東雲結子:先生、家電量販店に行ってきました! 春節のニュースを見たばかりだったせいか、中国メーカーのロボット掃除機や冷蔵庫ばかり目に入って、気づいたら同じ売り場を三周していました。

税理士石井:三周ですか。展示のロボット掃除機より、東雲さんのほうがよく売り場を回っていますね。

東雲結子:えへへ。それで思いついたんです。家電でこれだけ中国メーカーが増えたなら、半導体を作る装置も同じはず。北方華創は売上が4年で約4.9倍ですって。もう株を買うしかありません!

税理士石井:うーん、その勢いはわかります。ただ、北方華創も日本の証券会社で扱いを確認できていませんし、もう一社の中微公司は上海の科創板という市場の株で、日本の個人が買える経路が、当ブログの調べでは見つからないんです。

東雲結子:えっ、商品は棚に並んでいるのに、レジがないお店……。

税理士石井:ははは、言い得て妙です。しかも北方華創の決算書では、お客さんから先に受け取ったお金、つまり契約負債(前受金)が、2024年末の62.2億元から2025年9月末の47.0億元に減っています。中微公司は同じ9か月で25.9億元から43.9億元に増えました。

東雲結子:同じ中国の装置メーカーなのに、前受金の流れが逆向きなんですね。

税理士石井:そうなんです。大家業でいえば、入居申込みの手付金が減ってきたのに資材置き場の在庫は積み上がっている工務店と、手付金がどんどん集まっている工務店。どちらも今期の売上は伸びていても、来年の仕事の見え方は違いますよね。

東雲結子:なるほど……。売上の伸びだけ見てレジを探しに走るのは、早すぎました(汗)。

税理士石井:ええ。今日は2社の5年分の決算と2025年の数字、前受金と在庫、輸出規制、それに日本から買えるかどうかまで、順番に確かめていきましょう。

連載の第9回は、中国の半導体製造装置メーカー2社、北方華創(NAURA)と中微公司(AMEC)です。北方華創は深圳証券取引所のメインボード(証券コード002371)、中微公司は上海証券取引所の科創板(688012)に上場しています。どちらも12月期(1〜12月)で、中国企業会計準則の連結で決算を出しています。

数字は2026年1月31日までに公表されたものです。北方華創は2025年1〜9月の三季度报告(2025年10月31日)が最新で、2025年通期の業績予告や速報はこの時点までに出ていません。中微公司は2025年1〜9月の報告(2025年10月30日)に加えて、2026年1月24日の2025年度の業績予告(未監査のレンジ)があります。金額は人民元のまま億元で示し、株価は2026年1月30日の終値です。

2社とも受注残を開示していないため、この回では前受金(契約負債)と在庫を受注の手がかりとして読みます。輸出規制との関わりと、日本から買えるかを確かめたうえで、最後に数字を株式投資の銘柄選びの目線でも読み直します。

この記事の要点 根拠となる数字
2社とも売上は4年で4〜5倍に増え、2025年も3割を超える増収が続いた 北方華創 60.6億元→298.4億元(約4.9倍)、2025年1〜9月+33.0%/中微公司 22.7億元→90.7億元(約4.0倍)、2025年の業績予告 約123.9億元(+36.6%)
受注の手がかりの前受金は、北方華創で減り、中微公司で増えた 契約負債は北方華創62.2億元→47.0億元、中微公司25.9億元→43.9億元(2024年末→2025年9月末)。北方華創の2025年1〜9月の営業CFは−25.7億元
輸出規制での立場と、日本からの買いやすさは2社で違う 北方華創は2024年12月2日からエンティティ・リストに掲載。中微公司は掲載されていないが、科創板の株は日本の個人が買える経路が見つからない。北方華創も、扱いを確認できた日本の証券会社はない
銘柄選びの目線:株価は、国産化による伸びが続くことを強く前提にしている PER(直近4四半期)北方華創54.7倍・中微公司113.8倍、PBR9.6倍・10.1倍。2025年の株価+58.5%(転増を調整)・+44.2%

中国の半導体製造装置メーカー2社は、エッチングと成膜を軸に伸びてきた

北方華創の売上の大半は、会社が「电子工艺装备」(電子工芸装備)と呼ぶ半導体などの製造装置です。2024年12月期(2024年1〜12月)は売上の92.86%がこの装置で、粗利率は41.5%。残りの7.02%は電子部品(电子元器件)で、粗利率は60.32%でした。

装置の中身は幅広く、2025年1〜6月の売上は、エッチング(刻蚀)が50億元超、成膜(薄膜沉积)が65億元超、熱処理が10億元超、ウェット(湿法)が5億元超です。会社は金額を下限の形でしか示していません。エッチング装置、縦型炉、PVD装置の累計出荷はそれぞれ1,000台を超え、2025年3月にはイオン注入装置にも参入しました。

中微公司は、エッチング装置が売上の約8割を占める会社です。2024年12月期の売上90.7億元のうち、エッチング装置は72.8億元(前年比+54.73%)で、売上の約80.3%にあたります(当ブログの計算)。2025年の業績予告では、エッチング装置の売上は98.3億元(+35.1%)の見込みです。

成膜でも芽が出ています。2024年に初めて売上が立ったLPCVD装置は1.56億元で、2025年の業績予告では、ALD装置などを含む薄膜装置が5.06億元(+224%)の見込みです。エッチング装置の反応台(チャンバー)の累計出荷は2025年末までに6,800台を超え、LPCVDは300台を超えたと会社は説明しています。MOCVD装置は2024年に3.79億元(−18.03%)で、会社はGaN系LED向けで2017年からシェアが最も大きいMOCVD装置の供給元だとしています。

市場での位置は、第三者の推計しかありません。モルガン・スタンレーのデータを湯之上隆氏がEE Times Japan(2025年8月25日)で紹介した数字(二次資料)では、2024年のドライエッチング装置で北方華創と中微公司はそれぞれ6%、ラムリサーチとアプライド マテリアルズの合計は58.9%でした。PVD装置では北方華創が12%です。CINNO IC Researchの2024年の装置メーカー売上ランキング(澎湃新闻経由、二次資料)では、北方華創は6位でした。

お客さんがどこにいるかの開示は限られています。北方華創の地域別の売上は国内の地域でしか分けておらず、「其他地区」は2.29%(定義は未確認)。海外の比率は開示されていません。中微公司の地域別の比率は、この回の調べでは取れていません。SEMI(国際半導体製造装置材料協会)によると、2024年の世界の装置販売額1,171.4億ドルのうち、中国向けは495.5億ドルで42.3%を占めました(比率は当ブログの計算)。

用語メモ:エッチング=ウェーハの上の膜を回路の形に削る工程。成膜=ウェーハに薄い膜を積む工程で、CVD(化学気相成長)、PVD(物理気相成長、スパッタなど)、ALD(原子層堆積)などの方式がある。LPCVD=減圧下で行うCVD。MOCVD=有機金属を使うCVDで、LEDなどの化合物半導体に使う。GaN=窒化ガリウム。イオン注入=不純物をウェーハに打ち込む工程。科創板(STAR Market)=上海証券取引所の新興・技術企業向けの市場。メインボード=取引所の主たる市場。

北方華創の決算は、4年で売上4.9倍・純利益10.5倍

億元(%) 2020年 2021年 2022年 2023年 2024年
売上高 60.6 96.8 146.9 220.8 298.4
売上高の前年比(%) — +59.9 +51.7 +50.3 +35.1
粗利率(%) — 38.9※ 43.5※ 40.8 42.9
研究開発費(研发费用) — — — 24.8 36.7
研究開発費÷売上(%) — — — 11.2 12.3
純利益(親会社株主に帰属) 5.4 10.8 23.5 39.0 56.2
扣非純利益(非経常損益を除く) 2.0 8.1 21.1 35.8 55.7
ROE(当ブログの計算、%) 7.9 9.1 12.8 17.7 20.3
ROE(会社表示の加重平均、%) 8.5 11.9 13.0 17.9 24.8

※各年12月期(1〜12月)、中国企業会計準則の連結。2020・2021年は2021年度の業績速報(未監査)の数字。粗利率の※は集計サイト(S&P Global経由のStockAnalysis)の粗利からの計算で二次資料。当ブログのROEは純利益÷期首と期末の自己資本の平均(2020年は期末で近似)で、会社表示の加重平均ROEとは計算方法が違います。2024年は年次報告書の当初の数字(2025年の遡及修正の前)。

売上高は2020年の60.6億元から2024年の298.4億元へ、4年で約4.9倍になりました(当ブログの計算)。伸び率は2021年から59.9%、51.7%、50.3%と3年続けて5割を超え、2024年も35.1%です。純利益は5.4億元から56.2億元へ約10.5倍で、売上より速く伸びています。

利益の中身も変わりました。2020年は純利益5.4億元のうち、本業以外の損益を除いた扣非純利益が2.0億元しかなく、約37%にとどまっていました(当ブログの計算)。2024年は純利益56.2億元に対して扣非純利益が55.7億元で、ほぼすべてが本業の利益です。

研究開発費は2024年に36.7億元、売上の12.3%でした。会社が「研发投入」と呼ぶ研究開発への投入額は53.7億元で、売上の約18.0%です(当ブログの計算)。差の約17.0億元は当ブログの引き算で、会社が示した資産計上の額ではありません。

ROEは当ブログの計算で7.9%から20.3%へ上がりました。会社が表示する加重平均ROEは2024年に24.8%で、4ポイント以上違います。中国企業のROEを他社と比べるときは、どちらの計算かを確かめたいところです。

会計の読み方で注意が二つあります。一つは営業利益です。中国基準の「营业利润」は投資収益などを含み、米国基準の営業利益とは比べられません。調べられたのは2020年の6.7億元(売上比11.0%)、2021年の12.4億元(12.8%)だけでした。

もう一つは、2025年の遡及修正です。同じ支配下にある会社を取り込んだため、2024年の比較数値が書き換えられ、たとえば2024年末の総資産は657.1億元から663.7億元になりました。上の表は当初の数字で、2025年の前年比は会社の修正後の数字で計算しています。

用語メモ:粗利率=(売上高−売上原価)÷売上高。扣非純利益=「扣除非经常性损益后的净利润」の略で、資産の売却益や補助金などの臨時の損益を除いた純利益。ROE(自己資本利益率)=純利益÷自己資本。遡及修正=過去の決算の数字を、後から生じた事情(ここでは同じ支配下の会社の取り込み)に合わせて書き換えること。

北方華創の2025年1〜9月は売上33.0%増、純利益は14.8%増にとどまる

億元 売上高 純利益 扣非純利益 営業CF
2024年1〜3月 58.6 11.3 10.7 2.6
2024年4〜6月 64.8 16.5 15.7 −5.5
2024年7〜9月 80.2 16.8 16.3 7.5
2024年10〜12月 94.9 11.6 13.0 11.2
2025年1〜3月 82.1 15.8 15.7 −17.3
2025年4〜6月 79.4 16.3 16.1 −14.6
2025年7〜9月 111.6 19.2 19.2 6.2
2025年1〜9月 273.0 51.3 51.0 −25.7

※純利益は親会社株主に帰属する額。2024年の四半期は遡及修正の前の数字(修正後の売上は1〜3月59.5億元、7〜9月80.7億元)。2025年4〜6月は上期から1〜3月を引いた計算。2025年の営業CFは累計で開示され(1〜6月は−31.9億元)、4〜6月と7〜9月は累計の差から当ブログが計算しました。

2025年1〜9月の売上高は273.0億元で、前年同期(修正後)より33.0%増えました。7〜9月期は111.6億元(+38.3%)と、四半期として表で最大です。会社は2025年の半期報告で、「公司订单增加,带来销售量的相应增加」(受注が増え、それに応じて販売量も増えた。会社資料の中国語を当ブログが訳出)と説明しています。

ところが純利益は51.3億元で、増加率は14.8%にとどまりました。扣非純利益は19.5%増、中国基準の営业利润は52.8億元で4.4%増(売上比19.3%)です。粗利率は前年同期の44.4%から41.4%に下がり、研究開発費は32.9億元と48.4%増えました(粗利率は当ブログの計算)。

数字の上では、粗利率の低下と研究開発費の増加が重なって、売上の伸びが利益まで届かなかった形です(当ブログの見方)。会社は2025年6月30日から、買収した芯源微(Kingsemi)を連結していて、7〜9月期の数字にはその分も入っています。

四半期の山谷も見ておきます。2024年10〜12月期は売上が94.9億元と2024年で最大だったのに、純利益は11.6億元と前の四半期より約31.1%少ない水準でした(当ブログの計算)。理由はこの回で読んだ資料では確認できませんでした。年間で見ると右肩上がりでも、四半期の利益はかなり揺れます。

会社は数値の業績見通しを出していません。2025年通期の業績予告も、2026年1月31日までには公表されていませんでした。

中微公司の決算は、4年で売上4.0倍、2025年は業績予告で約123.9億元

億元(%) 2020年 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年(業績予告)
売上高 22.7 31.1 47.4 62.6 90.7 約123.9
売上高の前年比(%) — +36.7 +52.5 +32.1 +44.7 +36.6
营业利润(中国基準) — — — 19.8 17.2 —
营业利润÷売上(%) — — — 31.6 18.9 —
純利益(親会社株主に帰属) 4.9 10.1 11.7 17.9 16.2 20.8〜21.8
扣非純利益 0.2 3.2 9.2 11.9 13.9 15.0〜16.0
研究開発への投入÷売上(会社表示、%) 28.1 23.4 19.6 20.2 27.1 30.16
営業CF 8.5 10.2 6.2 −9.8 14.6 —
ROE(当ブログの計算、%) 11.3 11.0 8.0 10.7 8.6 —

※各年12月期(1〜12月)、中国企業会計準則の連結。2023・2024年の营业利润は2024年度の業績速報(未監査)の数字。2025年は2026年1月24日の業績予告(未監査のレンジ)で、通期の実績ではありません。研究開発への投入(研发投入)は資産計上分を含む会社の数字。ROEの計算方法は北方華創の表と同じ。

中微公司の売上高は、2020年の22.7億元から2024年の90.7億元へ、4年で約4.0倍です(当ブログの計算)。2025年の業績予告は約123.9億元(+36.6%)で、伸びは続いています。

一方で、利益は売上ほど素直ではありません。2024年は売上が44.7%増えたのに、純利益は17.9億元から16.2億元へ約9.5%減りました(当ブログの計算)。营业利润の売上比も31.6%から18.9%に下がっています。2023年の純利益には、拓荆科技の株の一部を売った利益(税引後で約4.06億元)が含まれていました。

研究開発への投入は重く、2024年は売上の27.1%、2025年の業績予告では37.4億元で売上の30.16%に達します。損益計算書の研究開発費(研发费用)も、2024年の14.2億元から2025年は24.7億元に増える見込みです。

2025年の業績予告では、純利益が20.8〜21.8億元(+28.74%〜+34.93%)、扣非純利益が15.0〜16.0億元(+8.06%〜+15.26%)です。純利益には、株式投資の収益6.11億元(前年は1.98億元)が含まれると会社は説明しています。中央値どうしで比べると、純利益と扣非純利益の差は約5.8億元あります(当ブログの計算)。

億元 売上高 純利益 扣非純利益 営業CF
2024年1〜3月 16.1 2.5 2.6 −5.9
2024年4〜6月 18.4 2.7 2.2 9.5
2024年7〜9月 20.6 3.9 3.3 −1.0
2024年10〜12月 35.6 7.0 5.7 11.9
2025年1〜3月 21.7※ 3.1※ — —
2025年4〜6月 27.9※ 3.9※ — —
2025年7〜9月 31.0 5.1 3.5 11.0
2025年1〜9月 80.6 12.1 8.9 13.0
2025年10〜12月(業績予告から逆算) 約43.2 8.7〜9.7 — —

※2025年1〜3月と4〜6月は集計サイト(S&P Global経由のStockAnalysis)の値で二次資料。3つの四半期の合計は、会社の1〜9月の数字と一致します。10〜12月は業績予告の通期の値から1〜9月を引いた当ブログの計算です。

2025年1〜9月は、売上が80.6億元で46.4%増、純利益は12.1億元で32.7%増でした。ただし扣非純利益は8.9億元で9.1%増にとどまります。粗利率は前年同期の42.2%から39.1%に下がり、研究開発費は17.9億元と約96%増えました(粗利率と研究開発費の増加率は当ブログの計算)。

業績予告から逆算すると、2025年10〜12月期の売上は約43.2億元で、前年同期の35.6億元より約21.5%多い計算です(当ブログの計算)。中微公司は2023年、2024年とも10〜12月期の売上がいちばん大きく、年末に売上が集まりやすい形が数字に出ています。

図は、左が北方華創、右が中微公司で、それぞれ上段が売上高、下段が純利益(親会社株主に帰属)です。2020〜2024年の棒の右に、点線で区切って2025年を加えました。北方華創の2025年は薄い色の棒で、1〜9月の実績(売上273.0億元、純利益51.3億元)です。通期の数字ではありません。

中微公司の2025年は斜線の棒で、業績予告の売上約123.9億元と、純利益の中央値21.3億元に20.8〜21.8億元の幅を重ねています。縦軸の目盛りは2社で共通にしてあり、2024年の売上で約3.3倍の規模の差があることも一目でわかります(当ブログの計算)。

用語メモ:業績予告(业绩预告)=中国の上場会社が、決算の前に通期の業績の見込みを幅で示す開示。業績速報(业绩快报)=監査前の通期の数字の速報。研究開発への投入(研发投入)=費用にした研究開発費と、資産に計上した開発費の合計。

受注残は開示されない。前受金は北方華創で減り、中微公司で増えた

装置メーカーの決算では、受注や受注残が先行きの手がかりになります。ところが2社とも、受注額も受注残も開示していません。北方華創は前に見たとおり受注が増えたと述べるだけで、中微公司も会社全体の新しい受注の額は書かず、「高端产品新增付运量显著提升」(高性能の製品の新規出荷が大きく伸びた。会社資料の中国語を当ブログが訳出)とだけ説明しています。

そこで代わりに見るのが、契約負債と棚卸資産です。

億元 北方華創 契約負債 北方華創 棚卸資産 中微公司 契約負債 中微公司 棚卸資産
2021年12月末 50.5※ 80.4※ 13.7※ 17.6※
2022年12月末 72.0※ 130.4※ 22.0※ 34.0※
2023年12月末 83.2※ 169.9※ 7.7※ 42.6※
2024年12月末 62.2 236.3 25.9 70.4
2025年3月末 57.5 252.1 — —
2025年6月末 50.0 311.4 — —
2025年9月末 47.0 302.0 43.9 81.9

※2021〜2023年末は集計サイト(S&P Global経由のStockAnalysis)の値で二次資料。北方華創の2024年末は遡及修正後、2025年6月末以降は芯源微を含みます。契約負債(合同负债)は、商品を引き渡す前に顧客から受け取った、または受け取る権利のある対価です。

北方華創の契約負債は、2023年末の83.2億元(二次資料)を山に減り続け、2025年9月末は47.0億元でした。2024年末からの9か月で約24.4%減っています(当ブログの計算)。反対に棚卸資産は236.3億元から302.0億元へ約27.8%増えました(当ブログの計算。6月末からは芯源微の分を含みます)。

棚卸資産は、売上原価に対して2024年が506日分、2025年1〜9月は515日分です(期末の棚卸資産÷売上原価×365。1〜9月は273日で換算した当ブログの計算)。1年分の売上原価を大きく超える量の在庫を抱えていることになります。

中微公司は逆です。契約負債は2023年末の7.7億元(二次資料)から、2025年9月末には43.9億元と約5.7倍になりました(当ブログの計算)。2024年末からの9か月でも約69.7%の増加です。棚卸資産は70.4億元から81.9億元へ約16.4%増え、1〜9月の在庫日数は456日でした(いずれも当ブログの計算)。

大きさを月の売上で比べると、違いがはっきりします。2025年1〜9月の1か月あたりの売上で割ると、9月末の契約負債は北方華創が約1.6か月分、中微公司が約4.9か月分です(当ブログの計算)。

大家業でいえば、装置メーカーは注文住宅の工務店、契約負債は着工前に受け取る手付金、棚卸資産は資材置き場の資材です。手付金が減るのに資材が増える工務店は、工事の受注が鈍ったのか、手付金を取らない契約が増えたのか、外からは見分けがつきません。だからこそ、次の決算で向きが変わるかを追いかけたいのです(当ブログの見方)。

お金の流れにも同じ差が出ています。北方華創の2025年1〜9月の営業CFは−25.7億元で、前年同期の+4.2億元からマイナスに転じました。設備投資の支出5.5億元を引いたFCFは−31.1億元です(当ブログの計算)。会社は三季度报告で、主な理由を「公司订单及研发投入大幅增加,现金支出规模增加」(受注と研究開発への投入が大きく増え、現金の支出が増えた。会社資料の中国語を当ブログが訳出)と説明しています。

2024年の営業CFが15.7億元と前年の23.7億元から減ったときは、会社は「为了满足订单需求」(受注の需要に応えるため。会社資料の中国語を当ブログが訳出)に支払いが増えたと説明していました。中微公司の2025年1〜9月の営業CFは13.0億元の黒字で、設備投資5.0億元を引いたFCFは約8.0億元です(当ブログの計算)。

用語メモ:受注残=受注したがまだ売上になっていない注文の残高。契約負債(前受金)=商品やサービスを引き渡す前に、顧客から受け取った代金など。棚卸資産(在庫)=製品・仕掛品・原材料など。在庫日数=期末の棚卸資産÷売上原価×365。営業CF=本業で得た現金の出入り。FCF(フリー・キャッシュ・フロー)=営業CF−設備投資。

北方華創は芯源微を連結し、借入が増えて9月末のネットキャッシュはマイナスに

億元(%) 北方華創 2024年12月末 北方華創 2025年9月末 中微公司 2024年12月末 中微公司 2025年9月末
現金・短期投資等 124.0 135.4 86.0 83.0
有利子負債 61.7 144.0 7.2 7.4
ネットキャッシュ 62.3 −8.6 78.7 75.6
のれん 0.4 21.8 — —
総資産 663.7 858.9 262.2 297.9
自己資本(親会社株主に帰属) 311.3 360.4 197.4 214.7
自己資本比率(%) 46.9 42.0 75.3 72.1

※北方華創の2024年末は遡及修正後。有利子負債は北方華創が短期借入・1年内に期限が来る非流動負債(全額を借入とみなした上限)・長期借入の合計、中微公司は長期借入だけ。ネットキャッシュ=現金・短期投資等−有利子負債。自己資本比率は当ブログの計算。

北方華創は2025年、上場会社の芯源微(Kingsemi、688037)の株17.87%を2回に分けて計31.35億元で取得し、支配権を得ました。資金は自己資金で、2025年6月25日の公告で取得を終え、6月30日から連結しています。6月末の時点で、のれんは21.8億元です。

同じ時期に、長期借入は2024年末(修正後)の39.5億元から9月末の132.2億元に増えました。有利子負債の合計は61.7億元から144.0億元へ増え、ネットキャッシュは62.3億元のプラスから−8.6億元に変わっています。自己資本比率も46.9%から42.0%に下がりました。

開発支出(資産に計上した開発費)も、2024年末の59.7億元から9月末の74.7億元に増えました。資産に積み上がる開発費は、いずれ償却で利益を押し下げる分でもあります(当ブログの見方)。

中微公司の財務は対照的で、9月末の自己資本比率は72.1%、ネットキャッシュは75.6億元のプラスです。長期の持分投資14.3億元、その他の非流動の金融資産21.1億元も持っていて、業績予告にある株式投資の収益は、こうした投資から生まれていると読めます(当ブログの見方)。

中微公司は2025年12月19日から株の売買を停止(停牌)しました。12インチのCMP装置を作る杭州众硅电子科技の支配権を、株式を発行して取得し、あわせて資金も調達する計画を進めるためで、まだ正式な契約の前の、意向協議の段階です。株価の動きから見ると、取引は2026年1月5日に再開しています。

株主還元は控えめです。北方華創の2024年度の配当は1株1.06元(10株につき10.60元)で、あわせて資本準備金から10株につき3.5株を無償で交付(転増)しました。配当性向は約10.1%です(当ブログの計算)。中微公司の2024年度の配当は1株0.30元で、配当性向は約11.5%でした(当ブログの計算)。どちらも、株主還元の方針の文言はこの回で読んだ資料では確認していません。

株主の顔ぶれも違います。北方華創は北京七星华电が33.21%、国の半導体ファンド(大基金)が5.00%を持ちます(2025年9月末)。中微公司には支配株主がおらず、上海创业投资が14.93%で最大です。Stock Connectの名義の香港中央结算は、北方華創で2024年末の5.97%から12.77%に増え、中微公司でも8.93%です。

用語メモ:連結=子会社の資産や損益を、親会社の決算に合算すること。のれん=会社を買ったときに、純資産を上回って払った分。ネットキャッシュ=現金等から借入金などを引いた額。CMP=ウェーハの表面を化学的・機械的に磨いて平らにする工程。転増=資本準備金を原資に、株主へ株式を無償で配ること。Stock Connect=香港と上海・深圳の取引所を結ぶ相互取引の仕組み。

輸出規制では、北方華創はエンティティ・リストに入り、中微公司は入っていない

米国商務省の産業安全保障局(BIS)は、2024年12月2日発効の規則(官報は12月5日)で、北方華創と子会社8社をエンティティ・リストに加えました。米国の輸出管理規則(EAR)の対象品目すべてに輸出の許可が必要になり、審査は原則として不許可の方針です。

会社は2025年の半期報告で、「全球地缘政治冲突加剧」(世界の地政学的な対立が激しくなっている。会社資料の中国語を当ブログが訳出)により、輸入する部品や材料の納期が延び、コストが上がるおそれがあると書いています。その対策として「自主可控供应链生态」(自ら管理できる供給網)を築くとしていますが、エンティティ・リストには直接触れていません。

中微公司は、エンティティ・リストには載っていません。同じ2024年12月2日の規則で、2013年から認められていた「認定エンドユーザー(VEU)」から外れました。官報には、中微公司自身も外れることを求めていたと書かれています。報道にはエンティティ・リストに残っているとするものもありますが、一次資料と合いません。

もう一つの米国のリストは、国防総省の「中国軍事企業」の一覧(1260Hリスト)です。中微公司は2024年1月31日に追加され、2024年12月18日の官報で削除されました。追加のとき会社は、「CMCリストには具体的な制裁はなく、当社の事業に重大な影響はない」(会社資料の英文を当ブログが訳出)と説明しています。

規制の枠組み全体も動いています。BISは2025年9月29日に、エンティティ・リストなどの掲載企業が合計50%以上を持つ会社にも同じ規制をかける規則(50%ルール)を発効させ、2025年11月10日から2026年11月9日まで停止しています。規制の追加と停止のどちらも、株価の材料になりうる状況です(当ブログの見方)。

国産化の進み具合を示す数字は、残念ながら食い違っています。2024年ごろの中国の装置の自給率の推計は、13.6%(TrendForceがTechNewsを引用、2025年2月14日)、2024年央で23%(ijiweiのコラムをAsia Timesが紹介、2026年1月6日)、約25%(中国半導体行業協会の2025年35%・前年比10ポイント増からの逆算、Bits&Chips 2026年1月14日)と、13.6%から約25%まで開いていて互いに合いません。いずれも二次資料です。

ロイターの2025年12月30日の報道(Asia Timesが紹介)によると、当局は新設・増設の工場に装置の50%以上を国産にするよう求めているとされます(文書では公表されていません)。会社自身の言葉では、北方華創が新製品について「打破了国外厂商在高端工艺制程的技术垄断」(高度な工程で海外メーカーが握っていた技術の独占を打ち破った)、中微公司がエッチング市場で「海外少数几家公司占据主要市场份额」(海外の少数の会社が主なシェアを占める)と書いています(いずれも会社資料の中国語を当ブログが訳出)。

用語メモ:BIS=米国商務省の産業安全保障局で、輸出管理を担当する役所。エンティティ・リスト=米国の輸出管理で、取引に許可が必要な外国の企業・団体の一覧。EAR=米国の輸出管理規則。VEU(認定エンドユーザー)=個別の許可なしで一部の品目を受け取れると認められた相手。1260Hリスト=米国防総省が公表する、中国の軍事企業とみなした会社の一覧。

2026年1月30日の株価で見ると、北方華創はPER54.7倍、中微公司は113.8倍

指標 北方華創 中微公司 前提
株価(終値) 475.23元 347.95元 2026年1月30日、二次資料(Tencentの株価データ)
時価総額 3,442.5億元 2,178.7億元 2025年9月末の発行済株式数(724.38百万株、626.15百万株)で計算
時価総額(円換算) 約7.61兆円 約4.82兆円 2026年1月30日の三菱UFJ銀行の仲値(TTM)1元22.11円(オフショア人民元)で当ブログが換算
PER(直近4四半期) 54.7倍 113.8倍 2024年10月〜2025年9月の純利益の和(62.9億元、19.1億元)
PER(直近四半期×4、参考) 44.8倍 107.8倍 2025年7〜9月の純利益×4
PER(業績予告、参考) — 102.3倍 2025年の業績予告の純利益の中央値21.3億元(レンジでは99.9〜104.7倍)
益回り 1.83% 0.88% 1÷PER(直近4四半期)
PBR 9.6倍 10.1倍 2025年9月末の自己資本(1株49.76元、34.29元)
EPS÷BPS 17.4% 8.9% PBR÷PER(直近4四半期)
配当利回り 0.17% 0.09% 2024年度の配当(北方華創は転増後の株数で1株0.785元に換算、中微公司は0.30元)
株主還元利回り 0.16% 0.09% 2024年度の配当総額÷時価総額(自社株買いは含まない)
ネットキャッシュ÷時価総額 −0.2% 3.5% 2025年9月末
2025年の株価の騰落率 +58.5% +44.2% 北方華創は転増(×1.35)を調整(未調整は+17.4%)。中微公司は2024年12月31日→2025年12月18日
2026年1月の株価の騰落率 +3.5% +27.6% 中微公司は2025年12月18日→2026年1月30日

※当ブログの計算。中微公司の直近4四半期の純利益のうち、2025年1〜6月の四半期は二次資料。2社とも年間の設備投資の数字が手元にないため、FCF利回りは計算していません。

北方華創の2025年の株価は、未調整の終値では391.00元から459.08元へ17.4%の上昇ですが、この間に10株を13.5株にする転増がありました。株数が1.35倍になった分を調整すると+58.5%です(配当は含みません)。未調整の数字で比べると、上昇をかなり小さく見誤ります。

中微公司は2025年12月19日から停牌していたため、2025年の最後の取引日は12月18日です。2024年末の189.16元から12月18日の272.72元まで44.2%上がり、取引再開後の2026年1月30日には347.95元と、12月18日から27.6%上がっています。

この連載で比べる10社の中央値は、PER(直近4四半期)が52.0倍、PBRが18.9倍、配当利回りが0.43%、株主還元利回りが1.36%です。北方華創のPERは中央値に近く、中微公司の113.8倍は10社で最も高い値です。

用語メモ:PER(株価収益率)=株価÷1株あたり利益。益回り=PERの逆数。PBR(株価純資産倍率)=株価÷1株あたり純資産。EPS÷BPS=1株利益÷1株純資産で、PBR÷PERと同じ。配当利回り=1株配当÷株価。株主還元利回り=配当と自社株買いの合計÷時価総額。中央値=値を小さい順に並べたときの真ん中の値。

株式投資の目線では、2社の株価は中国の装置投資と国産化に賭けている

ここからは、同じ数字を株式投資の銘柄選びの目線で読み直します。2社の株の性格をひと言でいえば、中国国内の工場の装置投資と、その中で国産の装置が増えることに賭ける株だと私は見ています(当ブログの見方)。北方華創は売上の97.7%を国内の地域区分で示していて(当ブログの計算)、2社とも株価の材料が中国の工場の投資に集まりやすいからです。

それは過去の数字にも表れています。SEMIによると、2023年の世界の装置販売額は前年より1.3%減りましたが、中国向けは282.7億ドルから366.0億ドルへ約29.5%増えました(当ブログの計算)。同じ年、北方華創の売上は50.3%、中微公司は32.1%伸びています。2社の景気の波は、世界の波より中国の投資の波に近いと読めます(当ブログの見方)。

大家業でいえば、全国の賃貸市場より、特定の新興都市の開発計画に家賃が連動している物件です。その都市の計画が続くうちは強いけれど、計画の見直しや規制の変更があれば、全国の相場とは関係なく揺れます。

株価と利益の関係も確かめます。北方華創の2025年の株価は+58.5%(転増を調整)で、2025年1〜9月の純利益の伸び14.8%を大きく上回りました。中微公司の株価は+44.2%(12月18日まで)で、業績予告の純利益の伸び+28.74%〜+34.93%、扣非純利益の+8.06%〜+15.26%を上回っています。

株価が利益より速く上がったぶん、PERは切り上がったと読めます(当ブログの見方)。ただし株価は暦年(中微公司は12月18日まで)、利益は1〜9月か通期の予告で、期間はそろっていません。

では今の株価は何を前提にしているのか。北方華創のPER54.7倍は、益回りにすると1.83%です。PBR9.6倍をPERで割ったEPS÷BPSは17.4%で、2024年のROE20.3%より低め。今の利益率が続くだけでなく、利益の伸びも続くことを前提にした値段だと私は見ています(当ブログの見方)。

中微公司は、PER113.8倍で益回りは0.88%、業績予告の純利益で計算しても102.3倍です。EPS÷BPSは8.9%で、2024年のROE8.6%とほぼ同じ1桁の水準。それでもPBRが10.1倍あるのは、株価が今の利益ではなく、何倍にも膨らんだ将来の利益を前提にしているからだと読めます(当ブログの見方)。

お金の面では、2社とも株主還元利回りが0.16%と0.09%で、10社の中央値1.36%を大きく下回ります。北方華創の2025年1〜9月のFCFは−31.1億元で、今は現金を株主に戻すより、在庫や研究開発、買収に向けている時期です(当ブログの見方)。

銘柄選びの目線では、中微公司は日本の個人が買える経路が見つからない

利益の振れも見ておきます。2社とも、2020年から2024年まで年間の売上が減った年はなく、北方華創は純利益も毎年増えました。ただ、中微公司の2024年は売上が44.7%増えた年に純利益が約9.5%減り、营业利润の売上比は31.6%から18.9%へ12.7ポイント下がっています(当ブログの計算)。北方華創も、四半期では利益が大きく揺れていました。

売上が減る局面を、2社はまだこの5年の数字で見せていません。世界の装置メーカーが2023年前後に経験したような売上の減少に、利益がどれだけ耐えられるかは未知数です(当ブログの見方)。

株価が動くきっかけになりそうなのは、まず次の決算です。北方華創は2025年通期の数字と、契約負債の減少が止まるか、営業CFがプラスに戻るか。中微公司は、通期の実績が業績予告のレンジのどこに着地するかと、扣非純利益の伸びです。中微公司のCMP装置の会社の取得は株式を発行する計画なので、条件しだいで1株あたりの価値が薄まる可能性もあります(当ブログの見方)。

政策と規制も材料です。米国のエンティティ・リストの追加や50%ルールの停止期限(2026年11月9日)、中国の国産装置の比率をめぐる方針の報道は、業績と関係なく株価を動かしえます。Stock Connect経由の持ち分(香港中央结算)の増減も、海外マネーの出入りを映す数字です(当ブログの見方)。

下振れのリスクとして、数字から言えるのは次のとおりです。北方華創は、契約負債の減少、在庫の積み上がり、営業CFのマイナス、借入の増加が重なっています。中微公司は、純利益に占める投資の収益の大きさと、売上の3割に達する研究開発の重さ、そして最も高いPERです。2社共通では、中国の装置投資の減速と、輸入部品の調達の難しさです。

銘柄選びで確かめる点 この会社の数字(時点) 当ブログの見方
株価と利益の向き 2025年の株価 北方華創+58.5%(転増を調整)・中微公司+44.2%(12月18日まで)/北方華創の2025年1〜9月の純利益+14.8%、中微公司の業績予告の純利益+28.74〜+34.93% 株価が利益より速く上がり、PERが切り上がった
利益に対する株価の水準 PER(直近4四半期)54.7倍・113.8倍、益回り1.83%・0.88%(2026年1月30日。10社の中央値52.0倍) 中微公司は10社で最も高い
PBRとROE PBR9.6倍・10.1倍、EPS÷BPS17.4%・8.9%、2024年のROE20.3%・8.6% 中微公司は1桁のROEに10倍のPBR。利益の大きな伸びが前提
受注の手がかり 契約負債 北方華創47.0億元(9か月で約−24.4%)・中微公司43.9億元(約+69.7%)(2025年9月末) 前受金の向きが2社で逆
お金の流れ 2025年1〜9月の営業CF −25.7億元・13.0億元、ネットキャッシュ −8.6億元・75.6億元(9月末) 北方華創は借入と在庫が重い
規制と買える経路 北方華創はエンティティ・リスト(2024年12月2日発効)。中微公司は科創板で、日本の個人が買える経路が見つからない 分析はできても、持てるとは限らない

この株の性格が合うかどうかは、投資の目的しだいです。配当で収入を得たい人には、0.17%と0.09%の配当利回りはほとんど材料になりません。中国の国産化という大きな流れの成長を取りにいく人でも、政策と規制で値段が動くことを受け入れられるかが分かれ目になります(当ブログの見方)。

そして、日本の個人にとって最初の壁は、買えるかどうかです。中微公司の科創板の株は、香港を経由するStock Connectの北向き取引で、「institutional professional investors」(機関の専門投資家)しか売買できません。香港取引所(HKEX)の2021年1月22日の発表、2021年2月26日の通達、2024年2月の説明冊子にある規則です。

SBI証券(外国株式取引に関する説明書、2026年1月)とマネックス証券(ページに「2021年2月1日現在」の記載)は中国株を香港市場でしか扱わず、楽天証券と東洋証券のA株(中国本土の人民元建ての株)はStock Connect経由です。このため、日本の個人が中微公司を買える経路は見つかりませんでした。

北方華創は深圳のメインボードの株で、科創板や創業板のような機関投資家だけの制限はかかりません。ただしSBI証券とマネックス証券は香港市場のみ、楽天証券は香港と上海A株のみ(ページに日付なし)で、深圳の株は扱っていないとみられます。東洋証券は深圳A株を「当社で定めた銘柄のみ」扱うとしていますが(ページに日付なし)、北方華創が対象かは確認できていません。

税金の面では、中国の会社の配当には現地で10%が差し引かれます。東洋証券は「中華人民共和国企業所得税法により、中国企業の配当に対して10%企業所得税が現地で徴収されることとなりました。」と説明していて、日中租税協定の上限も10%です。残りに日本で20.315%がかかり、確定申告をしなければ配当100の手取りは71.72です(当ブログの計算)。細かい扱いは、10社を比べて外国株の配当の税金を整理する回で取り上げます。

中国の装置メーカーは、売上の伸びより前受金と現金の流れで読む

北方華創と中微公司の決算を並べると、どちらも売上は4年で4〜5倍になり、2025年も3割を超えて伸びています。それでも、前受金は北方華創で減って中微公司で増え、営業CFは北方華創がマイナス、中微公司がプラス。同じ国産化の波の上でも、お金の流れはまったく違うというのが、この回のいちばんの発見でした(当ブログの見方)。

次の決算でまず確かめたいのは、北方華創の契約負債が47.0億元から増えに転じるか、営業CFがプラスに戻るか、302.0億元の在庫がどう動くかです。芯源微ののれん21.8億元と、増えた借入の行方もあわせて見ておきたいところです。

中微公司は、通期の実績が業績予告のレンジ(純利益20.8〜21.8億元)のどこに入るか、投資の収益を除いた扣非純利益がどれだけ伸びるか、そして契約負債43.9億元の増加が続くかです。CMP装置の会社の取得の条件も、株主にとっては大事な数字になります。

大家業を長く続けていると、満室の看板より、入居申込みの手付金と修繕積立金の残高のほうが、物件の本当の調子を教えてくれると感じます。中国の装置メーカーの決算書も同じで、伸びる売上の裏で、前受金と現金がどちらへ動いているかを一枚ずつ確かめると、見え方がずいぶん変わるはずです。この連載で読んできた海外の大手との比べ方は、10社を並べる回でまとめて取り上げます。

 

※本記事は公表資料をもとにした情報提供を目的としたもので、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。業績や株価に関する記述は当ブログの見方や試算で、将来の業績や株価を予想・保証するものではありません。

※数値は各社の決算資料・年次報告書・米国証券取引委員会(SEC)への提出書類などの公表資料をもとに当ブログが集計・計算したもので、四捨五入の関係で合計が合わない場合があります。数値は2026年1月31日までに公表されたもので、時点は本文・表に記載しています。円換算は2026年1月30日の為替レートによる参考値です。税制は2026年1月31日時点の法令にもとづき、令和8年度税制改正大綱の内容は今後の法改正で決まります。

出典・参考

  • 北方华创 2025年三季度报告(北方华创、2025年10月31日)https://static.cninfo.com.cn/finalpage/2025-10-31/1224774311.PDF
  • 北方华创 2025年半年度报告(北方华创、2025年8月29日)https://static.cninfo.com.cn/finalpage/2025-08-29/1224615664.PDF
  • 北方华创 2025年一季度报告(北方华创、2025年4月26日)https://static.cninfo.com.cn/finalpage/2025-04-26/1223309242.PDF
  • 北方华创 2024年年度报告(北方华创、2025年4月26日)https://static.cninfo.com.cn/finalpage/2025-04-26/1223309278.PDF
  • 北方华创 2024年年度报告摘要(北方华创、2025年4月26日)https://static.cninfo.com.cn/finalpage/2025-04-26/1223309251.PDF
  • 北方华创 2021年度业绩快报(北方华创、2022年4月14日)https://static.cninfo.com.cn/finalpage/2022-04-14/1212913650.PDF
  • 关于持股5%以上股东协议转让股份完成过户登记暨筹划控制权变更的进展公告(2025-040)(芯源微、2025年5月31日)https://static.cninfo.com.cn/finalpage/2025-05-31/1223732565.PDF
  • 中微公司 2025年年度业绩预告的自愿性披露公告(2026-010)(中微公司、上海证券报、2026年1月24日)https://paper.cnstock.com/html/2026-01/24/content_2173772.htm
  • 中微公司 2025年第三季度报告(中微公司、2025年10月30日)https://static.cninfo.com.cn/finalpage/2025-10-30/1224763575.PDF
  • 中微公司 关于筹划发行股份购买资产并募集配套资金事项的停牌公告(2025-070)(中微公司、上海证券报、2025年12月19日)https://paper.cnstock.com/html/2025-12/19/content_2160302.htm
  • 中微公司 2024年度业绩快报公告(2025-008)(中微公司、2025年2月28日)https://static.cninfo.com.cn/finalpage/2025-02-28/1222661507.PDF
  • 中微公司 2024年年度报告摘要(中微公司、2025年4月18日)https://static.cninfo.com.cn/finalpage/2025-04-18/1223127190.PDF
  • 中微公司 2024年年度业绩预告的自愿性披露公告(2025-007)(中微公司、2025年1月15日)https://static.cninfo.com.cn/finalpage/2025-01-15/1222332494.PDF
  • 中微公司 2023年年度报告摘要(中微公司、2024年3月19日)https://static.cninfo.com.cn/finalpage/2024-03-19/1219329916.PDF
  • 中微公司 2022年年度报告摘要(中微公司、2023年3月31日)https://static.cninfo.com.cn/finalpage/2023-03-31/1216280587.PDF
  • Company Statement of Advanced Micro-Fabrication Equipment Inc. China(AMEC、PR Newswireの転載、2024年2月5日)https://en.startuprecipe.co.kr/archives/pr-newswire/company-statement-of-advanced-micro-fabrication-equipment-inc-china
  • Additions and Modifications to the Entity List; Removals From the Validated End-User (VEU) Program(Federal Register、2024年12月5日)https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-2024-12-05/html/2024-28267.htm
  • Federal Register 検索結果「Advanced Micro-Fabrication Equipment」(Federal Register、2024年12月18日の告示まで)https://www.federalregister.gov/api/v1/documents.json?conditions[term]=%22Advanced+Micro-Fabrication+Equipment%22&per_page=20&order=newest
  • Expansion of End-User Controls To Cover Affiliates of Certain Listed Entities(Federal Register、2025年9月30日)https://www.federalregister.gov/documents/2025/09/30/2025-19001/expansion-of-end-user-controls-to-cover-affiliates-of-certain-listed-entities
  • One Year Suspension of Expansion of End-User Controls for Affiliates of Certain Listed Entities(Federal Register、2025年11月12日)https://www.federalregister.gov/documents/2025/11/12/2025-19846/one-year-suspension-of-expansion-of-end-user-controls-for-affiliates-of-certain-listed-entities
  • 湯之上隆のナノフォーカス(83) 前工程装置でシェア低下が続く日本勢(EE Times Japan、2025年8月25日)https://eetimes.itmedia.co.jp/ee/articles/2508/26/news015.html
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  • Global Semiconductor Equipment Billings Slip to $106.3 Billion in 2023(SEMI、2024年4月10日)https://www.semi.org/en/news-media-press-releases/semi-press-releases/global-semiconductor-equipment-billings-slip-to-$106.3-billion-in-2023-semi-reports
  • Global Semiconductor Equipment Billings Reach Industry Record $107.6 Billion in 2022(SEMI、Design & Reuse転載、2023年4月13日)https://us.design-reuse.com/news/53820/2022-global-semiconductor-equipment-billings.html
  • China’s semiconductor equipment industry booming, self-sufficiency to reach 50% by 2025?(TrendForce、2025年2月14日)https://www.trendforce.com/news/2025/02/14/news-chinas-semiconductor-equipment-industry-booming-self-sufficiency-to-reach-50-by-2025/
  • China’s chip industry uses 35 percent domestically sourced equipment(Bits&Chips、2026年1月14日)https://bits-chips.com/article/chinas-chip-industry-uses-35-percent-domestically-sourced-equipment/
  • China’s 50% domestic chip tools drive lifts stocks, faces limits(Asia Times、2026年1月6日)https://asiatimes.com/2026/01/chinas-50-domestic-chips-tools-drive-lifts-stocks-faces-limits/
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  • Reminder on Investor Eligibility Requirement(HKEX、2021年2月26日)https://www.hkex.com.hk/-/media/HKEX-Market/Services/Circulars-and-Notices/Participant-and-Members-Circulars/SEHK/Reminder-on-Investor-Eligibility-Requirement_E.pdf
  • Gain easy access to China A-shares and Mainland-listed ETFs(HKEX、2024年2月)https://www.hkex.com.hk/-/media/HKEX-Market/Mutual-Market/Stock-Connect/Getting-Started/Information-Booklet-and-FAQ/StockConnectFeb2024.pdf
  • 外国株式取引に関する説明書(対面取引)(SBI証券、2026年1月)https://search.sbisec.co.jp/v2/popwin/info/home/bm/bm_260124_6_footc.pdf
  • 中国株(マネックス証券、取扱銘柄数に「2021年2月1日現在」の記載)https://info.monex.co.jp/china-stock/index.html
  • 中国株式(楽天証券、日付の記載なし)https://www.rakuten-sec.co.jp/web/foreign/china/
  • 中国株式 お取引について(東洋証券、日付の記載なし)https://www.toyo-sec.co.jp/product/stock/china/deal/
  • 中国株式の取引ルール(東洋証券、日付の記載なし)https://www.toyo-sec.co.jp/service/hometrade/trading-rule/china/
  • 日中租税協定 統合条文(財務省)https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/tax_convention/SynthesizedTextforJapan_China_JP.pdf
  • 株価:Tencent証券 002371 日足(2026年1月30日までの終値)https://web.ifzq.gtimg.cn/appstock/app/kline/kline?param=sz002371,day,2025-12-25,2026-01-30,30
  • 株価:Tencent証券 688012 日足(2025年12月18日の終値ほか)https://web.ifzq.gtimg.cn/appstock/app/kline/kline?param=sh688012,day,2025-12-01,2025-12-31,30
  • NAURA 財務データ(StockAnalysis、S&P Global提供の集計値)https://stockanalysis.com/quote/she/002371/financials/balance-sheet/
  • AMEC 財務データ(StockAnalysis、S&P Global提供の集計値)https://stockanalysis.com/quote/sha/688012/financials/?p=quarterly
  • S. gov’t removes China’s chip toolmaker AMEC from the list of ‘military companies’(Tom’s Hardware、2024年12月19日)https://tomshardware.com/tech-industry/u-s-govt-removes-chinas-chip-toolmaker-amec-from-the-list-of-military-companies
  • 外国為替相場 2026年1月30日(三菱UFJリサーチ&コンサルティング、2026年1月30日)https://www.murc-kawasesouba.jp/fx/past/index.php?id=260130