東雲結子:石井先生、ハワイ帰りの友だちからマカダミアナッツをもらいました! 向こうでは、住宅ローンの金利の話でもちきりだったそうです。
税理士石井:ハワイまで行って金利の話とは、ずいぶん勉強熱心なご友人ですね。
東雲結子:アメリカの30年固定の住宅ローン金利って、2021年1月の2.65%から、2023年10月には7.79%まで上がったんですよね。3倍近くです! それなら家の値段も、半分くらいになったはずですよね。
税理士石井:うーん、それがですね。全米の住宅価格指数(ケース・シラー)は、2022年6月から2023年1月にかけて、季節調整済みの値で2.3%下がっただけでした。
東雲結子:えっ、2.3%? マカダミアナッツ1箱から、1粒も減っていないくらいじゃないですか。
税理士石井:ははは、計算が早いですね。その代わり、中古住宅の販売件数は2021年から2024年にかけて約3分の1減りました。値段より先に、売り買いそのものが細ったんです。
東雲結子:お店の値札はそのままで、お客さんが来なくなった感じですね……。
税理士石井:そうなんです。ただ、同じころの利上げの局面で、英国の住宅価格は5.3%、ドイツは約13.9%、スウェーデンは13%超下がりました。さらにさかのぼると、米国では2006年から2012年に27.4%も下がった時期があります。
東雲結子:同じ利上げなのに、国によって効き目がこんなに違うんですね。大家さんでいえば、同じ金利の上昇でも、物件ごとに返済の痛さが違うのと似ています。
税理士石井:いいたとえです。4か国の2022〜2024年と、米国の2004〜2012年を並べて、何が下がり方を分けたのか、そして日本に持ち帰れることは何かを考えてみましょう。
日本の利上げは、2024年3月から2025年12月までで0.85ポイントでした。では、海外の利上げで不動産価格はどうなったのか。この回では、2022〜2023年に大きく利上げした米国・英国・ドイツ・スウェーデンの4か国と、2004〜2006年に利上げした米国の例を、公表データで並べます。
先に結論めいたことを一つだけ言うと、4か国はどこも4〜5ポイント台という、日本よりはるかに大きな利上げをしましたが、住宅価格の下がり方は、季節調整済みで−2.3%の米国から、約−13.9%のドイツや13%超のスウェーデンまで、大きく分かれました。米国では、価格よりも取引の件数が大きく落ちています。一方、2006年からの米国の下落は67か月続き、利下げが始まってからも止まりませんでした。
大家として海外のニュースを見るとき、私がいつも気をつけているのは、「利上げ」という同じ言葉の中身が国ごとに違うことです。上げ幅、借り手の返済に届く速さ、利上げの前にどれだけ価格が上がっていたか。その違いを一つずつ確かめてから、日本の話に戻ってきます。数字はすべて2025年12月31日までに公表されたもので、時点はその都度書きます。
2022〜23年、4か国は1年半前後で4〜5ポイント利上げした
まず、各国の政策金利です。
| 国・地域 | 政策金利 | 利上げの期間 | 上げ幅 | 2025年末の水準 |
| 米国 | FF金利の誘導目標 0〜0.25%→5.25〜5.50% | 2022年3月17日〜2023年7月27日(11回) | +5.25pt | 3.50〜3.75%(2025年12月11日から) |
| 英国 | バンクレート 0.10%→5.25% | 2021年12月16日〜2023年8月3日(14回) | +5.15pt | 3.75%(2025年12月18日から) |
| ユーロ圏(ドイツ) | ECB預金ファシリティ金利 −0.50%→4.00% | 2022年7月27日〜2023年9月20日(10回) | +4.50pt | 2.00%(2025年6月11日から) |
| スウェーデン | 政策金利 0%→4.00% | 2022年春〜2023年9月27日 | +4.00pt | 1.75%(2025年10月1日から) |
| 日本(参考) | −0.1%→0.75%程度 | 2024年3月19日〜2025年12月19日(決定日) | +0.85pt | 0.75%程度(2025年12月22日から) |
※日付は各中央銀行の資料にある変更日(米国は会合の翌日の実施日、スウェーデンの2023年9月27日は実施日)。日本は決定日で、−0.1%は日銀当座預金のうち政策金利残高に適用していた金利。スウェーデンは2022年春まで0%で、途中の各回の引き上げは個別に確かめていない。
用語メモ:FRB(連邦準備制度理事会)=米国の中央銀行。FF金利(フェデラル・ファンド金利)=米国の政策金利で、目標を幅で示します。バンクレート=イングランド銀行(英国の中央銀行)の政策金利。ECB(欧州中央銀行)=ドイツを含むユーロ圏の中央銀行で、ここでは預金ファシリティ金利(銀行がECBに預けるお金の金利)を使います。リクスバンク=スウェーデンの中央銀行。
米国は2022年3月から2023年7月までの1年4か月で11回、英国は1年8か月で14回、ユーロ圏は1年2か月で10回の利上げでした。ユーロ圏の預金金利は−0.50%というマイナスから出発していて、マイナス金利からの出口という点では、日本と少し似た立場です。
日本の0.85ポイントと比べると、4.7〜6.2倍の上げ幅です(当ブログの計算)。そして2025年末には、4か国とも利下げに転じていました。米国は3.50〜3.75%、英国は3.75%、ユーロ圏は2.00%、スウェーデンは1.75%。スウェーデンは2024年5月から利下げに転じ、11月までに1.25ポイント下げました。上げるときも下げるときも、海外の金利は日本よりずっと大きく、速く動いています。
住宅価格の下落は米国の−2.3%から、ドイツ・スウェーデンの13%超まで
では、住宅価格はどれだけ下がったのか。各国の代表的な指数で、ピークから底(または比べた時点)までを並べます。
| 国 | 指数 | ピーク→底 | 下落率 | 注 |
| 米国 | S&Pコタリティ・ケース・シラー全米住宅価格指数 | 2022年6月→2023年1月 | 季節調整なし−5.0%/季節調整済み−2.3% | 2025年10月はピークを+6.6%上回る(季節調整なし) |
| 英国 | ネーションワイド住宅価格指数 | 2022年8月→2023年8月 | −5.3% | 季節調整済み・名目。底の月は確かめていない |
| ドイツ | ドイツ連邦統計局の住宅価格指数 | 2022年4〜6月期→2024年1〜3月期 | 約−13.9% | 速報値の変化率をつないだ計算。ピークを2022年4〜6月期と仮定 |
| スウェーデン | リクスバンクの金融安定報告による | 2022年2月または3月→2023年4月末 | −13%超 | ピークの月は報告によって違う |
| 米国(参考) | ケース・シラー全米(季節調整なし) | 2006年7月→2012年2月 | −27.4% | 67か月 |
※米国の下落率は指数の値から当ブログが計算(季節調整なし308.055→292.671、季節調整済み304.153→297.205、2006〜2012年は184.61→133.99)。ドイツは2023年4〜6月期の前年同期比−9.9%に、その後3四半期の前期比(−1.4%、−2.0%、−1.1%)をつないだ当ブログの計算。スウェーデンのピークは、リクスバンクの2023年6月の報告では2022年3月、2023年11月の報告では2022年2月。
用語メモ:ケース・シラー指数=S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスが公表する米国の住宅価格指数で、全米指数は2000年1月を100とします。季節調整=季節によって毎年くり返す動きを取り除くこと。季節調整なしの値どうしを違う月で比べると、季節の動きが混ざります。

図は、左に政策金利の上げ幅、右に住宅価格のピークからの下落率を、国ごとに横棒で並べたものです。上から、米国(2022〜23年、+5.25ポイント、−2.3%)、英国(2021〜23年、+5.15ポイント、−5.3%)、ドイツ(ユーロ圏の預金ファシリティ金利で+4.50ポイント、−13.9%)、スウェーデン(+4.00ポイント、−13%超。「以上」を表す斜線つき)。いちばん下の灰色の棒は参考の米国2004〜06年で、+4.25ポイントの利上げのあと、2006年7月から2012年2月に−27.4%(季節調整なし)でした。米国の2022〜23年の下落は季節調整済みの値で、季節調整なしでは−5.0%であることや、米国の商業不動産でオフィスが−35%(二次資料)だったことは、図の注に書いています。
左の棒の長さはどの国もほとんど同じなのに、右の棒の長さはばらばらです。4〜5ポイントの利上げで、住宅価格の下落は2〜14%と大きな幅がありました。
ドイツの下落は、2023年7〜9月期の前年同期比−10.2%、2023年の年平均で−8.4%と、どちらも統計が始まった2000年以来の大きさでした。スウェーデンについては、リクスバンクが2023年6月の報告で、ピークから底までの下落を約20%と見込んでいました。実際には、2023年秋の報告でピークより12%超低い水準、2024年11月の報告では10%強低い水準と、見込みほどは下がっていません。ドイツも、2024年4〜6月期には前期比+1.5%と上向き、7〜9月期の前年同期比は−0.7%まで縮んでいます。大きく下げた2国も、利下げが始まった2024年には、下げ止まりの動きを見せていました。
ここで、利上げが始まってから価格がピークをつけるまでの時間も見ておきます。米国は2022年3月17日の最初の利上げから約3か月後の2022年6月、英国は2021年12月16日から約8か月後の2022年8月がピークでした。ドイツとスウェーデンは、ピーク(2022年4〜6月期、2022年2月か3月)が利上げの始まりの前後に来ています。どの国も、利上げの始まりから1年以内に、価格は下り坂に入っていました(当ブログの計算)。
アメリカの住宅価格は、季節調整済みで見ると−2.3%の小さな調整だった
米国から詳しく見ます。米国の住宅ローン金利の目安として、フレディマック(米連邦住宅金融抵当公社)が毎週公表する30年固定金利の平均(PMMS)を使います。
| 時点(週) | 30年固定金利 | メモ |
| 2021年1月7日 | 2.65% | 1971年の調査開始以来の最低 |
| 2022年10月27日・11月10日 | 7.08% | 2022年の最高 |
| 2023年10月26日 | 7.79% | 2023年の最高 |
| 2025年12月31日 | 6.15% | 2025年の最低 |
※フレディマックの公表による週平均。
2021年1月の2.65%から2023年10月の7.79%まで、5.14ポイントの上昇です(当ブログの計算)。とくに2022年の上がり方は急で、各月の最初の週の値で見ると、1月の3.22%から4月4.72%、7月5.30%、10月6.66%と、9か月で2倍を超えました。返済額に直すと、10万ドルを30年の元利均等で借りた場合、毎月の返済は2.65%で約403ドル、7.79%で約719ドルになります。約78%の増加で、同じ返済額で借りられる額は約44%減る計算です(当ブログの計算、式は日本の住宅ローンと同じ元利均等返済の式)。
それでも、ケース・シラー全米指数の下落は小さなものでした。季節調整なしの値では、2022年6月の308.055から2023年1月の292.671へ−5.0%。ところが季節調整済みの値で同じ月を比べると、304.153から297.205へ−2.3%で、半分以下です。6月と翌年1月のように違う季節を比べると、季節の動きが数字に入り込みます。米国の住宅価格の下落率を読むときは、どちらの値なのかを必ず確かめてください。
その前の上がり方も大きかったことは、押さえておきたいところです。ケース・シラー全米指数(季節調整なし)は、2020年1月の212.355から2022年6月の308.055へ、2年半で+45.1%上がっていました(当ブログの計算)。前年同月比の上昇率はこの時期、2022年3月の+20.8%が最も高く、その3月に利上げが始まります。そして2025年10月(2025年12月30日公表)の水準は328.44で、2022年6月のピークを+6.6%上回り、前年同月比は+1.4%でした。米国の住宅価格は、5ポイントを超える利上げのあとで、名目ではピークを超えて戻っています。
価格より先に、取引が3分の1減った
価格が小さくしか下がらなかった一方で、大きく落ちたのが取引の件数です。全米不動産業者協会(NAR)の中古住宅販売件数は、2021年の612万件(2006年以来の多さ)から、2023年は409万件(前年比−19%、1995年以来の少なさ)、2024年は406万件へ減りました。2021年から2024年で−33.7%、約3分の1の減少です(当ブログの計算)。
なぜ、取引がこれだけ減ったのに、価格は小さくしか下がらなかったのか。この連載で集めた資料は、その理由を説明していません。ここからは私の見方です。低い金利で借りて家を持っている人は、売れば次の家を高い金利で借り直すことになります。だから売り急がず、売りに出る家そのものが減った。買い手も減ったけれど、売り手も減ったので、値段は崩れにくかったのではないかと考えています(当ブログの見方)。
大家業でいえば、利回りの良い物件を低い金利で持っている大家さんは、相場が冷えても簡単には手放しません。買い手が減っても、売り物も一緒に減れば、成約価格はあまり動かない。そのかわり、売り買いの件数がぐっと減って、相場そのものが見えにくくなります。価格の指数だけを見ていると、この「静かな冷え込み」を見落としかねません。
商業不動産はオフィスが−35%(二次資料)、住宅より大きく下げた
住宅とは対照的に、商業不動産の下落は大きなものでした。米国の商業不動産の価格指数(グリーン・ストリートのCPPI)について、ビズナウの記事(二次資料)は、2022年3月のピークから2023年11月までに全体で−22%、オフィスで−35%、集合住宅で−30%下がったと伝えています。同じ記事によれば、グリーン・ストリートは、価格が底を打った可能性が高いとみていました。その後、グリーン・ストリート自身の公表では、12か月の変化率は2025年1月に+4.5%、2025年11月に+2.4%と、戻りは一部にとどまっています。
用語メモ:CPPI(商業用不動産価格指数)=グリーン・ストリート社が公表する、米国の商業不動産の価格指数です。
スウェーデンでも、リクスバンクの2024年11月の金融安定報告によれば、大手の不動産会社(33社)は2022年秋から物件の評価を平均で約10%引き下げていて、同行の簡単な計算ではオフィスは約25%低くなっていました。
住宅は「住む人」が買い、商業不動産やアパートの一棟は「利回りで考える投資家」が買います。投資家は、国債の利回りが上がれば、物件に求める利回り(キャップレート)も上げようとします。家賃が同じなら、求める利回りが上がった分だけ価格は下がる。米国の住宅と商業不動産の下がり方の違いは、この仕組みの違いを映していると私は考えています(当ブログの見方)。日本の投資用不動産の期待利回りと国債の関係は、キャップレートを取り上げる回で詳しく計算します。
2004〜06年の米国は、利上げが終わったころに価格が天井をつけ、67か月で−27.4%
もう一つ、時間をさかのぼります。米国は2004年6月30日から2006年6月29日まで、17回の会合で続けて0.25ポイントずつ利上げし、FF金利の誘導目標は1.00%から5.25%へ、4.25ポイント上がりました。
ケース・シラー全米指数(季節調整なし)のピークは2006年7月の184.61で、最後の利上げから約1か月後です。最初の利上げからは約24か月がたっていました。そこから2012年2月の133.99まで、67か月で−27.4%下がっています。
その間に、FRBは2007年9月18日から利下げを始め、2008年12月16日には誘導目標を0〜0.25%まで下げました。それでも価格は、ゼロ近くまで下げてから3年以上、2012年2月まで底をつけませんでした(途中で一時的に持ち直した時期はあります。期間は当ブログの計算)。金利を下げれば価格はすぐに戻る、とはなりませんでした。
この下落の中身、つまりどんな借り手が、どんなローンで家を買っていたのかや、2008年の世界的な金融危機との関係は、この連載で集めた資料では確かめられていません。また、この時期の米国の住宅ローン金利の数字も集められていません。そのため、ここで言えるのは、利上げの局面が終わってから下落が始まり、利下げが進んでも長く続いた、という時間の形までです。
2022〜23年と比べると、違いがよくわかります。2022年の利上げでは、上げ幅は5.25ポイントと大きかったのに、住宅価格の下落は季節調整済みで−2.3%。2004〜06年は、上げ幅4.25ポイントで、そのあとの下落は−27.4%。利上げの大きさと価格の下がり方は、きれいには比例していません。
下がり方を分けたのは何か(当ブログの見方)
ここまでの数字を、時間の形でまとめておきます。
| 局面 | 上げ幅 | 最初の利上げ→価格のピーク | ピーク→底 |
| 米国 2004〜06年 | +4.25pt | 約24か月(2006年7月) | −27.4%(67か月、季節調整なし) |
| 米国 2022〜23年 | +5.25pt | 約3か月(2022年6月) | −2.3%(季節調整済み)/−5.0%(季節調整なし) |
| 英国 2021〜23年 | +5.15pt | 約8か月(2022年8月) | −5.3%(季節調整済み) |
| ドイツ 2022〜23年 | +4.50pt | 利上げの始まりの前後(2022年4〜6月期) | 約−13.9%(速報値の連鎖) |
| スウェーデン 2022〜23年 | +4.00pt | 利上げの始まりの前後(2022年2月か3月) | −13%超(2023年4月末まで) |
| 日本 2024〜25年 | +0.85pt | 2025年12月31日時点で下落は未確認(約21か月) | — |
※時間差は日数÷30.4375の概数(当ブログの計算)。指数の作り方は国ごとに違い、下落率をそのまま比べることはできない。
ここからは、私の見方です。
一つ目に、利上げの「幅」よりも、利上げが借り手の返済に「届く速さ」が、下がり方を分けたのではないかと考えています。この連載の資料では、各国の住宅ローンのうち変動金利と固定金利がどれだけあるかまでは集めていません。ただ、返済が利上げに合わせてすぐ増える借り手が多い国ほど、売らざるを得ない人や、買えなくなる人が早く増えるはずです。米国で取引が細っても価格が崩れなかったことは、裏を返せば、多くの持ち主にとって返済がすぐには増えなかったことを示しているのかもしれません(当ブログの見方)。
二つ目に、利上げの前にどれだけ上がっていたかです。米国は利上げ前の2年半で+45.1%上がっていて、下落はその上昇の一部を戻しただけでした。上がり方が大きいほど、下がる余地も大きくなります。
三つ目に、2004〜06年の米国が示すように、価格の天井は利上げの終わりごろに来ることもあり、下落は利下げのあとまで続くことがあります。「利上げが終われば安心」「利下げが始まれば戻る」とは、必ずしも言えません。
海外の利上げから日本に持ち帰れること(当ブログの見方)
最後に、日本の今(2025年末)に当てはめて考えます。以下はすべて当ブログの見方です。
まず、上げ幅の違いです。日本の利上げは0.85ポイントで、海外の4〜5ポイント台とは大きさがまるで違います。日銀は2025年12月19日の決定で、「政策金利の変更後も、実質金利は大幅なマイナスが続き、緩和的な金融環境は維持される」としています。物価(生鮮食品を除く消費者物価、2025年11月は前年同月比+3.0%)を差し引いた実質の政策金利は、−2.25%です(0.75%−3.0%、当ブログの計算)。海外のような急な利上げとは、出発点も速さも違います。
それでも、海外の数字は「もし日本の金利が大きく上がったら」を考える材料になります。たとえば4,000万円を35年の元利均等で借りる場合、金利が0.5%なら毎月の返済は103,834円ですが、海外の利上げ幅の半分ほどの2.5ポイント上がって3.0%になると153,940円です。毎月12万円の返済で借りられる額は、4,623万円から3,118万円へ32.5%減ります(当ブログの計算、数値は例示)。海外で取引が細ったのは、こうした返済の重さが一気に買い手にのしかかったからだと私は考えています(当ブログの見方)。
次に、返済に届く速さです。日本では、住宅金融支援機構の2025年4月調査で、住宅ローンを借りた人の79.0%が変動型でした。変動金利は、米国の30年固定とは逆に、利上げが返済に届く道筋を持っています。ただし住宅金融支援機構の調査では、返済額を5年間は変えず、見直すときも前回の1.25倍までとする「5年・125%ルール」の方式が最も多いとされています。この方式の銀行で借りている人は、利上げがすぐには毎月の返済に表れません(このルールのない銀行もあります)。この仕組みで返済がどう変わるかは、住宅ローンの返済額を取り上げる回で詳しく計算します。
三つ目に、価格より先に取引を見ることです。米国では、価格の指数が小さくしか動かないうちに、中古住宅の販売件数が3分の1減りました。日本でも、価格の指数だけでなく、売れ行きの数字を見ておきたいところです。たとえば不動産経済研究所によると、首都圏の新築マンションは2025年10月の供給が1,316戸で前年同月比−28.2%、売り出したその月に契約が決まった割合(初月契約率)は63.0%でした。1か月の数字だけで流れは判断できませんが、売れ行きや供給の変化は、価格より先に表れることがあります(当ブログの見方)。
四つ目に、投資用の物件ほど金利に敏感だということです。米国ではオフィスが−35%(二次資料)と、住宅よりずっと大きく下がりました。日本の期待利回りは、丸の内・大手町のオフィスで3.2%、城南のワンルームで3.7%(日本不動産研究所、2025年10月)と低い水準にあり、10年国債(2025年12月30日の終値2.070%)との差は、ワンルームで1.63ポイントです(時点の違う参考値、当ブログの計算)。上乗せが薄いほど、国債の利回りが上がったときの影響は大きくなります。
そして最後に、時間です。米国や英国では、最初の利上げから1年もたたずに価格がピークをつけました。日本は、2024年3月の最初の利上げから約21か月がたった2025年12月31日の時点で、不動産価格指数(2025年9月まで)にも地価公示(2025年1月1日時点)にも、まだ下落は表れていません。海外と同じ道をたどるとは限りませんし、逆に、2004〜06年の米国のように、利上げの終わりごろに天井が来る形もありえます。
大家業を長く続けていると、相場の変わり目は、値段より先に「問い合わせの数」や「内見の数」に出ることを肌で感じます。海外の利上げの記録も、同じことを教えてくれているように思います。値段の数字が落ち着いて見えるときほど、売り買いの件数と、借り手の返済の重さに目を向けておきたい。過去の日本の利上げの局面は、バブル期や2006年の利上げを取り上げる回で、2026年以降の金利のシナリオは、シナリオを取り上げる回でまとめています。あわせてどうぞ。
※本記事は公表資料をもとにした情報提供を目的としたもので、特定の不動産や金融商品の売買、借入を勧めるものではありません。価格や金利のシナリオは当ブログが置いた前提による試算で、将来の価格や金利を予想・保証するものではありません。
※数値は各機関の公表資料をもとに当ブログが集計・計算したもので、四捨五入の関係で合計が合わない場合があります。金利・価格は2025年12月31日までに公表された値で、時点は本文・表に記載しています。税制は2025年12月31日時点の法令にもとづき、令和8年度税制改正大綱の内容は今後の法改正で決まります。
出典・参考
- Open Market Operations(Federal Reserve Board、2025年12月11日の変更までを参照)https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/openmarket.htm
- Official Bank Rate history(Bank of England、2025年12月18日の変更までを参照)https://www.bankofengland.co.uk/boeapps/database/Bank-Rate.asp
- Key ECB interest rates(European Central Bank、2025年6月11日の変更までを参照)https://www.ecb.europa.eu/stats/policy_and_exchange_rates/key_ecb_interest_rates/html/index.en.html
- Monetary policy decision September 2023(Sveriges Riksbank、2023年9月20日)https://www.riksbank.se/globalassets/media/rapporter/ppr/penningpolitiskt-beslutsdokument/engelska/2023/monetary-policy-decision-september-2023-policy-rate-decision.pdf
- Monetary policy decision September 2025(Sveriges Riksbank、2025年9月23日)https://www.riksbank.se/globalassets/media/rapporter/ppr/penningpolitiskt-beslutsdokument/engelska/2025/monetary-policy-decision-september-2025-policy-rate-decision.pdf
- Mortgage Rates Hit a New Record Low the First Week of 2021(Freddie Mac、2021年1月7日)https://freddiemac.gcs-web.com/news-releases/news-release-details/mortgage-rates-hit-new-record-low-first-week-2021
- Mortgage Rates Continue to Climb Toward Eight Percent(Freddie Mac、2023年10月26日)https://freddiemac.gcs-web.com/news-releases/news-release-details/mortgage-rates-continue-climb-toward-eight-percent/
- Mortgage Rates Drop to Lowest Level in 2025(Freddie Mac、2025年12月31日)https://freddiemac.gcs-web.com/news-releases/news-release-details/mortgage-rates-drop-lowest-level-2025
- Primary Mortgage Market Survey archive 2022(Freddie Mac、2022年の週次)https://www.freddiemac.com/pmms/archive?year=2022
- S&P Cotality Case-Shiller U.S. National Home Price Index, NSA(FRED、2025年10月までの値)https://fred.stlouisfed.org/data/CSUSHPINSA.txt
- S&P Cotality Case-Shiller U.S. National Home Price Index, SA(FRED、2025年10月までの値)https://fred.stlouisfed.org/data/CSUSHPISA.txt
- S&P Cotality Case-Shiller Index Reports Annual Gain in October 2025(S&P Dow Jones Indices、2025年12月30日)https://press.spglobal.com/2025-12-30-S-P-COTALITY-CASE-SHILLER-INDEX-REPORTS-ANNUAL-GAIN-IN-OCTOBER-2025
- US existing home sales rise in December; house prices hit record high in 2024(NAR In the News、Reuters、2025年1月24日)https://www.nar.realtor/press-releases/in-the-news/us-existing-home-sales-rise-in-december-house-prices-hit-record-high-in-2024-reuters
- Home Sales Were the Lowest in Almost 30 Years in 2023(NAR In the News、The Wall Street Journal、2024年1月19日)https://www.nar.realtor/press-releases/in-the-news/home-sales-were-the-lowest-in-almost-30-years-in-2023-the-wall-street-journal
- NAR: Annual Existing-Home Sales Hit Highest Mark Since 2006(GAAR、2022年1月24日)https://gaar.com/blog/article/nar-annual-existing-home-sales-hit-highest-mark-since-2006
- Green Street: CRE Prices Fell Another 3% But ‘May Well Have Hit Bottom’(Bisnow、2023年12月8日)https://www.bisnow.com/news/national/capital-markets/green-street-cre-prices-fell-another-3-but-may-well-have-hit-bottom-121991
- Pricing Index: Modest Price Gains for Fairly Valued Real Estate(Green Street、2025年12月4日)https://ca.greenstreet.com/pricing-index-modest-price-gains-for-fairly-valued-real-estate/
- Commercial Property Price Index archive(Green Street、2025年)https://ca.greenstreet.com/category/thought-leadership/pricing-index-cppi/page/3/
- August sees further weakness in house prices(Nationwide、2023年9月1日)https://www.nationwide.co.uk/media/hpi/download/mr5je-gqmvc-kd164-18cgv-qysv4
- Destatis press release No.379(2023年4〜6月期の住宅価格指数)(Destatis、2023年9月22日)https://www.destatis.de/EN/Press/2023/09/PE23_379_61262.html
- Destatis press release No.498(2023年7〜9月期の住宅価格指数)(Destatis、2023年12月22日)https://www.destatis.de/EN/Press/2023/12/PE23_498_61262.html
- Destatis press release No.114(2023年10〜12月期と2023年の住宅価格指数)(Destatis、2024年3月22日)https://www.destatis.de/EN/Press/2024/03/PE24_114_61262.html
- Destatis press release No.240「Prices of residential property in the 1st quarter of 2024: -5.7% year on year」(Destatis、2024年6月21日)https://www.destatis.de/EN/Press/2024/06/PE24_240_61262.html
- Destatis press release No.489(2024年7〜9月期の住宅価格指数)(Destatis、2024年12月20日)https://www.destatis.de/EN/Press/2024/12/PE24_489_61262.html
- Financial Stability Report 2023:1(Sveriges Riksbank、2023年6月1日)https://www.riksbank.se/globalassets/media/rapporter/fsr/engelska/2023/230601/financial-stability-report-2023_1.pdf
- Financial Stability Report 2023:2(Sveriges Riksbank、2023年11月9日)https://www.riksbank.se/globalassets/media/rapporter/fsr/engelska/2023/231109/financial-stability-report-2023_2.pdf
- Financial Stability Report 2024:2(Sveriges Riksbank、2024年11月14日)https://www.riksbank.se/globalassets/media/rapporter/fsr/engelska/2024/241114/financial-stability-report-2024_2.pdf
- 金融市場調節方針の変更について(日本銀行、2025年12月19日)https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/state_2025/k251219a.htm
- 金融政策の枠組みの見直しについて(日本銀行、2024年3月19日)https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/k240319a.pdf
- 統計メールニュース1820(全国消費者物価指数 2025年11月分)(総務省統計局、2025年12月19日)https://www.stat.go.jp/info/mail/pdf/20251219_no1820.pdf
- 住宅ローン利用者の実態調査(住宅ローン利用者調査 2025年4月調査)(住宅金融支援機構、2025年6月)https://www.jhf.go.jp/files/a/public/jhf/400374085.pdf
- 2024年度 住宅ローン貸出動向調査結果(住宅金融支援機構、2025年2月7日)https://www.jhf.go.jp/files/a/public/jhf/400372590.pdf
- 住宅ローン金利の計算方法をシミュレーションと共にご紹介!返済額を下げる方法も徹底解説(三井住友銀行、2024年7月10日)https://www.smbc.co.jp/kojin/jutaku_loan/column/kinri_calculation/
- 首都圏 新築分譲マンション市場動向 2025年10月(不動産経済研究所、2025年11月20日)https://www.fudousankeizai.co.jp/share/mansion/649/nX7fjrSm.pdf
- 第53回 不動産投資家調査(2025年10月現在)(日本不動産研究所、2025年11月27日)https://www.reinet.or.jp/wp-content/uploads/2025/11/published-document_main_the-japanese-real-estate-investor-survey_202510.pdf
- 長期金利上昇2・070%(共同通信、OANDA Lab 転載、2025年12月30日)https://www.oanda.jp/lab-education/market_news/kn_2025123001000819/
- 不動産価格指数(令和7年9月・令和7年第3四半期分)を公表(国土交通省、2025年12月26日)https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo05_hh_000001_00242.html
- 令和7年地価公示 参考資料38「公示価格年別対前年平均変動率」(国土交通省、2025年3月)https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/content/001873097.pdf































