東雲結子:先生、冬タイヤに替えるついでに車検もお願いしたら、点検の明細がタイヤの溝より細かく並んで返ってきました。ブレーキ、ライト、排ガス……私の財布も点検してほしいです。

税理士石井:ははは、財布の点検は、明細を見た瞬間に終わっていますね。半導体にも出荷の前に一つずつ調べる「テスター」という装置があって、米国のテラダインはその大手です。

東雲結子:AIのチップがどんどん作られたら、検査場も大行列ですね。整備工場の前で、チップが順番待ちのクラクションを鳴らしているイメージです!

税理士石井:クラクションは鳴りませんが、行列は数字に出ています。会社は2025年10〜12月期の売上を9.2億〜10億ドルと見込んでいて、中央値なら7〜9月期より約25%多い計算です。

東雲結子:じゃあ、どの検査も大繁盛ですね?

税理士石井:うーん、そこが落とし穴です。メモリー向けのテスターは、2025年4〜6月期に半導体テストの売上の12.4%まで縮みました。しかも同じ会社にロボットの事業があって、こちらは赤字なんです。

東雲結子:えっ、車検場の奥で、ロボットが自分の点検代を払えずにいる……。

税理士石井:ふふ、近いかもしれませんね。それでも株価は先を見ていて、実績PER(株価が1株利益の何年分か)は87.7倍、会社予想の四半期×4なら48.0倍。大家業でいえば、リフォーム前の家賃で利回りを出すか、リフォーム後の募集家賃で出すかの違いです。

東雲結子:なるほど……。同じ物件でも、どの家賃で測るかで利回りが倍近く変わるんですね。

税理士石井:ええ。この回は、テストの中身の入れ替わり、ロボットの赤字、手元資金の減り方、そして株価が何を前提にしているかを、決算書から確かめていきましょう。

連載の第8回は、米国のテラダインです。テラダインの決算を読むと、売上の4分の3以上が半導体テスト、つまり出来上がったチップが正しく動くかを調べるテスターの事業です。ほかに防衛・航空宇宙向けなどの試験装置(Product Test)と、ロボティクスの事業を持ち、Nasdaq(米国の株式市場)に上場しています。

決算は米国会計基準(US GAAP)の連結で、決算期は12月31日に終わる暦年、四半期末は日曜日です。2026年1月31日までに公表された最新の決算は、2025年10月28日発表の2025年7〜9月期(2025年6月30日〜9月28日)。最新の通期は2024年12月期(2024年1月1日〜12月31日)です。会社はあわせて、10〜12月期(2025年9月29日〜12月31日)の売上高とEPSの予想を示しました。10〜12月期と2025年通期の決算は1月31日より後の発表なので、この記事には含めていません。

材料は、決算発表、年次報告書(10-K)、四半期報告書(10-Q)、決算説明会の書き起こし(第三者によるもの)です。金額は百万ドルの開示を億ドルに四捨五入し、主な数字はGAAPで、会社定義のnon-GAAPは名前を付けて分けます。後半では、決算の数字を株式投資の銘柄選びの目線でも読みます。

この記事の要点 根拠となる数字
稼ぎ頭は半導体テストで、SoC向けが伸びた 半導体テスト6.06億ドル(2025年7〜9月期、売上の78.8%)、SoC 4.40億ドル(前年同期比+12.2%)
メモリー向けは縮み、ロボティクスは赤字が続く メモリー比率26.5%(2024年7〜9月期)→12.4%(2025年4〜6月期)→21.1%(7〜9月期)、ロボティクスの税引前損益マイナス0.18億ドル(7〜9月期)
会社は10〜12月期に大きな増収を予想、手元資金は減った 売上予想9.2億〜10億ドル(7〜9月期の実績は7.69億ドル)、ネットキャッシュ11.44億ドル(2020年末)→2.27億ドル(2025年9月28日)
銘柄選びの目線:PERは物差しで倍近く違う 実績PER87.7倍、会社予想×4で48.0倍、2025年の株価+53.7%

テラダインは半導体テスターの大手、売上の4分の3以上を半導体テストで稼ぐ

テラダインの事業は3つです。半導体テストは、SoC向け、メモリー向け、ISTの3区分。Product Testは防衛・航空宇宙、基板の試験(Production Board Test)、無線の試験(Wireless Test)、光集積回路の試験(Photonic IC Test)をまとめ、2025年3月に独立したセグメントになりました。ロボティクスは、Universal RobotsとMiRの事業です。

2024年12月期の売上高28.20億ドルのうち、半導体テストが21.24億ドルで75.3%、ロボティクスが3.65億ドル(12.9%)、Product Testにあたる区分が3.31億ドル(11.7%)でした(比率は当ブログの計算)。2025年7〜9月期は半導体テストが売上の78.8%を占めています。

顧客は集中しています。10-Kによると、2024年は上位5社で売上の36%、サムスン電子が推定で12.5%(半導体テストと無線の試験)でした。10%以上だった顧客は、2023年がテキサス・インスツルメンツ(10%)、2022年がクアルコム(約11%)です。

10-Kは半導体テストの競合として、アドバンテスト(Advantest Corporation)、SPEA、Cohuなどを挙げていますが、シェアの数字は会社資料にありません。アドバンテストは、日本の半導体製造装置メーカーを読む別の連載で取り上げる会社です。

市場の大きさは、業界団体SEMIの数字が目安です。SEMIは2025年12月16日、テスト装置の世界の販売額が2025年に112億ドル(前年比+48.1%)になると予測しました。会社自身は2025年1月30日の説明会で、2025年のSoCテスターの市場を47億〜51億ドル、メモリーテスターを13億〜15億ドルと見ていました(第三者の記録による)。

大家業でいえば、テスターは新築の引き渡し前の検査です。どれだけ良い建物でも、検査を通らなければ引き渡せません。2024年12月期にはサービスの売上も5.25億ドル(売上の18.6%、当ブログの計算)あり、こちらは管理受託の手数料に近い位置づけです(当ブログの見方)。

用語メモ:テスター(ATE=自動試験装置)=出来上がったチップに電気信号を流し、正しく動くかを調べる装置。SoC(システム・オン・チップ)=計算などの機能を1つのチップにまとめた半導体。IST(Integrated System Test、統合システムテスト)=半導体テストのうち、システムレベルテスト(SLT、パッケージ後のチップを実際の使用に近い環境で動かす試験)の装置と、ハードディスク(HDD)の試験装置の区分(10-Kの説明による)。US GAAP=米国の会計基準。non-GAAP=株式報酬などを除いて会社が独自に計算した利益。10-K・10-Q=米国の上場会社が提出する年次・四半期の報告書。

テラダインの決算を5年で見ると、売上の山は2021年の37.03億ドル

億ドル(%) FY2020 FY2021 FY2022 FY2023 FY2024
売上高 31.22 37.03 31.55 26.76 28.20
うちサービス 4.31 5.06 5.64 5.80 5.25
粗利率(%) 57.2 59.6 59.2 57.4 58.5
研究開発費 3.75 4.28 4.41 4.18 4.61
研究開発費比率(%) 12.0 11.5 14.0 15.6 16.3
営業利益 9.28 12.01 8.32 5.01 5.94
営業利益率(%) 29.7 32.4 26.4 18.7 21.1
純利益 7.84 10.15 7.16 4.49 5.42
希薄化後EPS(ドル) 4.28 5.53 4.22 2.73 3.32
ROE(%) 35.5 42.5 28.5 18.0 20.3

※US GAAP・連結。FY2020は2020年12月期(2020年1月1日〜12月31日)で、以下同じ。研究開発費は会社の表示ではEngineering and development。比率とROE(純利益÷期首・期末の平均の自己資本、FY2020は期末で近似)は当ブログの計算。FY2024の営業利益は事業売却益0.571億ドルを含む。

5年の山は2021年12月期で、売上高37.03億ドル、営業利益率32.4%でした。2023年12月期には売上高が26.76億ドルと2021年比27.7%減り、営業利益は5.01億ドルと58.3%減っています(当ブログの計算)。売上の減り方より、利益の減り方がずっと大きい形です。

2024年12月期は売上高が前期比5.4%増の28.20億ドル、営業利益率は21.1%でした。ただ、この営業利益にはDIS(Device Interface Solutions)事業をTechnoprobeに売った売却益0.571億ドルが入っています。これを除くと営業利益率は約19.0%です(当ブログの計算)。

研究開発費は売上が減った2023年も4.18億ドルと小幅な減少にとどめ、2024年は4.61億ドル、売上の16.3%まで上がりました。賃貸経営に置き換えると、家賃が下がった年にも、次の募集に向けた改装費を削らなかった形。利益の振れを大きくする費用ですが、次の山で効く準備でもあると私は見ています(当ブログの見方)。

用語メモ:粗利率(売上総利益率)=(売上高−売上原価)÷売上高。EPS=1株あたり純利益で、希薄化後EPSは将来増えうる株式も含めて計算した値。ROE(自己資本利益率)=純利益÷自己資本。

四半期で見ると、2025年4〜6月期を底に7〜9月期は7.69億ドルへ戻った

四半期 売上高 粗利率(%) 営業利益 営業利益率(%) 純利益 GAAP EPS(ドル) non-GAAP EPS(ドル)
2024年1〜3月期 6.00 56.6 0.78 13.0 0.64 0.40 —
2024年4〜6月期 7.30 58.3 2.10 28.8 1.86 1.14 —
2024年7〜9月期 7.37 59.2 1.52 20.6 1.46 0.89 0.90
2024年10〜12月期 7.53 59.4 1.54 20.4 1.46 0.90 0.95
2025年1〜3月期 6.86 60.6 1.21 17.6 0.99 0.61 —
2025年4〜6月期 6.52 57.2 0.91 13.9 0.78 0.49 0.57
2025年7〜9月期 7.69 58.4 1.45 18.9 1.20 0.75 0.85
2025年10〜12月期(会社予想) 9.20〜10.00 — — — — 1.12〜1.39 1.20〜1.46

※US GAAP・連結。金額は億ドル(EPSを除く)。四半期末は日曜日で、月は目安(例:2025年7〜9月期は6月30日〜9月28日)。2024年10〜12月期は通期から1〜9月を引いて計算。2024年4〜6月期の営業利益はDISの売却益を含む。2024年10〜12月期のEPSは2025年1月に公表された値。non-GAAPの「—」は、この回で参照した資料から取れていない期。10〜12月期は2025年10月28日の会社予想で、粗利率の予想はない。

図は、2024年1〜3月期から2025年7〜9月期までの四半期の売上高を、半導体テスト(濃い色)、Product Test(薄い色)、ロボティクス(灰色)に分けて積み上げた棒です。単位は億ドルで、小数第1位に丸めています。合計は6.0億ドルから7.7億ドルの間で動き、右端の斜線の棒が10〜12月期の会社予想(中央値9.6億ドル、縦線が9.2億〜10.0億ドルの幅)です。

半導体テストは、2025年4〜6月期の4.9億ドルから7〜9月期の6.1億ドルへ戻り、図の期間で最も大きい四半期になりました。7〜9月期の売上高は7.69億ドルで、前期比18.0%増、前年同期比4.3%増です(当ブログの計算)。営業利益率は18.9%で、4〜6月期の13.9%から戻りましたが、2024年7〜9月期の20.6%には届いていません。

CEO(最高経営責任者)は2025年10月28日の決算発表で、「半導体テスト部門の7〜9月期の売上は、想定を上回った」と述べ、「AI関連のテストの需要は、計算向け、ネットワーク向け、メモリー向けのいずれでも力強さを保っている」としています(いずれも会社資料の英文を当ブログが訳出)。

半導体テストの中身が入れ替わり、メモリー向けは12.4%まで縮んだ

四半期 SoC メモリー IST 半導体テスト計 Product Test ロボティクス メモリー比率(%)
2024年1〜3月期 3.02 1.10 0.23 4.35 0.77 0.88 25.3
2024年4〜6月期 4.14 1.29 0.17 5.60 0.80 0.90 23.0
2024年7〜9月期 3.92 1.50 0.26 5.69 0.80 0.89 26.5
2024年10〜12月期 4.29 1.13 0.19 5.61 0.94 0.98 20.1
2025年1〜3月期 4.06 1.09 0.27 5.43 0.74 0.69 20.2
2025年4〜6月期 3.97 0.61 0.34 4.92 0.85 0.75 12.4
2025年7〜9月期 4.40 1.28 0.38 6.06 0.88 0.75 21.1

※金額は億ドル(百万ドルの開示を四捨五入。内訳の和が合計と合わない場合がある)。2025年の10-Qの区分(Product Testを分けた後の区分)による。2024年10〜12月期は通期から1〜9月を引いて計算。メモリー比率=メモリー÷半導体テスト計で、当ブログの計算。

半導体テストの中で伸びたのはSoC向けです。2025年7〜9月期のSoCは4.40億ドルで前年同期比12.2%増、1〜9月の累計でも12.2%増えました(当ブログの計算)。ISTも1〜9月の累計で約5割増えています。

一方、メモリー向けは1〜9月の累計で23.3%減りました(当ブログの計算)。半導体テストに占める比率は2024年7〜9月期の26.5%から、2025年4〜6月期に12.4%まで下がり、7〜9月期は21.1%に戻っています。CEOは2025年10月29日の説明会で、「2025年のメモリーテストの市場全体は、2桁台前半の減少になるというのが最善の見立てだ」と述べました(第三者の書き起こしを当ブログが訳出)。

ただし、HBMについては強気の言葉もあります。CEOは同じ説明会で、「当社のMagnum 7Hは複数の世代に対応する製品で、HBMの性能テストで差別化できている」と説明しています(第三者の書き起こしを当ブログが訳出)。メモリー向けは四半期で0.61億〜1.50億ドルと振れが大きく、1四半期の数字だけで流れを判断しにくい区分です(当ブログの見方)。

物件にたとえるなら、事務所ビルの中で、テナントの入れ替わりが起きている状態です。同じ「半導体テスト」という建物でも、SoC向けの区画が埋まり、メモリー向けの区画が一時的に空いた。建物全体の稼働率だけでなく、区画ごとの入居を見ておきたいところです。

用語メモ:HBM(広帯域メモリー)=DRAMのチップを何段も積み重ねて高速にしたメモリーで、AI向けの半導体と組み合わせて使う。

ロボティクスは赤字が続き、会社も「売上を予測する力は限られる」と説明

ロボティクスの売上は2024年10〜12月期の0.98億ドルから、2025年1〜3月期に0.69億ドルへ落ち、7〜9月期は0.75億ドルでした。前年同期比では15.3%減です(当ブログの計算)。年間の税引前損益は2020年のマイナス0.24億ドルから、2023年はマイナス0.54億ドル、2024年はマイナス0.78億ドルへ赤字が広がりました。

2025年7〜9月期のセグメント別の税引前損益は、半導体テストが1.51億ドル(売上の24.9%)、Product Testが0.16億ドル、ロボティクスがマイナス0.18億ドル(売上のマイナス23.4%)です(比率は当ブログの計算)。1〜9月の累計では、ロボティクスの赤字は0.73億ドルで、前年同期の0.56億ドルより広がっています。

会社は10-Kで、「2024年は産業オートメーションの市場がとても弱く、ロボティクスの売上は前年を下回った」と説明しました(会社資料の英文を当ブログが訳出)。CEOは2025年10月29日の説明会で、「今年を通じて、売上を予測する力がやや限られていることがわかった」と述べています(第三者の書き起こしを当ブログが訳出)。

大家の感覚でいえば、本業の賃貸ビルは好調なのに、別に持っている駐車場の事業が毎年赤字という形です。金額は半導体テストの利益に比べれば小さいものの、利益の足を引っ張る区画であることは変わりません(当ブログの見方)。

10〜12月期の会社予想は売上9.2億〜10億ドル、GAAP EPSは1.12〜1.39ドル

項目(2025年10〜12月期) 会社予想(2025年10月28日) 中央値 7〜9月期の実績 前年同期の実績
売上高 9.20億〜10.00億ドル 9.60億ドル 7.69億ドル 7.53億ドル
GAAP EPS 1.12〜1.39ドル 1.255ドル 0.75ドル 0.90ドル
non-GAAP EPS 1.20〜1.46ドル 1.33ドル 0.85ドル 0.95ドル

※中央値は当ブログの計算。粗利率の予想は示されていない。10〜12月期は2025年9月29日〜12月31日。2026年1月31日時点で、これが最新の会社予想。

売上の中央値9.60億ドルは、7〜9月期より24.8%多く、前年同期より27.5%多い計算です。予想の下限の9.20億ドルでも、7〜9月期より19.6%の増収になります(当ブログの計算)。GAAP EPSの中央値1.255ドルは、7〜9月期の0.75ドルの約1.7倍です。

会社の見方は強気です。CEOは2025年10月29日の説明会で、計算向け(コンピュート)について「2025年下期の売上の見通しは、わずか3か月前の想定より50%以上高い」と述べ、「2026年は6か月前より強く見えており、2025年からのしっかりした成長を示す材料がそろっている」とも語りました(いずれも第三者の書き起こしを当ブログが訳出)。

この予想どおりなら、2025年通期の売上高は30.27億〜31.07億ドルで、2024年より7.3〜10.2%多くなります。一方、四半期のGAAP EPSを単純に足すと2.97〜3.24ドルで、2024年の3.32ドルを下回る計算です(いずれも1〜9月の実績に予想を足した当ブログの計算で、会社の予想値ではありません。EPSの和は株数の変化で厳密には合いません)。

賃貸にたとえると、満室に近づく見込みは示されたものの、年間の手取りで見るとまだ前の年に届かない形です。10〜12月期の実績は次の決算で公表されるもので、この記事には含まれていません。会社予想は実績ではないことは、ここで念を押しておきます。

中国比率は13.3%で、四半期の国別は開示されていない

顧客の所在地による売上の比率(%) FY2020 FY2021 FY2022 FY2023 FY2024
中国 14.9 17.1 15.6 11.8 13.3
台湾 37.7 30.2 19.9 14.4 21.3
韓国 12.5 13.6 17.3 14.7 24.7
米国 10.3 10.6 14.9 16.2 13.3
日本 4.6 4.5 5.2 10.5 5.7

※10-Kの顧客の所在地(customer site)による国別売上から当ブログが計算。四半期の国別は開示されず、10-Qはアジア太平洋・米州・欧州などの3区分のみ。

中国の比率は5年で11.8〜17.1%の範囲で、2024年12月期は13.3%でした。この連載で取り上げる米国の前工程の装置メーカー、アプライド マテリアルズ(以下アプライド)、ラムリサーチ(以下ラム)、KLA(ケーエルエー)の最新通期の中国比率は30.0〜33.7%で、テラダインはかなり低い水準です(各社で地域の基準は違います)。

2024年は韓国が24.7%、台湾が21.3%で、アジアの大口顧客の比重が高い年でした。2025年7〜9月期は、アジア太平洋が売上の79.7%を占めています(当ブログの計算)。

輸出規制について10-Kは、「2024年12月2日、当社の顧客と見込み顧客の一部が、米商務省のエンティティー・リストなどの対象に加えられた」と記しています(会社資料の英文を当ブログが訳出)。影響の金額は示されておらず、2025年10月29日の説明会でも中国への言及はありませんでした(第三者の書き起こしによる)。

用語メモ:エンティティー・リスト=米商務省が、米国製品の輸出に許可が必要な相手として指定する企業などのリスト。

手元資金は2020年末の15.54億ドルから4.27億ドルへ、自社株買いを加速

億ドル(%) 2020年末 2021年末 2022年末 2023年末 2024年末 2025年9月28日
現金・有価証券 15.54 15.00 10.05 9.37 7.24 4.27
有利子負債 4.10 1.08 0.50 0.00 0.00 2.00
ネットキャッシュ 11.44 13.92 9.55 9.37 7.24 2.27
棚卸資産 2.22 2.43 3.25 3.10 2.99 3.67
在庫日数(日) 61 59 92 99 93 —
自己資本比率(%) 60.4 67.3 70.0 72.4 76.0 68.6

※US GAAP・連結。現金・有価証券は長期の有価証券を含む。2020〜2022年の有利子負債は転換社債(2023年12月に満期)、2025年9月28日は回転信用枠からの借入。ネットキャッシュ、在庫日数(期末の棚卸資産÷売上原価×365)、自己資本比率は当ブログの計算。

億ドル(%) FY2020 FY2021 FY2022 FY2023 FY2024
営業CF 8.69 10.98 5.78 5.85 6.72
設備投資 1.85 1.33 1.63 1.60 1.98
FCF(営業CF−設備投資) 6.84 9.66 4.15 4.26 4.74
FCFマージン(%) 21.9 26.1 13.1 15.9 16.8
配当の支払 0.67 0.66 0.70 0.68 0.76
自社株買い 0.89 6.00 7.52 3.97 1.99
総還元性向(%) 19.8 65.6 114.9 103.6 50.7

※FCFはこの連載の全社で同じ定義。総還元性向=(配当の支払+自社株買い)÷純利益で、当ブログの計算。

ネットキャッシュは2020年末の11.44億ドルから、2025年9月28日に2.27億ドルまで減りました。2025年には回転信用枠から2.00億ドルを借り、9月28日時点で返していません。自己資本比率も76.0%(2024年末)から68.6%に下がっています。

大きいのは自社株買いです。2025年1〜9月の取得は5.19億ドルで、前年同期の0.55億ドルの約9倍でした。CFO(最高財務責任者)は説明会で「2025年は、株主価値をさらに高めるために、短期的に自社株買いを加速する機会があると判断した」と述べています(第三者の書き起こしを当ブログが訳出)。

自社株買いの枠は2023年1月に承認された20億ドルで、2025年9月28日までに11.234億ドル(1,080万株)を使い、残りは約8.77億ドルです(当ブログの計算)。配当は四半期0.12ドル(2024年から)で、2024年の配当性向は14.5%でした。配当性向の目安など、会社が掲げる還元方針の文言は、この回で参照した資料では確認できませんでした。

お金の使い道は還元だけではありません。2024年5月にはDIS事業をTechnoprobeに0.85億ドルで売り、同時にTechnoprobe株の10%を4.831億ユーロ(5.241億ドル)で取得しました。2025年はInfineonのテスター技術を0.183億ドル(1月31日)、Quantifi Photonicsを約1.272億ドル(5月31日)で取得しています。

2025年7〜9月期は、営業CFが0.49億ドルにとどまり、設備投資0.467億ドルを引くとFCFはほぼゼロでした。棚卸資産は2024年末の2.99億ドルから3.67億ドルへ22.9%増えています(当ブログの計算)。大家業でいえば、預金を取り崩して持分の買い戻しを急ぎ、同じ時期に短期の借入も始めた形です(当ブログの見方)。

受注残は報告セグメントで2023年末の11.25億ドルから2024年末に11.62億ドル、契約負債(前受金)は1.37億ドルから1.48億ドルでした。四半期の受注・受注残は、この回で参照した資料から取れていません。

用語メモ:FCF(フリー・キャッシュ・フロー)=営業CFから設備投資を引いた、会社が自由に使えるお金の目安。営業CF=本業で稼いだ現金。回転信用枠=決められた枠の中で、必要なときに借りて返せる銀行の融資枠。契約負債(前受金)=商品を引き渡す前に受け取った代金。

2026年1月30日の株価で見ると、実績PER87.7倍、会社予想×4では48.0倍

指標 値 前提
株価(終値) 241.05ドル 2026年1月30日、Nasdaq(株価サイトの値で二次資料)
時価総額 377.5億ドル(約5.80兆円) 発行済株式数156.608百万株(2025年10月27日)。円は2026年1月30日の三菱UFJ銀行の仲値(TTM)153.66円で当ブログが換算
実績PER 87.7倍 直近4四半期(2024年9月30日〜2025年9月28日)のGAAP希薄化後EPSの合計2.75ドル
会社予想×4のPER 48.0倍 10〜12月期のGAAP EPSの会社予想の中央値1.255ドル×4(参考値)
2024年通期のEPSで見たPER 72.6倍 2024年のGAAP希薄化後EPS3.32ドル
益回り 1.14% 1÷実績PER
PBR 13.9倍 1株あたり純資産17.35ドル(2025年9月28日の自己資本)
配当利回り 0.20% 四半期配当0.12ドル×4
FCF利回り 1.26% 2024年のFCF
株主還元利回り 0.73% 2024年の配当の支払と自社株買い
2025年の株価騰落率 +53.7% 2024年12月31日125.92ドル→2025年12月31日193.56ドル
2026年1月の株価騰落率 +24.5% 2025年12月31日→2026年1月30日

※当ブログの計算。PERの倍率はいずれも予想ではない。会社定義のnon-GAAPのEPSの会社予想(中央値1.33ドル)×4では45.3倍。

同じ株価なのに、PERは48.0倍から87.7倍まで開きます。実績PERの分母2.75ドルは、0.90ドル、0.61ドル、0.49ドル、0.75ドルの4四半期の合計です。会社予想の1.255ドルは1四半期だけでその約46%にあたり、4倍すると5.02ドルになります(当ブログの計算)。

利益が増えている途中では、実績PERは利益の小さい過去の四半期を含むので高く出ます。会社予想×4は、10〜12月期の予想の利益が1年続くと仮定するので低く出ます。どちらも予想ではなく、前提を変えた物差しです(当ブログの見方)。

用語メモ:PER(株価収益率)=株価÷1株あたり利益。益回り=1÷PERで、株価に対する利益の割合。PBR(株価純資産倍率)=株価÷1株あたり純資産(BPS)。FCF利回り=最新通期のFCF÷時価総額。株主還元利回り=最新通期の配当の支払と自社株買いの合計÷時価総額。TTM(仲値)=銀行が外貨を売る相場と買う相場の中間の値。

株式投資の目線では、テラダインの株価はAI向けテストの伸びが続くことに賭けている

ここからは、決算の数字を株式投資の銘柄選びにつなげます。売上の4分の3以上が半導体テストで、その中心はSoC向け。私はこの株を、AI向けのチップの検査需要が続くことに賭ける株だと見ています(当ブログの見方)。メモリー向けの波と、赤字のロボティクスがそこに重なります。

株価と利益の向きは、そろっていません。株価は2025年に53.7%上がりましたが、直近4四半期のGAAP EPS2.75ドルは2024年通期の3.32ドル(DISの売却益を含む)より17.2%少なく、純利益も4.43億ドルと18.3%少ない水準です(当ブログの計算)。騰落率は暦年、利益は2025年9月までの4四半期で期間はずれますが、株価は過去の利益より、10〜12月期の会社予想と2026年を見ていると読めます(当ブログの見方)。

今の株価が前提にしていることを、倍率で確かめます。実績PER87.7倍は、この連載の10社の中央値52.0倍を大きく上回り、益回り1.14%は中央値1.93%を下回ります。一方、会社予想×4の48.0倍は、同じ基準(次の四半期のGAAP EPSの会社予想×4)のラム43.2倍、KLA40.3倍(対象の四半期は2026年1〜3月期)に近い水準まで下がります。

PBR13.9倍は10社の中央値18.9倍を下回ります。PBRをPERで割ると実績のEPS÷BPSは15.8%で、2024年のROE20.3%も10社の中央値31.5%を下回ります。高いPERに比べてPBRが低めなのは、今の資本の効率がまだ低い位置にあることの表れで、株価は効率の回復を前提にしていると私は見ています(当ブログの見方)。

お金の面では、FCF利回り1.26%(中央値1.74%)、株主還元利回り0.73%(中央値1.36%)、配当利回り0.20%(中央値0.43%)と、いずれも中央値を下回ります。2025年は自社株買いを加速しましたが、株主還元利回りは2024年の実額で計算しているため、その加速はまだ表れていません。

用語メモ:EPS÷BPS=PBR÷PERと同じ値で、利益で見た資本の効率の目安。中央値=値を小さい順に並べたときの真ん中の値。

銘柄選びでは、10〜12月期の着地と、メモリーとロボティクスの戻りを確かめたい

景気の波への強さを見ると、営業利益率は2021年の32.4%から2023年の18.7%まで13.7ポイント下がりました。営業利益が最も大きく減ったのは2022年から2023年で、39.8%減です。四半期でも、営業利益率は2024年7〜9月期の20.6%から2025年4〜6月期の13.9%まで動きました。

株価が動くきっかけは、まず次の決算です。10〜12月期の売上が9.2億〜10億ドル、GAAP EPSが1.12〜1.39ドルの会社予想にどう着地するか、そして2026年1〜3月期の予想がどこに置かれるかが、株価の前提を確かめる材料になります(当ブログの見方)。ほかに、AI向けの計算用チップやHBMの検査の需要、メモリーの市場、ロボティクスの赤字の行方、自社株買いの続き方も前提を動かします。

下振れのリスクは四つあると考えます。一つ目は顧客の集中で、上位5社で売上の36%、サムスン電子だけで推定12.5%(2024年)です。二つ目はメモリー向けの振れで、四半期で半導体テストの12.4%から26.5%まで動きました。

三つ目はロボティクスで、2024年の税引前損益はマイナス0.78億ドル、会社自身が売上の予測は限られると述べています。四つ目は手元資金で、ネットキャッシュは2.27億ドルまで減り、短期の借入もあります。会社予想×4で48.0倍に見えても、予想の利益が1年続く前提が崩れれば、物差しは実績PERの側に戻ります(当ブログの見方)。

銘柄選びで確かめる点 この会社の数字(時点) 当ブログの見方
株価と利益の向き 2025年の株価+53.7%、2026年1月+24.5%/直近4四半期のGAAP EPSは2024年比−17.2% 株価は過去の利益より、会社予想と2026年を見ている
利益に対する株価の水準 実績PER87.7倍・益回り1.14%(10社の中央値52.0倍・1.93%)、会社予想×4で48.0倍(ラム43.2倍、KLA40.3倍、2026年1月30日) 物差しで倍近く違う。予想の利益が続くかで意味が変わる
PBRとROE PBR13.9倍(中央値18.9倍)、EPS÷BPS15.8%、2024年のROE20.3% 資本の効率の回復が前提
株主に戻すお金 配当利回り0.20%、FCF利回り1.26%、株主還元利回り0.73%(2024年の実額)、2025年1〜9月の自社株買い5.19億ドル 配当より自社株買いが中心。2025年は手元資金を使って加速
景気の波への強さ 営業利益率32.4%(2021年)→18.7%(2023年)、営業利益は2022年→2023年に39.8%減 売上の減り方以上に利益が減る株
先行きの見え方 10〜12月期の会社予想 売上9.2億〜10億ドル、GAAP EPS1.12〜1.39ドル(2025年10月28日) 四半期ごとの会社予想が物差しになる

この株の性格が合うかどうかは、投資の目的で分かれます。配当で手取りを積み上げたい人にとって、配当利回り0.20%は物差しとして小さな数字です。この株の値動きを左右しているのは、配当よりAI向けテストの伸びと利益の振れです(当ブログの見方)。

四半期ごとの会社予想を追い、メモリーとロボティクスの振れも含めて受け止められるか。それが、この株を選ぶかどうかの分かれ目になると思います。

日本の個人が持つ方法も確かめておきます。テラダインはNasdaq上場の米国株で、SBI証券の米国株の取扱市場にはNasdaqが入っています(2026年1月版の説明書)。ただし、銘柄ごとの取扱いは各社の一覧で確かめてください。配当には米国で原則10%(日米租税条約の限度税率)の税金がかかり、外国税額控除やNISAでの扱いは、10社を比べて外国株の配当の税金を取り上げる回で整理します。

用語メモ:外国税額控除=外国で引かれた税金を、日本の税金から差し引ける制度。

テラダインの決算は、「検査の行列」がどこまで続くかを四半期ごとに確かめる

テラダインの決算は、売上の4分の3以上を半導体テストで稼ぎ、その中でSoC向けが伸び、メモリー向けが縮むという入れ替わりの途中にあります。会社は10〜12月期に売上9.2億〜10億ドルを見込み、株価はその先を見て、実績PER87.7倍の水準にあります。

次の決算で確かめたいのは、まず10〜12月期の実績が会社予想に届いたか、そして2026年1〜3月期の予想です。あわせて、メモリー向けの比率が戻るか、ロボティクスの赤字が縮むか、ネットキャッシュと借入がどう動くかを見ておきたいところです。

大家業を長く続けていると、入居の申込みが重なった月ほど、次の空室の時期を考えておきたくなります。検査の装置も同じで、行列ができている今こそ、その行列がどれだけ続くかを確かめる意味があると私は思います。前工程の装置メーカーやHBMの装置メーカーを取り上げる回、10社を比べる回もあわせてどうぞ。

 

※本記事は公表資料をもとにした情報提供を目的としたもので、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。業績や株価に関する記述は当ブログの見方や試算で、将来の業績や株価を予想・保証するものではありません。

※数値は各社の決算資料・年次報告書・米国証券取引委員会(SEC)への提出書類などの公表資料をもとに当ブログが集計・計算したもので、四捨五入の関係で合計が合わない場合があります。数値は2026年1月31日までに公表されたもので、時点は本文・表に記載しています。円換算は2026年1月30日の為替レートによる参考値です。税制は2026年1月31日時点の法令にもとづき、令和8年度税制改正大綱の内容は今後の法改正で決まります。

出典・参考

  • Teradyne Reports Third Quarter 2025 Results(Form 8-K Exhibit 99.1)(Teradyne、2025年10月28日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/97210/000119312525254602/ter-ex99_1.htm
  • Teradyne Reports Fourth Quarter 2024 Results(Form 8-K Exhibit 99.1)(Teradyne、2025年1月29日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/97210/000095017025010781/ter-ex99_1.htm
  • Form 10-Q(quarter ended September 28, 2025)(Teradyne、2025年10月30日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/97210/000119312525258477/ter-20250928.htm
  • Form 10-Q(quarter ended June 29, 2025)売上の分解(Teradyne、2025年8月1日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/97210/000095017025101248/R52.htm
  • Form 10-Q(quarter ended March 30, 2025)売上の分解(Teradyne、2025年5月2日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/97210/000095017025062503/R49.htm
  • Form 10-K(fiscal year ended December 31, 2024)(Teradyne、2025年2月20日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/97210/000095017025023784/ter-20241231.htm
  • Form 10-K(fiscal year ended December 31, 2022)(Teradyne、2023年2月22日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/97210/000119312523044711/R4.htm
  • Form 10-K(fiscal year ended December 31, 2021)貸借対照表(Teradyne、2022年2月23日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/97210/000119312522049828/R2.htm
  • SEC XBRL companyconcept API(Teradyne、CIK 97210、2026年1月31日以前の提出分)https://data.sec.gov/api/xbrl/companyconcept/CIK0000097210/us-gaap/Revenues.json
  • Teradyne Q3 2025 earnings call transcript(ai、第三者による書き起こし、2025年10月29日)https://roic.ai/quote/TER/transcripts/2025-year/3-quarter
  • Teradyne Q4 2024 earnings call transcript(bullfincher、第三者による記録、2025年1月30日)https://bullfincher.io/companies/teradyne/earnings-call/fy2024-q4
  • Global Semiconductor Equipment Sales Projected to Reach a Record of $156 Billion in 2027, SEMI Reports(SEMI、2025年12月16日)https://semi.org/en/semi-press-release/global-semiconductor-equipment-sales-projected-to-reach-a-record-of-156-billion-dollars-in-2027-semi-reports
  • 株価:Yahoo Finance TER Historical Data(2024年12月31日・2025年12月31日・2026年1月30日の終値)https://finance.yahoo.com/quote/TER/history/
  • 外国為替相場 2026年1月30日(三菱UFJリサーチ&コンサルティング、2026年1月30日)https://www.murc-kawasesouba.jp/fx/past/index.php?id=260130
  • 外国株式取引に関する説明書(インターネット取引)(SBI証券、2026年1月)https://search.sbisec.co.jp/v2/popwin/info/home/bm/bm_260124_4_foint.pdf