東雲結子:石井先生、ライオットって、電気の使用を抑えるとテキサスでお金がもらえるそうですね。掘らずに稼げるなんて、夢の職場です!

税理士石井:ははは。「電力のクレジット」ですね。2025年7〜9月期は30.6百万ドルありました。

東雲結子:じゃあ私も、真夏にエアコンを止めて、電力会社に請求書を送ってみます!

税理士石井:うーん、東雲さんの場合、電力会社に届くのは請求書ではなく、汗だくの東雲さんご本人だと思います。

東雲結子:えーっと……。でも、そのクレジットのおかげで、ライオットは楽に掘れているんですよね?

税理士石井:それがですね、減価償却まで含めると、1BTCを掘るコストは2025年7〜9月期で89,074ドル。11月に売ったBTCの平均価格は96,560ドルでしたから、残る幅はかなり薄いんです。

東雲結子:おっと(汗)。じゃあ、掘ったBTCはどうしているんですか?

税理士石井:2025年4月から、掘った分をほぼ毎月売っています。たとえば9〜11月の3か月で1,310BTCを掘って、1,248BTCを売りました。

東雲結子:あっ……。家賃をため込む大家さんから、その月の家賃で修繕と返済を回す大家さんに変わったんですね。

税理士石井:いい例えです。その変化の背景と、テキサスの電力、そしてAIデータセンター構想が株価にどう効くのかを、決算書で順番に確かめていきましょう。

第9回は、テキサス州を地盤にするビットコイン・マイナー、ライオット・プラットフォームズ(ティッカーRIOT、米ナスダック上場、12月決算)です。2022年12月30日付で旧社名のライオット・ブロックチェーンから改称しました。RIOTの株価は2025年12月31日の終値で12.67ドル、2025年の騰落率は+24.1%。ビットコイン(BTC)が−6.3%だった年に、同じマイナーのマラ(−46.5%)とは逆にプラスで終えています。時価総額は約47.1億ドル(1ドル156.56円で換算すると約7,375億円)です。

同じマイナーでも、マラが「掘ったBTCをため込む」道を進んだのに対し、ライオットは2025年4月から「掘った分をほぼ毎月売る」運用に変わりました。そしてテキサス州コルシカナの拠点では、空いている約600MWをAI・HPC(高性能計算)向けに使う構想を進めています。ただし2025年12月31日の時点で、データセンターの入居者(テナント)はまだ発表されていません。

今回は、拠点と電力、1BTCを掘るコスト、BTCの持ち方、資金調達、AI構想を見たうえで、2026年の株価のシナリオを考えます。半減期やハッシュプライスの仕組みは、ビットコイン・マイニングの経済学を取り上げる回で詳しく扱いますので、ここではライオットを読むのに必要なところに絞ります。

テキサスの二大拠点と、電力を「使わない」ことで得る収入

拠点 規模 状況(2025年12月31日まで)
テキサス州ロックデール(ミラム郡) 700MW 2023年に700MWへの拡張を完了。会社は開発済みの容量で北米最大のマイニング施設と説明。土地は長期の借地
テキサス州コルシカナ(ナバロ郡) 総1GW 第1期の400MW(液浸冷却)を2024年に完成。残る約600MWをAI・HPC向けに検討
ケンタッキー州(旧Block Mining) 稼働60MW 2拠点で155MWまで拡張の余地。2025年の自社採掘の目標は110MW
旧Rhodiumの資産 125MW 2025年4月28日、Rhodiumとの和解に伴って取得

※2024年12月期の年次報告書(10-K)、2023年12月期の決算発表、2025年7〜9月期の10-Qによる。ほかにエンジニアリング事業(ESS Metron、E4A)をコロラド州デンバーとテキサス州ヒューストンに持つ。

ライオットの拠点は、テキサス州の電力系統(ERCOT)と、ケンタッキー州の拠点がつながる電力系統(MISO)に接続しています。特徴は、電力の柔軟性をお金に換えていることです。採掘を止めて電気の使用を抑えることで、「電力カーテイルメント・クレジット」を受け取れます。損益計算書では、費用を減らす独立した科目として載ります。ERCOTとMISOの需要応答(デマンドレスポンス)の制度にも参加しています。

電力カーテイルメント・クレジット 2022年 2023年 2024年 2025年1〜9月 2025年7〜9月期
金額(百万ドル) 27.3 71.2 33.7 46.7 30.6

※2023年は約2,497BTCに相当(会社の説明)。2025年11月の電力クレジットは合計2.3百万ドル(カーテイルメント1.0、需要応答1.3)。

全社の電力コスト(オールイン)は、2024年12月期が1kWhあたり3.4セント、2025年11月が4.0セント(クレジット控除後)でした。

大家業でいえば、本業の家賃とは別に入る駐車場や自販機の副収入に近いものです。ただし金額は天候と電力市場しだいで、2023年の71.2百万ドルが2024年には33.7百万ドルへと半分以下になりました。毎年あてにできる家賃ではない、という点は押さえておきたいところです。

ハッシュレートは36.6EH/s。半減期をはさんで1EH/sあたりの採掘量は約7割減

時点 設置済みのハッシュレート(EH/s) BTCの生産量(枚)
2022年 9.7(年末) 5,554(年間)
2023年 12.4(年末) 6,626(年間)
2024年 31.5(年末) 4,828(年間)
2025年 36.6(11月末) 4,362(1〜9月)

※2025年11月の実際に稼働した平均は34.6EH/s。機械の効率は2024年11月の22.3J/THから2025年11月は20.5J/THへ改善。2024年12月期の10-Kは、2025年末に約38.4EH/sを見込んでいた。

用語メモ:EH/s(エクサハッシュ毎秒)=採掘の計算力の単位。J/TH=1テラハッシュの計算に使う電力量(ジュール)で、小さいほど省エネです。

ハッシュレートは2023年末の12.4EH/sから2024年末の31.5EH/sへ大きく増えましたが、2024年の生産量は前年の6,626枚から4,828枚に減りました。2024年4月20日の半減期で、1ブロックの採掘報酬が6.25BTCから3.125BTCへ半分になったうえ、世界中のマイナーが機械を増やしたからです。

当ブログの計算では、期首と期末の平均ハッシュレートで割った「1EH/sあたりの年間採掘量」は、2023年の599.6枚から2025年1〜9月(年率換算)の171.1枚へ、−71%。それでも1EH/sあたりのマイニング売上は17.10百万ドルから17.43百万ドルへ+2%と、ほぼ横ばいでした。BTC価格の上昇が、採れる枚数の減少を打ち消した形です。ライオットは夏に大きく採掘を止めるため、設置済みのハッシュレートあたりの生産量は低めに出る点には注意してください。

家賃が一斉に半分になる大規模改定を、部屋数を約3倍に増やすことと家賃相場の上昇で、何とか乗り切った。2024年から2025年のライオットは、そんな状態に見えます。

1BTCを掘るコストは、減価償却込みで7〜9月期に約8.9万ドルまで上がった

期間 採掘コスト(減価償却除く、ドル) 減価償却込み(ドル)
2023年 3,831 —
2024年 32,216 —
2024年1〜9月 27,733 55,849
2024年7〜9月期 35,376 75,505
2025年1〜9月 46,311 86,985
2025年7〜9月期 46,324 89,074

※会社定義:(ビットコイン・マイニングの売上原価(減価償却除く)−電力カーテイルメント・クレジット)÷生産したBTC。2025年7〜9月期は(95,765−30,634)千ドル÷1,406BTC。2023年は2024年12月期の決算発表で示された現在の基準の値(2023年当時の基準では7,539ドル)。2022年は公表値11,225ドル(旧基準)で、現在の式では8,461ドル。

ライオットは、1BTCを掘るのにいくらかかったかを会社の定義で開示しています。電気代などの採掘の原価から電力カーテイルメント・クレジットを差し引き、生産したBTCで割った数字で、減価償却を含まない「現金ベース」の値と、減価償却を含めた値の二つがあります。

図は、このコストと、同じ期間のBTC価格(月末終値の平均、当ブログの計算)を並べたものです。2023年の3,831ドルという極端に低い値は、71.2百万ドルのクレジットが原価の大半を打ち消した結果で、BTC価格の平均29,876ドルに対して大きな余裕がありました。半減期を挟んだ2024年は32,216ドル(BTC価格の平均は67,744ドル)、2025年1〜9月は46,311ドル(同101,484ドル)へ上がっています。減価償却込みでは2025年1〜9月が86,985ドルで、図の点線で示した12月31日のBTC終値87,509ドルとほぼ同じ高さです。7〜9月期だけを取ると89,074ドルで、年末のBTC価格を上回っていました。

大家業にたとえると、減価償却を除いたコストは「毎月の管理費と光熱費」、減価償却込みは「建物の買い替え費用まで積み立てた本当のコスト」です。マイニングの機械は数年で新型に置き換える必要があるので、私は減価償却込みの数字を重く見ています(当ブログの見方)。家賃相場(BTC価格)が年末の水準まで下がると、管理費は家賃でまかなえても、建て替えの積立までは回らない。年末のライオットは、そのぎりぎりのところにいました。

もう一つ気になるのは、クレジットへの依存です。2025年7〜9月期は、クレジット30.6百万ドルに対し、差し引いた後のマイニング原価が65.1百万ドルでした。クレジットが少ない年や四半期には、コストはそのぶん上がります。

保有から売却へ。2025年9〜11月は掘った量の約95%を売った

時点 保有BTC(枚) 備考
2023年12月末 7,362  
2024年12月末 17,722 転換社債の手取りで5,784BTCを購入。公正価値1,654.5百万ドル
2025年9月末 19,287 うち担保3,300。公正価値2,200.1百万ドル、簿価1,277.0百万ドル
2025年11月末 19,368 うち制限付き3,977

 

月次(2025年) 9月 10月 11月
生産したBTC(枚) 445 437 428
売却したBTC(枚) 465 400 383
売却額(百万ドル) 52.6 46.0 37.0
月末の保有BTC(枚) 19,287 19,324 19,368

※11月の平均売却価格は96,560ドル。2025年1〜9月は期首17,722枚+採掘4,362枚+その他2枚−売却2,762枚(売却代金291.0百万ドル、実現益33.4百万ドル)−従業員への報酬37枚=期末19,287枚。

ライオットは2024年、BTCを取得して持ち続ける「ビットコイン・トレジャリー戦略」を掲げ、保管はNYDIGとコインベースに任せていました。2024年には転換社債で集めたお金で5,784BTCを買っています。

それが2025年4月からは、毎月の生産のほとんどを売る運用に変わりました。9〜11月の3か月では、生産1,310枚に対して売却1,248枚。掘った量の約95%を売った計算です(当ブログの計算)。保有量は8月末の19,309枚から11月末の19,368枚へ、ほぼ横ばいになりました。

会社は2025年5月5日公表の4月の月次報告で、毎月の生産を売る理由として、成長と運営の資金に充て、株式での資金調達の必要を減らして希薄化を抑えることを挙げています(会社の発表による)。数字を見ても、この説明と合っています(当ブログの見方)。2025年1〜9月の営業キャッシュフローは−467百万ドル、設備投資は257百万ドルで、コルシカナのデータセンター建設も始まりました。BTCを売れば、その代金(投資キャッシュフローに計上)で費用や投資をまかなえ、新株の発行に頼る度合いを下げられます。

ため込むか、売るか。大家業でいえば、家賃を全部貯金に回して物件の値上がりを待つか、家賃で修繕費とローンを払い、次の建築に回すかの違いです。どちらが正しいということはありません。ただ、売る道を選んだライオットの株価は、BTCの保有量より「掘って売る商売」と「次に建てる物件」の中身で評価される度合いが強まっていくはずです(当ブログの見方)。

評価益を除くと赤字が続き、営業キャッシュフローはマイナス

項目(百万ドル) 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年1〜9月 直近12か月
売上高 213 259 281 377 495 637
うちマイニング 184 157 189 321 445 571
営業利益 −30 −513 −63 154 62 251
BTCの評価益 — — 185 457 396 687
純利益 −15 −510 −49 109 28 164
純利益−評価益(簡易) — — −234 −348 −368 −523
希薄化後EPS(ドル) −0.17 −3.65 −0.28 0.34 0.08 0.52
調整後EBITDA(会社定義) — −67 214 463 516 812
営業キャッシュフロー −86 1 33 −255 −467 −566
設備投資 422 343 424 683 257 426
FCF(営業CF−設備投資) −508 −343 −391 −938 −724 −992

※2021〜2024年は各12月期。直近12か月=2024年10月〜2025年9月。2021・2022年は旧基準でBTCの減損(44、147)を計上し、2022年はのれんの減損335.6も含む。2025年1〜9月の営業利益はRhodiumとの和解損失158.1を含む。「純利益−評価益」は税の影響を調整しない簡易値。設備投資=有形固定資産の取得(建設中を含む)+設備の前払金(2025年1〜9月の土地取得50.9は除く)。

用語メモ:EPS=1株あたり利益。EBITDA=利払い・税金・減価償却前の利益。ライオットの調整後EBITDAは会社定義で、BTCの評価益を含みます。FCF(フリー・キャッシュ・フロー)=営業キャッシュフローから設備投資を引いた、自由に使えるお金。

ライオットは2023年12月期から、BTCを期末の時価で評価する公正価値会計を早めに採り入れました。その結果、BTCが上がった年は売っていなくても評価益が利益に入ります。2025年1〜9月の純利益28百万ドルは、評価益396百万ドルを除くと−368百万ドル。2024年12月期も評価益を除けば−348百万ドルでした。会社の調整後EBITDAもこの評価益を含むので、直近12か月の812百万ドルを「稼ぐ力」と読むのは危険です。評価益の扱いは会社によって違うため、他社の利益とそのまま比べることもできません。

2025年1〜9月の営業利益には、2025年4月28日のRhodiumとの和解に伴う損失158.1百万ドルが入っています。総額185.0百万ドル(現金129.9百万ドル、株式6,989,800株=49.0百万ドル、電力の保証金6.1百万ドル)を払って125MWの資産を取得した取引でした。また、持分法で持つ上場株式の時価の変動(2024年12月期−69.5百万ドル、2025年1〜9月−28.2百万ドル、7〜9月期は+28.9百万ドル)も利益を揺らしています。

営業キャッシュフローは2024年から大きなマイナスです。採掘したBTCを売らずに持てば現金は入らず、売った場合も代金は投資キャッシュフローに計上されるためです。家賃を受け取っても、それを「物件の売却代金」の欄に書いているような会計処理だと思うと、イメージしやすいかもしれません。

資金は株と転換社債、BTC担保の借入。株数は2021年末から約3.2倍

財務の主な項目(2025年9月末) 金額(百万ドル) 条件
現金(制限なし) 330.7 ほかに制限付き75.6
0.75%転換社債(2030年1月15日満期) 594.4 転換価格約14.86ドル
BTC担保の与信枠 200.0 全額借入、担保3,300BTC、期中の利率8.75%
リボルビング与信枠(現金担保) 34.3 期末の利率5.5%
Block Mining関連の借入 5.7  
借入の合計 834.4 借入額が不明確な20百万ドルの枠は除く

※転換社債は2024年12月11日に発行(当初525百万ドル+追加分)。利払いは1月15日と7月15日。2028年1月20日以降、株価が転換価格の130%以上なら会社が償還できる。9月末の帳簿価額は583.9百万ドル、公正価値は916.7百万ドル。BTC担保の与信枠は2025年4月22日に100百万ドル(1年)で始め、5月20日に200百万ドルへ増額。貸し手は開示資料に記載がない。

用語メモ:転換社債=決められた価格で株に替えられる社債。株に替わるまでは返済義務のある借入です。ATM(At-The-Market)=市場で少しずつ新株を売って資金を集める方法。

転換社債は1本だけで、転換価格は約14.86ドルです。9月末は株価が19.03ドルと転換価格を上回っていたため、公正価値(916.7百万ドル)が元本を大きく上回っていました。12月31日の株価12.67ドルは転換価格を下回っています。株に替わる場合の潜在的な株数は約4,000万株で(当ブログの計算)、発行済株式数の約10.8%です。

株の発行も続いてきました。2024年8月に始めた750百万ドルのATMでは、2025年1〜9月に16,076,733株を平均12.42ドルで売り、総額199.6百万ドル(純額195.2百万ドル)を調達しています。9月末の残り枠は162.6百万ドルで、10月にも672,099株・13.1百万ドルを売りました。ATMによる調達額は、2022年12月期304.8百万ドル、2023年12月期778.4百万ドル、2024年12月期977.0百万ドルと年々大きくなっていました。

発行済株式数は、2021年12月末の116,748,472株から、2023年末230,836,624株、2024年末344,890,208株、2025年10月29日には371,807,186株へ。約3.18倍です(Rhodiumへの6,989,800株を含む)。ただ、2025年の株数の伸びは2024年より緩やかでした(2024年は+49.4%、2025年は10月29日までで+7.8%、当ブログの計算)。BTCの売却が資金源に加わったことも一因でしょう(当ブログの見方)。

コルシカナのAIデータセンター構想は、まだ「入居者の決まっていない新築」

2025年2月24日、ライオットは2024年12月期の決算発表で、コルシカナの拠点(総1GW)のうち約600MWが未使用であり、AI・HPC向けに転用できるかを、財務アドバイザーと大手のデータセンター・コンサルタントを起用して評価していると明らかにしました。

2025年10月30日の7〜9月期の決算発表では、一歩進みます。コルシカナのデータセンター・キャンパスで、最初の2棟(クリティカルITで112MW)の「コア&シェル」(建物の躯体と外装)の建設に着手。隣接する67エーカーの土地を追加で取得し、キャンパスの設計と基本設計を終え、社内のデータセンター・チームを立ち上げているところでした。

用語メモ:HPC=高性能計算。AIの学習や推論に使う大量の計算。クリティカルIT=サーバーなどIT機器そのものに使える電力容量で、冷却などを含む施設全体の電力より小さくなります。

ただし、2025年12月31日までに、データセンターの入居者やリース契約は発表されていません。12月4日公表の11月の月次報告でも、データセンター開発に事業を広げている、という記述にとどまっています。

大家業でいえば、駅前の好立地に土地と電源(大容量の電力の契約)を確保し、躯体工事に着手した段階です。立地の強みは本物でも、テナントが決まるまでは家賃はゼロ、工事費だけが出ていきます。長期リースをすでに結んだサイファーを取り上げる回と読み比べると、この「入居者が決まっているかどうか」の差が、株価の受け止め方にどれほど効くかが見えてくると思います。

RIOTの株価は、BTCと借入の差額よりずっと大きな値段をつけている

指標(2025年12月31日) ライオット 計算・注記
株価 12.67ドル 終値
時価総額 4,711百万ドル 371,807,186株(10月29日)×株価。約7,375億円
EV(企業価値) 5,214百万ドル 時価総額+借入834−現金331(9月末)。BTCは差し引かない
EV÷ハッシュレート 142.5百万ドル 1EH/sあたり(36.6EH/s、11月末)
保有BTCの時価 1,695百万ドル 19,368BTC(11月末)×12月31日の終値
保有BTCの時価÷時価総額 36.0%  
1株あたりのBTC 0.0000521BTC 時価では4.56ドル
BTC+現金−借入 1,191百万ドル 1株あたり約3.20ドル(当ブログの単純計算)
PER(直近12か月) 24.4倍 評価益と和解損失で歪んでいるため参考外

用語メモ:EV(企業価値)=時価総額に借入を足し、現金を引いた「会社を借入ごと買う値段」。PER=株価÷1株あたり利益。

1EH/sあたりのEVは142.5百万ドルで、マラの102.9百万ドルより約4割高い水準です(サイファーの258.3百万ドルはAIデータセンターの価値を含むため比べられません)。保有BTCの時価は時価総額の36.0%にとどまり、マラの136.2%とは対照的です。

BTCと現金から借入を引くと1,191百万ドル、1株あたり約3.20ドル(当ブログの単純計算。BTCは11月末、現金と借入は9月末の値)。株価12.67ドルとの差、約9.5ドル分が、採掘の事業と、テキサスの電力つきの土地、そしてAIデータセンターの将来に市場がつけている値段です。マラより1EH/sあたりで高い値段がついているのは、コルシカナの「空いている電源」に期待が乗っているからだと私は読んでいます(当ブログの見方)。

ビットコインの周期の中で見ると、2025年のライオットの株価はBTCから離れて動いた

年 RIOT年末終値(ドル) RIOT騰落率 BTC騰落率
2020年 16.99 — —
2021年 22.33 +31.4% +59.7%
2022年 3.39 −84.8% −64.3%
2023年 15.47 +356.3% +155.4%
2024年 10.21 −34.0% +121.1%
2025年 12.67 +24.1% −6.3%

※騰落率は年末終値から当ブログが計算(価格のみ)。

2022年の下落局面では、BTCの−64.3%に対してRIOTの株価は−84.8%。営業利益は−513百万ドルで、のれんの減損などが重なりました。2023年は+356.3%と大きく戻しましたが、半減期の2024年はBTCが+121.1%だったのに−34.0%。採れるBTCが減り、株数が約1.5倍に増えた年です。

2025年は様子が違いました。株価は4月21日の6.29ドルを底に上がり、10月27日に年間の高値23.00ドルをつけた後、12月31日は12.67ドル(高値から−44.9%、当ブログの計算)。年間ではBTCが下げたのにプラスで終えています。2025年の月次の騰落率で計算したベータは1.29、BTCとの相関は0.61で、マラ(0.84)より低い値でした。BTC以外の材料、つまりAIデータセンターへの期待でも株価が動いた年だったと私は見ています(当ブログの見方)。

用語メモ:ベータ=BTCが1%動いたとき、株価が平均して何%動いたかを示す値(2025年の12か月分の記述統計で、予想ではありません)。相関=動きの向きがどれだけそろっているか。

周期の位置は、2024年4月20日の半減期から534日後の2025年10月6日に、BTCが終値で過去最高の124,752.53ドルをつけたところです。過去3回は、山から約1年で−76.63%〜−84.53%下げました。ただ、この高値が今回の山かどうかは、年末の時点ではまだ分かりません。

RIOTの株価のシナリオ:BTCが過去の周期をなぞれば、採掘は現金ベースでも赤字

ここからは当ブログの試算です。予想や目標株価ではなく、BTCの水準ごとに株価と採算の幅を示すものです。

2026年末(当ブログの試算) S1 過去3回の周期をなぞる S2 高値の半値 S3 横ばい S4 高値を回復
BTC 23,053ドル(−73.7%) 62,376ドル(−28.7%) 87,509ドル(0.0%) 124,753ドル(+42.6%)
RIOTの株価:2022年の実例を当てはめ 1.92ドル(−84.8%) — — —
RIOTの株価:ベータ1.29で換算 0.63ドル(−95%の下限) 7.96ドル(−37.1%) 12.67ドル(0.0%) 19.64ドル(+55.0%)
BTC−採掘コスト(減価償却除く46,311ドル) −23,258ドル +16,065ドル +41,198ドル +78,442ドル
BTC−採掘コスト(減価償却込み86,985ドル) −63,932ドル −24,609ドル +524ドル +37,768ドル
1株あたり保有BTCの時価 1.20ドル 3.25ドル 4.56ドル 6.50ドル

※S1=2025年の終値の高値124,752.53ドル×(1−過去3回の平均下落率81.52%)。過去の最大・最小の下落率を使うと19,301〜29,149ドル。S2=高値の半値、S3=2025年12月31日と同じ、S4=2025年の高値。ベータ換算=12月31日の終値×(1+ベータ×BTCの変化率)、−95%を下限。S1の「2022年の実例」は、BTCが−64.3%だった2022年のRIOTの実際の騰落率を12月31日の終値に当てはめた値。採掘コストは2025年1〜9月の会社定義の値。1株あたり保有BTCは11月末の19,368BTCと10月29日の株数による。

S1では、ベータを直線で当てはめると計算上は−95.3%となり、−95%の下限に張りつきます。大きな下げにベータをそのまま延ばすのは無理があるので、ここでは2022年に実際に起きた−84.8%を「過去の実例」として主に見ます。当てはめると1.92ドルです。このときBTCは現金ベースの採掘コストすら下回り、掘るほど現金が出ていく状態になります。保有BTCの時価も約4.5億ドルと、借入834百万ドルを下回ります(当ブログの計算)。BTC担保の与信枠200百万ドルの扱いと、9月末の3,300枚から11月末には3,977枚に増えていた制限付きBTCの動きは、下げ局面ほど重要になります。

S2は、減価償却をどう見るかで景色が変わるシナリオです。現金ベースでは1BTCあたり約1.6万ドル残りますが、減価償却込みでは約2.5万ドルの赤字。日々の運営は回っても、機械の買い替え費用までは稼げません。S3でも減価償却込みの利幅は約500ドルとほぼゼロで、余裕が生まれるのはS4です。

シナリオを崩す要因もあります。電力クレジットが多い年は採掘コストが下がり、少ない年は上がります。ネットワークの計算力が増えれば、同じBTC価格でも採れる枚数は減ります。そして、コルシカナにテナントが決まれば、株価はBTCとは別の物差しで評価され始めるかもしれません。2025年の相関が0.61とマラ(0.84)より低かったことは、その兆しとも読めます。ベータは12か月分の統計にすぎない点も忘れないでください。

次の決算で確かめたいことと、残るリスク

次の決算(2025年10〜12月期と通期)では、まず採掘コストを確かめてください。現金ベースと減価償却込みの1BTCあたりのコストが、10〜12月期のBTC価格に対してどれだけ残ったか。電力クレジットは季節で大きく変わるので、四半期ごとの金額も見ておきたいところです。ハッシュレートが10-Kの見込み(約38.4EH/s)に届いたかもあわせて確認しましょう。

次に、BTCの売却を続けたかどうか、年末の保有量と制限付きの枚数です。売却で得た現金と、ATMの残り枠162.6百万ドル(9月末)の使い方が、株数の伸びを左右します。

そして最大の焦点は、コルシカナのデータセンターに入居者が決まるかどうか、決まるならどんな相手と、どんな期間・金額の契約か、建設資金をどう用意するかです。指数の面では、MSCIが2025年10月に、デジタル資産が総資産の50%以上を占める会社を指数から外す案について意見を募っており、その暫定リストにライオット(小型株)が入っていました。2025年12月31日の時点では、判断は2026年1月15日までの予定と発表されていました。

ライオットは「掘って売る」マイナーへ。次の家賃はデータセンターから入るか

ライオットの決算書から見えてきたのは、テキサスの大きな電源を武器に掘り続けながら、半減期の後のコスト上昇に向き合っている会社の姿でした。減価償却込みの採掘コストは2025年7〜9月期に1BTC約8.9万ドルまで上がり、2025年4月からは掘ったBTCのほとんどを売って資金を回しています。利益はBTCの評価益で大きく見え、営業キャッシュフローはマイナス。株価は、BTCの保有量より、コルシカナの空いた電源に何が建つのかへの期待で支えられているように見えます。

大家業を続けていると、立地の良い土地を持っていることと、そこから家賃が入ってくることの間には、テナント付けという大きな仕事があると痛感します。ライオットにとって2026年は、その仕事の結果が見えてくる年になりそうです。掘ったBTCをため込むマラを取り上げる回、すでに長期の入居者を決めたサイファーを取り上げる回もあわせてどうぞ。

 

※本記事は公表資料をもとにした情報提供を目的としたもので、特定の銘柄や暗号資産の売買を勧めるものではありません。株価のシナリオは当ブログが置いた前提による試算で、将来の株価を予想・保証するものではありません。投資の判断はご自身の責任でお願いします。

※数値は各社の決算資料・開示資料をもとに当ブログが集計・計算したもので、四捨五入の関係で合計が合わない場合があります。株価・暗号資産の価格は2025年12月31日の終値、円換算は1ドル156.56円(三菱UFJ銀行の2025年最終公表日の仲値)です。

出典・参考

  • Riot Platforms Reports Third Quarter 2025 Financial Results and Strategic Highlights(Riot Platforms、2025年10月30日)https://www.riotplatforms.com/riot-platforms-reports-third-quarter-2025-financial-results-and-strategic-highlights/
  • Riot Form 10-Q(2025年9月期)損益計算書 R4(Riot Platforms、2025年10月30日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1167419/000110465925104466/R4.htm
  • Riot Form 10-Q(2025年9月期)表紙 R1(Riot Platforms、2025年10月30日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1167419/000110465925104466/R1.htm
  • Riot Form 10-Q(2025年9月期)株主資本・ATM R21(Riot Platforms、2025年10月30日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1167419/000110465925104466/R21.htm
  • Riot Form 10-Q(2025年9月期)転換社債 R68(Riot Platforms、2025年10月30日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1167419/000110465925104466/R68.htm
  • Riot Form 10-Q(2025年9月期)与信枠 R69(Riot Platforms、2025年10月30日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1167419/000110465925104466/R69.htm
  • Riot Form 10-Q(2025年9月期)BTCの保有 R54(Riot Platforms、2025年10月30日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1167419/000110465925104466/R54.htm
  • Riot Form 10-Q(2025年9月期)キャッシュフロー計算書 R7(Riot Platforms、2025年10月30日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1167419/000110465925104466/R7.htm
  • Riot Form 10-Q(2025年9月期)Rhodiumとの和解 R47(Riot Platforms、2025年10月30日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1167419/000110465925104466/R47.htm
  • Riot Form 10-K(2024年12月期)本文(Riot Platforms、2025年2月)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1167419/000155837025001888/riot-20241231x10k.htm
  • Riot Form 10-K(2024年12月期)損益計算書 R4(Riot Platforms、2025年2月)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1167419/000155837025001888/R4.htm
  • Riot Form 10-K(2024年12月期)キャッシュフロー計算書 R7(Riot Platforms、2025年2月)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1167419/000155837025001888/R7.htm
  • Riot Form 10-K(2024年12月期)株式数 R3(Riot Platforms、2025年2月)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1167419/000155837025001888/R3.htm
  • Riot Platforms Reports Full Year 2024 Financial Results(Riot Platforms、2025年2月24日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1167419/000155837025001389/riot-20250224xex99d1.htm
  • Riot Platforms Reports Full Year 2023 Financial Results(Riot Platforms、2024年2月22日)https://www.globenewswire.com/news-release/2024/02/22/2834136/0/en/Riot-Platforms-Reports-Full-Year-2023-Financial-Results-Current-Operational-and-Financial-Highlights.html
  • Riot Form 10-K(2022年12月期)損益計算書 R4(Riot Platforms、2023年3月)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1167419/000155837023002704/R4.htm
  • Riot Form 10-K(2022年12月期)キャッシュフロー計算書 R7(Riot Platforms、2023年3月)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1167419/000155837023002704/R7.htm
  • Riot Form 10-K(2022年12月期)株式数 R3(Riot Platforms、2023年3月)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1167419/000155837023002704/R3.htm
  • Riot Form 8-K(75%転換社債の発行)(Riot Platforms、2024年12月11日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1167419/000110465924127656/tm2430044d5_8k.htm
  • Riot Announces April 2025 Production and Operations Updates(Riot Platforms、2025年5月5日)https://www.riotplatforms.com/riot-announces-april-2025-production-and-operations-updates/
  • Riot Announces September 2025 Production and Operations Updates(Riot Platforms、2025年10月3日)https://www.riotplatforms.com/riot-announces-september-2025-production-and-operations-updates/
  • Riot Announces November 2025 Production and Operations Updates(Riot Platforms、2025年12月4日)https://www.globenewswire.com/news-release/2025/12/04/3199866/0/en/Riot-Announces-November-2025-Production-and-Operations-Updates.html
  • Riot Announces October 2025 Production and Operations Updates(Riot Platformsの発表文をFinvizが掲載、2025年11月4日)https://finviz.com/news/216681/riot-announces-october-2025-production-and-operations-updates
  • MSCI: Consultation on Digital Asset Treasury Companies(MSCI、2025年10月)https://www.msci.com/downloads/web/msci-com/indexes/index-resources/consultation-on-digital-asset-treasury-companies-2025.pdf
  • 株価:Yahoo Finance「Riot Platforms (RIOT) Historical Prices」(2025年12月31日までの終値)https://finance.yahoo.com/quote/RIOT/history/?frequency=1mo&period1=1577836800&period2=1767225600
  • ビットコイン価格:Yahoo Finance「Bitcoin USD (BTC-USD) Historical Prices」(2025年12月31日までの終値)https://finance.yahoo.com/quote/BTC-USD/history/?frequency=1mo&period1=1388534400&period2=1767225600