東雲結子:先生、いつものカフェのレジがSquareだったので、店員さんに「ビットコインを1枚ください」って言ってみたんです。

税理士石井:ははは。それで、どうなりました?

東雲結子:「サイズはどうなさいますか?」と聞かれました。ラテと間違われたみたいです……。

税理士石井:うーん、それは店員さんのほうが正しいですね。Squareはお店のレジや決済の仕組みで、ブロックの中でビットコインを売っているのは、主にスマホの送金アプリ「Cash App」のほうなんです。

東雲結子:でもブロックって、ビットコインの会社ですよね? 売上の4割がビットコインだって聞きました!

税理士石井:そこが今回の落とし穴です。2024年12月期のビットコインの売上は約102億ドルで、売上全体の42.3%。ところが粗利(売上総利益)で見ると、ビットコインはたった3.2%なんです。

東雲結子:えっ、売上の4割なのに、稼ぎは3%……。デパ地下の試食コーナーみたいに、行列だけ長いんですね。

税理士石井:いいたとえです。大家業でいえば、物件を仕入れ値に近い値段で右から左へ売る「買取再販」です。売った金額は全部売上に載りますが、手元に残るのは仕入れ値との差だけ。ブロックのビットコインの粗利率は、2024年12月期で2.8%でした。

東雲結子:じゃあ、ビットコインが暴落しても、ブロックはへっちゃらですね!

税理士石井:それが、そうでもないんです。株価は2022年に61%下がりました。粗利の3%しかないビットコインに、なぜ株価がこれほど揺れるのか。決算書でその「ズレ」を解いていきましょう。

連載の第6回は、ブロック(Block, Inc.、ティッカーXYZ、ニューヨーク証券取引所上場)です。お店のレジと決済の「Square(スクエア)」、個人向けの送金・金融アプリ「Cash App(キャッシュ・アップ)」、後払いの「Afterpay(アフターペイ)」などを運営しています。2021年12月に社名をスクエアからブロックへ変え、2025年1月21日にはティッカーもSQからXYZになりました。2025年7月23日には、米国の代表的な株価指数S&P 500(米国の大型株500銘柄でつくる指数)に採用されています。2025年12月31日の終値は65.09ドルで、年間では−23.4%。ビットコイン(BTC)の−6.3%を大きく下回りました。時価総額は約396億ドル、1ドル156.56円で円に換算すると約6.2兆円です。

ブロックの決算を読むと、まず売上の大きさに驚きます。2024年12月期の売上高は241億ドルで、そのうち102億ドルがビットコイン。旧スクエアの株価を追ってきた方には「ビットコインに強い決済の会社」という印象があるかもしれません。ところが、稼ぎの中身である粗利で見ると、まったく違う会社の姿が出てきます。売上と粗利のどちらで会社を見るかで、印象がここまで変わる会社も珍しいと思います。

大家業でも、「年間の家賃収入◯億円」という数字だけでは、その大家さんの実力は分かりません。サブリースで借り上げた家賃をそのまま売上に載せている会社なら、売上は大きくても手元に残るのはわずかです。何が売上に載り、何が利益として残るのか。今回の材料は、2021年と2024年12月期の10-K(米国の年次報告書)、2025年7〜9月期の10-Q(四半期報告書)、各期の株主レター、そして2025年11月19日の投資家説明会(Investor Day)の資料です。金額は特に断りのない限り百万ドル、決算期は12月です。

ブロックの稼ぎは、Cash AppとSquareの2本の柱でできている

ブロックの報告セグメントは、Cash AppとSquareの2つです(音楽配信のTIDALなどは「その他」)。Cash Appは個人向けで、送金、銀行の口座のような機能、融資の「Borrow」、Afterpayの後払い(BNPL)、ビットコインの売買などを提供しています。Squareは加盟店向けで、お店のレジや決済、コマース(販売)の仕組みを提供します。

粗利で見ると、2024年12月期の8,889のうち、Cash Appが5,239(58.9%)、Squareが3,599でした。2025年1〜9月は7,488のうちCash Appが4,504(60.2%)、Squareが2,942(39.3%)です(比率は当ブログの計算)。収入の種類で分けると、2024年12月期はサブスクリプション&サービス型が6,029と粗利の67.8%を占め、取引手数料型が2,733、ビットコインが289、ハードウェアは−93の赤字、買収した技術資産の償却が−68でした。

用語メモ:粗利(売上総利益)=売上高から売上原価を引いた利益。BNPL=Buy Now, Pay Laterの略で、後払い。GPV=Squareの加盟店で決済された金額の合計です。

2025年7〜9月期の数字も見ておきます。Cash Appの月間の取引アクティブ利用者は5,800万人(9月)、1人あたりの粗利(年換算、後払いを除く)は94.16ドルで前年同期比25%増、Cash Appへの入金額は788億ドル(12%増)、Cash Appをメインバンクとして使う利用者は830万人(18%増)、Borrowの貸出額は134%増、後払いの取扱高は97億ドル(17%増)でした。SquareのGPVは671.5億ドル(12%増)です。利用者の数はほぼ横ばいで、1人あたりの稼ぎを増やす段階に入っている、というのが当ブログの見方です。

売上の42%がビットコインなのに、粗利では3%にすぎない理由

項目 2020年12月期 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年1〜9月
売上高 9,498 17,661 17,532 21,916 24,121 17,941
うちビットコインの売上 4,572 10,013 7,113 9,498 10,199 6,412
ビットコインの原価 4,475 9,795 6,957 9,293 9,910 6,194
ビットコインの粗利 97 218 156 205 289 218
粗利の合計 2,733 4,420 5,992 7,505 8,889 7,488
ビットコインの売上比率 48.1% 56.7% 40.6% 43.3% 42.3% 35.7%
ビットコインの粗利比率 3.5% 4.9% 2.6% 2.7% 3.2% 2.9%
ビットコインの粗利率 2.12% 2.17% 2.19% 2.16% 2.83% 3.40%

※百万ドル。ビットコインの粗利=ビットコインの売上−ビットコインの原価。比率・粗利率は当ブログの計算。2025年1〜9月は9か月分で、通期の数字とは期間が違います。

グラフは、ビットコインが会社全体の売上と粗利に占める割合を、年ごとに並べたものです。オレンジの高い棒が売上に占める割合、隣の茶色の低い棒が粗利に占める割合で、下の段にビットコイン自体の粗利率を載せています。売上では2020〜2024年の各12月期に4〜6割(最高は2021年12月期の56.7%)あるのに、粗利では2.6〜4.9%。2024年12月期は売上の42.3%に対して粗利の3.2%、2025年1〜9月は売上の35.7%に対して粗利の2.9%でした。

この差を生んでいるのが会計の数え方です。ビットコインの売上は、Cash Appでお客さんに売ったビットコインの販売総額で、原価はそのビットコインの仕入れ値です。仕入れ値に近い値段で売るので、売上は大きくても粗利は薄くなります。冒頭の「買取再販」のたとえのとおりで、ビットコインの粗利率は2〜3%台にとどまっています。

ですから、ブロックの「本当の稼ぎ」を見るなら、売上ではなく粗利です。直近12か月(2024年10月〜2025年9月)では、ビットコインは売上の36.9%ですが、粗利の3.0%にすぎません。利益の源泉は、Cash Appの銀行のような機能や融資、後払いといったサブスクリプション&サービス型の収入と、Squareの決済手数料です。ビットコインは、利用者をアプリに呼び込む「看板商品」の一つではあっても、家計を支える大黒柱ではない、というのが私の読み方です(当ブログの見方)。

2025年7〜9月期には、ビットコインの売上が前年同期比19.0%減った一方、ビットコインの粗利は11.0%増えました。売上比率は32.2%まで下がっています。ビットコインの売上が減っても会社全体の粗利は18.3%増えており、2025年は粗利の伸びが1〜3月期の9%から4〜6月期14%、7〜9月期18%と加速しました。

ブロックの決算を並べると、2024年に営業黒字、純利益は一時的な税金の利益で膨らんだ

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2024年1〜9月 2025年1〜9月
売上高 17,661 17,532 21,916 24,121 18,088 17,941
粗利 4,420 5,992 7,505 8,889 6,578 7,488
Cash App 2,071 3,245 4,323 5,239 3,863 4,504
Square 2,317 2,707 3,129 3,599 2,675 2,942
営業利益 161 −625 −279 892 879 1,223
ビットコインの再測定益(営業外) — — 207 421 169 178
純利益(普通株主に帰属) 166 −541 10 2,897 951 1,190
希薄化後EPS(ドル) 0.33 −0.93 0.02 4.56 1.50 1.91
調整後EBITDA(会社定義) 1,014 991 1,792 3,029 2,272 2,537
調整後営業利益(AOI、会社定義) — — 351 1,609 1,207 1,496

※百万ドル(EPSを除く)。2024年12月期の純利益には、繰延税金資産の評価性引当金の取崩しによる一時的な税金の利益約19億ドルを含みます。2021・2022年はビットコインの減損(71.1、46.6)を計上(当時の会計基準)。

用語メモ:EPS=1株あたり利益(希薄化後は、将来株式に変わりうる分も含めた株数で計算)。EBITDA=利払い・税金・減価償却前の利益で、調整後EBITDAは会社の定義。AOI=営業利益から買収した無形資産の償却、偶発損失・リストラ費用、リストラに伴う株式報酬、減損を除いた会社定義の利益で、通常の株式報酬は差し引いたままです。

粗利は2021年12月期から2024年12月期で約2倍(+101.1%、当ブログの計算)になりました。それでも営業利益は2022・2023年と赤字が続き、黒字が定着したのは2024年12月期の892からです。2025年1〜9月の営業利益は1,223で、前年同期の879から39.1%増えています。

注意したいのは純利益です。2024年12月期の純利益2,897と希薄化後EPS 4.56ドルには、約19億ドルの一時的な税金の利益が入っています。1株利益が前年の0.02ドルから200倍以上に跳ね上がったように見えますが、その多くは帳簿上の繰延税金の見直しによるもので、本業の稼ぎがそれだけ増えたわけではありません。2025年1〜9月のEPS 1.91ドルと比べるときも、この点を外して考える必要があります。

もう一つ、ブロックは投資として持つビットコインを2023年から時価で評価しており、その再測定益は営業利益の下(営業外)に置かれています。2025年は1〜3月期が−93.4、4〜6月期が+212.2、7〜9月期が+59.6と振れました。調整後EBITDAとAOIには含まれません。純利益は相場で揺れ、営業利益とAOIは揺れにくい。まず営業利益とAOIから見るのが安全です。

気になる数字もあります。取引・貸出・消費者向け債権の損失は、7〜9月期に363.5と前年同期の192.1から89%増えました。投資目的の貸出金も、2024年末の365から2025年9月末には2,203へ増えています。Borrowなどの融資を伸ばせば、こうした信用のコストも増えます。大家でいえば、入居者を増やせば、それだけ家賃の滞納の芽も増えるのと同じです。貸出の伸びと損失の伸びのバランスは、これから注意して見ていきたいところです(当ブログの見方)。

2025年は規制当局との和解で始まり、S&P 500採用と投資家説明会で締めくくった

日付 出来事
2025年1月15日 米国48州の金融規制当局が、マネーロンダリング対策の不備でCash Appに8,000万ドルの制裁金
2025年1月16日 米消費者金融保護局(CFPB)がCash Appをめぐる命令。顧客への返金最大1億2,000万ドル(最低7,500万ドル)と制裁金5,500万ドルで最大計1億7,500万ドル(詐欺対策や顧客対応、不正取引の調査の不備)
2025年1月21日 ティッカーをSQからXYZに変更
2025年3月25日 従業員931人(約8%)を削減(二次資料による)
2025年4月10日 ニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)が、マネーロンダリング対策の不備で4,000万ドルの制裁金
2025年5月1日 2025年の粗利の見通しを102.2億ドルから99.6億ドルに引き下げ
2025年7月18日発表、23日採用 S&P 500に採用(石油会社ヘス(シェブロンが買収)と入れ替え)
2025年8月7日 粗利の見通しを101.7億ドルに引き上げ
2025年8月18日 シニア債を計22億ドル発行(2030年満期・5.625%の12億ドル、2033年満期・6.00%の10億ドル)
2025年11月6日 7〜9月期の決算。粗利の見通しを102.43億ドルに引き上げ。マイニング用の機器Protoが初の売上
2025年11月19日 投資家説明会。2026年の見通しと2028年までの目標を公表し、自社株買いの枠を50億ドル増額

規制当局に命じられた支払い(顧客への返金を含む)は、1月だけで最大2.55億ドル、4月の4,000万ドルを加えると最大2.95億ドルです(当ブログの計算)。州の当局は独立したコンサルタントによる点検(9か月以内に報告、12か月以内に是正)、NYDFSは独立した監視人を求めています。大家業でいえば、消防設備や管理体制の不備で行政から指導を受け、改善の報告を求められている段階です。お金を払って終わりではなく、体制を整える費用と時間が続く。こうした「宿題」は、決算書の数字に表れにくいコストだと私は感じます(当ブログの見方)。

2025年の見通しの動きも象徴的でした。5月に一度引き下げ、8月と11月に引き上げて、最終的には2月の当初見通し(102.2億ドル)をわずかに上回る102.43億ドルに戻しています。粗利の伸びは前年比15%超の見込みです。

保有8,780BTCは時価総額の約2%。ブロックは「ビットコインを貯める会社」ではない

時点 投資目的のBTC(枚) 時価(百万ドル) 取得原価(百万ドル)
2023年12月末 8,038 — 220.0
2024年12月末 8,485 792.3 251.5
2025年9月末 8,780 1,001.4 282.2

※このほか、事業の運営用に144BTC(取得原価16.5百万ドル、2025年9月末)を別に持っています。

ブロックは売るだけでなく、ビットコインを自分でも持っています。2020年10月に5,000万ドル、2021年に1.7億ドルを買い、2024年5月2日の株主レターからは「毎月、ビットコイン製品から得た粗利の10%でビットコインを買う」方針を続けています。2025年は1〜3月期に99BTC、4〜6月期に108BTC、7〜9月期に88BTC、合わせて295BTCを3,070万ドルで買い足しました。家賃収入の一部で、毎月少しずつ金の地金を買い足している大家さん、という姿が近いでしょう。

ただ、その規模は会社全体から見れば小さなものです。9月末の8,780BTCを2025年12月31日の終値で評価すると約7.7億ドルで、時価総額の約1.9%(当ブログの計算)。1株あたりでは0.0000144BTC、金額にして1.26ドルほどです。保有するビットコインそのものが株価の土台になっている会社(ストラテジーを取り上げる回をご覧ください)とは、まったく性格が違います。

ビットコインの事業は、ほかにもあります。マイニング用のチップと機器「Proto」は7〜9月期に初めて売上を計上しました(金額は非開示)。自分で鍵を管理するウォレット「Bitkey」は売上の開示がありません。そして加盟店向けのビットコイン決済とウォレット「Square bitcoin」について、会社は11月6日の株主レターで、11月中に全面展開すると説明していました。冒頭の東雲さんのように、レジでビットコインを「買う」ことはできなくても、ビットコインで「払う」仕組みは、Squareの加盟店向けに広げる計画が示されています。

稼いだ現金は自社株買いへ。手元には社債を上回る現金と投資もある

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2024年1〜9月 2025年1〜9月
営業キャッシュフロー 848 176 101 1,707 1,694 1,959
設備投資 134 171 151 154 127 114
簡易FCF(営業CF−設備投資) 714 5 −50 1,553 1,567 1,845
自社株買い 0 0 157 1,170 987 1,541

※百万ドル。簡易FCFは当ブログの計算で、会社が公表する「調整後FCF」とは定義が違います。

用語メモ:営業キャッシュフロー=本業で実際に出入りした現金。FCF(フリー・キャッシュ・フロー)=営業CFから設備投資を引いた、会社が自由に使える現金です。

2025年9月30日 金額
現金・現金同等物 8,336
短期・長期の投資(債券) 548
現金と投資の合計 8,883
投資目的のビットコイン(時価) 1,001
顧客の資金 4,804
顧客への支払債務 6,800
社債の元本(シニア債6,200+転換社債1,150) 7,350
貸出のための借入枠の利用額 501
ネットキャッシュ(現金と投資−社債元本) 1,533
純資産 22,473

※百万ドル。ネットキャッシュは当ブログの計算で、ビットコイン、顧客の資金、貸出のための借入枠は含めていません。

社債の元本7,350の内訳は、シニア債が2026年満期1,000、2030年満期1,200(5.625%、2025年8月発行)、2031年満期1,000、2032年満期2,000、2033年満期1,000(6.00%、2025年8月発行)、転換社債が2026年満期575と2027年満期575です。2025年満期の転換社債10億ドルは償還を終えました。現金と投資の合計8,883が社債の元本を上回り、ネットキャッシュは1,533のプラスです。顧客の資金4,804は、大家でいえば預かっている敷金にあたり、会社が自由に使えるお金ではありません。

株数の動きには、ブロックの歴史が刻まれています。2021年末の464.9百万株は、2022年1月31日のAfterpayの買収(対価に株式を使った)を経て、2023年末には615.8百万株へ32.5%増えました(当ブログの計算)。共有持分を渡して隣の物件を買い取ったようなもので、既存の株主の持分は薄まりました。そこから自社株買いが始まり、2023年に247万株(1.57億ドル)、2024年に1,694万株(11.70億ドル)、2025年1〜9月に2,460万株(15億ドル)を買い戻しています。発行済株式数は2024年末の619.7百万株から2025年10月31日には607.7百万株へ、1.94%減りました。

自社株買いの枠は、2023年10月31日の10億ドルと2024年7月25日の30億ドルで計40億ドル。2025年9月末の残りは約11億ドルで、11月19日に50億ドルの増額が承認されました。単純に足すと約61億ドルです(当ブログの計算。10〜12月の買付は考慮していません)。2025年1〜9月の自社株買い1,541は、同じ期間の簡易FCF1,845の83.5%にあたります(当ブログの計算)。稼いだ現金の大半を、持分の買い戻しに回している計算です。

2028年の目標は粗利158億ドル、調整後EPS5.50ドル(会社の目標)

2025年11月19日の投資家説明会で、ブロックは2026年の見通しと2028年までの目標を示しました。いずれも会社が掲げた目標で、当ブログの予想ではありません。

項目 2025年(11月6日の会社見通し) 2026年(会社見通し) 2028年(会社の目標)
粗利 102.43億ドル(15%超の成長) 119.8億ドル(17%成長) 約158億ドル(年10%台半ばの成長)
調整後営業利益(AOI) 20.56億ドル(マージン20%) 27.0億ドル(30%超の成長) 46億ドル(年約30%の成長)
調整後EPS — 3.20ドル(30%超の成長) 5.50ドル(年30%台前半の成長)
非GAAPのキャッシュフロー — 24億ドル(粗利の20%) 40億ドル超(粗利の25%)

※調整後EPSは2025年から株式報酬を差し引いた後の数字に定義が変わり、過去の数字とは比べられません。非GAAP=米国の会計基準に沿わない、会社独自の指標です。

会社は「2026年にRule of 40を達成し、2028年まで維持する」とも述べています。Rule of 40は、会社の定義では「粗利の成長率と、粗利に対するAOIのマージンの合計」が40%以上になることです。2025年の見通しでは、この合計(会社の表では「Rule of X」)は35.3%でした。

用語メモ:Rule of 40=成長率と利益率の合計で、成長と稼ぐ力のバランスを見る物差し。ブロックは粗利の成長率とAOIのマージンを使います。

株価との関係でいえば、2025年末の株価65.09ドルは、2026年の調整後EPSの見通し3.20ドルの約20.3倍です(当ブログの計算)。目標どおりに利益が伸びるなら値札は軽くなっていき、届かなければ重くなる。2025年5月に見通しを一度引き下げた会社でもあるので、私は目標の数字そのものより、四半期ごとの進み具合を見るようにしたいと考えています(当ブログの見方)。

ビットコインの周期の中で見ると、ブロックの株価は「粗利3%」以上に揺れてきた

年 SQ・XYZの年末終値(ドル) 年間騰落率 BTCの年末終値(ドル) BTCの年間騰落率
2020年 217.64 — 29,001.72 —
2021年 161.51 −25.8% 46,306.45 +59.7%
2022年 62.84 −61.1% 16,547.50 −64.3%
2023年 77.35 +23.1% 42,265.19 +155.4%
2024年 84.99 +9.9% 93,429.20 +121.1%
2025年 65.09 −23.4% 87,508.83 −6.3%

※騰落率は前年末の終値から(株価のみ、配当は含まず)。2021・2023・2024年は当ブログの計算。2024年以前はティッカーSQの時代の株価です。

ビットコインには、半減期(採掘の報酬が半分になる日)から1年〜1年半ほどで高値をつけ、そこから1年ほどで大きく下げる、という過去3回のパターンがあります(法則ではありません)。2020年5月11日の半減期のあと、BTCは2021年11月8日に67,566.83ドル(終値)の山をつけ、2022年11月21日に15,787.28ドルまで−76.63%下げました。

ブロックの株価は、この周期と素直には重なっていません。BTCが+59.7%だった2021年に、株価は−25.8%。ビットコインの売上比率が56.7%と最も高かった年に、株価は下げていたのです。2022年は−61.1%とBTC(−64.3%)に近い下げで、2022年の騰落率をBTCの騰落率で割った比率は0.95でした。2023・2024年はBTCが大きく戻ったのに、株価は+23.1%、+9.9%にとどまっています。

2025年の月次で見ると、BTCの騰落率に対するベータは0.86、相関は0.71でした。月々の上げ下げはBTCとそれなりにそろい、振れ幅はBTCよりやや小さい、という関係です。年間の高値(終値)は1月30日の92.95ドル、安値(終値)は5月2日の46.53ドルで、年末は高値から−30.0%(当ブログの計算)でした。

粗利の3%しかないビットコインだけで、2022年の−61.1%を説明することはできません。株価は、ビットコインそのものより、ビットコインの相場と同じ方向に動く個人の投資意欲や、Cash Appを使う人たちの財布の具合を映してきたのではないか、と私は見ています(当ブログの見方)。決算書の上ではビットコインとの縁が薄くても、市場はブロックを「暗号資産の気分と一緒に動く株」として扱ってきた。この「ズレ」を知っておくことが、ブロックの株と付き合う第一歩だと思います。

用語メモ:ベータ=株価がBTCの値動きにどれだけ大きく反応したかを表す数字。ここでは2025年の月末ごとの騰落率12か月分から計算した記述統計で、将来の動きを約束するものではありません。相関は、動く向きのそろい方(1に近いほどそろう)です。

PER13.1倍もP/S1.6倍も、そのままでは割安と読めない

指標(2025年12月31日) 値 計算
株価(終値) 65.09ドル —
発行済株式数 607.7百万株 2025年10月31日(10-Qの表紙、クラスA+B)
時価総額 39,553(約6兆1,924億円) 株価×株数
EV(企業価値) 38,019 時価総額+社債元本7,350−現金と投資8,883
P/S(株価売上高倍率) 1.6倍 時価総額÷直近12か月の売上高23,974
時価総額÷粗利 4.0倍 時価総額÷直近12か月の粗利9,799
PER(株価収益率) 13.1倍 株価÷直近12か月の希薄化後EPS 4.97ドル
EV/調整後EBITDA 11.5倍 EV÷直近12か月の調整後EBITDA 3,294
2026年の会社見通しに対するPER 20.3倍 株価÷調整後EPSの見通し3.20ドル(当ブログの計算)

※金額は百万ドル。直近12か月=2024年10月〜2025年9月(2024年12月期−2024年1〜9月+2025年1〜9月、当ブログの計算)。EVにビットコイン、顧客の資金は含めていません。円換算は1ドル156.56円。

用語メモ:PER=株価÷1株あたり利益。P/S(PSR)=時価総額÷売上高。EV=時価総額に借入を足し、現金を引いた「会社を丸ごと買う値段」です。

P/S1.6倍とPER13.1倍は、どちらも割安に見えます。P/S1.6倍は、売上にビットコインの販売総額が入っているせいで低く出ています。売上の代わりに粗利で割ると4.0倍です。PER13.1倍(利回りに直すと約7.6%)のほうは、直近12か月の利益に2024年10〜12月期に計上した約19億ドルの一時的な税金の利益がまるごと入っているため、実力より低く出ています。会社の2026年の調整後EPS(会社定義)の見通しで計算すると20.3倍、利回りにして約4.9%です。

サブリースの会社を、借り上げ家賃込みの売上で「売上の1.6倍で買える」と言われても、安いとは限りませんよね。倍率を見るときは、まず分母に何が入っているかを確かめる。ブロックの決算書は、その基本を何度でも思い出させてくれます。

2026年のXYZ株価を、4つのビットコインのシナリオで試算する

ここからは、この連載で共通に使うビットコインの4つのシナリオに、ブロックの感応度を当てはめた当ブログの試算です。予想や目標株価ではなく、「BTCがこの水準になったら、過去の関係からはこのあたり」という目安として見てください。

シナリオ 2026年末のBTC 2025年末比 置いた前提
S1 過去3回の周期をなぞる 23,053ドル −73.7% 2025年の高値124,752.53ドルから、過去3回の平均下落率81.52%下げる(幅は19,301〜29,149ドル)
S2 下げが過去より浅い 62,376ドル −28.7% 2025年の高値の半値
S3 横ばい 87,509ドル 0.0% 2025年末と同じ
S4 高値を回復 124,753ドル +42.6% 2025年の高値(終値)に戻る

 

シナリオ XYZの株価(当ブログの試算) 2025年末比 計算のしかた
S1 25.33ドル(過去の実例) −61.1% 2022年の実際の騰落率をそのまま当てはめ。ベータ0.86の直線計算では24.03ドル(−63.1%、BTCの幅に応じて21.64〜27.92ドル)。2022年の比率0.95では19.51ドル(−70.0%)
S2 49.08ドル −24.6% 65.09×(1+0.86×BTCの変化率)。2022年の比率0.95で計算すると47.32ドル(−27.3%)
S3 65.09ドル 0.0% BTCが横ばいなら株価も横ばいと置く
S4 88.81ドル +36.4% 65.09×(1+0.86×BTCの変化率)

※2025年12月31日の終値65.09ドルが起点。ベータは2025年の月次の実績(計算には四捨五入前の0.856を使用)。S1の実例は、2022年(BTC−64.3%、当時のティッカーはSQ)に株価が実際に−61.1%動いたことを、2025年末の株価に当てはめた値です。

ブロックはベータが1を下回るため、S1でもベータの直線計算が計算上の下限(−95%)に張りつくことはなく、2022年の実例(25.33ドル)とベータの計算(24.03ドル)が近い値になりました。ただし、S1のBTCの下げ(−73.7%)は2022年より深いことは頭に置いておきたいところです。

業績の面から見ると、この試算の性格がよく分かります。直近12か月の粗利に占めるビットコインは3.0%。保有するビットコインも1株あたり0.0000144BTCで、S1の水準なら0.33ドル、S3で1.26ドル、S4でも1.80ドルと、株価の0.5〜2.8%にすぎません。決算書の上でBTCが株価に効く経路は、とても細いのです。それでも株価のシナリオでは−6割前後の下げが出てくる。つまりこの表は、ブロックの業績ではなく、「市場がブロックをBTCと一緒に売り買いしてきた」という過去の癖を延ばしたものだ、というのが当ブログの見方です。

シナリオを崩す要因も書いておきます。S1が想定より軽く済むとすれば、粗利の伸び(7〜9月期は18.3%増)が続き、自社株買いが株価を支えて、BTCとの連動が2025年よりさらに弱まる場合です。逆に、取引や貸出の損失の増加、規制当局からの新たな指摘、2025年5月のような見通しの引き下げが重なれば、BTCとは関係なく下げる可能性もあります。S4が崩れるとすれば、2026年の粗利の見通し(17%成長)に届かない場合でしょう。

次の決算で確かめたいこと

ブロックの年次決算は、これまで2月に発表されてきました。まず確かめたいのは、2025年10〜12月期の粗利が会社の見通し(27.55億ドル、前年同期比19%増)に届いたか、AOIが5.6億ドル(マージン20%)を確保できたかです。通期では粗利102.43億ドル、AOI20.56億ドルの見通しに対する着地を見ます。

そのうえで、Cash Appの利用者数と1人あたりの粗利、Borrowなどの貸出の伸びと損失の伸びのバランス、ビットコインの売上と粗利、保有BTCの買い増し、Protoの売上の規模、Square bitcoinの広がり、自社株買いの実績と株数を確認したいところです。規制当局から求められた点検や監視への対応の進み具合も、数字の外にある大事な確認項目です。

10-Kが挙げる主なリスクは、暗号資産の市場の混乱や評判の悪化、保有ビットコインの価格の変動と保管のリスク、送金業の免許、後払いへの規制、証券会社としての規制、ユタ州の銀行子会社など幅広い規制、融資の回収、Cash Appの利用者を狙う詐欺やデータ漏えい、社債の利払い、2種類の株式の仕組み(上場していないクラスBは1株10議決権)、ジャック・ドーシー氏など経営陣への依存、過半数を持つTIDALなどです。

なお、日本に住む私たちが米国株を持つときの税金については、当ブログの「エアビーの株を買う前に! 日本に住む私たちが払う「米国株の税金」完全ガイド【全8回・第8回】」(2025年12月8日)で詳しく整理しています。ビットコインを自分で持つ場合とは課税のしくみがまったく違うので、あわせて確認してみてください。

ブロックのビットコインは「看板」であって「大黒柱」ではない。株価はその看板に揺れてきた

決算書を通して見ると、ブロックは「ビットコインの会社」ではなく、Cash AppとSquareという2つの金融サービスで稼ぐ会社でした。2024年12月期の売上の42.3%を占めたビットコインは、粗利では3.2%。2025年1〜9月も売上の35.7%に対して粗利の2.9%です。保有する8,780BTCも、時価総額の約2%にとどまります。

それでも株価は、2022年にBTCとほぼ同じだけ下げ、2025年もBTCの月々の動きに0.86倍ほどの反応を見せました。決算書の中ではビットコインは看板の一つにすぎないのに、市場はその看板を見て売り買いしてきたのです。大家業でも、駅前の大きな看板が目立つビルほど、看板の評判で物件の値段が動くことがあります。けれど、家賃を払ってくれるのは看板ではなく、中に入っているテナントです。

ブロックの株を考えるときは、BTCの値動きに目を奪われすぎず、Cash Appの1人あたりの稼ぎ、貸出の質、粗利の伸び、自社株買いの4つを、四半期ごとに確かめていくのがよいと私は考えています(当ブログの見方)。取引所のコインベースや証券のロビンフッドを取り上げる回、8社を同じ物差しで比べる回もあわせてどうぞ。

 

※本記事は公表資料をもとにした情報提供を目的としたもので、特定の銘柄や暗号資産の売買を勧めるものではありません。株価のシナリオは当ブログが置いた前提による試算で、将来の株価を予想・保証するものではありません。投資の判断はご自身の責任でお願いします。

※数値は各社の決算資料・開示資料をもとに当ブログが集計・計算したもので、四捨五入の関係で合計が合わない場合があります。株価・暗号資産の価格は2025年12月31日の終値、円換算は1ドル156.56円(三菱UFJ銀行の2025年最終公表日の仲値)です。

出典・参考

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  • Block Form 10-Q(2025年9月期)本文・ビットコイン・キャッシュフロー計算書・株主資本・負債・シニア債・投資・セグメント(Block, Inc.、2025年11月6日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1512673/000162828025050234/sq-20250930.htm 、https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1512673/000162828025050234/R19.htm 、https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1512673/000162828025050234/R8.htm 、https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1512673/000162828025050234/R81.htm 、https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1512673/000162828025050234/R20.htm 、https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1512673/000162828025050234/R76.htm 、https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1512673/000162828025050234/R48.htm 、https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1512673/000162828025050234/R72.htm 、https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1512673/000162828025050234/R91.htm
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  • Block Announces Ticker Symbol Change to XYZ(Block, Inc.、2025年1月9日)https://block.xyz/inside/block-announces-ticker-symbol-change-to-xyz
  • Square, Inc. Changes Name to Block(Business Wire、2021年12月1日)https://www.businesswire.com/news/home/20211201006139/en/Square-Inc.-Changes-Name-to-Block
  • Block Set to Join S&P 500(S&P Dow Jones Indices、2025年7月18日)https://press.spglobal.com/2025-07-18-Block-Set-to-Join-S-P-500
  • Enforcement action: Block, Inc.(米消費者金融保護局、2025年1月16日)https://www.consumerfinance.gov/enforcement/actions/block-inc/
  • State Regulators Issue $80 Million Penalty to Block, Inc., Cash App for BSA/AML Violations(CSBS、2025年1月15日)https://www.csbs.org/node/521831
  • Superintendent Adrienne A. Harris Secures $40 Million Settlement with Block, Inc.(ニューヨーク州金融サービス局、2025年4月10日)https://www.dfs.ny.gov/reports_and_publications/press_releases/pr202504101
  • Read the email Jack Dorsey sent when he cut 931 of Block’s staff(TechCrunch、2025年3月25日)https://techcrunch.com/2025/03/25/read-the-email-jack-dorsey-sent-when-he-cut-931-of-blocks-staff
  • 株価:Yahoo Finance「Block, Inc. (XYZ) Historical Prices」(2025年12月31日終値まで、2024年以前はSQ)https://finance.yahoo.com/quote/XYZ/history/?frequency=1mo&period1=1577836800&period2=1767225600
  • ビットコイン価格:Yahoo Finance「Bitcoin USD (BTC-USD) Historical Prices」(2025年12月31日終値まで)https://finance.yahoo.com/quote/BTC-USD/history/?frequency=1mo&period1=1388534400&period2=1767225600