東雲結子:石井先生、事務所の鏡餅、今年は私が木槌で開きます! ついでにメタプラネットの決算書も開いてみました。2025年1〜9月の純利益が135億円なんです。
税理士石井:鏡餅と決算書を同じ日に開く人は、なかなかいませんね。では、その135億円も割って中をのぞいてみましょうか。営業外に、ビットコインの評価益が206億円入っています。
東雲結子:えっ、純利益より評価益のほうが大きいんですか? お餅を割ったら、中身のほうが外側より大きかった、みたいな……。
税理士石井:ははは、お餅ならありえませんが、決算書ではよくあることなんです。評価益は、持っているビットコインを期末の値段で測り直した差額です。売っていないので、現金は1円も入っていません。
東雲結子:じゃあ、割れたけれど食べられないお餅……ですか?
税理士石井:そうですね。食べられるのは売ったときです。しかも、売ったときにかかる見込みの税金を、先に費用として引いています。2024年12月期は、その計上が漏れていて、あとから純利益を訂正したほどです。
東雲結子:お餅に、あとから税務署の付箋が貼られていたんですね(汗)。
税理士石井:ふふ、付箋を貼り直したのは会社自身です。そのうえ年末にかけてビットコインが下がったので、年末の価格で見ると、取得原価より約788億円の含み損になっています(当ブログの計算)。
東雲結子:割ったら今度はヒビだらけ……。鏡開きは縁起物なのに、決算書は正直すぎます。
税理士石井:大家業でも、物件の評価額が上がったからといって家賃が増えるわけではないし、相場が下がれば評価も下がりますよね。「評価」と「お金」と「税金」を分けて読むのがコツです。損益計算書、訂正の中身、貸借対照表とキャッシュフロー、年末の含み損まで、順番に割ってみましょう。
連載の第3回は、メタプラネット(東証スタンダード、証券コード3350、12月決算)の決算書です。メタプラネットの決算は、2025年1〜9月(第3四半期累計)で経常利益232.3億円、そのうち206.4億円が営業外に計上されたビットコイン(BTC)の評価益で、純利益は135.3億円でした。本業にあたる営業利益は27.5億円です。
ビットコインを大量に持つ会社の決算書は、「売上と営業利益」「評価損益」「税金」「現金」を分けて読まないと、実態がつかめません。税理士として特に丁寧に見たいのが、2024年12月期の純利益の訂正です。原因は、ビットコインの評価益に対する繰延税金負債の計上漏れでした。この一行に、会計と法人税のずれが詰まっています。
材料は、決算短信(2023年12月期〜2025年12月期第3四半期)、2025年3月3日の訂正、有価証券報告書、評価損益の計上に関するお知らせなどの適時開示です。単位は断りがなければ百万円。会社の歩みや保有の推移はメタプラネットとは何かを取り上げる回で、資金調達と株価のシナリオは資金調達を取り上げる回で詳しく扱います。
メタプラネットの決算は、売上の主役が「ホテル」から「オプション料」に入れ替わった
まず、5つの期間の損益を並べます。
| 百万円 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期(訂正後) | 2024年1〜9月 | 2025年1〜9月 |
| 売上高 | 366 | 262 | 1,062 | 250 | 4,517 |
| うちビットコイン事業(セグメント) | ― | ― | 692 | ― | 4,214 |
| うちホテル | 366 | 262 | 371 | 250 | 303 |
| 営業利益 | −859 | −468 | 350 | −183 | 2,748 |
| ビットコイン評価損益(営業外) | ― | ― | 5,458 | −124 | 20,644 |
| 経常利益 | −837 | −415 | 5,993 | −311 | 23,229 |
| 特別損益 | 1,816 | −268 | 401 | ― | ― |
| 法人税等 | 2 | 1 | 1,954 | 9 | 9,700 |
| 純利益(親会社株主に帰属) | 978 | −684 | 4,440 | −321 | 13,528 |
| 経常利益−評価損益(簡易) | −837 | −415 | 536 | −187 | 2,585 |
| EPS(円、現在の株数基準) | 17.10 | −6.29 | 22.66 | −2.10 | 23.22 |
※12月決算。2024年12月期は2025年3月3日の訂正後。ビットコイン事業のセグメント名は2024年12月期が「ビットコイントレジャリー事業」、2025年が「ビットコイン関連事業」。法人税等は法人税等調整額(2024年12月期1,952、2025年1〜9月9,354)を含む。「経常利益−評価損益」は税の影響を調整しない当ブログの簡易計算。EPSは2024年8月の併合(10株→1株)と2025年4月の分割(1株→10株)を調整した現在の株数基準(開示値は2023年12月期−62.93円、2024年12月期226.65円で、いずれも併合後・分割前の基準。2022年12月期の17.10円は併合前の基準で、併合と分割が打ち消し合うため現在の基準でも同じ)。2025年1〜9月の潜在株式調整後EPSは15.56円。
用語メモ:EPS=1株あたり当期純利益。潜在株式調整後EPSは、新株予約権などが株に替わった場合の株数も考えた1株あたり利益です。
売上のすべてがホテルだった2022・2023年12月期は、営業赤字でした。2022年12月期の純利益978百万円は、リース解約益2,867百万円などの特別利益によるもので、本業の稼ぎではありません。
2024年12月期に営業利益は350百万円の黒字に転じ、会社の決算説明資料によれば2017年以来の営業黒字でした。けん引したのは、2024年10〜12月期に始まったビットコイン・トレジャリー事業の売上691.6百万円(セグメント利益622.1百万円)です。中身はプットオプションの売りで受け取るオプション料。ホテルの売上は370.7百万円で、ホテルのセグメントは91.3百万円の損失でした。
2025年1〜9月は、売上高4,517百万円のうち、受取オプション料が4,404百万円を占めます。残りはホテルの303百万円などで、7〜9月期からはインカム事業用のビットコインの評価損益(+121百万円)と、オプションなどデリバティブの評価損益(−325百万円)も売上高に入るようになりました。セグメントで見ると、ビットコイン関連事業が売上4,214百万円・利益3,253百万円、ホテルが303百万円・104百万円、全社費用などの調整が−610百万円です。
プットオプションの売りは、あらかじめ決めた価格でビットコインを買い取る約束をし、その対価としてオプション料を受け取る取引です。会社は収益の計上について、「オプションプレミアムの受領時または契約条件に基づく適切な時点で計上いたします」と注記しています。ビットコインが大きく下がれば、決めた価格で買い取ることになりますし、値下がりの局面では、売っているオプションの評価損(デリバティブ評価損)も出ます。売り建てている取引の残高や行使価格は、この回で参照した開示では確認できませんでした。大家業にたとえるなら、「この価格まで下がったら、その物件を必ず買い取ります」と約束して、約束料を先に受け取っているようなものです。相場が崩れたときにその約束をどう果たすかまで含めて、見ておきたい事業です。
なお、会社が「ビットコイン・インカム事業」として別に開示している四半期の売上(7〜9月期2,438.0百万円など)は、集計の範囲や定義が違い、セグメント売上とは一致しません(会社は差の内訳を示していません)。この回の表はセグメント売上で統一しています。会社は12月30日に、この事業の10〜12月期の売上を4,241.8百万円、通期を8,580.7百万円と見込むと公表し、連結の業績への影響は「現在精査中」としていました。連結の通期予想は、2月10日の売上高3,400百万円・営業利益2,500百万円から、10月1日に6,800百万円・4,700百万円へ引き上げられています(会社は「ビットコイン・インカム事業が当初想定していたより大幅な増額」を主な理由に挙げています)。1〜9月の営業利益2,748百万円は、通期予想の58.5%です(当ブログの計算)。経常利益と純利益の予想は出していません。
評価益は営業外に入り、2025年1〜9月の経常利益の約9割を占めた
次に、ビットコインの評価損益です。企業会計基準委員会(ASBJ)の実務対応報告第38号は、活発な市場がある暗号資産について、こう定めています。
「活発な市場が存在する場合、市場価格に基づく価額をもって当該仮想通貨の貸借対照表価額とし、帳簿価額との差額は当期の損益として処理する」(2018年の公表時の用語「仮想通貨」のまま引用)
つまり、期末にビットコインを市場価格で測り直し、前の帳簿価額との差を、売っていなくても損益に入れます。メタプラネットはこの評価損益を、営業外収益・営業外費用に計上しています(特別損益ではありません)。どの区分に表示するかは、参照した第38号の要約では定められておらず、会社ごとに確かめる必要があるところです。
2025年1〜9月は、経常利益23,229百万円のうち20,644百万円、約89%が評価益でした(当ブログの計算)。評価益を引いた経常利益は2,585百万円、売上高に入った評価損益(+121百万円と−325百万円)も除くと2,789百万円です(いずれも税の影響を調整しない当ブログの簡易計算)。
四半期に分けると、ビットコインの値動きがそのまま利益に表れています。
| 2025年 | 1〜3月期 | 4〜6月期 | 7〜9月期 | 1〜9月 |
| 売上高 | 877 | 1,239 | 2,401 | 4,517 |
| 営業利益 | 592 | 817 | 1,339 | 2,748 |
| ビットコイン評価損益(営業外) | −7,413 | 17,449 | 10,608 | 20,644 |
| 経常利益 | −6,852 | 17,417 | 12,664 | 23,229 |
| 法人税等調整額 | −1,810 | 6,299 | 4,865 | 9,354 |
| 純利益 | −5,046 | 11,105 | 7,469 | 13,528 |
| 期末の保有BTC | 4,046 | 13,350 | 30,823 | ― |
| BTCの四半期の騰落率(ドル建て) | −11.6% | +29.8% | +6.5% | ― |
※百万円。4〜6月期・7〜9月期は累計の差から計算した値。法人税等調整額のマイナスは「益」(費用を減らす側)。BTCの騰落率は四半期末の終値から当ブログが計算(会社は円建ての市場価格で評価するため、率は一致しません)。
1〜3月期は、ビットコインの値下がりで7,413百万円の評価損を出し、営業利益が592百万円の黒字でも、純利益は5,046百万円の赤字でした。会社はこのとき、評価損について「会計上の評価損にすぎず」「当社の現金収支には一切影響を及ぼしません」と説明しています。4〜6月期は一転して17,449百万円の評価益です。同じ会社、同じ事業で、四半期ごとに損益の符号が入れ替わる。これが、時価で評価する資産を大量に持つ会社の決算です。

図は、2023年12月期、2024年12月期(訂正後)、2024年1〜9月、2025年1〜9月の4つの期間について、営業利益、ビットコイン評価損益(営業外)、経常利益、純利益を、上からこの順の横棒で、億円単位で並べたものです。いちばん下の2025年1〜9月では、評価益206.4億円が経常利益232.3億円のほとんどを占め、営業利益は27.5億円、純利益は135.3億円。2024年12月期の純利益44.4億円の横には、訂正前の64.0億円も記してあります。ビットコインを持っていなかった2023年12月期(評価損益はゼロ)と、評価損が1.2億円だった2024年1〜9月は、どの棒も小さく、利益はマイナスです。
大家業でいえば、営業利益は家賃から管理費や固定資産税を引いた手取り、評価益は持っている物件の評価額の上がり幅です。評価額がいくら上がっても、売らない限り、通帳の残高は1円も増えません。そして評価額は、相場が下がれば同じ速さで下がります。
ちなみに、同じ日本の会計基準でも、評価損益の表示場所は会社によって違います。リミックスポイントは2024年11月14日から暗号資産の評価損益を売上高・営業利益に入れていますし、米国の会計基準で決算をつくるストラテジーも、2025年から評価損益を営業利益に含めています。会社どうしの営業利益を比べるときは、評価損益がどこに入っているかを必ず確かめてください(リミックスポイントの決算書を読む回、米国の仮想通貨関連株の連載でストラテジーを取り上げる回もあわせてどうぞ)。
2024年12月期の純利益は、繰延税金負債の計上漏れで64.0億円から44.4億円に訂正された
ここからが、税理士としていちばん丁寧に読みたいところです。2025年2月10日の決算短信で6,397,934千円と発表された2024年12月期の純利益は、3月3日に4,439,843千円へ訂正されました。
| 項目(2024年12月期) | 当初(2025年2月10日) | 訂正後(2025年3月3日) |
| 法人税等調整額 | −5.7百万円 | 1,952.4百万円 |
| 当期純利益 | 6,397.9百万円 | 4,439.8百万円 |
| 1株あたり当期純利益(併合後・分割前の基準) | 326.60円 | 226.65円 |
| 同(現在の株数基準に換算) | 32.66円 | 22.66円 |
| 純資産 | 18,923.9百万円 | 16,965百万円 |
| 自己資本比率 | 62.3% | 55.9% |
| 繰延税金負債(貸借対照表) | ビットコイン評価益に対しては計上なし | 1,958百万円 |
※「現在の株数基準」は2025年4月の分割(1株→10株)で割り戻した当ブログの換算。訂正でキャッシュフロー計算書は変わっていません。
純利益は1,958百万円(約30.6%)減り、ほぼ同じ額だけ純資産が減って、負債側に繰延税金負債が載りました(当ブログの計算)。会社は訂正の理由を、「会計上の扱いについては期末において繰延税金負債の計上が必要であることが判明」したためと説明しています。
繰延税金負債とは何か。できるだけかみくだいてみます。
会計では、期末にビットコインを時価で測り直し、値上がり分を評価益として利益に入れます。一方、税金の計算(法人税)では、会社の説明によると、2024年4月に導入された期末時価評価課税の適用除外のガイドラインに沿って保管しているビットコインは、税務上は期末の時価評価の対象外で、売るまで値上がり益に税金はかからない扱いです。すると、「会計の利益はもう増えたのに、税金はまだ払っていない」というずれが生まれます。このずれは、いつかビットコインを売って利益が実現したときに、税金として出ていく見込みの分です。
そこで会計では、その「将来払う見込みの税金」を繰延税金負債という負債に積み、同じ額を法人税等調整額として今期の費用に入れます。実際に税務署へ払うお金は、この時点では1円も動きません。2024年12月期の当初の決算は、この積み立てをしていなかったため、純利益が大きく出ていた、というわけです。
用語メモ:繰延税金負債=資産の額が会計と税務で一時的に食い違うとき(一時差異)、そのうち将来の税金を増やす分を負債として計上したもの。法人税等調整額=その増減を損益計算書に反映する行で、繰延税金負債が増えると費用、減ると「益」になります。
大家業に置きかえると、物件の含み益には、売るまで譲渡の税金がかかりません。でも売れば税金がかかる。だから慎重な大家さんは、含み益の全部を自分の取り分と思わず、将来の税金分を頭の中で差し引いておくものです。繰延税金負債は、それを帳簿の上できちんとやる仕組みだと考えると、わかりやすいと思います。
税金の側の決まりも確かめておきます。法人税法61条では、活発な市場が存在する暗号資産(市場暗号資産)を自己の計算で持つ法人は、期末に時価で評価し、評価益・評価損を所得の計算に入れるのが原則です。令和6年度の改正で、他者が発行した市場暗号資産のうち、譲渡についての制限などの条件が付され、その条件が付されていることを公表する手続(暗号資産交換業者が認定資金決済事業者協会を通じて行うもの)がとられている「特定譲渡制限付暗号資産」は、時価法と原価法を選べるようになりました(届け出なければ原価法。法人の令和6年4月1日以後に終了する事業年度の所得に対する法人税から適用)。
メタプラネットは、長期保有のビットコインは期末時価評価課税の対象外になるという立場で、訂正の開示では「当社はビットコインの保有目的を長期としており」「当面は本件に関する実際の法人税の支払いも見込んでおりません」と説明しています。ただ、どの保有分を、どの要件にもとづいて対象外としているのか、また繰越欠損金の残高や使い方は、この回で参照した開示では確認できませんでした。法人がビットコインを持つときの会計と税金の全体像は、会社がビットコインを持つときの会計と税金を取り上げる回で整理しています。法人と個人のどちらで持つかの考え方は、当ブログの「仮想通貨は法人でやるべきか?個人でやるべきか?」(2025年7月25日)もあわせてどうぞ。
2025年に入っても、この仕組みは毎四半期動いています。1〜9月の法人税等調整額は9,354百万円の費用で、評価損を出した1〜3月期だけは1,810百万円の「益」でした。実際に納める見込みの法人税、住民税及び事業税は、1〜9月で345百万円です。貸借対照表の繰延税金負債は、2024年12月末の1,958百万円から2025年9月末の11,932百万円に増えています。
貸借対照表は、2025年9月末に総資産の98.5%がビットコインだった
| 百万円 | 2023年12月末 | 2024年12月末(訂正後) | 2025年9月末 |
| 現金及び預金 | 553 | 294 | 1,488 |
| 預け金 | ― | 2,322 | 1,286 |
| ビットコイン | ― | 26,348 | 542,709 |
| 1BTCあたりの帳簿価額(当ブログの計算) | ― | 約1,495万円 | 約1,761万円 |
| 総資産 | 1,666 | 30,325 | 550,744 |
| 1年内償還予定の社債 | ― | 11,250 | 4,500 |
| 繰延税金負債 | ― | 1,958 | 11,932 |
| 負債合計 | 514 | 13,359 | 17,837 |
| 純資産 | 1,152 | 16,965 | 532,907 |
| 自己資本比率 | 67.8% | 55.9% | 96.7% |
※2025年9月末のビットコインは、インカム事業用の流動資産20,940と投資その他の資産521,769の合計。1BTCあたりの帳簿価額は、ビットコインの残高を期末の保有枚数で割った値。2023年12月末は千円単位の開示を百万円に直した値。
2025年9月末の総資産550,744百万円のうち、ビットコインが542,709百万円、98.5%を占めます(当ブログの計算)。純資産は532,907百万円、自己資本比率は96.7%。負債は繰延税金負債11,932百万円と、社債4,500百万円が中心でした。純資産には、米国の子会社の円換算から生じた為替換算調整勘定6,779百万円も含まれています。
大家業でいえば、資産のほとんどが一つの種類の物件で、借入はわずか。数字だけ見れば、とても堅い財務です。ただし、その物件の値段は毎日大きく動きます。9月末の帳簿価額は1BTCあたり約1,761万円。年末の当ブログの換算価格約1,370万円は、これより約22.2%低い水準です(当ブログの計算)。
9月末から12月31日までに、負債と資本の形は大きく変わりました。開示で分かっている範囲では、社債は12月29日に全額を償還して残高ゼロに。代わりに、保有ビットコインを担保にした借入を10月31日に1億ドル、11月21日に1.3億ドル、12月1日に0.5億ドル、合計2.8億ドル(1ドル156.56円で約438.4億円)引き出しています。さらに12月29日には、B種優先株23,610,000株の払込み(212.49億円)がありました。年末の貸借対照表は2026年の公表を待つことになりますが、9月末の借入の少ない姿からは変わっています。借入と優先株の条件は、資金調達を取り上げる回で詳しく見ます。
キャッシュフローで見ると、増資と社債のお金がそのままビットコインに替わった
| 百万円 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2024年1〜6月 | 2025年1〜6月 |
| 営業キャッシュフロー | −296 | −572 | 624 | −54 | 1,411 |
| 投資キャッシュフロー | −285 | 2,333 | −23,453 | −1,830 | −196,112 |
| うちビットコインの取得 | ― | ― | −20,907 | ― | −171,863 |
| うち預け金の増減 | ― | ― | −2,322 | ― | −24,239 |
| 財務キャッシュフロー | 398 | −1,416 | 22,570 | 2,341 | 196,125 |
| うち株式の発行 | ― | 1,150 | 11,509 | ― | 176,799 |
| うち社債の発行 | ― | 200 | 12,250 | ― | 96,379 |
| うち社債の償還 | ― | −200 | −1,000 | ― | −78,161 |
※第3四半期の決算短信にはキャッシュフロー計算書がないため、2025年は1〜6月まで。2024年12月期のフリー・キャッシュ・フロー(営業キャッシュフロー−有形・無形固定資産の取得)は530.7百万円(当ブログの計算)。
用語メモ:キャッシュフロー=実際のお金の出入り。営業は本業、投資は資産の取得・売却、財務は借入や増資によるお金の動きです。
2025年1〜6月は、財務キャッシュフローで196,125百万円を集め、投資キャッシュフローで196,112百万円を使いました。株式の発行で176,799百万円、社債の発行で96,379百万円を受け取り、社債の償還に78,161百万円。そのお金で、ビットコインを171,863百万円買っています。集めたお金が、ほぼそのままビットコインに替わった形です。
一方、営業キャッシュフローは2024年12月期に624百万円、2025年1〜6月に1,411百万円のプラスで、ホテルだけの時代のマイナスから変わりました。ただし、純利益と比べると差は歴然です。2024年12月期の純利益4,440百万円に対して営業キャッシュフローは624百万円、2025年1〜6月の純利益6,059百万円に対して1,411百万円。評価益は現金ではない、ということが、ここでもはっきり表れています。
もう一つ、税理士として目が留まるのが株式交付費の扱いです。会社は2024年12月期から、増資にかかった費用(株式交付費)を、その期の費用にせず繰延資産として3年で均等に償却する方法に変えました。理由として、資金調達が長期保有目的のビットコインの購入のためであることを挙げています。2025年1〜9月の営業外費用には、その償却額190百万円が入っています。
ここで、2社を見比べるときの注意を一つ。メタプラネットはビットコインの購入を投資キャッシュフローに入れていますが、リミックスポイントは暗号資産の購入を営業キャッシュフローに入れています。2社のキャッシュフローは、そのまま並べて比べないようにしてください。
ビットコインの周期の中で見ると、利益はビットコイン価格の通信簿になった
ビットコインを買い始めてからの四半期ごとの評価損益を、ビットコインの価格と並べてみます。
| 四半期 | 期末の保有BTC | BTCの期末終値(ドル) | 四半期の騰落率 | ビットコイン評価損益 |
| 2024年4〜6月 | 141.07 | 62,678 | −12.1% | −59.4 |
| 2024年7〜9月 | 398.83 | 63,330 | +1.0% | −65.0 |
| 2024年10〜12月 | 1,761.98 | 93,429 | +47.5% | 5,582.0 |
| 2025年1〜3月 | 4,046 | 82,549 | −11.6% | −7,413 |
| 2025年4〜6月 | 13,350 | 107,135 | +29.8% | 17,449 |
| 2025年7〜9月 | 30,823 | 114,056 | +6.5% | 10,608 |
| 2025年10〜12月 | 35,102 | 87,509 | −23.3% | 目安−131,653 |
※評価損益は百万円(営業外)。2024年の各四半期と2025年4〜9月の各四半期は累計の差から計算した値。2025年10〜12月は当ブログの試算(計算の前提は次の見出しで説明)。BTCの価格はドル建ての四半期末の終値で、騰落率は当ブログの計算。2024年4〜6月の騰落率は3月末からで、購入は4月から。
保有が増えるにつれて、同じような値動きでも評価損益の桁が変わっていきました。2025年1〜3月期は、ビットコインの−11.6%で−7,413百万円。保有が35,102BTCになった今は、年末の換算価格で計算すると、ビットコインが10%動くだけで評価額が約481億円動きます(当ブログの計算)。
ビットコインには、約4年ごとの半減期をはさんだ周期があります。直近の半減期は2024年4月20日で、534日後の2025年10月6日に終値の高値124,752.53ドルをつけ、12月31日は高値から−29.85%でした。過去3回の周期では、山から1年ほどで−76.63〜−84.53%の谷をつけています(終値ベース。過去3回の記述統計で、法則ではありません)。2025年10月の高値が今回の山だったかどうかは、2025年末の時点ではまだわかりません。
では、2026年末のビットコインの水準によって、保有分の時価と取得原価の差はどうなるのか。連載で共通に使う4つの水準で計算してみました。以下はすべて当ブログの試算で、予想ではありません。
| 2026年末のBTC(連載共通の水準) | 1BTCの円換算 | 保有BTCの時価 | 取得原価5,597.3億円との差 |
| S1 過去3回の周期をなぞる:23,053ドル(幅19,301〜29,149ドル) | 361万円 | 1,267億円(幅1,061〜1,602億円) | −4,330億円(−77.4%) |
| S2 2025年の終値の高値の半値:62,376ドル | 977万円 | 3,428億円 | −2,169億円(−38.8%) |
| S3 横ばい:87,509ドル | 1,370万円 | 4,809億円 | −788億円(−14.1%) |
| S4 2025年の終値の高値を回復:124,753ドル | 1,953万円 | 6,856億円 | +1,259億円(+22.5%) |
※保有は35,102BTC、取得原価は5,597.26億円のまま(追加の購入・売却なし)、為替は1ドル156.56円で固定。S1は2025年の終値の高値124,752.53ドル×(1−過去3回の下落率の平均81.52%)で、幅は過去3回の最大84.53%・最小76.63%で計算。円高になれば円建ての時価は表より下がり、円安になれば上がります。
この表は、取得原価と比べた含み損益です。決算に載る評価損益は、取得原価ではなく前の期末の帳簿価額との差で決まるので、2026年12月期の評価損益とは一致しません。取得原価と同じになるのは、1BTC=約101,850ドル(平均取得単価15,945,691円を156.56円で換算)のときです。ビットコインの価格ごとの株価の幅は、借入や優先株を差し引いた計算が必要になるため、資金調達と株価のシナリオを取り上げる回で示します。
年末の換算価格では約788億円の含み損、10〜12月期の評価損は当ブログの試算で約1,317億円
最後に、2025年12月31日時点の姿です。保有は35,102BTC、取得原価の合計は5,597.26億円(平均取得単価15,945,691円)。年末の換算価格(1BTC=13,700,382円)で計算すると、時価は約4,809.1億円で、取得原価を約788.2億円(−14.1%)下回ります。1BTCあたりでは約224.5万円の含み損です(いずれも当ブログの計算)。
では、2025年10〜12月期の決算に、どのくらいの評価損が出うるのか。仮に、9月末の帳簿価額5,427.09億円に10〜12月の取得額698.55億円を足した額と、年末の換算価格での時価4,809.1億円の差をとると、約1,316.5億円の評価損になる計算です(当ブログの試算)。1〜9月の評価益206.4億円の6倍を超える大きさで、単純に足すと、2025年の1年間では約1,110億円の評価損という計算です(当ブログの試算。売上高に入る評価損益は含みません)。
この目安には、はっきりした前提があります。一つ目は価格で、会社が決算で使う価格や時点は、当ブログの換算価格(ドルの終値×156.56円)とは一致しません。会社がKPI(重要業績評価指標)の計算に使ったビットコインの価格は、bitFlyerの終値13,769,200円で、この価格で計算すると評価損の目安は約1,292億円になります(当ブログの計算)。二つ目は表示の場所で、インカム事業用に流動資産に分けたビットコインの評価損益は営業外ではなく売上高に入ります。三つ目に、これは税金の影響を考える前の数字です。実際の数字は、2026年に公表される2025年12月期の決算で示されます。
評価損が出れば、1〜3月期(評価損7,413百万円に対して法人税等調整額1,810百万円の益)と同じように、繰延税金負債が取り崩されて法人税等調整額が「益」になり、純損失をある程度和らげる形になると考えられます(当ブログの見方)。ただ、1〜3月期の益1,810百万円は、期首の繰延税金負債1,958百万円がほぼ取り崩された額で(3月末の残高は148百万円)、評価損に税率をかけた額ではありませんでした。今回も、取り崩せる繰延税金負債は9月末で119.3億円で、取得原価を下回った分に繰延税金資産を計上するかは回収可能性の判断次第です。どこまで和らぐかは、決算を待つ必要があります。評価損は純利益を通じて純資産を減らしますが、ビットコインの枚数そのものが減るわけではありません。この区別も、落ち着いて押さえておきたいところです。
2025年12月期の決算では、評価損の大きさと税効果、年末の借入を確かめたい
次の決算(2025年12月期の通期)で確かめたいことを整理しておきます。
まず、10〜12月期の評価損の大きさと、それが営業外と売上高のどちらにどれだけ入ったか。あわせて、法人税等調整額と繰延税金負債の残高がどう動いたかです。税の扱いについて、会社がどこまで説明を加えるかも見ておきたい点です。
次に、本業の数字です。通期の売上高と営業利益が、10月に引き上げた予想(6,800百万円・4,700百万円)に対してどうだったか。会社が12月30日に示したインカム事業の通期見込み8,580.7百万円が連結にどう表れるか。そして、オプションの売り建てにかかるデリバティブの評価損益が、ビットコインの値下がりの中でどう出たかです。
最後に、年末の貸借対照表と、1年分のキャッシュフロー計算書です。ビットコイン担保の借入2.8億ドルと優先株が載った後の自己資本比率、年末の現金、そして7〜12月にどれだけのお金を集めて、どれだけビットコインに替えたか。2024年12月期の連結計算書類には監査法人やまぶきが無限定適正意見を出していました。2025年12月期の監査報告の中身も、あわせて確かめておきたいところです。
メタプラネットの決算書は「評価」「お金」「税金」を分けて読む
メタプラネットの2025年1〜9月の純利益135.3億円は、営業外のビットコイン評価益206.4億円から、将来の税金の見込み分(法人税等調整額93.5億円)を差し引いた姿が大半でした。本業の営業利益は27.5億円で、その中身はホテルからオプション料へ入れ替わっています。2024年12月期の純利益が繰延税金負債の計上漏れで訂正されたことは、評価益に「将来の税金」がついて回ることを教えてくれる出来事でした。
そして年末には、ビットコインの値下がりで、取得原価に対して約788億円の含み損(当ブログの計算)を抱えています。1〜9月に積み上がった評価益は、10〜12月期の評価損で打ち消される計算です(年末の換算価格による当ブログの試算で、実際の数字は決算で確かめる必要があります)。
大家業を長く続けていると、決算書の利益より、通帳の残高と、売ったときに残る手取りのほうがずっと大事だと身にしみて感じます。評価益は通帳に入らず、税金は売ったときにやってくる。メタプラネットの決算書も、この三つを分けて眺めるだけで、ずいぶん見通しがよくなるはずです。
メタプラネットとは何かを取り上げる回、資金調達と株価のシナリオを取り上げる回、2社とストラテジーを比べる回もあわせてどうぞ。
※本記事は公表資料をもとにした情報提供を目的としたもので、特定の銘柄や暗号資産の売買を勧めるものではありません。株価のシナリオは当ブログが置いた前提による試算で、将来の株価を予想・保証するものではありません。投資の判断はご自身の責任でお願いします。
※数値は各社の決算資料・開示資料をもとに当ブログが集計・計算したもので、四捨五入の関係で合計が合わない場合があります。株価は2025年12月30日(2025年の最終取引日)の終値、ビットコインの価格は2025年12月31日の終値(87,508.83ドル)を1ドル156.56円(三菱UFJ銀行の2025年最終公表日の仲値)で円に換算した値です。
出典・参考
- 2025年12月期 第3四半期決算短信〔日本基準〕(連結)(メタプラネット、2025年11月13日)https://www2.jpx.co.jp/disc/33500/140120251113599616.pdf
- 2025年12月期 第2四半期(中間期)決算短信〔日本基準〕(連結)(メタプラネット、2025年8月13日)https://metaplanet.jp/disclosure-pdf/140120250810538601.pdf
- 2025年12月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)(メタプラネット、2025年5月14日)https://metaplanet.jp/disclosure-pdf/140120250514551586.pdf
- 営業外費用及び法人税等調整額(益)の計上に関するお知らせ(メタプラネット、2025年5月14日)https://www2.jpx.co.jp/disc/33500/140120250513547118.pdf
- 営業外収益、営業外費用及び法人税等調整額の計上に関するお知らせ(メタプラネット、2025年8月13日)https://www2.jpx.co.jp/disc/33500/140120250812539333.pdf
- 営業外収益、営業外費用及び法人税等調整額の計上に関するお知らせ(メタプラネット、2025年11月13日)https://www2.jpx.co.jp/disc/33500/140120251112597031.pdf
- 2024年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(メタプラネット、2025年2月10日)https://www2.jpx.co.jp/disc/33500/140120250130557795.pdf
- (訂正・数値データ訂正)「2024年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」の一部訂正について(メタプラネット、2025年3月3日)https://www2.jpx.co.jp/disc/33500/140120250227584194.pdf
- 2024年12月期 決算説明資料(メタプラネット、2025年2月10日)https://www2.jpx.co.jp/disc/33500/140120250210568391.pdf
- 2024年12月期 第3四半期決算短信(メタプラネット、2024年11月13日)https://metaplanet.jp/disclosure-pdf/140120241112519902.pdf
- 2023年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(メタプラネット、2024年2月14日)https://www2.jpx.co.jp/disc/33500/140120240212533134.pdf
- 有価証券報告書 第26期(2024/01/01-2024/12/31)(メタプラネット、2025年3月24日)https://metaplanet.jp/disclosure-pdf/S100VG8G.pdf
- 2024年定時株主総会招集ご通知に際しての電子提供措置事項(事業報告・連結注記表・監査報告)(メタプラネット、2025年3月3日)https://metaplanet.jp/disclosure-pdf/140120250228585371.pdf
- ビットコイン・インカム事業の2025年第3四半期業績および2025年12月期通期業績予想の修正に関するお知らせ(メタプラネット、2025年10月1日)https://www2.jpx.co.jp/disc/33500/140120251001566047.pdf
- ビットコイン・インカム事業の2025年12月期第4四半期業績および同事業の通期業績予想の修正に関するお知らせ(メタプラネット、2025年12月30日)https://www2.jpx.co.jp/disc/33500/140120251229527955.pdf
- ビットコインの追加購入に関するお知らせ(2025年度第4四半期・通期)(メタプラネット、2025年12月30日)https://www2.jpx.co.jp/disc/33500/140120251229527954.pdf
- クレジット・ファシリティ契約に基づく借入実行に関するお知らせ(メタプラネット、2025年12月5日)https://www2.jpx.co.jp/disc/33500/140120251205515542.pdf
- 第19回普通社債の償還(完済)に関するお知らせ(メタプラネット、2025年12月29日)https://www2.jpx.co.jp/disc/33500/140120251224525648.pdf
- 第三者割当によるB種優先株式発行の払込完了に関するお知らせ(メタプラネット、2025年12月30日)https://www2.jpx.co.jp/disc/33500/140120251229527948.pdf
- EY Japan 会計情報トピックス「ASBJ、実務対応報告第38号『資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い』を公表」(EY、2018年3月19日)https://www.ey.com/ja_jp/technical/corporate-accounting/accounting-topics/2018/accounting-topics-2018-03-19
- 法人税法第61条(e-Gov法令検索、現行の条文)https://laws.e-gov.go.jp/api/1/articles;lawNum=昭和四十年法律第三十四号;article=61
- 財務省「令和6年度 税制改正の解説」法人税法の改正(財務省、2024年)https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2024/explanation/PDF/p0327-0381.pdf
- ビットコイン価格:Yahoo Finance「Bitcoin USD (BTC-USD) Historical Prices」(2025年12月31日までの終値)https://finance.yahoo.com/quote/BTC-USD/history/
- 2013年12月〜2014年のビットコイン価格:StatMuse Money「Bitcoin highest closing price in 2013」 https://www.statmuse.com/money/ask/bitcoin-highest-closing-price-in-2013 、「Bitcoin monthly closing price 2014」 https://www.statmuse.com/money/ask/bitcoin-monthly-closing-price-2014
- 半減期のブロック:com Explorer「Bitcoin block 840,000」https://www.blockchain.com/explorer/blocks/btc/840000































