東雲結子:先生、事務所の窓が結露でびっしょりです。ガラス一面に、うすーい水の膜ができていますよ。

税理士石井:冬の窓は、頼んでもいないのに毎朝せっせと成膜してくれますね。半導体の工場では、その膜をわざとつけるんです。ウェーハにうすい膜をつける装置を作っているのが、今回のKOKUSAI ELECTRICです。

東雲結子:膜の会社なんですね。私、窓ふき歴なら誰にも負けないので、「膜をはがす係」で雇ってもらえませんか?

税理士石井:ははは、はがす係の求人は、たぶん出ていないと思います。それより今回気になるのは株主のほうでして。上場した2023年10月に47.68%を持っていた大株主のKKRが、2025年7月の売却で10.60%まで減っているんです。

東雲結子:えっ、そんなに売ったんですか? 窓の外から「この家、寒いですよ」と貼り紙をされたみたいで、心配になります……。

税理士石井:そこが、いちばん早とちりしやすいところなんです。売った理由は、会社の開示には書かれていません。それに、大株主が持ち株を売ったお金は売った側に入るもので、会社の売上や利益がそれで変わるわけではないんです。

東雲結子:あっ……。窓の水滴を数えても、部屋の暖房がついているかどうかはわからない、ということですか?

税理士石井:うまいですね。大家業でも、前のオーナーが物件を手放したからといって、入居者の家賃が下がるわけではありません。見るべきは、家賃収入と経費と借入です。

東雲結子:じゃあ、KOKUSAIの「家賃収入」はどうなんでしょう。

税理士石井:2025年3月期、つまり2025年3月までの1年間の売上収益は2,389億円、営業利益率は21.5%でした。ただ、会社は2025年11月に今期の予想を引き下げています。買収の名残の「のれん」と借入も含めて、決算書を順番に読んでいきましょう。

連載の第6回は、KOKUSAI ELECTRIC(東証プライム、証券コード6525、3月決算)です。ウェーハに膜をつける成膜装置と、膜の質を整えるトリートメント装置、そして保守などのサービスだけを手がける、半導体製造装置の専業メーカーです。KOKUSAI ELECTRICの決算は、2021年3月期(2020年4月〜2021年3月)から国際会計基準(IFRS)で作られています。

この会社の決算書には、ほかの装置メーカーにはない「来歴」が刻まれています。旧日立国際電気の成膜の事業を、投資会社KKRのもとで引き継いだ会社として再出発し、2023年10月25日に上場しました。貸借対照表には今も買収で生まれたのれんが載っていて、上場後は、大株主のKKRと、半導体製造装置メーカーのアプライド マテリアルズ(AMAT)が段階的に持ち株を売ってきました。

材料は、2025年3月期(2024年4月〜2025年3月)の決算短信と決算説明資料、有価証券報告書、上場前の財務諸表、カットオフ時点で最新の2026年3月期中間期(2025年4〜9月、2025年11月11日発表)の決算短信と説明資料、そして大株主の異動に関するお知らせです。単位は断りがなければ億円で、百万円の値を四捨五入しています。

後半では、決算の数字を株式投資の銘柄選びにどうつなげるかも、アナリストの目線で整理します。大株主の売却が、株価の面では何を意味するのかも、そこで考えます。

この記事の要点 根拠となる数字
利益率は上場前より低く、今期は予想を下方修正 営業利益率33.7%(2021年3月期)→21.5%(2025年3月期)、通期の営業利益予想492億円→388億円
買収の名残は薄まったが、のれんは残る のれん591億円は不変、のれん+無形資産÷親会社持分は206.6%→53.3%
大株主の持ち株は減り、売上の約半分は中国向け KKR 47.68%→10.58%、AMAT 15.00%→10.22%、中国向け46.8%(仕向地、2025年3月期)
銘柄選びの目線:株価は今期の減益より先の回復を見ている 2025年の株価+156.2%、今期の純利益予想−22.5%、予想PER53.5倍

※のれん+無形資産÷親会社持分は2021年3月末→2025年9月末(当ブログの計算)。保有比率は2023年10月の上場時→2025年10月の異動の開示。

KOKUSAI ELECTRICは、ウェーハに膜をつける「成膜」に特化した装置メーカー

会社の決算説明資料は、主力のバッチ成膜装置を「多数のウェーハを一括処理するバッチ方式により成膜を行う装置」、枚葉トリートメント装置を「ウェーハを1枚単位で処理する枚葉方式により成膜後の膜質を改善する装置」と説明しています。バッチ成膜装置は、ALD(原子層堆積)とCVD(化学気相成長)という膜のつけ方に対応しています。

事業の区分(セグメント)は、半導体製造装置事業の一つだけです。複数の事業を持つ会社と違って、決算書の数字がそのまま半導体装置の稼ぎを表します。

会社は、バッチALDに対応する装置で2024年の世界シェア1位(調査会社TechInsightsのデータによる)、トリートメント装置でも同じく1位(調査会社Gartnerのデータによる)だとしています。シェアは公開情報と自社の売上にもとづく会社の推定で、バッチALD対応装置が70%超、枚葉トリートメント装置が50%超です。いずれも会社が示している主張で、当ブログが独自に確かめたものではありません。

売上の中身は、装置とサービス(部品、保守、アップグレードなど)に分かれます。2025年3月期は装置1,643億円(69%)、サービス746億円(31%)でした。会社が11月に示した2026年3月期の予想は装置1,399億円、サービス901億円で、サービスの比率は約39%に上がる計算です(当ブログの計算)。

サービスは、すでに顧客の工場で動いている装置から生まれる売上です。大家業でいえば、建物を引き渡したあとも入ってくる管理料や修繕の仕事に近い性格の収入だと私は見ています(当ブログの見方)。

主要な顧客の名前と金額は、上場前の財務諸表(2023年3月期まで)で確認できます。2023年3月期は、売上収益の10%以上を占める顧客がSamsung(540億円)、TSMC(305億円)、Micron(250億円)の3社で、合わせて売上の約45%を占めていました(割合は当ブログの計算)。2024年3月期以降の主要顧客は、この回で参照した資料では確認できませんでした。

用語メモ:成膜=ウェーハの表面にうすい膜をつける工程。ALD=原子の層を一層ずつ積むように膜をつける方式、CVD=ガスの化学反応で膜をつける方式。バッチ=多数のウェーハをまとめて処理する方式、枚葉=1枚ずつ処理する方式。IFRS=国際会計基準。

KOKUSAI ELECTRICの決算を5年で見ると、営業利益率は33.7%から21.5%に下がった

億円・% 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 1,780 2,454 2,457 1,808 2,389
売上総利益率 42.7% 43.6% 41.0% 41.5% 42.6%
研究開発費 76 99 124 127 156
研究開発費比率 4.2% 4.0% 5.1% 7.0% 6.5%
営業利益 600 707 561 307 513
営業利益率 33.7% 28.8% 22.8% 17.0% 21.5%
調整後営業利益(会社定義) — — — 378 578
親会社の所有者に帰属する当期利益 330 513 403 224 360
ROE(親会社所有者帰属持分当期利益率) 49.0% 55.7% 28.7% 12.8% 18.8%

※IFRS・連結。3月決算で、2021年3月期は2020年4月〜2021年3月(以下同じ)。以前は9月決算で、2019年10月〜2020年3月の6か月の変則期を経て3月決算に移ったため、表の5期はすべて12か月の年度です。2021年3月期の売上総利益は上場前の財務諸表による。2024・2025年3月期の研究開発費は決算説明資料の億円表示。調整後営業利益は会社の定義で、営業利益からその他の収益を引き、その他の費用、PPA償却、スタンドアローン関連費用、株式報酬費用(業績連動型の制度に係るものを除く)を足し戻したもの。

売上収益は、2022・2023年3月期に約2,450億円まで伸びたあと、2024年3月期に1,808億円へ26.4%減りました。2025年3月期は2,389億円まで戻っています。装置の需要の波が、売上にそのまま表れた形です(当ブログの見方)。

営業利益率は、2021年3月期の33.7%が5期で最も高く、売上が落ちた2024年3月期は17.0%、2025年3月期は21.5%でした。ただし2021年3月期の営業利益には、その他の収益166億円が含まれていて、これを除くと約24.4%です(当ブログの計算)。売上総利益率は41〜44%の範囲で大きくは動いていません。利益率の差は、売上の大きさに対して研究開発費などの費用がどれだけ重いかの違いから来ていると読めます(当ブログの見方)。

その研究開発費は、5年で76億円から156億円へと約2倍になり、売上に対する比率も4.2%から6.5%に上がりました。2026年3月期の中間期(2025年4〜9月)も87億円で、中間期の売上収益に対しては7.4%です(当ブログの計算。説明資料の億円表示による)。売上が伸び悩む時期にも、開発の手は緩めていないことがわかります。

ROE(自己資本に対してどれだけ利益を上げたか)は、2021・2022年3月期に49.0%・55.7%と非常に高い数字でした。これは、分母の自己資本が2021年3月末で649億円と小さかったことも効いています。借入が多く自己資本の薄い会社では、ROEは高く出やすいのです。

会社は、IFRSの営業利益とは別に、買収で計上した無形資産の償却(PPA償却、年59〜64億円)などを足し戻した調整後営業利益を開示しています。2025年3月期は578億円で、売上収益に対して24.2%でした(当ブログの計算)。この連載で他社と比べるときは、IFRSの営業利益(21.5%)を使います。

用語メモ:PPA償却=会社を買収したときに、顧客との関係や技術などを無形資産として計上し、それを年々費用にしていくもの。費用ですが、その年に現金が出ていくわけではありません。ROE=親会社の所有者に帰属する当期利益÷自己資本(期首と期末の平均)。

2026年3月期は中間期の営業利益が17.2%減り、会社は通期予想を引き下げた

億円・% 2025年3月期 中間期(2024年4〜9月) 2026年3月期 中間期(2025年4〜9月) 増減
売上収益 1,145 1,172 +2.3%
営業利益 274 227 −17.2%
営業利益率 24.0% 19.4% −4.6ポイント
調整後営業利益(会社定義) 307 253 −17.4%
親会社の所有者に帰属する中間利益 181 156 −13.8%
中国向けの比率(仕向地ベース) 50.0% 46.9% −3.1ポイント

※2025年11月11日発表の中間期決算短信による。

カットオフ時点で最新の決算は、2025年11月11日に発表された2026年3月期の中間期です。売上収益は2.3%増えましたが、営業利益は17.2%減の227億円でした。

しかもこの営業利益には、常備在庫品の評価減の見積方法を変えたことで、売上原価が18億円(1,837百万円)減った分が含まれています(会社の短信による)。見積りの変更で利益が押し上げられた分を頭の中で除くと、本業の利益の落ち込みは、表の数字よりもう少し大きかったことになります(当ブログの見方)。

四半期ごとに見ると、2025年4〜6月期の売上収益は518億円と落ち込み、7〜9月期は654億円に戻りました。調整後営業利益率は21.1%、22.1%で、1年前の4〜6月期の29.7%には届いていません(会社の説明資料、億円表示)。

億円 売上収益 営業利益 調整後営業利益 親会社の所有者に帰属する当期利益 1株配当
期初予想(2025年5月13日) 2,440 492 552 360 36円
修正後予想(2025年11月11日) 2,300 388 444 279 36円
2025年3月期の実績 2,389 513 578 360 37円

※予想はいずれも会社が示した2026年3月期(2025年4月〜2026年3月)の通期予想。8月の第1四半期発表では修正していません。修正後の予想EPS(1株当たり利益)は119.52円。

会社は2025年11月11日、通期予想を売上収益2,300億円、営業利益388億円に引き下げました。短信は理由を「販売時期のずれ込みによる一過性の売上減少が主要因」と説明しています。説明資料によれば、世界各国のNAND向けと中国地場のDRAM向けの装置販売が2027年3月期にずれ込むことが引き下げの理由で、NANDとロジック・ファウンドリー向けの下振れは、DRAM向けのアップグレード改造(サービス)の上振れで吸収する形です。

修正後の予想は、前期の実績と比べて売上収益が3.7%減、営業利益が24.4%減です(当ブログの計算)。中間期の実績を差し引くと、下期(2025年10月〜2026年3月)は売上収益1,128億円、営業利益161億円で、営業利益率は約14.3%という計画になります(当ブログの計算)。中間期の19.4%より、かなり低い水準です。

大家業でいえば、入居が決まっていた部屋の入居日が、来年度にずれたという知らせに近いと思います。家賃が消えたわけではなく、入る時期がずれた。ただ、その部屋が本当に来年度に埋まるのかは、次の決算で確かめるしかありません(当ブログの見方)。

なお会社は、前工程の装置市場(WFE)について、暦年で2025年は微増、2026年は約5%増を想定しているとしています(2025年11月の説明資料)。

用語メモ:DRAM=データを一時的に記憶する半導体メモリー、NAND=データを保存するフラッシュメモリー、ロジック=計算や制御を担う半導体、ファウンドリー=他社が設計した半導体の製造を請け負う会社。WFE=ウェーハに回路をつくる前工程の装置の市場。EPS=1株当たり利益。

KKR買収の名残:のれん591億円はそのまま、借入金は1,250億円から525億円へ

億円・% 2021年3月末 2023年3月末 2025年3月末 2025年9月末
資産合計 2,738 3,735 3,415 3,433
のれん 591 591 591 591
無形資産 751 630 541 520
借入金 1,250 975 582 525
現金及び現金同等物 400 1,061 448 438
親会社所有者帰属持分 649 1,609 1,962 2,083
親会社所有者帰属持分比率 23.7% 43.1% 57.4% 60.7%
(のれん+無形資産)÷持分 206.6% 75.9% 57.7% 53.3%

※2023年3月末の資産合計は有価証券報告書(第10期)の373,539百万円を使用。会社サイトに2024年2月に掲載された財務諸表では370,263百万円で、両者は一致しません(差の理由は未確認)。借入金はリース負債を除く。最下行は当ブログの計算。

のれんの由来から見ておきます。KKRは日立製作所と協議のうえ2017年2月にHKEホールディングスを設立し、同年12月にTOB(株式公開買付け)で旧日立国際電気を支配下に置きました。のれんと、顧客関係や技術などの無形資産は、このときに認識されたものです。2018年6月1日の会社分割で、成膜プロセスソリューション事業をKOKUSAI ELECTRICが引き継いでいます。

IFRSでは、のれんは毎年の償却をせず、価値が下がっていないかを確かめる減損テストを行います(会社の財務諸表の記載による)。そのためのれん591億円(59,065百万円)は、2018年10月1日のIFRS移行日から2025年9月末まで、まったく変わっていません。

2023年3月期の減損テストでは、回収可能価額(事業が将来生むお金から見た価値)が帳簿価額を4,950億円上回っていました。割引率が23.4ポイント上がるか、将来のキャッシュ・フローが73.6%減って、ようやく両者が等しくなる計算だと注記されています。2025年3月期の数値は、この回で参照した資料では確認できませんでした。

2021年3月末には、のれんと無形資産の合計が、親会社の持分の2倍を超えていました(206.6%)。それが2025年9月末には53.3%まで下がっています。のれんが減ったのではありません。無形資産の償却が進み、利益の積み上げで持分が649億円から2,083億円へ3倍超に増えたためです(当ブログの計算)。

借入の中身は、2023年3月期の財務諸表の注記でわかります。2021年3月24日付の借換え契約で、タームローンA 300億円、タームローンB 950億円(期日一括返済)、コミットメントライン100億円、期間は5年。金利はTIBOR(東京の銀行間の基準金利)に、レバレッジの水準に連動する上乗せ分を加えたものです。

この借入には財務コベナンツ(守るべき条件)が2つ付いていました。一定の調整を加えた営業利益が2期連続でマイナスにならないことと、連結の純資産を0円以上に保つことです。2025年3月期には600億円の長期借入と915億円の返済があり、借入金は582億円に減りました。新しい契約の条件は、この回で参照した資料では確認できませんでした。

現金から借入金を引いたネットキャッシュは、2023年3月末の86億円のプラスから、2025年3月末は135億円、2025年9月末は87億円のマイナスになっています(当ブログの計算、リース負債を除く)。2025年3月期に、借入の返済、自己株式の取得、配当、設備投資が重なりました。

大家業に置きかえると、のれんは、土地と建物の値打ちを超えて払った「買収のプレミアム」が帳簿にずっと残っている状態です。家賃が順調なうちは問題になりませんが、収益力が落ちれば評価を見直す(減損する)必要が出てきます。私はこの会社の貸借対照表を見るとき、まず持分に対するのれんの重さと、借入の条件を確かめるようにしています(当ブログの見方)。

用語メモ:のれん=会社を買収したとき、買った値段が、受け入れた資産から負債を引いた額を上回った部分。減損=資産の価値が下がったときに帳簿の金額を切り下げること。TOB=株式公開買付け。コベナンツ=借入契約で借り手が守る約束。ネットキャッシュ=現金及び現金同等物−借入金。

営業CFは2024年3月期に29億円まで細り、2025年3月期は自己株買いで還元が増えた

億円 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期 中間期
営業CF 511 736 300 29 385 169
設備投資(有形固定資産の取得) 33 31 68 115 255 67
FCF(営業CF−設備投資) 478 705 232 −86 130 102
配当金の支払 394 なし なし なし 67 44
自己株式の取得 — — — — 185 —
棚卸資産(期末) 387 516 672 877 832 893

※CFはキャッシュ・フロー。FCF(フリー・キャッシュ・フロー)は当ブログの計算。中間期は2025年4〜9月(棚卸資産は2025年9月末)。設備投資額は説明資料ベースでは205億円(2024年3月期)、203億円(2025年3月期)で、CFの支出とは時期がずれます。

営業CF(本業で稼いだ現金)は、2024年3月期に29億円しかありませんでした。売上が落ちたその年に、棚卸資産は672億円から877億円へ増えています。在庫として積み上がったお金は、売れるまで現金に戻ってきません(当ブログの見方)。

棚卸資産を売上原価で割った回転日数は、2024年3月期に302日、2025年3月期は221日でした(当ブログの計算)。2025年9月末の棚卸資産は893億円と、3月末より再び増えています。

設備投資(キャッシュ・フロー計算書の有形固定資産の取得)は、2025年3月期に255億円まで増え、FCFは130億円にとどまりました。2026年3月期の中間期は設備投資が67億円に減り、FCFは102億円です。

株主還元の歴史は、上場の前と後で分けて見る必要があります。上場前の2021年3月期には、KKRの保有下で394億円の配当を支払っていました。その年の当期利益330億円を上回る額です。同じ年に長期借入1,250億円と返済1,154億円があり、借換えと配当が同時に行われています。

上場後の配当は、2024年3月期の期末配当11円から始まりました。2025年3月期は年37円(中間18円+期末19円)、2026年3月期は年36円(中間18円+期末18円)の予想で、11月に利益予想を下げたときも配当予想は変えていません。

2025年3月期には、2024年7〜9月に自己株式505万8,400株を185億円で取得しています。配当の支払67億円と合わせた還元額は252億円で、当期利益に対する総還元性向は70.1%でした(当ブログの計算)。

方針について、会社は2025年5月の説明資料で「配当金は調整後当期利益ベースの配当性向20%超の年間36円を予想。」と書いています。調整後の当期利益で見た配当性向は、5月の20.9%から、11月の修正後予想では26.4%に上がりました。利益の予想が下がっても、配当は据え置いた形です。個人投資家の配当や売却益にかかる税金は、10社を比べる回でまとめて整理します。

大株主の動き:KKRは47.68%から10%台に、AMATも15.00%から10.22%に

日付 出来事 保有比率
2019年7月1日(米国時間) AMATがKKRから全株式を取得する最終契約を発表(当初の発表は現金22億ドル) —
2021年3月19日(米国時間) AMATが契約を解除。解除料1億5,400万ドルをKKRに現金で支払い —
2023年10月25日 東証プライムに上場。KKRが5,884万7,600株を売出し(公募なし) KKR 47.68%、AMAT 15.00%
2024年7月22日 KKRとKSP Kokusai Investments, LLCによる5,250万5,900株の売出しで、売出価格が4,578円に決定 売出し後の比率は単独の開示なし
2024年7〜9月 会社が自己株式505万8,400株を取得(185億円) —
2025年7月14日 KKRが証券会社経由で売却し、筆頭株主から第3位に KKR 23.48%→10.60%
2025年10月14日 AMATがゴールドマン・サックス証券に1,070万株を売却し、KKRが筆頭株主に AMAT 14.81%→10.22%、KKR 10.58%

※保有比率は大量保有報告書と、会社の主要株主の異動に関するお知らせ(2025年7月10日・10月10日公表、日付は異動日)による。2025年10月のKKRの10.58%は議決権ベースで、会社のお知らせには2025年9月30日時点の持株比率10.36%という記載もあります。両社とも売却後90日のロックアップ(追加の売却を控える約束)に合意。2024年7月の売出しは国内22,315,100株(KKR)と海外30,190,800株で、ほかに追加の売出し(オーバーアロットメント)が最大7,875,800株。

図の上段は、2021年3月期から2025年3月期までの売上収益(緑)と営業利益(灰色)に、2025年11月11日に引き下げた2026年3月期の会社予想(斜線、売上収益2,300億円・営業利益388億円)を並べたものです。2024年3月期の谷と、2026年3月期の予想で営業利益が388億円に下がる姿が見て取れます。

下段は、2023年10月の上場から2026年1月までの保有比率を、KKR(緑)とAMAT(濃い灰色)の階段状の線で示しています。KKRは上場時の47.68%から、2024年7月の売出しのあと23.48%(2025年7月のお知らせにある売却前の比率で、点線の区間)、2025年7月の売却で10.60%へ。AMATは15.00%から、2025年10月の売却で10.22%になりました。右端はKKR 10.58%、AMAT 10.22%です。

KOKUSAI ELECTRICの株主の歴史は、上場の前から動いていました。AMATは2019年7月、KKRから全株式を買い取る契約を発表しましたが、2021年3月に解除しています。AMATの日本語の発表は、理由を「中国規制当局からの承認が適時下りたとの確認が得られなかった」としていました。

上場時、KKRは5,884万7,600株を売り出し、保有比率は47.68%になりました。上場は売出しだけで、会社が新しい株を発行する公募はありませんでした。売出しで売られるのは既存の株主の株で、代金は売った株主に入ります。

AMATは、上場日の時点で15.00%を持っていました。大量保有報告書に書かれた保有目的は「事業関係のための長期投資」です。いつ、誰から取得したかは、この回で参照した資料では確認できませんでした。

KKRは2024年7月の売出しを経て、2025年7月には証券会社経由で売却し(買い注文は野村證券が集約)、23.48%から10.60%に下がりました。続いて2025年10月にはAMATが1,070万株を売り、14.81%から10.22%に。その結果、議決権ベースで10.58%のKKRが、再び筆頭株主になっています。

ここで大事なのは、会社の開示が売却の理由を書いていないことです。理由がわからない以上、大株主の売却を、そのまま業績の良し悪しと結びつけるのは早計だと私は考えます(当ブログの見方)。業績は業績として、決算書で確かめるべきものです。

共有名義の物件で、大口の共有者が持分を手放しても、その物件の家賃が変わるわけではありません。変わるのは、誰が大口の共有者として残るか、です。KKRとAMATの持ち分がどちらも10%前後まで下がり、上場時のように一つの株主が5割近くを持つ形ではなくなりました。

用語メモ:売出し=すでにある株を、持ち主が投資家に売ること。公募=会社が新しく株を発行して投資家に買ってもらうこと(会社にお金が入る)。大量保有報告書=上場会社の株を大量に持つ株主が、保有の状況を開示する報告書。ロックアップ=一定期間、追加で株を売らないという約束。

売上の約半分は中国向け。ただし「仕向地」と「中国地場」で数字が違う

% 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
中国向け(仕向地ベース) 30.2 37.9 33.8 46.1 46.8 中間期 46.9
中国地場向け(会社定義) — — — 44 44 予想 37

※仕向地ベースは出荷先の国で分けた地域別売上から当ブログが計算。中国地場は中国に本社を置くデバイスメーカー向けの比率で、会社の説明資料の値(2026年3月期は2025年11月時点の予想で、上期の実績41%、下期の想定32%)。

KOKUSAI ELECTRICの地域別売上は、装置を出荷した先の国(仕向地)で分けています。2025年3月期の中国向けは1,119億円で、売上収益の46.8%でした。2026年3月期の中間期も46.9%です。ほかは台湾17.6%、韓国15.9%、日本8.3%、米国6.3%などでした(2025年3月期、当ブログの計算)。

一方、会社が説明資料で使う「中国地場」は、中国に本社を置くデバイスメーカー向けの比率で、2025年3月期は44%です。中国に工場を持つ海外のメーカー向けの出荷は、仕向地ベースには入っても中国地場には入らない、といった違いがあると考えられます(当ブログの見方)。定義の違う2つの数字なので、他の記事や資料と比べるときは、どちらの数字かを必ず確かめてください。

中国地場の見通しについて、会社は2025年5月の資料で、暦年2025年の前工程の装置市場について「中国地場向けは前年比20~30%減を見込む。」と書いていました。11月の資料では、中国地場向けの売上予想を5月より40億円引き上げ、NAND向けでは想定以上に装置販売が増えたとしています(要旨)。2026年3月期の中国地場比率の予想は、5月の33%から11月には37%に上がりました。

世界の装置市場でも、中国は大きな買い手です。SEMI(半導体の製造装置・材料の業界団体)の集計をもとにすると、2024年の世界の半導体製造装置の販売額のうち、中国向けは42.3%でした(暦年の値で、会社の年度とは期間が違います)。

輸出規制について、有価証券報告書の事業等のリスクは「2022年10月7日付米国輸出管理規則(EAR)の改正公布により、米国製半導体製造装置について中国の特定の先端半導体メーカーへの輸出が禁止され」と記し、続けて日本の先端装置の輸出管理(2023年7月23日施行)にも触れています。経済産業省がこのとき追加した23品目のうち、11品目が成膜に関するものでした。

11月の説明資料には、輸出規制や、米国が2025年9月29日に発効させ11月10日から1年間停止した「50%ルール」(規制対象企業が50%以上を持つ会社にも同じ規制を広げる規則)への直接の言及はありません。

大家業でいえば、入居者の約半分が同じ国に関係する会社、という物件です。その国の制度や景気が変われば、入居も退去もまとまって動きます。中国向けの比率は、この会社の決算を読むうえで、いつも隣に置いておきたい数字です(当ブログの見方)。

2026年1月30日の株価で見ると、予想PERは53.5倍

項目 値 計算の前提
終値 6,400円 2026年1月30日(Yahoo!ファイナンス、二次資料)
時価総額 1兆4,940億円 自己株式を除く株数233,439,592株(2025年9月末)
予想PER 53.5倍 会社予想EPS 119.52円(2026年3月期、2025年11月11日公表)
予想PER(調整後EPSベース) 47.0倍 会社予想の調整後EPS 136.22円
PBR 7.17倍 1株当たり親会社所有者帰属持分892.35円(2025年9月末、当ブログの計算)
予想配当利回り 0.56% 年36円の予想
2025年の騰落率 +156.2% 2024年12月30日2,145円→2025年12月30日5,495円

※PER=株価÷1株当たり利益、PBR=株価÷1株当たり純資産(ここでは親会社所有者帰属持分)。株価は二次資料。2022年1月12日に1株を3株に分割していますが、上場前のため株価の比較には影響しません。

予想PER(株価収益率)53.5倍を逆さにすると、株価に対する今期の予想利益は約1.9%(当ブログの計算)。大家業でいえば、利回り1.9%の物件の値段がついている状態です。今期の利益だけでは説明しにくい値段で、先の利益の伸びを見込んだ水準だと読めます(当ブログの見方)。

2025年の1年間で、株価は2,145円から5,495円へ約2.6倍になりました。その一方で、会社は11月に今期の利益予想を引き下げています。2025年は、株価と今期の利益予想が別々の方向に動いた年でした。この数字は、割安・割高を判断するためのものではなく、今の株価がどんな利益を前提にしているかを測る物差しとして使ってください。

その「先」の目安として会社が示しているのが、中期目標です。売上収益3,300億円以上、調整後営業利益990億円以上(調整後営業利益率30%以上)、前提となる前工程の装置市場は1,200億ドル以上。ただし、目標の年度は資料に書かれていません。2025年3月期の実績は売上収益2,389億円、調整後営業利益率24.2%(当ブログの計算)でした。

株式投資の目線では、KOKUSAI ELECTRIC株は「今期の減益より先の回復」を映す株

ここからは、決算の数字を株式投資の銘柄選びにつなげます。KOKUSAI ELECTRICは、成膜とトリートメントの装置、そしてサービスだけを手がける専業で、売上の約半分が中国向けです。私はこの株を、前工程の装置市場(WFE)の波と中国の投資に賭ける株だと見ています(当ブログの見方)。

株価と利益の向きは、上場9社(この連載の10社から非上場の日立ハイテクを除く)の中でも両極端です。株価は2025年の1年間で156.2%上がり、9社で最も大きな上昇でした。

ところが今期(2026年3月期、2025年4月〜2026年3月)の純利益の予想は、2025年11月11日の修正後で279億円と、前期の360億円から22.5%減る見込みです。9社で最も大きな減益の予想です(当ブログの計算)。

2026年1月の上昇は16.5%で、9社の中央値22.8%を下回りました。株価と今期の利益が逆を向いているのは、株価が今期より先の回復を見ているためだと読めます(当ブログの見方)。会社は、ずれ込む装置の売上を2027年3月期と説明しています。

ただし、騰落率は暦年、利益の予想は4月から始まる年度で、期間は一致しません。2025年の上昇には、11月に予想を引き下げる前の期間も含まれています。

今の株価が前提にしていることを、倍率で確かめます。予想PER53.5倍は9社の中央値38.8倍を上回り、益回り(PERの逆数)は1.87%です。会社が予想を開示している調整後EPS(136.22円)で見ても47.0倍です(当ブログの計算)。

大家業でいえば、今期の予想利益が毎年同じだけ続くとして、その53.5年分の値段がついた物件です。しかも今期の家賃は前期より減る見込みなので、家賃が戻り、さらに伸びる前提の値段だと私は見ています(当ブログの見方)。

PBRは7.17倍で、ちょうど9社の中央値です。PBRをPERで割った予想EPS÷BPS(1株当たりの予想利益÷1株当たり純資産)は13.4%で、2025年3月期のROE18.8%を下回ります。このPBRは、利益の回復でROEが戻ることを前提にしていると読めます(当ブログの見方)。

純資産の中身にも注意が要ります。のれんと無形資産の合計は、2025年9月末で親会社の持分の53.3%にあたります。この記事で買収の名残と呼んできた部分で、PBRの土台の半分強は、工場や現金ではなくのれんと無形資産だということです(当ブログの見方)。

FCF利回りは0.87%(2025年3月期のFCF130億円)で、9社の中央値2.22%を下回ります。株主還元利回りは1.69%で中央値と同じ水準ですが、還元額252億円のうち185億円は2024年7〜9月の自己株式の取得で、配当だけでは67億円です。ネットキャッシュは135億円のマイナス(2025年3月末)でした。

用語メモ:益回り=1株当たりの予想利益÷株価で、PERの逆数。予想EPS÷BPS=今期の予想EPSを今の1株当たり純資産で割った値で、PBR÷PERと同じ。FCF利回り=最新通期のFCF÷時価総額。株主還元利回り=最新通期の配当金の支払額と自己株式の取得額の合計÷時価総額。中央値=値を小さい順に並べたときの真ん中の値。景気敏感株=業績が景気や業界の投資の波で大きく動く株。

銘柄選びでは、ずれ込んだ売上と大株主の持ち株、中国向けを確かめたい

景気の波への強さを見ると、この株の性格がはっきりします。2024年3月期は、売上が26.4%減った年に、営業利益は45.2%減りました。減った売上649億円に対し、営業利益は253億円減っています。減った売上の約4割が、そのまま利益の減少になった計算です(Δ営業利益÷Δ売上は39.0%、当ブログの計算)。

翌2025年3月期は、売上が32.1%増え、営業利益は66.9%増えました。売上の変化が利益で大きく増幅される、景気敏感株の典型的な形です(当ブログの見方)。大家業でいえば、空室率が景気で大きく動く物件で、満室の年と空室の年とで手取りがまるで違います。

5期の営業利益率は17.0%〜33.7%の幅ですが、最も高い2021年3月期にはその他の収益166億円が含まれ、除くと約24.4%です(当ブログの計算)。利益の回復を考えるときは、33.7%を本来の山と見ないほうがよいと思います(当ブログの見方)。

株価が動くきっかけとしては、まず会社の予想の動きです。今期は期初の予想を8月の第1四半期では変えず、11月に引き下げました。次の決算では、下期の計画と、2027年3月期にずれ込むとした売上の時期や規模の説明が、前提を確かめる材料になります。

もう一つは株の需給です。大株主の売却は会社の利益を変えませんが、市場で売買される株を増やします。2025年10月の開示の時点で、KKRは10.58%(議決権ベース)、AMATは10.22%を持っていて、残る持ち株の行方は、株価の面では見ておきたい点です(当ブログの見方)。両社が合意した売却後90日のロックアップは、2026年1月までにいずれも期間が過ぎた計算です(当ブログの計算)。

配当予想36円は、利益予想を下げたときも据え置かれました。中国地場の比率(下期は32%の想定)や、1年間停止されている米国の「50%ルール」の扱いも、前提を変え得る材料です。

下振れのリスクは、本文の数字から四つ挙げられます。一つ目は中国向けの比率で、仕向地ベースで46.8%(2025年3月期)です。成膜は、日本が2023年に輸出管理に加えた23品目のうち11品目を占めます。二つ目は、ずれ込んだ売上が本当に2027年3月期に戻るかです。

三つ目はのれん591億円です。2023年3月期の減損テストでは余裕が大きかったものの、収益力が落ちれば減損の可能性が出てきます。ネットキャッシュのマイナスと借入の条件も、あわせて効いてきます。四つ目は在庫で、2025年9月末の棚卸資産は893億円と、3月末より再び増えました(当ブログの見方)。

銘柄選びで確かめる点 この会社の数字(時点) 当ブログの見方
株価と今期の利益の向き 2025年の株価+156.2%、今期の純利益予想−22.5%(2025年11月11日の修正後) 株価は今期より先の回復を見ている
株価が前提にしている利益 予想PER53.5倍(調整後EPSでは47.0倍)、益回り1.87%(2026年1月30日) 2027年3月期以降に利益が戻り、伸びることが前提
景気の波への強さ 2024年3月期に売上−26.4%、営業利益−45.2% 売上の減少が利益に大きく響く景気敏感株
中国と輸出規制 中国向け46.8%(仕向地、2025年3月期)、中国地場は下期32%の想定 規制や中国の投資の変化が、まとめて効きやすい
株主と財務 KKR 10.58%・AMAT 10.22%(2025年10月)、のれん591億円、ネットキャッシュ−135億円(2025年3月末) 株の需給と、のれん・借入の重さを確かめたい

投資家の目的に当てはめると、配当の利回りを重視するなら、予想配当利回り0.56%は、予想配当のある8社で最も低い水準です(当ブログの計算)。株主還元利回り1.69%も、自己株買いのあった年の値だということは頭に入れておきたいところです。

その一方で、2025年に株価が約2.6倍になったように、値動きの大きな株です。業界の波と中国の投資の変化を、値動きとして受け入れられるかが、この株を選ぶかどうかの分かれ目になると思います(当ブログの見方)。

予想PER53.5倍という水準が妥当かどうかは、2027年3月期以降に利益がどこまで戻ると見るか、そして中期目標の売上収益3,300億円以上にどれだけの確からしさを置くかで、答えが変わります。その目標の年度が資料に書かれていないことも、前提に入れておきたい点です。

次の決算で見たいのは、ずれ込んだ売上と下期の利益率

次の決算(2026年3月期の第3四半期)でまず確かめたいのは、下期の計画です。売上収益1,128億円、営業利益率約14.3%という下期の計画(当ブログの計算)に対して、10〜12月期がどう出るか。そして、2027年3月期にずれ込むとした装置の売上について、会社が時期や規模をどう説明するかです。

次に、中国地場の比率です。会社は下期を32%と想定しています。仕向地ベースの中国向けの比率とあわせて、どこまで下がるのか、あるいは11月の資料のように想定を上回るのかを見たいところです。

3つ目は、棚卸資産です。2025年9月末に893億円と再び増え、中間期には評価減の見積方法も変わりました。在庫が売上に変わっていけば営業CFは戻りますし、積み上がれば2024年3月期のように現金が細ります。

最後に、貸借対照表と株主です。借入金525億円とネットキャッシュのマイナスがどう動くか、のれん591億円の減損テストがどう開示されるか。大株主の保有比率の変化は、会社の主要株主の異動に関する開示で確かめられます。

KOKUSAI ELECTRICの決算書は「本業の膜」と「買収の膜」を分けて読む

KOKUSAI ELECTRICの決算書には、2つの膜が重なっています。一つは本業の膜です。成膜とトリートメントの装置、そしてサービスで、2025年3月期は売上収益2,389億円、営業利益率21.5%。2026年3月期は、一部の装置の売上がずれ込むとして、営業利益の予想を388億円に引き下げました。

もう一つは、買収の膜です。のれん591億円、PPA償却、借入とそのコベナンツ、そして大株主の段階的な売却。2021年3月末からの4年半で、のれんと無形資産の重さは持分の2倍超から半分ほどに下がり、KKRとAMATの持ち分はどちらも10%前後になりました。

大家業を長く続けていると、物件の来歴と、今の家賃の実力を分けて考える癖がつきます。前のオーナーがいくらで買い、いくらで手放したかは、物件の歴史としては大切ですが、来月の家賃を決めるのは入居者と建物の状態です。KOKUSAI ELECTRICの決算書も、来歴の膜を一枚はがしてから、本業の数字を見ると、ずいぶん読みやすくなるはずです。

中国向けの比率が同じく高い東京エレクトロンを取り上げる回、10社を利益率や財務の強さで比べる回もあわせてどうぞ。

 

※本記事は公表資料をもとにした情報提供を目的としたもので、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。業績や株価に関する記述は当ブログの見方や試算で、将来の業績や株価を予想・保証するものではありません。

※数値は各社の決算短信・決算説明資料などの公表資料をもとに当ブログが集計・計算したもので、四捨五入の関係で合計が合わない場合があります。数値は2026年1月31日までに公表されたもので、時点は本文・表に記載しています。税制は2026年1月31日時点の法令にもとづき、令和8年度税制改正大綱の内容は今後の法改正で決まります。

出典・参考

  • 2026年3月期 第2四半期(中間期)決算短信〔IFRS〕(連結)(KOKUSAI ELECTRIC、2025年11月11日)https://www2.jpx.co.jp/disc/65250/140120251111595378.pdf
  • 2026年3月期 第2四半期(2025年4〜9月)決算説明資料(KOKUSAI ELECTRIC、2025年11月11日)https://www2.jpx.co.jp/disc/65250/140120251111595671.pdf
  • 2025年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)(KOKUSAI ELECTRIC、2025年5月13日)https://www2.jpx.co.jp/disc/65250/140120250513544637.pdf
  • 2025年3月期(2024年4月〜2025年3月)決算説明資料(KOKUSAI ELECTRIC、2025年5月13日)https://www2.jpx.co.jp/disc/65250/140120250513544797.pdf
  • 2024年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)(KOKUSAI ELECTRIC、2024年5月10日)https://www2.jpx.co.jp/disc/65250/140120240510589706.pdf
  • 有価証券報告書 第10期(2025年3月期)(KOKUSAI ELECTRIC、2025年6月26日)https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100W60T.pdf
  • 連結財務諸表(2019年9月期・2020年3月期・2021年3月期)(KOKUSAI ELECTRIC、2024年2月に会社サイトに掲載)https://www.kokusai-electric.com/sites/default/files/2024-02/Consolidated_Financial_Statementsfor_2019_2020_2021.pdf
  • 連結財務諸表(2022年3月期・2023年3月期)(KOKUSAI ELECTRIC、2024年2月に会社サイトに掲載)https://www.kokusai-electric.com/sites/default/files/2024-02/Consolidated_Financial_Statementsfor_2022_2023.pdf
  • 新規上場会社概要 KOKUSAI ELECTRIC(日本取引所グループ、2023年9月21日)https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/jr4eth0000002nzm-att/10KOKUSAIELECTRIC-Outlinet2.pdf
  • 大量保有報告書(KKR HKE Investment L.P.)(EDINET、2023年10月30日)https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100S393.pdf
  • 大量保有報告書(Applied Materials Europe B.V.)(EDINET、2023年10月27日)https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100S2YJ.pdf
  • 臨時報告書(海外売出し)(KOKUSAI ELECTRIC、2024年7月10日)https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100U10Y.pdf
  • 売出価格等の決定に関するお知らせ(KOKUSAI ELECTRIC、2024年7月22日)https://www.kokusai-electric.com/sites/default/files/2024-07/announcement_240722.pdf
  • 主要株主となる株主の異動に関するお知らせ(KOKUSAI ELECTRIC、2025年7月10日)https://www2.jpx.co.jp/disc/65250/140120250710511123.pdf
  • 主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ(KOKUSAI ELECTRIC、2025年10月10日)https://www2.jpx.co.jp/disc/65250/140120251010571889.pdf
  • アプライド マテリアルズ KOKUSAI ELECTRIC の買収契約解除を発表(アプライド マテリアルズ、2021年3月30日)https://www.appliedmaterials.com/jp/ja/news-and-media/press-releases/termination-kokusai-electric-acquisition-jp.html
  • Applied Materials to Acquire Kokusai Electric(Applied Materials、2019年7月1日)https://ir.appliedmaterials.com/news-releases/news-release-details/applied-materials-acquire-kokusai-electric/
  • 「輸出貿易管理令別表第一及び外国為替令別表の規定に基づき貨物又は技術を定める省令の一部を改正する省令」等の改正の概要について(経済産業省、2023年5月23日)https://www.meti.go.jp/policy/anpo/law_document/shourei/20230523_gaiyo.pdf
  • SEAJ Reports 2024 Worldwide Semiconductor Equipment Figures(日本半導体製造装置協会(SEAJ)、2025年4月10日)https://seaj.or.jp/english/statistics/7837439569645.pdf
  • Expansion of End-User Controls To Cover Affiliates of Certain Listed Entities(Federal Register、2025年9月30日)https://www.federalregister.gov/documents/2025/09/30/2025-19001/expansion-of-end-user-controls-to-cover-affiliates-of-certain-listed-entities
  • One-Year Suspension of Expansion of End-User Controls for Affiliates of Certain Listed Entities(Federal Register、2025年11月12日)https://www.federalregister.gov/documents/2025/11/12/2025-19846/one-year-suspension-of-expansion-of-end-user-controls-for-affiliates-of-certain-listed-entities
  • Yahoo!ファイナンス「KOKUSAI ELECTRIC(6525)時系列株価」(2024年12月〜2026年1月の終値)https://finance.yahoo.co.jp/quote/6525.T/history?from=20241201&to=20260131&timeFrame=m