東雲結子:先生、決めました。私が証券アプリを作ったら、株を買うたびに画面いっぱいに紙吹雪を降らせます! 毎日お祝いできたら、投資がもっと楽しくなりますよね。

税理士石井:ははは。お祝いのたびに注文が増えるなら、紙吹雪を一番浴びたいのはアプリの会社のほうかもしれませんね。

東雲結子:そういえばロビンフッドの株価、2025年に3倍になったんですよね。私のアプリより先に、株価が紙吹雪です!

税理士石井:うーん、2024年末の37.26ドルが2025年末に113.10ドルですから、たしかに約3倍です。ただ、稼ぎの中身は意外と地味なんですよ。2025年1〜9月の収益31.9億ドルのうち、暗号資産は21%。残りはオプションの取引や、お客さんから預かったお金まわりの金利収入などです。

東雲結子:金利? 証券会社なのに、銀行みたいなことをしているんですか?

税理士石井:ええ。信用取引の貸付やお客さんの待機資金から入る「純金利収益」は、2023年12月期には収益のほぼ半分でした。暗号資産の収益が2021年12月期の4.2億ドルから1.35億ドルまで縮んだ時期に、会社を支えたのはこちらなんです。

東雲結子:株価の派手な紙吹雪の裏で、地味な金利がこつこつ働いていたんですね。私のアプリ、紙吹雪代で赤字になりそうです……。

税理士石井:ふふ、そこに気づけば立派な経営者です。大家業でいえば、テナントが3種類入ったビルです。にぎやかな飲食店がオプション、日によって行列が極端に変わるイベントホールが暗号資産、そして地味でも金利に合わせて家賃が決まる銀行の支店が純金利収益です。

東雲結子:イベントホールがガラガラの年も、銀行の支店が家賃を払ってくれたんですね!

税理士石井:そのとおりです。ただし、その家賃も金利が下がれば減ります。3つのテナントがそれぞれ何に揺れるのか、そして3倍になった株価に何が織り込まれているのかを、決算書で確かめていきましょう。

連載の第5回は、米国の個人投資家向けに証券と暗号資産の売買アプリを運営するロビンフッド・マーケッツ(ティッカーHOOD、米ナスダック上場)です。2021年7月29日に公開価格38.00ドルで新規上場(IPO)し、2025年9月22日には米国の代表的な株価指数S&P 500(米国の大型株500銘柄でつくる指数)に採用されました。2025年12月31日の終値は113.10ドルで、年間の騰落率は+203.5%。株価は約3倍になりました。同じ年のビットコイン(BTC)は−6.3%ですから、まったく違う動きです。時価総額は約1,017億ドル、1ドル156.56円で円に換算すると約15.9兆円で、この連載で取り上げる8社の中で最も大きい会社です。

ロビンフッドの決算を読むときの問いは、「この会社は、暗号資産の関連株としてどこまで相場に連動するのか」です。名前だけ聞くと暗号資産の会社に見えるかもしれませんが、決算書を開くと、収益の柱はオプション取引、暗号資産、そしてお客さんのお金まわりの金利の3本。どの柱が何に揺れるのかを分けて見ることで、株価の振れ方と、今の値札の意味が見えてきます。

物件を見るとき、私はテナントの業種の組み合わせをまず確かめます。同じ景気の波で一斉に苦しくなる組み合わせなのか、片方が苦しいときにもう片方が支える組み合わせなのか。それだけで、空室の怖さがまるで違うからです。今回の材料は、2022〜2024年12月期の10-K(米国の年次報告書)、2025年7〜9月期の10-Q(四半期報告書)、各期の決算発表と月次の営業データです。金額は特に断りのない限り百万ドル、決算期は12月です。

ロビンフッドの稼ぎは、オプション・暗号資産・純金利収益の三本柱

ロビンフッドの収益は、大きく3つに分かれます。1つ目の取引収益は、オプション、暗号資産、株式、その他(予測市場のイベント契約などを含むとみられます)の売買から入る収入です。2つ目の純金利収益は、信用取引の貸付、分別管理しているお客さんの資金、自社の資金、キャッシュスイープ(お客さんの待機資金を銀行に預ける仕組み)、貸株、クレジットカードから入る金利の純額。3つ目のその他収益には、有料会員サービス「Gold」の会費などが入ります。

2025年1〜9月の総純収益3,190のうち、オプションが809(25.4%)、暗号資産が680(21.3%)、株式が208、その他の取引が155、純金利収益が1,103(34.6%)、その他収益が235(うちGoldの会費129)でした(比率は当ブログの計算)。三本柱という言い方が、数字の上でもしっくりきます。

用語メモ:オプション=株などを決められた価格で買う(売る)権利を売買する取引。純金利収益=受け取る利息から支払う利息を引いた額。PFOF(ペイメント・フォー・オーダーフロー)=証券会社がお客さんの注文をマーケットメーカー(売買の相手方になる業者)に回し、その対価を受け取る仕組みです。

ここで見落としたくないのが、取引収益の受け取り先の偏りです。10-Kによると、2024年の総収益の12%がCitadel Securities、10%がWintermute(いずれもマーケットメーカー=売買の相手方となって注文を取り次ぐ業者)からでした。10-Kは、PFOFへの依存と規制の強化、暗号資産の取引で受け取るリベートへの依存と、対応できるマーケットメーカーが少ないことも、リスクとして挙げています。大家業でいえば、入居者は大勢いても、家賃の2割強が、たった2社の管理会社からの振込に偏っている、という状態に近いでしょう。

暗号資産の比率は23%から7%へ、そして21%へ。相場に合わせて伸び縮みした

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年1〜9月
総純収益 1,815 1,358 1,865 2,951 3,190
取引収益 1,402 814 785 1,647 1,852
オプション 690 488 505 760 809
暗号資産 420 202 135 626 680
株式 287 117 104 177 208
その他(イベント契約など) 5 7 41 84 155
純金利収益 256 424 929 1,109 1,103
その他収益 157 120 151 195 235
暗号資産の比率 23.1% 14.9% 7.2% 21.2% 21.3%
純金利収益の比率 14.1% 31.2% 49.8% 37.6% 34.6%

※百万ドル。比率は総純収益に対する割合。2025年1〜9月は9か月分で、通期の数字とは期間が違います。

グラフは、総純収益の内訳を億ドル単位で積み上げたものです。いちばん下の濃い緑が暗号資産で、その上にオプション、株式、その他の取引、灰色の純金利収益、その他と重なり、下の段に暗号資産の割合を並べています。2021年12月期は18.2億ドルのうち暗号資産が4.2億ドル(23.1%)。2023年12月期には7.2%まで縮み、2025年1〜9月は31.9億ドルのうち6.8億ドル(21.3%)でした。灰色の純金利収益は、2023年12月期の9.3億ドルから、2024年12月期11.1億ドル、2025年1〜9月11.0億ドルと、どの年も大きな塊になっています。

暗号資産の収益は、BTCの相場とほぼ同じリズムで動いてきました。2021年12月期の420から、2022年に51.9%減、2023年にさらに33.2%減って135まで縮み、総純収益に占める割合は7.2%まで下がります。そこから2024年は4.6倍の626へ急回復しました。2025年1〜9月は680で、前年同期の268から153.7%増。6月に買収を完了した暗号資産取引所Bitstamp(ビットスタンプ)の分も入っています。四半期ごとに見ると、1〜3月期252、4〜6月期160、7〜9月期268と、相場に合わせて上下しています。

面白いのは、純金利収益が反対の動きをしていたことです。2022年に65.6%、2023年に119.1%増え、2023年12月期には総純収益の49.8%、ほぼ半分を占めました。米国の金利が上がった時期で、暗号資産の冬を、金利の追い風がしのがせた格好です。暗号資産のイベントホールが閑散としていた年に、銀行の支店の家賃改定が収益を支えた。テナントの組み合わせの妙と言ってよいでしょう。

ただし、この組み合わせは「金利が高い」ことを前提にした支えです。10-Kも、金利の変化が純金利収益に影響することをリスクに挙げています。金利が下がる局面と暗号資産の冬が重なれば、二つの柱が同時に細る可能性がある、というのが当ブログの見方です。直近12か月(2024年10月〜2025年9月)の暗号資産の比率は24.7%と、むしろ高まっています。

月次のデータには、すでに変化の兆しも出ています。2025年11月のアプリ経由の暗号資産の取引額は120億ドルで、前年同月比66%減でした(Bitstampは166億ドル)。10月にBTCが高値をつけたあと、個人の売買が冷えてきたことがうかがえます(当ブログの見方)。

赤字の3年から、2025年は9か月で純利益12.8億ドルへ

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2024年1〜9月 2025年1〜9月
総純収益 1,815 1,358 1,865 2,951 1,937 3,190
営業費用 3,456 2,369 2,401 1,897 1,439 1,746
営業損益(総純収益−営業費用) −1,641 −1,011 −536 1,054 498 1,444
純利益 −3,687 −1,028 −541 1,411 495 1,278
希薄化後EPS(ドル) −7.49 −1.17 −0.61 1.56 0.55 1.39
調整後EBITDA(会社定義) 34 −94 536 1,429 816 1,761
株式報酬 1,572 654 871 304 227 229

※百万ドル(EPSを除く)。営業損益は当ブログの計算(今回の資料には営業利益の行がないため)。2021年の純利益には、上場前に発行した転換社債・ワラントの評価損2,045を含みます。2024年の純利益には税金の利益347(法人税等の純額。10〜12月期に、主に評価性引当金の取崩しによる繰延税金の利益369を計上)を含み、税引前利益は1,064。2021年の調整後EBITDAは33とする資料もあります。

用語メモ:EPS=1株あたり利益(希薄化後は、将来株式に変わりうる分も含めた株数で計算)。調整後EBITDA=会社の定義では、純利益から借入金利、法人税、減価償却、株式報酬、重要な訴訟・和解・引当、その他の重要な損益(減損、リストラ、買収関連費用など)を除いたもの。株式報酬=役員や社員に株で支払う報酬で、現金は出ませんが株主の持分を薄めるコストです。

2021年12月期の純損失3,687は、上場前の資金調達にかかわる評価損2,045と、株式報酬1,572という大きな費用を含んでいます。とはいえ、営業損益の段階でも2021〜2023年は3年続けて赤字でした。

流れを変えたのは費用です。営業費用は2021年12月期の3,456から2024年12月期には1,897へ、45.1%減りました(当ブログの計算)。株式報酬が1,572から304に減ったことが大きく、そこへ収益の回復が重なって、2024年12月期に営業損益は1,054の黒字に転じます。空室が埋まるのを待つだけでなく、管理費の契約を一つずつ見直してきた物件が、満室に近づいたときに一気に手取りを増やす。そんな姿に重なります。

2025年はその延長線上にあります。7〜9月期の総純収益は1,274で前年同期の2倍、純利益は556、調整後EBITDAは742でマージン(総純収益に対する割合)は58%でした。1〜9月の純利益は1,278で、前年同期の495から大きく伸びています。ロビンフッドの損益計算書には、コインベースのような投資目的の暗号資産の評価損益の行は見当たらず(今回の資料の範囲)、利益の伸びは主に本業から来ていると読めます。

一方で、費用の見通しは年の途中で上がってきました。会社が示す「調整後の営業費用と株式報酬の合計」の2025年の見通しは、2月12日の20億〜21億ドルから、11月5日には約22.8億ドルへ。TradePMRやBitstampの費用の上乗せ、賞与の引当の増加、予測市場などへの投資が、引き上げの理由として挙げられています。1〜9月の実績1,668から逆算すると、10〜12月期は約6.1億ドルになる計算です(当ブログの計算)。

稼いだ現金は自社株買いへ。それでも株数は2021年末から4%増えた

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2024年1〜9月 2025年1〜9月
営業キャッシュフロー −885 −852 1,181 −157 1,243 2,575
設備投資 83 57 21 50 35 41
FCF(営業CF−設備投資) −968 −909 1,160 −207 1,208 2,534
自社株買い(現金支出) 0 0 608 257 97 553

※百万ドル。設備投資は有形固定資産とソフトウェアの資産計上の合計。FCFは当ブログの計算。2023年の自社株買いは、主にEmergent Fidelity Technologies(サム・バンクマン=フリード氏の関連会社)が持っていた約5,500万株の買取りです。

用語メモ:営業キャッシュフロー(営業CF)=本業で実際に出入りした現金。FCF(フリー・キャッシュ・フロー)=営業CFから設備投資を引いた、会社が自由に使える現金です。

証券会社の営業キャッシュフローは、お客さんの資金の出入りで大きく振れます。2024年12月期が−157で、2025年1〜9月が+2,575というのも、その影響を受けた数字です。大家でいえば、敷金の預かりと返還が多い年に通帳が大きく動くのと同じで、FCFは参考値として見るのが安全です。

それでも、2025年はお金の使い道がはっきりしています。自社株買いの枠は、2024年5月28日に承認した10億ドルに、2025年4月30日に5億ドルを足して15億ドル(期間2年)。実施額は2024年が2億5,700万ドル(1,040万株、平均24.78ドル)、2025年は1〜3月期3億2,200万ドル(720万株、平均44.87ドル)、4〜6月期1億2,400万ドル(300万株、平均41.52ドル)、7〜9月期1億700万ドル(100万株、平均104.95ドル)でした。開始(2024年7〜9月期)から2025年9月末までの累計は8億1,000万ドル、2,200万株、平均37.58ドルで、9月末時点の枠の残りは約6.9億ドルです(当ブログの計算)。

時点 2021年末 2022年末 2023年末 2024年末 2025年10月30日
発行済株式数(クラスA+B、百万株) 863.9 892.8 872.2 884.5 899.2

2021年末から2025年10月30日までに、発行済株式数は4.1%増えました(当ブログの計算)。2023年の大口の買取りでいったん減ったものの、その後また増えています。自社株買いの平均単価が、2024年の24.78ドルから2025年7〜9月期の104.95ドルへ4倍以上になっている点も見逃せません。同じ金額で買い戻せる株数は、株価が上がるほど少なくなります。共有者を減らすための買い戻しも、物件の値段が上がってからでは、思ったほど持分が増えないのです。

項目 2025年9月末 2025年11月末
会社の現金・現金同等物(十億ドル) 4.3 —
信用取引の貸付残高(十億ドル) 13.9 16.8
総プラットフォーム資産(十億ドル) 333 325
入金済みの顧客数(百万人) 26.8 26.9
Gold会員(百万人) 3.9 —

※総プラットフォーム資産は、お客さんの口座にある資産の合計で、会社の資産ではありません。11月末の顧客数には、休眠口座の州への移管(約28万口座の減少)が含まれます。会社の借入は今回の資料にないため、載せていません。

財務の面では、会社の現金・現金同等物が約43億ドル(9月末)。お客さんの資産は3,330億ドルと桁違いですが、これは大家でいえば入居者の家財のようなもので、会社のものではありません。気にかけておきたいのは、9月末から11月末の2か月で139億ドルから168億ドルへ増えた信用取引の貸付です。純金利収益の源泉であると同時に、相場が急落したときには、お客さんの担保不足という形で会社にもリスクが及びうる残高です(当ブログの見方)。

2025年はBitstamp買収、S&P 500採用、そして予測市場

日付 出来事
2025年2月26日 投資顧問会社向けの基盤TradePMRの買収を完了(取得した純資産175)
2025年3月 予測市場のハブを開始
2025年4月30日 自社株買いの枠を15億ドルに拡大
2025年5月13〜14日 カナダのWonderFi(ワンダーファイ)の買収で合意(1株0.36カナダドルの現金、総額約2.5億カナダドル、二次資料による)。2025年12月31日時点では未完了
2025年6月2日 暗号資産取引所Bitstampの買収を完了(発表は2024年6月、報道では約2億ドル、10-Q上の取得対価は224)。初の機関投資家向けの暗号資産事業
2025年6月30日 EU向けに米国株・ETFをトークン化した「Stock Tokens」を開始し、独自のブロックチェーン「Robinhood Chain」の開発を公表
2025年9月5日発表、22日採用 S&P 500に採用(シーザーズ・エンターテインメントと入れ替え)
2025年11月5日 7〜9月期の決算。CFO(最高財務責任者)によると、Bitstampと予測市場はそれぞれ年換算で約1億ドル以上の収益
2025年11月25〜26日 Susquehanna(サスケハナ)と共同で、米商品先物取引委員会(CFTC)認可の取引所MIAXdx(旧LedgerX)の90%を取得することで合意(金額は非公表、二次資料による)
2025年12月10日 11月の月次データを公表。イベント契約の取引は30億枚

用語メモ:予測市場(イベント契約)=選挙やスポーツなどの結果に連動する契約を売買する市場。ETF=上場投資信託。トークン化=株などの権利をブロックチェーン上のデジタルな記録にすることです。

2025年の動きを一言でまとめると、「個人向けの売買アプリ」から、機関投資家、海外、予測市場まで広げた「金融のプラットフォーム」への拡張だと私は見ています(当ブログの見方)。Bitstampで機関投資家向けの暗号資産事業を手に入れ、7〜9月期の暗号資産の取引額は、アプリ経由が400億ドル、Bitstampが400億ドルと肩を並べました。

もう一つの新しい柱が予測市場です。イベント契約の取引は、7〜9月期の3か月合計23億枚に対し、10月は1か月で25億枚、11月は30億枚と増えています。取引収益の「その他」は、2025年1〜9月に155と前年同期(53)の約3倍になりました。予測市場の収益は単独では開示されておらず、この「その他」に含まれるとみられます。自前の取引所を持つためのMIAXdxの取得合意は、この柱を太くするための一手でしょう。

大家業でいえば、ビルの空きフロアに次々と新しい業態のテナントを入れている段階です。新しいテナントは賑わいを生む一方、規制という「用途地域」の線引き次第で営業の形が変わることもあります。予測市場は、そうした規制の行方にとくに敏感な事業だと私は見ています(当ブログの見方)。

ビットコインの周期の中で見ると、ロビンフッドはBTCだけでは説明できない

年 HOODの年末終値(ドル) HOODの年間騰落率 BTCの年末終値(ドル) BTCの年間騰落率
2021年 17.76 公開価格38.00ドルから−53.3% 46,306.45 —
2022年 8.14 −54.2% 16,547.50 −64.3%
2023年 12.74 +56.5% 42,265.19 +155.4%
2024年 37.26 +192.5% 93,429.20 +121.1%
2025年 113.10 +203.5% 87,508.83 −6.3%

※騰落率は前年末の終値から(株価のみ、配当は含まず)。2021年の公開価格比と2023・2024年は当ブログの計算。

ビットコインには、半減期(採掘の報酬が半分になる日)から1年半ほどで高値をつけ、そこから1年ほどで大きく下げる、という過去のパターンがあります。2020年5月11日の半減期のあと、BTCは2021年11月8日に67,566.83ドル(終値)の山をつけ、2022年11月21日に15,787.28ドルまで−76.63%下げました。ロビンフッドが上場した2021年7月は、この山に向かう熱狂のさなかでした。

表を見ると、HOODの株価はBTCと素直には連動していません。2021年末には公開価格を53.3%下回り、2022年の下げ(−54.2%)はBTC(−64.3%)より小さめでした。2022年の騰落率をBTCの騰落率で割った比率は0.84です。先に大きく下げていたことと、金利の上昇で純金利収益が伸びたことが、下げを和らげたと考えられます(当ブログの見方)。2023年はBTCの+155.4%に対して+56.5%と出遅れ、2024年は+192.5%と逆に上回り、2025年はBTCが下げた年に3倍になりました。

2025年の月次で見ると、BTCの騰落率に対するHOODのベータは1.45、相関は0.69でした。月ごとの上げ下げはBTCより大きく出る一方、相関はそれほど高くありません。年間の安値(4月8日、34.17ドル)はBTCの年間安値と同じ日で、高値(10月9日、152.46ドル)はBTCの高値(10月6日)の3日後でした。相場の山と谷のタイミングはBTCとそろっていても、上げ幅を決めたのは、利益の急増、S&P 500への採用、予測市場などの新しい事業だったと私は読んでいます(当ブログの見方)。年末の113.10ドルは高値から−25.8%(当ブログの計算)です。

用語メモ:ベータ=株価がBTCの値動きにどれだけ大きく反応したかを表す数字。ここでは2025年の月末ごとの騰落率12か月分から計算した記述統計で、将来の動きを約束するものではありません。相関は、動く向きのそろい方(1に近いほどそろう)です。

PER47倍、P/S24倍。値札は「成長が続く」ことを前提にしている

指標(2025年12月31日) 値 計算
株価(終値) 113.10ドル —
発行済株式数 899.2百万株 2025年10月30日(10-Qの表紙、クラスA+B)
時価総額 101,698(約15兆9,219億円) 株価×株数
EV(企業価値) 97,398 時価総額−現金約4,300(借入は資料にないため含めない)
P/S(株価売上高倍率) 24.2倍 時価総額÷直近12か月の総純収益4,204
PER(株価収益率) 47.1倍 株価÷直近12か月の希薄化後EPS 2.40ドル
EV/調整後EBITDA 41.0倍 EV÷直近12か月の調整後EBITDA 2,374

※金額は百万ドル。直近12か月=2024年10月〜2025年9月(2024年12月期−2024年1〜9月+2025年1〜9月、当ブログの計算)。円換算は1ドル156.56円。

用語メモ:PER=株価÷1株あたり利益。P/S(PSR)=時価総額÷売上高。EV=時価総額に借入を足し、現金を引いた「会社を丸ごと買う値段」です。

PER47.1倍を利回りに直すと、利益÷株価で約2.1%。大家の感覚でいえば、表面利回り2%台の物件を買うようなものです。それでも買い手がつくのは、家賃(利益)がこれからも大きく伸びると見込まれているからでしょう。P/Sの24.2倍は、この連載のコインベース(7.9倍)と比べてもはるかに高い水準です。

注意したいのは、直近12か月の利益に、2024年10〜12月期に計上された繰延税金の利益369(主に評価性引当金の取崩し。希薄化後EPSで0.41ドル分)がまるごと入っていることです。これを除くとEPSは約1.99ドル、PERは約57倍になります(当ブログの計算)。つまりPER47倍は、実力より低めに出ています。また、EVは借入のデータがないため、借入を含めていません。値札の数字のいくつかは「やや甘めに出ているかもしれない」と思って読むくらいがちょうどよいと私は考えます(当ブログの見方)。

2026年のHOOD株価を、4つのビットコインのシナリオで試算する

ここからは、この連載で共通に使うビットコインの4つのシナリオに、ロビンフッドの感応度を当てはめた当ブログの試算です。予想や目標株価ではなく、「BTCがこの水準になったら、過去の関係からはこのあたり」という目安として見てください。

シナリオ 2026年末のBTC 2025年末比 置いた前提
S1 過去3回の周期をなぞる 23,053ドル −73.7% 2025年の高値124,752.53ドルから、過去3回の平均下落率81.52%下げる(幅は19,301〜29,149ドル)
S2 下げが過去より浅い 62,376ドル −28.7% 2025年の高値の半値
S3 横ばい 87,509ドル 0.0% 2025年末と同じ
S4 高値を回復 124,753ドル +42.6% 2025年の高値(終値)に戻る

 

シナリオ HOODの株価(当ブログの試算) 2025年末比 計算のしかた
S1 51.84ドル(過去の実例) −54.2% 2022年の実際の騰落率をそのまま当てはめ。ベータ1.45の直線計算では−106.7%となり、下限の−95%(5.66ドル)に張りつく。2022年の比率0.84で計算すると42.89ドル(−62.1%)
S2 66.03ドル −41.6% 113.10×(1+1.45×BTCの変化率)。2022年の比率0.84で計算すると85.72ドル(−24.2%)
S3 113.10ドル 0.0% BTCが横ばいなら株価も横ばいと置く
S4 182.85ドル +61.7% 113.10×(1+1.45×BTCの変化率)

※2025年12月31日の終値113.10ドルが起点。ベータは2025年の月次の実績(1.449を1.45と表示)で、下限は−95%と置いています。S1の実例は、2022年(BTC−64.3%)にHOODが実際に−54.2%動いたことを、2025年末の株価に当てはめた値です。

S1では、ベータの直線をそのまま延ばすと株価がマイナスになり、計算として成り立ちません。そこで、BTCが大きく下げた2022年の実際の動きを「過去の実例」として示しました。HOODは2022年にBTCより小さく下げたので、実例は51.84ドルと、この連載のほかの会社より浅い下げになります。ただし、S1のBTCの下げ(−73.7%)は2022年より深く、比率0.84で延ばすと42.89ドルです。

業績の面からも確かめておきます。直近12か月の総純収益に占める暗号資産は24.7%。ほかの収益が変わらないと仮定すると、暗号資産の収益が25%減れば総純収益は6.2%減、50%減なら12.3%減、75%減なら18.5%減にとどまります。実際の2022年も、暗号資産の収益が51.9%減ったのに対し、総純収益は25.2%減でした。

ここに、HOODの株価を考えるうえでいちばん大切なズレがあります。業績への直接の打撃は1〜2割程度で済む計算なのに、株価のシナリオは4〜5割の下げを示している。2022年も、総純収益の減少(−25.2%)に対して株価は−54.2%でした。株価の下げ幅を決めるのは、暗号資産の収益そのものより、PER47倍という「期待の厚み」がどれだけ剥がれるかだ、というのが当ブログの見方です。

シナリオを崩す要因も書いておきます。S1が想定より軽く済むとすれば、オプションや予測市場、純金利収益が2022〜2023年のように下支えする場合です。逆に、利下げで純金利収益が減り、暗号資産の冬と重なれば、2022年より支えが細い可能性があります。S4が崩れるとすれば、BTCが戻っても個人の売買が戻らない場合や、PFOFへの規制、取引先の集中といったBTC以外の要因が表に出た場合です。

次の決算で確かめたいこと

ロビンフッドの年次決算は、これまで1月下旬から2月中旬にかけて発表されてきました。まず見たいのは、2025年10〜12月期の暗号資産の収益です。11月のアプリ経由の取引額は前年同月比66%減で、Bitstampの分がどれだけ補ったかが答え合わせの最初になります。

次に、純金利収益の行方です。信用取引の貸付は11月末に168億ドルまで増えていました。金利の水準と貸付残高のどちらが効くのかを、四半期の数字で確かめておきたいところです。予測市場を含む「その他」の取引収益の伸び、会社が約22.8億ドルとした費用の見通しの着地、自社株買いの実績と株数もあわせて見ておきましょう。月次の営業データも公表されているので、決算を待たずに取引額や顧客の資産の流れを追えます。

10-Kが挙げるリスクは、PFOFへの依存と規制、暗号資産の価格と規制の変化、金利、個人の売買の活発さへの依存、資金力のある競合、最良執行(お客さんに最も有利な条件で注文を執行する)義務、創業者に議決権が集まる株式の仕組み(クラスBは1株10議決権)、そして取引先の集中です。夜間の取引は、マーケットメーカー1社(Virtu)を通しています。

なお、日本に住む私たちが米国株を持つときの税金については、当ブログの「エアビーの株を買う前に! 日本に住む私たちが払う「米国株の税金」完全ガイド【全8回・第8回】」(2025年12月8日)で詳しく整理しています。暗号資産を自分で持つ場合とは課税のしくみが大きく違いますので、あわせてご覧ください。

ロビンフッドの三本柱は本物。ただし3倍になった株価は、柱の太さ以上の期待を含んでいる

決算書を通して見ると、ロビンフッドは「暗号資産の会社」というより、オプション、暗号資産、金利という性格の違う3つの柱で立つ会社でした。暗号資産の冬には金利が支え、費用を絞ったところへ相場が戻って、2025年は9か月で12.8億ドルの純利益を上げています。暗号資産の比率は2割強で、業績の面では8社の中でもBTCへの直接の依存が小さい部類だと私は見ています(当ブログの見方)。

それでも、株価はBTCの月々の動きに大きく反応し、値札はPER47倍。3倍になった株価には、新しい事業がこれからも育つという期待がたっぷり乗っていると私は見ています。大家業でいえば、テナント構成の良いビルを、利回り2%台で買う場面です。テナントの顔ぶれの良さと、払う値段が見合っているかどうかは、収支表の別々の行に書かれている。私はいつも、この二つを分けて検討するようにしています。

テナントの組み合わせの良さと、値札の重さ。その両方を天秤にかけておきたい銘柄です。取引所の顔を持つコインベースを取り上げる回や、8社を同じ物差しで比べる回もあわせてどうぞ。

 

※本記事は公表資料をもとにした情報提供を目的としたもので、特定の銘柄や暗号資産の売買を勧めるものではありません。株価のシナリオは当ブログが置いた前提による試算で、将来の株価を予想・保証するものではありません。投資の判断はご自身の責任でお願いします。

※数値は各社の決算資料・開示資料をもとに当ブログが集計・計算したもので、四捨五入の関係で合計が合わない場合があります。株価・暗号資産の価格は2025年12月31日の終値、円換算は1ドル156.56円(三菱UFJ銀行の2025年最終公表日の仲値)です。

出典・参考

  • Robinhood Q3 2025 決算リリース(Form 8-K Exhibit 99.1)(Robinhood Markets、2025年11月5日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1783879/000178387925000309/q32025robinhoodexhibit991.htm
  • Robinhood Form 10-Q(2025年9月期)表紙・損益計算書・収益内訳・キャッシュフロー計算書・企業結合・株主資本の注記(Robinhood Markets、2025年11月6日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1783879/000178387925000310/R1.htm 、https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1783879/000178387925000310/R4.htm 、https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1783879/000178387925000310/R43.htm 、https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1783879/000178387925000310/R6.htm 、https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1783879/000178387925000310/R36.htm 、https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1783879/000178387925000310/R37.htm 、https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1783879/000178387925000310/R62.htm
  • Robinhood Q2 2025 決算リリース(Robinhood Markets、2025年7月30日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1783879/000178387925000250/q22025robinhoodexhibit991.htm
  • Robinhood Q1 2025 決算リリース(Robinhood Markets、2025年4月30日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1783879/000178387925000144/q12025robinhoodexhibit991.htm
  • Robinhood Q4・FY2024 決算リリース(Robinhood Markets、2025年2月12日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1783879/000178387925000045/q42024robinhoodexhibit991.htm
  • Robinhood Form 10-K(2024年12月期)本文・損益計算書・収益内訳・キャッシュフロー計算書・株式数・取引先の集中・事業概要(Robinhood Markets、2025年2月18日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1783879/000178387925000049/hood-20241231.htm 、https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1783879/000178387925000049/R5.htm 、https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1783879/000178387925000049/R53.htm 、https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1783879/000178387925000049/R7.htm 、https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1783879/000178387925000049/R4.htm 、https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1783879/000178387925000049/R43.htm 、https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1783879/000178387925000049/R42.htm
  • Robinhood Form 10-K(2023年12月期)収益内訳・損益計算書・キャッシュフロー計算書・株式数(Robinhood Markets、2024年2月)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1783879/000178387924000054/R52.htm 、https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1783879/000178387924000054/R5.htm 、https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1783879/000178387924000054/R7.htm 、https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1783879/000178387924000054/R4.htm
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  • Robinhood Reports Fourth Quarter and Full Year 2023 Results(Robinhood Markets、2024年2月13日)https://investors.robinhood.com/news-releases/news-release-details/robinhood-reports-fourth-quarter-and-full-year-2023-results
  • Robinhood Reports Fourth Quarter and Full Year 2022 Results(Robinhood Markets、2023年2月8日)https://investors.robinhood.com/news-releases/news-release-details/robinhood-reports-fourth-quarter-and-full-year-2022-results
  • Robinhood Reports Fourth Quarter and Full Year 2021 Results(Robinhood Markets、2022年1月27日)https://investors.robinhood.com/news-releases/news-release-details/robinhood-reports-fourth-quarter-and-full-year-2021-results
  • Robinhood Markets, Inc. Announces Pricing of Initial Public Offering(Robinhood Markets、2021年7月28日)https://investors.robinhood.com/news-releases/news-release-details/robinhood-markets-inc-announces-pricing-initial-public-offering
  • Robinhood Markets, Inc. Reports November 2025 Operating Data(Nasdaq掲載のプレスリリース、2025年12月10日)https://www.nasdaq.com/press-release/robinhood-markets-inc-reports-november-2025-operating-data-2025-12-10
  • Robinhood Completes Acquisition of Bitstamp(Robinhood Newsroom、2025年6月2日)https://robinhood.com/us/en/newsroom/robinhood-completes-acquisition-of-bitstamp/
  • Robinhood Launches Stock Tokens, Reveals Layer 2 Blockchain…(Robinhood Newsroom、2025年6月30日)https://robinhood.com/us/en/newsroom/robinhood-launches-stock-tokens-reveals-layer-2-blockchain-and-expands-crypto-suite-in-eu-and-us-with-perpetual-futures-and-staking
  • AppLovin, Robinhood Markets and Emcor Group Set to Join S&P 500(S&P Dow Jones Indices、2025年9月5日)https://press.spglobal.com/2025-09-05-AppLovin,-Robinhood-Markets-and-Emcor-Group-Set-to-Join-S-P-500-Others-to-Join-S-P-100,-S-P-MidCap-400-and-S-P-SmallCap-600
  • Robinhood acquisition of WonderFi(Davies Ward Phillips & Vineberg、2025年5月14日)https://www.dwpv.com/insights/2025/robinhood-acquisition-of-wonderfi
  • Robinhood acquires LedgerX to expand prediction markets(com、2025年11月26日)https://www.covers.com/industry/robinhood-acquires-ledgerx-to-expand-prediction-markets-amid-overwhelming-growth-nov-26-2025
  • Robinhood completes $200 million acquisition of crypto exchange Bitstamp(The Block、2025年6月3日)https://www.theblock.co/post/356701/robinhood-bitstamp-acquisition
  • 株価:Yahoo Finance「Robinhood Markets, Inc. (HOOD) Historical Prices」(2025年12月31日終値まで)https://finance.yahoo.com/quote/HOOD/history/?frequency=1mo&period1=1577836800&period2=1767225600
  • ビットコイン価格:Yahoo Finance「Bitcoin USD (BTC-USD) Historical Prices」(2025年12月31日終値まで)https://finance.yahoo.com/quote/BTC-USD/history/?frequency=1mo&period1=1388534400&period2=1767225600