日足(2020年3月)https://finance.yahoo.com/quote/BTC-USD/history/?frequency=1d&period1=1583020800&period2=1585699200
  • ビットコイン価格:Yahoo Finance「BTC-USD」日足(2024年7月25日〜8月12日)https://finance.yahoo.com/quote/BTC-USD/history/?frequency=1d&period1=1721865600&period2=1723420800
  • ビットコイン価格:Yahoo Finance「BTC-USD」日足(2023年3月8日〜16日)https://finance.yahoo.com/quote/BTC-USD/history/?frequency=1d&period1=1678233600&period2=1678924800
  • ビットコイン価格(円建て):Yahoo Finance「BTC-JPY」日足(CoinMarketCapの円換算、2026年1月)https://finance.yahoo.com/quote/BTC-JPY/history/?frequency=1d&period1=1767225600&period2=1769904000
  • ビットコイン価格(円建て):Yahoo Finance「BTC-JPY」日足(2025年10月1日〜16日)https://finance.yahoo.com/quote/BTC-JPY/history/?frequency=1d&period1=1759276800&period2=1760572800
  • 暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)(国税庁、2025年12月)https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/virtual_currency_faq_03.pdf
  • 令和8年度税制改正の大綱(財務省、2025年12月26日閣議決定)https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/20251226taikou.pdf
  • Crypto Prices Move More in Sync With Stocks, Posing New Risks(IMF Blog、2022年1月11日)https://www.imf.org/en/Blogs/Articles/2022/01/11/crypto-prices-move-more-in-sync-with-stocks-posing-new-risks
  • Bitwise CIO says bitcoin will break 4-year cycle and set new all-time highs in 2026(The Block、2025年12月16日)https://www.theblock.co/post/382690/bitwise-cio-bitcoin-break-4-year-cycle-new-all-time-highs-2026
  • Statement on the Approval of Spot Bitcoin Exchange-Traded Products(米国証券取引委員会 ゲンスラー委員長、2024年1月10日)https://www.sec.gov/newsroom/speeches-statements/gensler-statement-spot-bitcoin-011023
  • Change in the Guideline for Market Operations(日本銀行、2024年7月31日)https://www.boj.or.jp/en/mopo/mpmdeci/mpr_2024/k240731a.pdf
  • 日経平均株価は過去最大の値下がり マネックスのプロはこの相場をどう見る?(マネックス証券、2024年8月5日)https://info.monex.co.jp/news/2024/20240805_05.html
  • UPDATE 3-Circle assures market after stablecoin USDC breaks dollar peg(ロイター、Kitco転載、2023年3月11日)https://www.kitco.com/news/off-the-wire/2023-03-11/update-3-circle-assures-market-after-stablecoin-usdc-breaks-dollar-peg
  • Joint Statement by Treasury, Federal Reserve, and FDIC(FRB、2023年3月12日)https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20230312b.htm
  • Crypto crash: $19 bn wiped out as Trump’s 100% China tariff sparks largest liquidation in history(Business Today、2025年10月11日)https://www.businesstoday.in/personal-finance/investment/story/crypto-crash-19-bn-wiped-out-as-trumps-100-china-tariff-sparks-largest-liquidation-in-history-497823-2025-10-11
  • Bitcoin ETFs post net outflows on New Year’s Eve, shed over $1B in December(The Coin Republic、2026年1月2日)https://www.thecoinrepublic.com/2026/01/02/bitcoin-etfs-post-net-outflows-on-new-years-eve-shed-over-1b-in-december/
  • BTC drops below $80,000 following $1.6 billion in monthly ETF outflows, third-worst month on record(The Block、2026年1月31日)https://www.theblock.co/post/387923/btc-drops-below-80000
  • 2026 Digital Asset Outlook: Dawn of the Institutional Era(Grayscale Research、2025年12月15日更新)https://research.grayscale.com/reports/2026-digital-asset-outlook-dawn-of-the-institutional-era
  • ‘Not crypto winter’: Standard Chartered halves 2025 bitcoin target to $100K(The Block、2025年12月9日)https://www.theblock.co/post/381892/not-crypto-winter-standard-chartered-halves-2025-bitcoin-target-to-100k-keeps-long-term-bull-case
  • Fidelity macro lead sees $65K bitcoin bottom in 2026(Cointelegraph、2025年12月19日)https://cointelegraph.com/news/fidelity-macro-lead-65k-bitcoin-bottom-2026