東雲結子:イーサ君、がんばれー! 石井先生、私、イーサリアムを「イーサ君」と呼んで応援することにしました。ビットマインという会社も、イーサ君を約411万ETHも集めているんですよ。

税理士石井:ははは、イーサ君の後援会長のような会社ですね。12月28日時点で、発行されているETH全体の3.41%を持っていて、目標は5%だそうです。

東雲結子:5%って、20枚に1枚ですよね。イーサ君の世界に、ビットマイン専用の指定席ができちゃいます! じゃあ株を買えば、私も後援会員です。

税理士石井:そうですね。ただ、会員証でいちばん大事なのは「1株あたり何ETHか」なんです。1,000株あたりで見ると、8月末は約8.0ETH、12月は約9.1ETHでした。

東雲結子:あれ? 保有量は2倍以上になったのに、1株あたりは……ちょっとしか増えていません。

税理士石井:ええ。株数も8月末の約2.35億株から、12月8日には約4.26億株に増えたからです。大家業でいえば、建物を建て増すたびに共有者も増やしているので、一人分の持分はそれほど増えない状態ですね。

東雲結子:後援会員が増えすぎて、握手会の列が会場の外まで伸びているんですね……。私の番、春までに来るでしょうか。

税理士石井:ふふ、列の長さも大事な情報です。しかも年末の株価は、当ブログの計算で、持っているETHや現金の価値の約0.87倍でした。

東雲結子:えっ、中身より安く売られている宝箱ですか! それはお得なのでは?

税理士石井:おっと(汗)、そこが落とし穴です。安いのには理由があるかもしれませんし、ETHの値段が動けば中身そのものが変わります。決算書と毎週の発表から、ビットマインの中身を一つずつ確かめていきましょう。

連載の第3回は、ビットマイン・イマージョン・テクノロジーズ(BitMine Immersion Technologies, Inc.、ティッカーBMNR、NYSE American上場)です。2024年8月期の売上高が3.3百万ドルほどだったビットコイン採掘などの会社が、2025年6月30日にイーサリアムを「主な準備資産」にすると発表し、そこから半年で約411万ETHを集めました。ビットマイン(BMNR)の株価は2025年12月31日の終値で27.15ドル、時価総額は当ブログの計算で約116億ドル(1ドル156.56円で換算して約1.8兆円)です。

注意したいのは決算期です。ビットマインの会計年度は9月〜翌年8月で、2025年8月期(FY2025)は2024年9月〜2025年8月。2025年12月31日までに出ている決算書はこの8月期の年次報告書(10-K)までで、9〜11月期の四半期報告書はまだありません。そこで決算書の数字は8月末まで、保有量はその後の毎週の発表で追います。

ストラテジーを取り上げる回で見る「資本の階段」では、借入と優先株が普通株の前に並びます。ビットマインは、借入も優先株もほとんど使わず、ほぼ普通株の発行だけでETHを集めています。階段はほぼ平らです。そのぶん大事になるのが、株数の増え方と、株価がETHの価値に対していくらで取引されているか。大家業でいえば、共有持分の口数と、その持分の値段の話です。

ビットマイン(BMNR)は、2025年6月30日にイーサリアムの会社へ変わった

日付(2025年) 出来事
5月15日 1対20の株式併合(届出)
6月4〜6日 1株8.00ドルで公募増資(手取り18.8百万ドル)。6月5日からNYSE Americanで取引開始(それまでは店頭市場のOTCQX)
6月9日 最初の準備資産としてビットコインを購入
6月30日 1株4.50ドルで約2.5億ドルの私募増資を発表し、ETHを主な準備資産に。トム・リー氏(ファンドストラット創業者)が取締役会長に
7月9日〜8月12日 ATMの枠を20億ドルで設定し、45億ドル、245億ドルへと拡大
7月29日 最大10億ドルの自社株買いを承認
9月22日 1株70.00ドルで5,217,715株の直接募集(ワラント付き)
11月14日 最高経営責任者(CEO)がJonathan Bates氏からChi Tsang氏に交代。独立取締役3人が就任
11月21日 2025年8月期の10-Kと決算を発表。年0.01ドルの配当を決定
12月9日 授権株式数を5億株から500億株に増やす議案を含む委任状を提出(2026年1月15日の株主総会で採決予定)
12月29日 12月28日時点の保有を4,110,525ETHと発表

※会社の発表・SEC提出書類による。

用語メモ:イーサリアム(ETH)=ビットコインとは別のブロックチェーンと、その上で使われる暗号資産。トレジャリー企業=暗号資産を大量に買って持つことを経営の中心に置く会社。ATM=市場の株価で少しずつ新株を売って資金を集める方法。

株価は、この方針転換で一変しました。6月27日の終値4.26ドルが、次の取引日の6月30日には33.90ドルと約8倍に。7月3日には終値での年間の高値135.00ドルをつけ、年末の27.15ドルは高値から約80%下です。NYSE Americanでの最初の取引日(6月5日)の終値7.75ドルと比べると、年末は+250.3%でした。2024年末の株価がそろっていないため、2025年の1年間の騰落率は出せません。

イーサリアムの保有は、半年で約411万ETHに

上の図の上段は、会社が毎週発表したETHの保有量です。7月14日の16.3万ETHから、8月31日に186.7万ETH、10月26日に331.3万ETH、12月28日に411.1万ETHへと、ほぼ毎週積み上がっています。点線は会社の目標である「ETH供給量の5%」で、約604万ETH(会社が示す供給量1億2,070万ETHの5%、当ブログの計算)。下段は、開示のある3つの時点の発行済株式数と、そのうち2つの時点の1,000株あたりのETHです。

発表日 保有ETH 現金 会社が示した合計 供給量に占める割合
7月14日 163,142 ― 約0.5 ―
8月11日 1,150,263 ― 4.98超 ―
9月2日 1,866,974 635 8.98 ―
10月6日 2,830,151 456 13.4 2%超
10月27日 3,313,069 305 14.2 2.8%
11月24日 3,629,701 800 11.2 3.0%
12月29日 4,110,525 約1,000 13.2 3.41%

※保有ETHは各発表が示した時点(多くは発表の前日。9月2日の発表は8月31日、12月29日の発表は12月28日時点)。現金は百万ドル、合計は十億ドルで、ETH・BTC・現金などの会社の集計。

会社はこの目標を「alchemy of 5%」(5%の錬金術)と呼び、12月22日の発表でも「We are making rapid progress towards the ‘alchemy of 5%’」と書いています。12月28日時点で、目標まで残りは約192万ETH。12月31日の価格で約57億ドル分です(当ブログの計算)。

表の右から2列目にも目を向けてください。会社が示した合計は10月26日時点の142億ドルが最大で、12月28日は132億ドル。この間にETHの保有量は約24%増えたのに、合計は減っています。ETHの値下がりが、買い増しの効果を上回ったためです。物件を買い増しているのに、相場が下がって資産総額が減る。大家業でもよく見る光景ですが、ここではそれが毎週の発表で、目に見える速さで起きていました。

お金の出どころは、ほぼ全部が新株の発行

ETHを買うお金は、どこから来たのでしょうか。2025年8月期のキャッシュフロー計算書が答えです。

2025年8月期(2024年9月〜2025年8月) 金額
ATMによる新株発行(手取り) 7,717.8
私募増資・事前払込ワラント(手取り) 230.3
財務キャッシュフロー 7,947.7
暗号資産の購入 −7,433.1
営業キャッシュフロー −4.1

※百万ドル。10-Kによる。

8月末までのATMでは170,695,568株を売り、手取りは7,717.8百万ドル(手数料114.3百万ドル)。1株あたりの手取りは平均約45ドルです(当ブログの計算)。6月末の私募の4.50ドルの約10倍の値段で、新しい株主からお金を集めていたことになります。7月22日には、キャシー・ウッド氏のアーク(ARK)が、このATMの中で4,773,444株(約1.82億ドル)をまとめて買いました。9月22日には1株70.00ドルで5,217,715株を直接募集し、1株87.50ドルで株を買える2027年3月22日期限のワラント10,435,430個をつけています。

用語メモ:ワラント=決められた価格で会社の株を買える権利。事前払込ワラント=代金のほとんどを先に払い込み、ごくわずかな行使価格で株を受け取れる権利。私募増資=特定の投資家に新株を売る増資。

借入は、開示資料で確認できた範囲ではありません。8月末の負債は102.3百万ドルで、うち92.3百万ドルは繰延税金負債です。ストラテジーの「年約8.2億ドルの固定費」にあたるものは、ビットマインにはほとんどないといえます。そのかわり、株数が速いペースで増えていきます。

この株数の増え方には、もう一つ注目点があります。12月8日の発行済株式数425,841,924株は、授権株式数(定款で発行できる上限)の5億株の約85%に達していました(当ブログの計算)。会社は上限を500億株に引き上げる議案を出していて、2026年1月15日の株主総会で採決される予定と発表していました。10-Kのリスク要因には「Dilution Fatigue」(希薄化疲れ)という見出しもあります。発行を続けられる枠を大きく確保しようとしている、と私は読みました(当ブログの見方)。

一方で、株主に返す仕組みも用意されています。7月29日に最大10億ドルの自社株買いを承認しましたが、12月31日までに実行の開示はありません。配当は年0.01ドルで、支払日は12月29日でした(基準日は12月8日)。

保有量は2倍、1株あたりは1割強。株数の増え方を見る

会社自身、方針転換のときに”One of the key performance metrics (KPI) for BitMine going forward is to increase the value of ETH held per share.”(今後の重要な指標の一つは、1株あたりのETHの価値を増やすこと)と書いていました。そこで、図の下段の数字を確かめてみます。

時点 保有ETH 発行済株式数 1,000株あたりETH
2025年8月31日 1,874,927 234,712,310 7.99
2025年12月7〜8日 3,864,951 425,841,924 9.08

※8月31日は10-K。12月はETHが12月7日、株数が12月8日の基準日の数字で、1,000株あたりETHは当ブログの計算。

ETHは約2.06倍になったのに、株数も約81%増えたため、1,000株あたりのETHは7.99から9.08へ、約14%の増加にとどまりました(当ブログの計算)。

それでも1株あたりが増えたのは、ETHの価値より高い値段で株を売れた時期があったことが大きいと考えられます(当ブログの見方)。物件でいえば、共有持分を評価額より高く買ってもらい、そのお金で建物を建て増せば、1口あたりの建物はかえって大きくなります。逆に、評価額より安い値段で持分を売れば、既存の共有者の取り分は小さくなります。年末のように株価がNAV(保有資産の価値。あとで計算します)を下回っている状態で発行を続ければ、1株あたりのETHは減る方向に働きます。10-Kにも「Potential Premium Collapse」(上乗せの崩壊の可能性)というリスク要因が挙がっています。

2025年8月期の決算:純利益の中身は、評価益とワラント費用

次は損益計算書です。8月期の決算は、ETHを買いはじめてから2か月ほどの数字ですが、その2か月で利益の形がまるで変わりました。

  2024年8月期 2025年8月期
売上高 3.3 6.1
売上総利益 ― 0.3
一般管理費 ― 14.0
ワラント費用(現金の出ない費用) ― 349.0
暗号資産の未実現評価益 ― 805.0
営業利益 ― 444.2
法人税等(繰延税金) ― 92.3
純利益 −3.3 348.6
普通株主に帰属する純利益 ― 328.2
希薄化後EPS(ドル) ― 13.39
営業キャッシュフロー ― −4.1

※百万ドル(EPSを除く)。10-Kによる。2024年8月期は売上高と純損失のみ掲載。売上高の内訳(2025年8月期)は採掘3.133、機器の貸し出し1.881、機器の販売0.846、コンサルティング0.235。

売上高6.1百万ドルは、もとの採掘などの事業の数字です。利益を動かしたのは、暗号資産の未実現評価益805.0百万ドルと、ワラント費用349.0百万ドル。ワラント費用は、7月の「戦略アドバイザー」との契約で付与したワラント(加重平均の行使価格5.53ドルで4,553,940株分)にかかわるもので、現金は出ていきません。税引前利益440.9百万ドルから評価益を引くと−364.1百万ドルで、その大半がこのワラント費用です(当ブログの簡易計算)。

用語メモ:公正価値会計=保有する暗号資産を期末の時価で評価し、評価損益を損益計算書に入れる会計。未実現(評価)損益は売っていないので、現金の出入りはありません。

純利益の数字は、資料によって2つあります。10-Kの純利益は348.6百万ドル。決算発表の見出しは328.2百万ドルで、こちらは参加型優先株への配分などを差し引いた普通株主に帰属する純利益です。EPS(1株あたり利益)13.39ドルは、期中の平均株数(希薄化後で約2,452万株)で割った数字で、12月の株数4億株超とは桁が違います。この数字でPER(株価÷1株利益)を計算しても意味はありません。

2025年8月31日(10-K) 数量・金額
ETH 1,874,927ETH(取得原価7,426.7、時価8,260.6)
ビットコイン 192BTC(時価20.9)
現金 512.0
総資産 8,795.1
負債(うち繰延税金負債) 102.3(92.3)
純資産 8,692.8

※百万ドル。9月2日のプレスリリースでは、8月31日の保有は1,866,974ETH、現金は635百万ドルで、10-Kと一致しません。

8月末のETHの平均取得単価は約3,961ドル(当ブログの計算)。12月31日のETHの終値2,967.04ドルはこれを下回っています。ETHの月末の終値は8月の4,390.02ドルから11月の2,992.11ドルへ約32%下がっていて、9〜11月期は評価損が出る形になりやすいと私は見ています(当ブログの見方。この期の決算は2025年12月31日までに出ていません)。評価益が評価損に替わりうる点は、ストラテジーと同じです。

10-Kには、ほかにも気になる記述があります。8月末時点の従業員は3人と専任の契約者4人で、ETHの運用を外部に任せる手数料は年40〜50百万ドルの見込み。そして、財務報告にかかる内部統制が8月末時点で有効ではない(統制環境やガバナンス体制が有効でなく、会計の知識と経験を持つ人材が足りず監督も限られ、職務の分担が不十分だった、などの重要な不備)と書かれています。8月末の総資産で約1.4兆円(当ブログの換算)の資産を、ごく少人数で管理していた会社だということは、知っておいて損はありません。

ステーキングは、まだ「計画」の段階

ETHを持つ会社ならではの話が、ステーキングです。12月28日時点で、3つの事業者を通じて408,627ETHをステーキングしていて、保有量の約1割にあたります(当ブログの計算)。会社は「MAVAN」と名づけた米国内の検証ネットワークを2026年1〜3月期に始める計画で、3つの試験的な提携先を選んだと説明しています。12月8日の会長メッセージでは、利回り約2.9%で年約4億ドル(1日約130万ドル)という会社の試算も示されました。

用語メモ:ステーキング=ETHを預けてネットワークの取引の検証に参加し、報酬を受け取る仕組み。預けている間は動かしにくく、運営の不備でETHを減らされる(スラッシング)リスクもあります。

大家業でいえば、空いている部屋を貸し出して家賃を得るようなものです。ただし、鍵を預ける管理会社の信用や、すぐには退去してもらえない契約の縛りもついてくる。10-Kも、ステーキングにはスラッシング、引き出しの制限、流動性、取引相手、運営のリスクがあると書き、実施は「may」(することがある)という計画の書き方です。年約4億ドルは会社の試算で、まだ損益計算書には表れていません。

NAVと株価:年末は「中身」の約0.87倍

ビットマインには、ストラテジーのような会社定義のmNAVは見当たりません(10-Kと8-Kで確認できた範囲)。7月28日に公表した会長メッセージで、7月27日時点のETH(23億ドル)・ビットコイン(23百万ドル)・現金(369百万ドル)を合わせて「a total treasury net asset value of $2.7 billion」(準備資産の純資産価値27億ドル)とし、完全希薄化後の株数で割って1株あたり22.84ドルと示したことはありますが、決算書で定義された指標ではありません。そこで、当ブログの計算で年末の「中身」を出してみました。

項目 金額 中身
ETH 12,196.1 4,110,525ETH×2,967.04ドル
ビットコイン 16.8 192BTC×87,508.83ドル
現金 1,000 会社の発表(約10億ドル)
ムーンショット 23 他社への小口の投資(会社の発表)
借入 0 開示資料で確認できた範囲
NAV 13,235.9  
時価総額 11,561.6 27.15ドル×425,841,924株(12月8日)
時価総額÷NAV 0.87倍  
1株あたりNAV 31.08ドル  

※百万ドル(倍率と1株あたりを除く)。当ブログの計算。保有は12月28日、価格は12月31日の終値、株数は12月8日。12月8日より後に発行された株を含まないため、1株あたりNAVは高め、倍率は低めに出ている可能性があります。繰延税金などの負債も差し引いていません。

用語メモ:NAV=保有資産の価値。ここではETH・ビットコインの時価に現金などを足し、借入を引いたもの。ムーンショット=会社が「Moonshots」と呼ぶ他社への投資で、最初は9月のEightco Holdings(ティッカーはのちにORBS)への20百万ドルの出資です。

1株あたりのETHは0.009653ETH、12月31日の価格で28.64ドル。現金なども足した1株あたりNAVは31.08ドルで、株価27.15ドルはその約0.87倍でした。

この「中身より安い」状態をどう読むか。株数の数字が古いぶん割り引く必要がありますし、ETHの値下がりが続くと見る人が多ければ、中身より安くても買い手は増えません。会社は約10億ドルの現金と10億ドルの自社株買いの枠を持っているので、NAVを下回る株価で自社株を買えば、1株あたりのETHは増える計算です(当ブログの見方)。ただ、実行するかどうかは会社次第で、12月31日までに実行の開示はありません。

イーサリアムの値動きの中で見ると、株価は先に山をつけた

2025年 7月 8月 9月 10月 11月 12月
ビットマインの株価(月末) 34.64 43.62 51.93 46.65 33.12 27.15
株価の月間騰落率 +2.2% +25.9% +19.1% −10.2% −29.0% −18.0%
ETHの月間騰落率 +48.7% +18.8% −5.6% −7.2% −22.2% −0.8%

※株価はドル。騰落率は月末終値から計算(7月の株価は6月末の33.90ドル比)。

ETHの2025年は、2024年末の3,332.53ドルから年末の2,967.04ドルへ−11.0%でした。4月8日の1,472.55ドルを底に、8月22日の4,831.35ドルまで約3.3倍に上がり、年末は高値から−38.6%です。ビットコインの高値(10月6日)より1か月半ほど早く山をつけています。そしてビットマインの株価の山は、それよりさらに早い7月3日でした。

2025年の月ごとの動きで見ると、ETHはビットコインに対してベータ1.40(相関0.61)と、ビットコインより大きく動く傾向がありました。一方、ビットマインの株価のETHに対するベータは0.41、相関は0.47で、上場後の7〜12月の月次騰落率6本だけで計算した数字です(どちらも記述統計で、予測ではありません)。7月はETHが+48.7%なのに株価は+2.2%、11月はETHの−22.2%に対して株価は−29.0%と、ETHとの連動はまだ安定していないと見るのが自然です(当ブログの見方)。

この連載では、ETHの長期の周期のデータは扱っていません。そこで次の試算では、ビットコインの4年周期にもとづくシリーズ共通の水準を、2025年のETHのベータで換算して使います。ビットコインの周期そのものは、仮想通貨関連株とビットコインの4年周期を取り上げる回で詳しく見ます。

ビットマイン(BMNR)の株価を、ETHの水準で試算する

以下はすべて当ブログの試算で、株価の予想ではありません。まず、2026年末のビットコインの水準(シリーズ共通)と、そこから換算したETHの水準です。

シナリオ 2026年末のBTC ETH(ベータ換算) ETH(BTCと同率)
S1 過去3回の周期をなぞる 23,053ドル(−73.7%) 148ドル(−95%の下限) 782ドル
S2 下げが過去より浅い(高値の半値) 62,376ドル(−28.7%) 1,774ドル(−40.2%) 2,115ドル
S3 横ばい 87,509ドル(0.0%) 2,967ドル 2,967ドル
S4 2025年の高値を回復 124,753ドル(+42.6%) 4,735ドル(+59.6%) 4,230ドル

※BTCのかっこ内は2025年12月31日比。S1は2025年の終値高値124,752.53ドル×(1−過去3回の平均下落率81.52%)。ETH(ベータ換算)=2,967.04ドル×(1+1.40×BTCの変化率)で、−95%を下限とした。ETH(BTCと同率)はBTCと同じ率で動くと置いた場合。

ビットマインは、保有資産から計算するNAV方式を主に使います。NAV=4,110,525ETH×シナリオのETH+192BTC×シナリオのBTC+現金1,000+ムーンショット23(百万ドル)、これを425,841,924株で割ったものが「1.0倍の株価」、12月31日の0.87倍が続いた場合が「0.87倍の株価」です。

シナリオ NAV(ベータ換算/同率) 1.0倍の株価 0.87倍の株価 12月31日比(0.87倍)
S1 1,637/4,240 3.84/9.96ドル 3.36/8.70ドル −87.6%/−68.0%
S2 8,327/9,728 19.55/22.85ドル 17.08/19.96ドル −37.1%/−26.5%
S3 13,236 31.08ドル 27.15ドル 0.0%
S4 20,510/18,434 48.16/43.29ドル 42.07/37.81ドル +55.0%/+39.3%

※NAVは百万ドル。各欄の左がETH(ベータ換算)、右がETH(BTCと同率)。当ブログの試算。保有量・現金・株数は12月末の水準で固定。

S1のベータ換算は、ETHが計算上−95%の下限に張りつくため、計算の限界を示す数字と考えてください。BTCと同率で下がる場合は0.87倍で8.70ドル、過去最小・最大の下落率で幅をとると7.62〜10.44ドルです。ビットマインは2022年には上場していなかったため、ほかの会社のように2022年の実際の株価の動きを当てはめることはできません。S1のベータ換算では、NAVの約6割を現金の1,000百万ドルが占めます(当ブログの計算)。借入のない会社の手元の現金は、深い下げのときのクッションになります。

S3の行も見ておきましょう。ETHが横ばいでも、0.87倍が1.0倍まで戻れば31.08ドル、12月31日比で+14.5%です。逆に倍率がもっと下がれば、ETHが動かなくても株価は下がります。S2・S4でも同じで、NAVに対する倍率の変化が、ETHの値動きに上乗せされます。

この試算が外れる条件も挙げておきます。まず、12月8日より後に発行された株は入っていないので、1株あたりの数字は高めに出ている可能性があります。NAVを下回る株価でATMの発行を続ければ、さらに下がります。次に、ETHとビットコインの関係は2025年の12か月のデータにもとづくもので、2026年に同じとは限りません。ステーキングの報酬、現金の使い道(ETHの買い増しか自社株買いか)、繰延税金なども織り込んでいません。数字は「方向と大きさの目安」として読んでください。

次の決算では、評価損と株数の増え方を見る

次の決算は、2025年9〜11月期(2026年8月期の第1四半期)の四半期報告書です。まず、8月末から11月末のETHの値下がりが、どれだけの評価損として出てくるか。次に、11月末の発行済株式数と、1株あたりのETHがどう動いたか。毎週の発表で保有量は追えても、株数は決算書や委任状でしか確かめられません。

あわせて、2026年1月15日の株主総会で採決される予定と発表されていた授権株式数の議案、ステーキングとMAVANの進み具合、自社株買いの実行の有無、そして内部統制の不備がどう改善されたかも確認したいところです。指数会社のMSCIが2025年10月に意見募集を始めた「デジタル資産を多く持つ会社を指数から除外する案」では、10月29日時点のデータによる暫定リストに、ビットマインが指数の構成銘柄ではない会社として載っていました。2025年12月31日時点では、判断は2026年1月15日までの予定と発表されていました。採用されれば、将来指数に入る道が狭まる可能性があります(当ブログの見方)。

ビットマインを測る物差しは、保有量より「1株あたりのETH」と「NAVに対する株価」

ビットマインは、2025年6月30日の方針転換から半年で約411万ETHを集めた、イーサリアムのトレジャリー企業です。お金の出どころはほぼすべて新株の発行で、借入や優先株の固定費はほとんどありません。そのかわり、株数は8月末から12月8日までに約81%増え、1株あたりのETHは約14%の増加にとどまりました。2025年8月期の純利益は、ETHの評価益とワラント費用という、現金を伴わない2つの数字でほぼ説明がつきます。そして年末の株価は、当ブログの計算でNAVの約0.87倍でした。

大家業でも、物件の数を増やすこと自体が目的になってしまうと、一口あたりの手取りがいつの間にか薄まっていることがあります。ビットマインの毎週の発表は、保有量の大きな数字に目を奪われがちです。けれど株主として見るべきなのは、自分の1株にどれだけのETHがついているか、そしてその1株にいくら払っているか。この2つの物差しを持って発表を読むと、見え方がずいぶん変わるはずです。

借入と優先株で「資本の階段」を積み上げたストラテジーを取り上げる回や、8社を比べる回もあわせてどうぞ。米国株を持つときの日本での税金は、当ブログの「エアビーの株を買う前に! 日本に住む私たちが払う「米国株の税金」完全ガイド【全8回・第8回】」(2025年12月8日)で整理しています。

 

※本記事は公表資料をもとにした情報提供を目的としたもので、特定の銘柄や暗号資産の売買を勧めるものではありません。株価のシナリオは当ブログが置いた前提による試算で、将来の株価を予想・保証するものではありません。投資の判断はご自身の責任でお願いします。

※数値は各社の決算資料・開示資料をもとに当ブログが集計・計算したもので、四捨五入の関係で合計が合わない場合があります。株価・暗号資産の価格は2025年12月31日の終値、円換算は1ドル156.56円(三菱UFJ銀行の2025年最終公表日の仲値)です。

出典・参考

  • BitMine Immersion Technologies Form 10-K(2025年8月期)(BitMine Immersion Technologies、2025年11月21日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1829311/000149315225024679/form10-k.htm
  • BitMine Form 8-K Exhibit 99.1(2025年8月期の決算発表)(BitMine Immersion Technologies、2025年11月21日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1829311/000149315225024555/ex99-1.htm
  • BitMine Definitive Proxy Statement(DEF 14A)(BitMine Immersion Technologies、2025年12月9日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1829311/000149315225026868/formdef14a.htm
  • BitMine press release: $250M private placement to initiate ETH treasury(BitMine Immersion Technologies、2025年6月30日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1829311/000168316825004802/bitmine_ex9901.htm
  • BitMine Prospectus(424B4)(BitMine Immersion Technologies、2025年6月4日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1829311/000168316825004278/bitmine_424b4.htm
  • BitMine press release on offering pricing and NYSE American uplisting(BitMine Immersion Technologies、2025年6月4日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1829311/000168316825004380/bitmine_ex9901.htm
  • BitMine press release(BitMine Immersion Technologies、2025年7月14日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1829311/000164117225018905/ex99-1.htm
  • BitMine press release(ARKによる株式の取得)(BitMine Immersion Technologies、2025年7月22日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1829311/000149315225011329/ex99-1.htm
  • BitMine Chairman’s Message(Form 8-K Exhibit 99.2)(BitMine Immersion Technologies、2025年7月28日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1829311/000149315225011438/ex99-2.htm
  • BitMine press release(自社株買いの承認)(BitMine Immersion Technologies、2025年7月29日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1829311/000149315225011466/ex99-1.htm
  • BitMine press release(BitMine Immersion Technologies、2025年8月11日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1829311/000149315225011799/ex99-1.htm
  • BitMine Form 8-K(ATMの枠の拡大)(BitMine Immersion Technologies、2025年8月12日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1829311/000149315225011833/form8-k.htm
  • BitMine press release(BitMine Immersion Technologies、2025年9月2日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1829311/000149315225012513/ex99-3.htm
  • BitMine press release(Eightcoへの出資)(BitMine Immersion Technologies、2025年9月8日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1829311/000149315225012776/ex99-1.htm
  • BitMine press release(登録直接募集の価格決定)(BitMine Immersion Technologies、2025年9月22日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1829311/000149315225014392/ex99-1.htm
  • BitMine press release(BitMine Immersion Technologies、2025年10月6日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1829311/000149315225017019/ex99-1.htm
  • BitMine press release(BitMine Immersion Technologies、2025年10月27日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1829311/000149315225019644/ex99-1.htm
  • BitMine press release(CEOの交代)(BitMine Immersion Technologies、2025年11月14日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1829311/000149315225022449/ex99-1.htm
  • BitMine press release(BitMine Immersion Technologies、2025年11月24日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1829311/000149315225024762/ex99-1.htm
  • BitMine press release(BitMine Immersion Technologies、2025年12月8日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1829311/000149315225026540/ex99-2.htm
  • BitMine Chairman’s Message(Form 8-K Exhibit 99.1)(BitMine Immersion Technologies、2025年12月8日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1829311/000149315225026540/ex99-1.htm
  • BitMine ETH holdings reach 4.066 million tokens(BitMine Immersion Technologies、PR Newswire、2025年12月22日)https://tools.prnewswire.com/en-us/live/20813/release/20251222EN52331
  • BitMine press release(BitMine Immersion Technologies、2025年12月29日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1829311/000149315225029227/ex99-3.htm
  • Consultation on Digital Asset Treasury Companies(MSCI、2025年10月)https://www.msci.com/downloads/web/msci-com/indexes/index-resources/consultation-on-digital-asset-treasury-companies-2025.pdf
  • 株価・暗号資産の価格:Yahoo Finance「BMNR」「ETH-USD」「BTC-USD」の価格履歴 https://finance.yahoo.com/quote/BMNR/history/ 、https://finance.yahoo.com/quote/ETH-USD/history/ 、https://finance.yahoo.com/quote/BTC-USD/history/