東雲結子:先生、週末は雪山に登ってきます! 山頂で記念写真を撮るので、自撮り棒とカイロ20枚とおにぎり5個をリュックに詰めました。

税理士石井:ははは、その荷物だと、山頂より先に東雲さんの膝が「下山しましょう」と言い出しそうですね。ちなみに慣れた登山者ほど、山頂の少し手前から下りの段取りを考え始めるそうですよ。

東雲結子:えっ、まだ登っている途中なのにですか? 私なら山頂でおにぎりを5個食べ終わってから、ゆっくり考えます。

税理士石井:実は、メモリー株の値動きは、その慣れた登山者に似ているんです。2018年末と2022年の大きな安値で、マイクロン、SKハイニックス、サムスン電子の株価は、DRAMの価格が底をつける8〜11か月も前に底を打っていました。

東雲結子:8〜11か月も! 価格はまだ下り坂なのに、株価はもう登り始めていたんですか。株価って、ずいぶんせっかちな登山者ですね。

税理士石井:うーん、せっかちというより、先の天気予報を見て動く人たちの集まりなんです。大家業でいえば、再開発が決まった駅の近くでは、家賃が上がる前に土地の値段が先に上がりますよね。株価も、いまの利益よりその先の利益を見て動きます。

東雲結子:なるほど……。じゃあマイクロンが2025年4月末から2026年1月末までに439.2%上がったのは、まだ山頂の手前ということですね。山頂の売店のおにぎり、今のうちに買い占めておきます!

税理士石井:おっと(汗)、そこが落とし穴です。山頂の近くでは利益がいちばん大きく見えるので、株価を利益で割ったPERが低く出やすいんです。2018年、マイクロンの株価は5月に天井をつけましたが、営業利益率が2015年以降で最も高い51.9%になったのは、その後の6〜8月期でした。

東雲結子:山頂だと思って旗を立てた場所が、実はもう下山口だった……ということですか。おにぎり計画、見直します。

税理士石井:ふふ、おにぎりは下りの分も残しておきましょう。この回は、月末の株価とDRAM価格の天井・底を並べて、株価が何か月先に動いたか、天井から底までどれだけ下げたか、利益とPERの関係を確かめます。ただ、過去の先行は約束ではないので、株価の天井の日付を逆算することはしません。

連載の第8回は、メモリー株とシリコンサイクルの関係です。DRAM(計算中のデータを置くメモリー)とNAND(電源を切ってもデータが残るメモリー)の価格には大きな波があります。では、その波を作る会社の株価は、価格と同じ時期に天井や底をつけたのでしょうか。

対象は、マイクロン・テクノロジー(以下マイクロン)、SKハイニックス、サムスン電子の3社と、米国の半導体株の指数であるSOX指数です。2015年1月から2026年1月までの月末終値を、TrendForce(台湾の調査会社)のDRAM契約価格の天井・底と並べ、株価が何か月先に動いたかを数えます。

株価はYahoo Financeの月末終値(株式分割を調整、配当は含まない、二次資料)で、サムスン電子は2018年5月4日の50対1の株式分割を調整した値です。数字は2026年1月31日までに公表されたもので、後半では、この時間差を株式投資の目線でどう読むかも、アナリストとして整理します。

この記事の要点 根拠となる数字
大きな底では、3社の株価が価格より8〜11か月早く底を打った 安値は2018年12月と2022年9月・12月、DRAM価格の底は2019年10〜12月期・2023年7〜9月期
天井での先行は短く、2021年のマイクロンは4か月遅れた 天井でマイクロン・SKハイニックス2〜6か月先(2021年のマイクロンは−4か月)、サムスン電子1〜10か月先
天井から底までの株価の下げは3〜5割で、価格の小さな一服でも同じくらい下げた 下落率−29.7〜−47.0%。2024〜25年は汎用DRAMの価格が−12.7%(予測の目安)でも株価は−32.4〜−41.5%
投資の目線:利益が山にあるときほどPERは低く見え、過去の先行の月数は「時計」にならない マイクロンの実績PER39.4倍・会社予想×4で12.7倍(2026年1月30日)、2025年4月からの上昇+439.2%

サイクルの7回の転換で、メモリー株3社は21組中20組が価格より先に転換した

まず物差しをそろえます。価格の天井・底は、TrendForceのDRAM契約価格の前期比の上昇(または下落)が続いた最後の四半期、つまり翌四半期に向きが変わる直前の四半期です。契約価格には予測と集計が混ざっており、天井・底の区切りはTrendForceの記述をもとにした、この連載の区切りです。

先行の月数は「価格の転換四半期の真ん中の月−株価の天井・底の月」で数えました。プラスなら株価が先に転換したという意味です。価格が四半期単位なので、前後1か月の幅がある目安だと考えてください。

価格の転換(TrendForceのDRAM契約価格) マイクロン(ドル) SKハイニックス(ウォン) サムスン電子(ウォン) SOX指数
底:2016年4〜6月期(2Q16) 2016年3月 10.47(+2) 2016年1月 27,300(+4) 2015年8月 21,780(+9) 2015年9月 602.73(+8)
天井:2018年7〜9月期(3Q18) 2018年5月 57.59(+3) 2018年5月 93,400(+3) 2017年10月 55,080(+10) 2018年8月 1,401.20(0)
底:2019年10〜12月期(4Q19) 2018年12月 31.73(+11) 2018年12月 60,500(+11) 2018年12月 38,700(+11) 2018年12月 1,155.17(+11)
天井:2021年7〜9月期(3Q21) 2021年12月 93.15(−4) 2021年2月 141,500(+6) 2021年2月 82,500(+6) 2021年12月 3,946.17(−4)
底:2023年7〜9月期(3Q23) 2022年12月 49.98(+8) 2022年12月 75,000(+8) 2022年9月 53,100(+11) 2022年9月 2,306.70(+11)
天井:2024年7〜9月期(3Q24、汎用DRAM) 2024年6月 131.53(+2) 2024年6月 236,500(+2) 2024年7月 83,900(+1) 2024年6月 5,472.26(+2)
一服の底:2025年4〜6月期(2Q25、予測) 2025年4月 76.95(+1) 2024年11月 159,900(+6) 2025年1月 52,400(+4) 2025年4月 4,230.09(+1)

※株価は月末終値(株式分割を調整、配当は含まない。Yahoo Financeの二次資料)。( )内は先行の月数(+=株価が先、±1か月の精度)。価格の天井・底はTrendForceの予測・集計による区切りで、2024年以降は汎用DRAM(AI(人工知能)向けなどの広帯域メモリーであるHBMを除く)、2025年4〜6月期は予測の値による。2021年のマイクロンは2月にも91.53ドルとほぼ同じ水準をつけており、2月とみれば+6。

3社×7回の21組のうち、株価が先に転換したのは20組でした。株価が遅れたのは2021年の天井のマイクロンだけで、価格と同じ月に転換した組は一つもありません(当ブログの集計)。ただし先行1か月の2組(2024年のサムスン電子、2025年のマイクロン)は、前後1か月の幅の内側です。SOX指数は、2018年の天井で価格と同じ月(0か月)、2021年の天井で4か月遅れでした。

用語メモ:DRAM・NAND=メモリーの2大品種。契約価格=メモリーメーカーと大口の買い手が取り決める価格で、市場で日々取引されるスポット価格とは別の物差し。TrendForceは契約価格の四半期ごとの変化率を予測・集計している。SOX指数=米国の半導体関連株でつくる株価指数(フィラデルフィア半導体株指数)。月末終値=各月の最後の取引日の終値。

大きな底では、3社の株価が価格より8〜11か月早く底を打った

いちばん差が大きかったのは、底の場面です。2019年10〜12月期にDRAM価格が底をつけた局面では、3社の株価もSOX指数も、そろって2018年12月に安値をつけていました。価格の底より11か月早かったことになります。

2023年7〜9月期の底でも同じ形でした。マイクロンとSKハイニックスの安値は2022年12月で8か月先、サムスン電子は2022年9月で11か月先です。価格の下落は2021年10〜12月期から8四半期続きましたが、株価は下落の途中で底を打っていたわけです。

その安値のころ、業界では何が起きていたのでしょうか。株価が安値をつけた翌月の2019年1月15日、TrendForceは、DRAMの各社が価格の安定のために2019年の設備投資を削減したと伝えました。同時に、1〜3月期の契約価格の下落の予測を、15%から約20%へ広げています。

つまり株価は、値下がりの予測がまだ厳しくなっていく途中で底を打っていました。価格の予測が明るくなったころには、株価の底はとうに過ぎていたことになります(当ブログの見方)。

2022年は、もっと分かりやすい形です。キオクシアは2022年10月から四日市・北上のウエハー投入を約30%減らし、SKハイニックスは10月26日に、2023年の投資を前年より50%超減らすと表明しました。

マイクロンも11月16日にDRAM・NANDのウエハー投入の約20%削減を、12月21日には2023年8月期の設備投資を70〜75億ドルに引き下げ、人員を約10%減らすと発表しています。株価の安値(2022年9月・12月)は、こうした減産と投資削減の発表が相次いだ時期と前後していました。

ただし、各社の発表が株価を反転させたと説明する資料はありません。ここで言えるのは、時期が重なっていたという事実までです。

大家業でいえば、空室が増えた地域で、大家さんたちが一斉に募集を止め、新築の計画を先送りし始めた時期です。家賃相場が戻るのはまだ先でも、供給が絞られ始めたことを先に映すのが株価なのだろう、と私は見ています(当ブログの見方)。

株価が底を打った月、利益の底はまだ先にあった

株価の天井・底と、会社の利益の山・谷も並べてみます。

局面 会社 株価の天井 利益の山 株価の底 利益の谷
2018〜19年 マイクロン 2018年5月 2018年6〜8月期 営業利益率51.9% 2018年12月 2019年12月〜2020年2月期 9.2%
2018〜19年 SKハイニックス 2018年5月 2018年7〜9月期 営業利益率56.7% 2018年12月 2019年10〜12月期 3.4%
2018〜19年 サムスン電子 2017年10月 2018年7〜9月期 半導体の営業利益13.65兆ウォン 2018年12月 2019年7〜9月期 3.05兆ウォン
2021〜23年 マイクロン 2021年12月 2021年6〜8月期 35.7% 2022年12月 2022年12月〜2023年2月期 −62.4%
2021〜23年 SKハイニックス 2021年2月 2021年7〜9月期 35.3% 2022年12月 2023年1〜3月期 −66.9%
2021〜23年 サムスン電子 2021年2月 2021年7〜9月期 10.06兆ウォン 2022年9月 2023年1〜3月期 −4.58兆ウォン

※マイクロンは8月末前後の木曜日に終わる決算期の四半期(米国会計基準)、SKハイニックスは韓国の国際会計基準の連結で、どちらも営業利益率。サムスン電子はメモリー単独の利益を開示しておらず、2021年までは「半導体」、2022年からは「DS(半導体)」部門の営業利益。山・谷は四半期の値での当ブログの判定。

2018〜19年の底で目を引くのは、株価が安値をつけたときの利益の大きさです。SKハイニックスの株価が底をつけた2018年12月を含む10〜12月期の営業利益率は、44.6%もありました。利益の谷は、その1年後の2019年10〜12月期の3.4%です。

マイクロンも同じで、2018年12月を含む2018年12月〜2019年2月期の営業利益率は33.5%。谷は2019年12月〜2020年2月期の9.2%でした。株価は利益がまだ大きく残っているうちに底を打ち、利益が細っていく1年のあいだに上がり始めています。

2021〜23年は、少し形が違います。マイクロンとSKハイニックスの安値(2022年12月)は、赤字の四半期のさなかで、いちばん深い赤字の四半期の最中か直前でした。マイクロンの2022年12月〜2023年2月期の営業利益率は−62.4%、SKハイニックスの2023年1〜3月期は−66.9%です。サムスン電子の安値(2022年9月)は、半導体部門が赤字に転じる前でした。

つまり、利益の水準そのものは、株価の底の目印になりませんでした。1回目は利益がまだ高いうちに、2回目は赤字のさなかや赤字に転じる前に、株価は底を打っています。共通していたのは、どちらも価格の底より前だったことです(当ブログの見方)。

2018年の天井では、利益の山より株価が先でした。マイクロンとSKハイニックスの株価が5月に天井をつけた後の四半期に、利益率が最も高くなっています。サムスン電子の株価の天井(2017年10月)は、半導体の利益の山(2018年7〜9月期)より1年近く前でした。

天井での先行は2〜6か月と短く、2021年のマイクロンは4か月遅れた

図は、4つの株価を2015年1月=100にそろえ、縦軸を対数目盛りで描いたものです。灰色の帯がDRAM価格の天井・底の四半期、点が株価の天井・底の月で、下の段に先行の月数を並べ、大きな底の2回を太字にしています。2026年1月末の値は、SKハイニックスが1,908、マイクロンが1,417、SOX指数が1,225、サムスン電子が588です。

帯と点の位置を見比べると、点のほとんどが帯の左側、つまり価格の転換より前にあります。天井では、マイクロンとSKハイニックスが2018年に3か月、2024年に2か月先、SKハイニックスは2021年も6か月先でした。底での8〜11か月と比べると、天井での先行はずっと短いことが分かります。

例外が2021年のマイクロンです。DRAM価格の天井は2021年7〜9月期でしたが、マイクロンの月末終値の最高は2021年12月の93.15ドルで、4か月遅れでした。ただ、2021年2月にも91.53ドルとほぼ同じ水準をつけており、2月を天井とみれば6か月先になります。

同じ2021年12月には、SOX指数もその局面の高値をつけていました。半導体株全体が上がるなかで、マイクロンの株価も価格の天井を越えて高値を保った形です。どちらを天井とみるかで先行の月数が10か月も変わることは、月数を一つの数字で覚えないほうがよい理由の一つです(当ブログの見方)。

サムスン電子は天井での先行の幅が広く、2018年は10か月、2024年は1か月でした。サムスン電子は半導体のほかにスマホなどの事業も持つ会社で、株価はメモリーだけを映すものではありません。理由を示す資料はありませんが、メモリー専業の会社と同じ物差しでは測りにくい銘柄です(当ブログの見方)。

物差しをNANDの価格に替えると、月数も変わります。NANDの天井は2017年10〜12月期で、それに対しサムスン電子は1か月先、マイクロンとSKハイニックスは6か月遅れでした。NANDの底(2019年4〜6月期)に対しては、4つとも2018年12月の安値が5か月先です。どの価格と比べるかで、先行の月数は動きます。

天井から底まで株価は3〜5割下げ、価格の小さな一服でも同じくらい下げた

次に、天井から底まで、底から天井までの株価の騰落率です。同じころのDRAM価格の動きも、基準を明記して並べます。

区間(株価の天井・底) マイクロン SKハイニックス サムスン電子 SOX指数 同じころのDRAM価格(TrendForce)
底→天井(2015〜18年) +450.0% +242.1% +152.9% +132.5% 上昇9四半期(2016年7〜9月期〜2018年7〜9月期)、4GBモジュール価格+155.6%
天井→底(2017〜18年) −44.9% −35.2% −29.7% −17.6% 下落5四半期(2018年10〜12月期〜2019年10〜12月期)、−58.0%
底→天井(2018〜21年) +193.6% +133.9% +113.2% +241.6% 上昇3四半期(2021年1〜3月期〜7〜9月期)、+34.1%
天井→底(2021〜22年) −46.3% −47.0% −35.6% −41.5% 下落8四半期(2021年10〜12月期〜2023年7〜9月期)、−59.8%
底→天井(2022〜24年) +163.2% +215.3% +58.0% +137.2% 上昇4四半期(2023年10〜12月期〜2024年7〜9月期)、+76.9%
天井→底(2024〜25年) −41.5% −32.4% −37.5% −22.7% 汎用DRAMの一服3四半期(2024年10〜12月期〜2025年4〜6月期)、−12.7%(予測)
底→2026年1月 +439.2% +468.5% +206.3% +89.1% 汎用DRAMの急騰3四半期(2025年7〜9月期〜2026年1〜3月期)、+161.4%(予測)

※株価は会社ごとの天井・底の月末終値どうしの騰落率で、月は最初の表のとおり(会社ごとに違う)。DRAM価格は当ブログの連鎖計算(目安、予測と集計が混ざり、範囲は中央値)で、2016〜18年の上昇だけはTrendForceの4GBモジュール価格(連鎖計算では+110.4%)。株価と価格は区間も基準も違うので、同じ物差しとして比べない。

天井から底までの株価の下げは、3社とも29.7〜47.0%の範囲でした。マイクロンの下げの期間は、7か月(2018年)、12か月(2021〜22年)、10か月(2024〜25年)です。価格の下落が5四半期(15か月)、8四半期(24か月)続いたのと比べると、マイクロンの株価の下げは2回とも先に終わりましたが、先に始まったのは2018年だけで、2021年は価格の天井より4か月後に下げ始めています(期間は当ブログの計算)。

目を引くのは2024〜25年です。汎用DRAMの価格は3四半期の一服で、TrendForceの予測をつないだ目安は−12.7%でした。それでも3社の株価は32.4〜41.5%下げており、価格が6割近く下がった2回の大きな下落局面と、下げ幅が大きく変わりません。

当ブログの見方では、株価は下がり始めた時点で、それが小さな一服なのか大きな下落なのかを見分けられません。だからどちらでも同じくらい下げることがあります。株価の下げだけを見て「価格の大きな下落が来る」と読むのも、株価が戻ったから価格も大丈夫と読むのも、早すぎるかもしれません。

SOX指数の下げは、2018年が−17.6%、2024〜25年が−22.7%で、この2回はメモリー3社のほうが大きく下げました。一方、2018〜21年の上昇ではSOX指数の+241.6%が3社を上回っており、いつもメモリー株のほうが大きく動くわけではありません。

2025年の安値からの上昇は、過去の上昇局面より速い

2025年の安値から2026年1月末までの上昇率は、マイクロンが+439.2%(2025年4月の76.95ドル→414.88ドル)、SKハイニックスが+412.1%(2025年4月の177,500ウォン→909,000ウォン)でした。サムスン電子は+206.3%(2025年1月の52,400ウォン→160,500ウォン)、SOX指数は+89.1%です。

SKハイニックスは一服の底を2024年11月(159,900ウォン)につけており、そこからなら468.5%の上昇です。2015年以降のSKハイニックスの上昇局面は+133.9〜+242.1%でしたから、今回はそれを大きく上回っています。

速さも違います。マイクロンの2016〜18年の上昇+450.0%は、2016年3月から2018年5月まで26か月かかりました。今回の+439.2%は、2025年4月からわずか9か月です(月数は当ブログの計算)。4つの株価はそろって、2026年1月末に2015年以降の月末終値で最も高い水準にありました。

利益の側も、2018年の山を越えています。2018年の天井の四半期と比べると、マイクロンの2025年9〜11月期は売上高が1.62倍、営業利益が1.40倍です。ただし営業利益率は45.0%で、2018年の51.9%を下回っています。

SKハイニックスの2025年10〜12月期は、売上高が2.88倍、営業利益が2.96倍で、営業利益率58.4%は2018年の56.7%を上回りました。サムスン電子のDS部門の2025年10〜12月期の営業利益は16.4兆ウォンで、2018年の山の1.20倍です。

株価が価格や利益より先に走るのは、これまでの転換と同じ形です。今回の上昇は、価格の上昇の予測がまだ続いている最中のもので、TrendForceは2026年1月5日に、1〜3月期の汎用DRAMの契約価格を前期比55〜60%の上昇と予測していました。

利益が山にあるときほど、PERは低く見える

ここで、冒頭の「山頂の手前」の話に戻ります。株価を1株あたり利益で割ったPER(株価収益率)は、利益が大きいほど小さく出ます。メモリーのように利益が大きく振れる会社では、PERがいちばん低く見えるのは利益が山の近くにあるときで、それは株価の天井の近くでもありえます(当ブログの見方)。

2018年がその例です。マイクロンの株価は2018年5月に天井をつけ、12月までに44.9%下げました。その間の営業利益率は、2018年6〜8月期が2015年以降で最も高い51.9%、9〜11月期が47.5%です。利益が高いまま株価だけが下がれば、過去の利益で計算したPERはどんどん低くなります。

その後、2019年に利益は細り、2019年12月〜2020年2月期の営業利益率は9.2%まで下がりました。それでも株価は2018年12月の31.73ドルから上がり、2019年12月末には53.78ドルでした。利益が減っているのに株価が上がるとき、PERは逆に高く見えます。

PERの高い・低いだけで天井と底を判断しにくいのは、このためです。メモリー株では、利益の水準よりも、利益がこれから増えるのか減るのかという向きのほうが、株価の動きと重なっていました(当ブログの見方)。

いまの数字にも当てはめてみます。2026年1月30日のマイクロンの終値414.88ドルを、直近4四半期(2024年11月29日〜2025年11月27日)の希薄化1株利益の合計10.52ドルで割ると、実績のPERは39.4倍です。

一方、会社が2025年12月17日に示した、2025年11月28日に始まる四半期の1株利益の予想8.19ドル(米国会計基準、中央値)を4倍して割ると、12.7倍になります(いずれも当ブログの計算で、将来のPERを予想したものではありません)。同じ株価で、PERが約3倍違うわけです。

12.7倍のほうは、価格が上がった後の高い利益が1年続くと置いた計算です。2018年には、株価が天井をつけた後の四半期に利益率が最も高くなりました。低いほうのPERは、高い利益が続く前提の上に立つ数字だと読んでおきたいところです(当ブログの見方)。

用語メモ:PER(株価収益率)=株価÷1株あたり利益(EPS)。希薄化1株利益=将来増えうる株式も含めて計算した1株あたり純利益。実績PER=過去4四半期の利益で計算したPER。

投資の目線では、過去の先行を「時計」にせず、利益の向きと価格のサインを並べて見る

ここからは、この回の数字が、メモリー株を持っている人や眺めている人にとって何を意味するかを、アナリストの目線で整理します。売買の判断ではなく、銘柄の性格と確かめる点の話です。

まず性格です。メモリー株は、価格や利益の転換より数か月から1年近く先に動くことが多い株でした。裏を返せば、決算が好調なあいだに株価が下がり始め、決算が最悪のころに株価が上がり始めることがある、ということです。決算の見出しだけを追っていると、株価の動きが逆さまに見える場面があります。

2024〜25年の一服でも同じでした。株価の安値はSKハイニックスが2024年11月、サムスン電子が2025年1月、マイクロンが2025年4月で、TrendForceが2025年7〜9月期の汎用DRAMの契約価格を10〜15%の上昇と予測した2025年7月7日より前です。

汎用DRAMの上昇の予測が出る前に、株価は底を打っていたわけです。なお、HBMを含むDRAMでは、2025年3月25日に4〜6月期の上昇が予測されていました。

次に、いまの株価が何を前提にしているかです。2026年1月末の4つの株価は、2015年以降の月末終値で最も高い水準でした。会社予想を4倍したPERが12.7倍に見えるマイクロンでも、その数字は高い利益が1年続く前提に立っています(当ブログの見方)。

一方で、過去の先行の月数を、価格の天井のシナリオに当てはめて、株価の天井の月を出すことはしません。天井での先行は3社で−4〜+10か月と幅が広く、価格の天井の時期そのものも、幅のあるシナリオでしか示せないからです。価格の天井の時期は、次の暴落の時期を3つのシナリオで考える回で扱います。

では、何を確かめるか。価格の側では、スポット価格の勢いです。DDR4 8Gb(DRAMの一つ前の世代の規格DDR4の8ギガビット品)のスポット価格の週ごとの上昇率は、1月14日の+9.6%から1月27日の+2.0%へ縮みました。TrendForceは1月28日、「工場が調達を停止し、スポット取引が停滞している」(英文を当ブログが訳出)と伝えています。

会社の側では、次の決算の会社予想と設備投資の計画です。マイクロンは2025年12月17日の決算説明会で、2026年9月期の設備投資を約200億ドルとしました(第三者の書き起こしによる)。需要の側では、TrendForceが2026年1月15日に、2026年のスマホ生産の見通しを−2%から−7%へ引き下げています。

確かめる点 2026年1月時点の数字 当ブログの見方
株価の位置 4つとも2026年1月末が2015年以降の月末終値の最高(マイクロン414.88ドル、SKハイニックス909,000ウォン、サムスン電子160,500ウォン、SOX指数7,998.47) 過去の天井では株価が先に下がり始めた。ただし先行は−4〜+10か月と幅がある
利益とPER マイクロンの実績PER39.4倍、会社予想×4で12.7倍(2026年1月30日) 低いほうは高い利益が1年続く前提の数字
価格の勢い DDR4 8Gbスポットの週ごとの上昇率 +9.6%(1月14日)→+2.0%(1月27日)。1〜3月期の汎用DRAM契約価格の予測+55〜60%(1月5日) スポットの減速が一時的か続くかを週ごとに見る
供給と需要 マイクロンの設備投資 約200億ドル(2026年9月期、2025年12月17日)。2026年のスマホ生産の見通し−7%(1月15日) 供給を増やす計画と端末の弱さが、価格の予測にどう映るか

リスクも確かめておきます。一つ目は、天井から底までの3〜5割の下げです。価格の下落が小さかった2024〜25年にも、3社の株価は3割を超えて下げました。二つ目は、先行の月数が毎回違うことです。2021年のマイクロンのように、価格の天井より後に高値をつけた例もあります。

三つ目は、銘柄ごとの性格の違いです。サムスン電子はメモリー以外の事業も大きく、SOX指数は半導体株全体の動きを映します。円で米国株や韓国株を持つ場合は、株価に加えて為替も損益を動かします。どの性格の株を、どのくらいの振れを受け入れて持つのかは、投資の目的によって変わると思います。

メモリー株は価格より先に山を下り、先に登り始める。だから日付ではなくサインを並べる

この回で確かめたことを振り返ります。2015年からの7回の転換で、マイクロン、SKハイニックス、サムスン電子の株価は、21組のうち20組で価格より先に転換しました。大きな底では8〜11か月先、天井では多くが2〜6か月先で、2021年のマイクロンは例外でした。

天井から底までの下げは3〜5割で、価格の小さな一服でも同じくらい下げています。株価が底を打ったとき、利益はまだ高い水準のこともあれば、大きな赤字のさなかのこともありました。利益の水準やPERの高い・低いは、それだけでは天井や底の目印になりにくい、というのがこの回の読みです(当ブログの見方)。

これから見ていきたいのは、DRAMとNANDのスポット価格の週ごとの動き、TrendForceの次の四半期の契約価格の予測、各社の次の決算の会社予想と設備投資の計画、そしてメモリー株そのものの値動きです。株価が価格より先に動くなら、株価の変化は、それ自体が一つのサインになります。

大家業を長く続けていると、満室で家賃が上がっている年ほど、次の空室に備えておきたくなります。山頂がどこかは分からなくても、下りの道筋を先に確かめておくのは、悲観ではなく準備です。メモリー価格の天井のサインを点検する回、次の暴落の時期を3つのシナリオで考える回、その次の回復の時期を考える回もあわせてどうぞ。

 

※本記事は公表資料をもとにした情報提供を目的としたもので、特定の銘柄や商品の売買を勧めるものではありません。メモリー価格の時期やシナリオは、過去のデータに当ブログが置いた前提を当てはめた試算で、将来の価格・業績・株価を予想・保証するものではありません。

※数値は各社の決算資料・米国証券取引委員会(SEC)への提出書類・WSTS(世界半導体市場統計)・調査会社の公表資料などをもとに当ブログが集計・計算したもので、四捨五入の関係で合計が合わない場合があります。数値は2026年1月31日までに公表されたもので、時点は本文・表に記載しています。税制は2026年1月31日時点の法令にもとづき、令和8年度税制改正大綱の内容は今後の法改正で決まります。

出典・参考

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  • 株価:Yahoo Finance 000660.KS monthly history(Yahoo Finance、2015年1月〜2026年1月の月末終値を参照)https://finance.yahoo.com/quote/000660.KS/history/?period1=1420070400&period2=1769904000&frequency=1mo
  • 株価:Yahoo Finance 005930.KS monthly history(Yahoo Finance、2015年1月〜2026年1月の月末終値を参照)https://finance.yahoo.com/quote/005930.KS/history/?period1=1420070400&period2=1769904000&frequency=1mo
  • 株価指数:Yahoo Finance ^SOX monthly history(Yahoo Finance、2015年1月〜2026年1月の月末値を参照)https://finance.yahoo.com/quote/%5ESOX/history/?period1=1420070400&period2=1769904000&frequency=1mo
  • DRAM Contract Prices to Rise Over 10% Sequentially in Fourth Quarter as Memory Demand Stays Hot, Says TrendForce(TrendForce、2016年9月6日)https://www.trendforce.com/presscenter/news/20160906-9514.html
  • DRAM Products to See a Weak Price Trend in 4Q18 after Price Growth of Nine Consecutive Quarters(TrendForce、2018年8月16日)https://www.trendforce.com/presscenter/news/20180816-10039.html
  • Stagnant PC DRAM Contract Prices in August; TrendForce Anticipates Sliding Prices for 4Q18 Contracts(TrendForce、2018年9月3日)https://www.trendforce.com/presscenter/news/20180903-10046.html
  • A Sharper Price Decline of Nearly 20% Is Expected for 1Q19 in DRAM Market, Says TrendForce(TrendForce、2019年1月15日)https://www.trendforce.com/presscenter/news/20190115-10093.html
  • Decline in Q4 DRAM Contract Prices Lessens as Buying Momentum Recovers, Says TrendForce(TrendForce、2019年11月11日)https://www.trendforce.com/presscenter/news/20191111-10197.html
  • DRAM Industry’s Revenue Rises by 10% QoQ for 3Q21 Thanks to Slight Shipment Growth and Ongoing Quote Hikes, Says TrendForce(TrendForce、2021年11月16日)https://www.trendforce.com/presscenter/news/20211116-11007.html
  • Contract Prices Bottom Out in Q3, Reigniting Buyer Momentum and Boosting DRAM Revenue by Nearly 20%, Says TrendForce(TrendForce、2023年12月4日)https://www.trendforce.com/presscenter/news/20231204-11942.html
  • Server DRAM and HBM Continue to Drive Growth, 4Q24 DRAM Industry Revenue Increases by 9.9% QoQ, Says TrendForce(TrendForce、2025年2月27日)https://www.trendforce.com/presscenter/news/20250227-12492.html
  • Downstream Inventory Reduction Eases DRAM Price Decline in 2Q25(TrendForce、2025年3月25日)https://www.trendforce.com/presscenter/news/20250325-12528.html
  • Transition between DRAM Generations Drives Diverging 3Q25 Price Trends; Consumer DDR4 Prices Expected to Surge Over 40%(TrendForce、2025年7月7日)https://www.trendforce.com/presscenter/news/20250707-12633.html
  • Memory Makers Prioritize Server Applications, Driving Across-the-Board Price Increases in 1Q26(TrendForce、2026年1月5日)https://www.trendforce.com/presscenter/news/20260105-12860.html
  • TrendForce Forecasts Oversupply and Price Drop in 1Q18 NAND Flash Market, Production Capacity Expansion and Low Season are Main Causes(TrendForce、2017年12月11日)https://www.trendforce.com/presscenter/news/20171211-9927.html
  • Drops in 2Q NAND Flash Contract Prices Shrink Slightly Thanks to Demand Recovery and Production Capacity Adjustments, Says TrendForce(TrendForce、2019年3月20日)https://www.trendforce.com/presscenter/news/20190320-10114.html
  • Memory Spot Price Update – DRAM surges as sellers hold back inventory, mainstream DDR4 up nearly 10%(TrendForce News、2026年1月14日)https://www.trendforce.com/news/2026/01/14/insights-memory-spot-price-update-dram-surges-as-sellers-hold-back-inventory-mainstream-ddr4-up-nearly-10/
  • Memory Spot Price Update: DDR4/DDR5 Hit Highs, Buyers Hesitant; DDR3 Sees Uptick(TrendForce News、2026年1月28日)https://www.trendforce.com/news/2026/01/28/insights-memory-spot-price-update-ddr4ddr5-hit-highs-buyers-hesitant-ddr3-sees-uptick/
  • Price Hikes on New Models Weigh on Sales, Smartphone Production to Face Clear Headwinds from 2Q26(TrendForce、2026年1月15日)https://www.trendforce.com/presscenter/news/20260115-12880.html
  • 2023年3月期 第2四半期 連結決算概要(キオクシアホールディングス、2022年11月11日)https://www.kioxia-holdings.com/content/dam/kioxia-hd/shared/about/asset/Financial-Results-FY2022-2Q-ja.pdf
  • SK hynix Reports Third Quarter 2022 Results(SK hynix、2022年10月26日)https://news.skhynix.com/en/sk-hynix-reports-third-quarter-2022-results/
  • Micron Announces Further Actions to Address Market Conditions(Form 8-K Exhibit 99.1)(Micron Technology、2022年11月16日)https://micron.gcs-web.com/node/44266/html
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  • Micron Technology, Inc. Reports Results for the Second Quarter of Fiscal 2025(Form 8-K Exhibit 99.1)(Micron Technology、2025年3月20日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/723125/000072312525000006/a2025q2ex991-pressrelease.htm
  • MU Q1 2026 Earnings Call Transcript(platformaeronaut.com、第三者による書き起こし、2025年12月17日)https://transcripts.platformaeronaut.com/transcripts/MU-1Q26-transcript
  • SK하이닉스 2018년 3분기 경영실적 발표(SK hynix、2018年10月25日)https://news.skhynix.co.kr/3q-2018-business-performance/
  • SK하이닉스 2018년 경영실적 발표(SK hynix、2019年1月24日)https://news.skhynix.co.kr/2018-business-performance/
  • SK하이닉스 2019년 경영실적 발표(SK hynix、2020年1月31日)https://news.skhynix.co.kr/2019-business-performance/
  • SK하이닉스 2021년 경영실적 발표(SK hynix、2022年1月28日)https://news.skhynix.co.kr/2021-business-performance/
  • SK하이닉스 2023년 2분기 경영실적 발표(SK hynix、2023年7月26日)https://file.alphasquare.co.kr/media/pdfs/company-ir/20230726SK%ED%95%98%EC%9D%B4%EB%8B%89%EC%8A%A4_2023%EB%85%84_2%EB%B6%84%EA%B8%B0_%EA%B2%BD%EC%98%81%EC%8B%A4%EC%A0%81_%EB%B0%9C%ED%91%9C.pdf
  • SK hynix Announces FY25 Financial Results(SK hynix、2026年1月28日)https://news.skhynix.com/en/sk-hynix-announces-fy25-financial-results/
  • Samsung Electronics Earnings Release 2018 3Q(Samsung Electronics、2018年10月31日)https://images.samsung.com/is/content/samsung/assets/global/ir/docs/2018_3Q_conference_eng.pdf
  • Samsung Electronics Earnings Release 2019 4Q(Samsung Electronics、2020年1月30日)https://images.samsung.com/is/content/samsung/assets/global/ir/docs/2019_4Q_conference_eng.pdf
  • Samsung Electronics Earnings Release 2021 4Q(Samsung Electronics、2022年1月27日)https://images.samsung.com/is/content/samsung/assets/global/ir/docs/2021_4Q_conference_eng.pdf
  • Samsung Electronics Earnings Release 2023 2Q(Samsung Electronics、2023年7月27日)https://images.samsung.com/is/content/samsung/assets/global/ir/docs/2023_2Q_conference_eng.pdf
  • Samsung Electronics Announces Fourth Quarter and FY 2025 Results(Samsung Electronics、2026年1月29日)https://news.samsung.com/global/samsung-electronics-announces-fourth-quarter-and-fy-2025-results