東雲結子:先生、ご報告です。今年のFX、ちょっとだけ……マイナス100万円でした(汗)。でも大丈夫! アパートの家賃は黒字なので、相殺して税金を減らします。転んでもただでは起きません!

税理士石井:うーん、転んだ場所が、家賃とは別の囲いの中なんです。国内業者のFXの損益は「先物取引に係る雑所得等」という専用の区分で、家賃(不動産所得)とも給与とも損益通算できないんですよ。

東雲結子:囲い……。じゃあ私の100万円は、囲いの中でひとりぼっちですか。

税理士石井:ははは、ひとりぼっちでも冬眠はできます。確定申告で損失を申告して、その後も毎年続けて申告すれば、翌年以後3年間繰り越して、FXやCFDの利益と相殺できるんです。

東雲結子:よかった! じゃあ来年は、レバレッジがものすごく高い海外の業者で、一気に取り返します。

税理士石井:おっと、そこがいちばんの落とし穴です。金融商品取引法の登録を受けていない海外業者とのFXは、税金の上では別物。国内の登録業者なら税率は一律20.315%ですが、無登録業者での利益は家賃と合算する総合課税で、損失の繰越しもできません。

東雲結子:同じ「FX」の看板なのに、中身がまるで違うんですね……。看板に「税金は別です」と小さく書いておいてほしいです。

税理士石井:ふふ、大家さんの世界にも似た話がありますよ。同じ「駐車場」でも、舗装や区画のある駐車場の賃料には消費税がかかり、整備をしていない土地をそのまま貸すだけなら非課税です。名前ではなく、中身で税金が決まるんです。

東雲結子:なるほど。FXも看板より、「誰と取引しているか」を見るんですね。

税理士石井:そういうことです。国内業者と海外業者の違い、損益通算できる範囲、繰越控除の手続、そして確定申告が必要かどうかを、順に整理していきましょう。

「FXで出た損失は、家賃の黒字と相殺できますか?」

大家さんの中にも、FX(外国為替証拠金取引)やCFD(差金決済取引)を手がけている方がいらっしゃると思います。そして年末が近づくと、こうした疑問が浮かびやすくなります。答えは「できない」です。国内の登録業者とのFXの損益は、ほかの所得と分けて計算する「先物取引に係る雑所得等」に区分され、家賃(不動産所得)とも給与とも損益通算できません。

一方で、FXの税金には、暗号資産や海外業者との取引にはない、心強い仕組みもあります。税率が一律20.315%であること、そして損失を翌年以後3年間繰り越せる繰越控除です。ただし、この繰越控除は「損失の年にも確定申告をし、その後も毎年続ける」ことが条件で、何もしなければ使えません。

この記事では、国税庁のタックスアンサーをもとに、FX・CFDの税金を、取引の相手(国内の登録業者か、海外の無登録業者か)で分けて整理します。

※この記事は2025年12月時点の法令と国税庁・金融庁の公表資料にもとづいています。

FXの税金は、取引の相手が国内の登録業者かどうかで決まる

まず、国内の登録業者とのFXと、海外の無登録業者とのFXの違いを表で比べます。

項目 国内の登録業者・取引所のFX 海外の無登録業者のFX
所得の区分 先物取引に係る雑所得等 雑所得(総合課税)
税率 一律20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%) 家賃などと合算して所得税5〜45%(+復興特別所得税)、住民税10%
損益通算 FX・CFD・日経225先物などの「先物取引に係る雑所得等」の中でできる ほかの雑所得とだけできる
家賃・給与との通算 できない できない
損失の繰越控除 翌年以後3年間(連続して確定申告をすることが条件) できない

国税庁のタックスアンサー(No.1521)によると、FXの利益が「先物取引に係る雑所得等」として所得税15%(ほかに地方税5%)の申告分離課税になるのは、取引所での取引(市場デリバティブ取引)か、第一種金融商品取引業者または登録金融機関を相手方とする店頭デリバティブ取引の場合です(租税特別措置法41条の14)。それ以外のFXの利益は、原則として雑所得の総合課税になります。

用語メモ:第一種金融商品取引業者とは、金融商品取引法にもとづいて内閣総理大臣の登録を受け、FXなどの店頭デリバティブ取引を扱う業者のことです。登録金融機関は、同じく登録を受けた銀行などをいいます。

ここで大切なのは、「国内か海外か」という地理の話ではなく、「金融商品取引法の登録を受けた業者が相手かどうか」という点です。海外に拠点を置き、日本の登録を受けずに日本語のサイトで勧誘する業者との取引は、税金の上では表の右の列に入ります。

判定の流れを、フローチャートにまとめました。最初に、それが暗号資産の証拠金取引かどうか。次に、取引所の取引か、国内の登録業者(第一種金融商品取引業者・登録金融機関)を相手方とする店頭取引か。最初の質問に「はい」、または二つめの質問に「いいえ」で右のオレンジの枠に進むと、家賃などと合算する総合課税の雑所得です。二つめの質問に「はい」なら、緑の枠の「先物取引に係る雑所得等(申告分離課税)」になり、税率は20.315%、FX・CFD・日経225先物などの間でだけ損益通算できます。その下では、年間で損失になった場合の3年間の繰越控除と、利益が出た場合の確定申告を示しています。

国内業者のFXは、所得がいくらでも税率は一律20.315%

国内の登録業者とのFXの利益は、家賃や給与とは別に計算し、所得税15%と住民税5%で課税されます。所得税には復興特別所得税(所得税額の2.1%)が加わるので、15%×2.1%=0.315%を足して、合計20.315%です。

不動産所得の多い大家さんにとって、これは見逃せない点だと思います。家賃の所得で、すでに所得税率23%や33%の帯にいる方でも、FXの利益は20.315%で済みます。逆に言えば、所得が少ない年でも税率は20.315%のままで、累進税率の低い帯の恩恵は受けられません。

FXには、株の特定口座のように業者が税金を差し引いてくれる仕組みがありません。たとえば大和証券は、自社のFXが特定口座での計算対象にならないと案内しています。利益が出たら、自分で確定申告をして納めます。2025年分の確定申告の期限は2026年3月16日(月)です。

CFD・日経225先物とは通算できるが、家賃とも給与とも通算できない

「先物取引に係る雑所得等」には、FXのほかに、取引所の株価指数先物・オプション(日経225先物など)、商品先物取引、カバードワラントなどが含まれます。CFDも、取引所のCFDや、第一種金融商品取引業者を相手方とする店頭CFDであれば、同じ区分に入ります。

この区分の中であれば、損益を差し引けます。FXで100万円の損失、日経225先物で60万円の利益なら、合わせて40万円の損失です。

ところが、区分の外とは差し引けません。国税庁のタックスアンサー(No.1522)は、「先物取引に係る雑所得等以外の所得の金額との損益通算はできません」としています。FXの損失を家賃の黒字から引くことも、上場株式の売却益から引くこともできないのです。

大家さんにとっては、ここが感覚とずれやすいところだと思います。不動産所得の赤字なら、一定の制限はありますが給与と損益通算できます(当ブログの「不動産所得の赤字100万円、給与と通算できるのは70万円だけ? 「土地の借入金利子」の制限を会社員大家さんの数値例で計算しました(2025年分)」(2025年12月16日))。同じ「赤字」でも、FXの損失は、FXの仲間の中でしか使えません。株の損益の通算は、当ブログの「株で300万円利益、別の株で100万円損。年末の「損出し」で税金はいくら変わる?」(2025年11月2日)で取り上げています。

用語メモ:損益通算とは、ある所得の赤字(損失)を、ほかの所得の黒字から差し引くことです。どの所得とどの所得を差し引けるかは、法律で決まっています。

FXの損失の繰越控除は3年。損失の年も確定申告をし、毎年続ける

区分の中で差し引いても残った損失は、翌年以後3年間繰り越して、各年の「先物取引に係る雑所得等」から控除できます(租税特別措置法41条の15)。ただし、自動的に繰り越されるわけではありません。国税庁のタックスアンサー(No.1523)は、次の手続を求めています。

まず、損失が生じた年分の確定申告書に、「所得税及び復興特別所得税の申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)」と「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」を添付して提出すること。次に、その後も連続して、付表を添付した確定申告書を提出すること。そして、控除を受ける年分も、付表と計算明細書を添付して確定申告をすることです。

数字で確かめてみます。国内の登録業者とのFXで、2025年に150万円の損失が出た大家さんの例です。

年分 FXの損益 繰越控除 課税されるFXの所得 税額(20.315%)
2025年 150万円の損失 - 0円 0円(150万円を繰越し)
2026年 100万円の利益 100万円 0円 0円(残り50万円を繰越し)
2027年 80万円の利益 50万円 30万円 60,945円

2025年の損失を正しく繰り越せば、2026年分と2027年分の税額は合計60,945円です。もし2025年分の申告をしていなかったら、2026年分は100万円×20.315%=203,150円、2027年分は80万円×20.315%=162,520円、合計365,670円。差は304,725円で、ちょうど150万円の損失の20.315%にあたります。

ここで注意したいのは、FXの取引を休んだ年や、ほかに申告する所得がない年です。繰越控除を続けるには、その年も付表を添付した確定申告書の提出が必要です。もっとも、不動産所得で毎年確定申告をしている大家さんなら、その申告書に付表を添えることを忘れなければ、この条件は満たせます。2025年の損失は、2028年分まで繰り越せます。

繰り越した損失を差し引けるのは、各年の「先物取引に係る雑所得等」の金額が限度です。表の2026年のように、FXの利益が100万円なら控除も100万円まで。残りは翌年へ回り、家賃の所得から差し引かれることはありません。損失の繰越控除も、あくまで「FXの仲間の囲い」の中の話なのです。

正直に言うと、損失の年に確定申告をするのは気が重いものです。けれど、損失の申告は「来年以降の自分への仕送り」のようなもの。損が出た年こそ、申告書にきちんと残しておいてほしいと思います。

海外の無登録業者のFXは総合課税。繰越しも、国内FXとの通算もできない

海外の無登録業者とのFXの利益は、原則として雑所得として、家賃や給与と合算する総合課税になります。損失は、ほかの雑所得とは通算できますが、ほかの所得とも、国内業者のFXなどの「先物取引に係る雑所得等」とも通算できません(タックスアンサーNo.1521)。繰越控除もありません。

総合課税の重さを、数字で見ておきます。課税所得金額が600万円の大家さんが、海外の無登録業者とのFXで100万円の利益を出した場合です(所得控除は変わらないものとします)。

項目 FXの利益がない場合 100万円が加わった場合 増える税額
課税所得金額 600万円 700万円 -
所得税 600万円×20%−427,500円=772,500円 700万円×23%−636,000円=974,000円 201,500円
所得税+復興特別所得税 788,700円 994,400円 205,700円
住民税(所得割10%の概算) - - 100,000円

※復興特別所得税は所得税額の2.1%(100円未満切捨て)。住民税は調整控除などを考慮しない概算です。

増える税額は合計305,700円です。同じ100万円の利益でも、国内の登録業者とのFXなら100万円×20.315%=203,150円ですから、102,550円の差になります。家賃の所得が大きい大家さんほど、この差は広がります。総合課税の最高税率は、所得税45%に復興特別所得税と住民税10%を合わせて55.945%です。

税金の差以上に気になるのが、取引そのもののリスクです。金融庁は「無登録の海外所在業者による勧誘にご注意ください」というページで、日本の登録を受けていない海外の業者が日本語のホームページなどでFXの勧誘をしている例を挙げ、取引の前に相手が登録を受けているかを確認するよう呼びかけています。トラブルが起きても「業者への追及は極めて困難」だとしています。登録の有無は、金融庁の登録業者一覧で確かめられます。

大家業で、管理会社や建築会社を選ぶときに許認可や実績を確かめるのと同じで、お金を預ける相手の登録を確かめるのは、税金以前の基本だと私は考えています。

暗号資産の証拠金取引は、FXと同じ扱いにはならない

レバレッジをかけて取引するという点では似ていても、暗号資産の証拠金取引は、FXと同じ申告分離課税にはなりません。国税庁の暗号資産のFAQは、暗号資産の証拠金取引には「先物取引に係る雑所得等の課税の特例」の適用はなく、総合課税になるとしています。国内業者のFXの損失と、暗号資産の証拠金取引の利益を差し引くこともできません。暗号資産の税金は、別の記事で詳しく扱います。

スワップポイントは、年間の損益報告書で確かめる

FXでは、為替の差益のほかに、通貨の金利差にあたるスワップポイントも損益になります。たとえばソニー銀行は、その年の1月1日から12月31日の取引終了までに決済注文が約定した取引の為替差損益とスワップポイントを合計した金額が、その年の「先物取引に係る雑所得等の金額」になると説明し、未決済の建玉の評価損益は所得の計算に入らないとしています。

スワップポイントの付き方や受け取り方は業者によって仕組みが違うので、申告の前に、業者が出す年間の損益報告書で、スワップポイントがどの年の損益に含まれているかを確認してください。

もう一つ、大和証券は、所得税法で定められた「先物取引に関する支払調書」を税務署長に提出していると案内しています。国内の業者とのFXの損益は、税務署にも把握される前提で考えておくのが安全です。

会社員の「20万円以下なら申告不要」と、大家さんの確定申告

給与の年間収入金額が2,000万円以下で、給与を1か所から受けていて、その全部が源泉徴収の対象になっている会社員は(同族会社の役員で、その会社から賃貸料などを受け取っている人などを除きます)、給与所得・退職所得以外の所得の合計額が20万円以下なら、所得税の確定申告は不要です(タックスアンサーNo.1900、所得税法121条)。国内の登録業者とのFXの利益も、この20万円の合計に含めて判定します。ただし、住民税にはこの扱いがないため、所得税の確定申告をしない場合でも、お住まいの市区町村への住民税の申告は必要です。

ただ、これは確定申告をしない場合の話です。不動産所得で確定申告をする大家さんは、FXの損益も金額にかかわらず申告に含めます。そして前に見たとおり、損失を繰り越したいなら、利益が出ていない年でも申告が欠かせません。会社員の大家さんの確定申告と住民税の申告は、別の記事で詳しく扱います。

大家さんがFXと付き合うなら、口座と記録を家賃と分けておく

ここからは、税理士大家としての私の考えです。

家賃は、空室や修繕で上下しながらも、毎月少しずつ積み上がっていく収入です。一方のFXは、証拠金の何倍もの取引をするぶん、短い期間で損益が大きく振れます。性格のまるで違う二つのお金が同じ口座で混ざると、修繕のために取っておいたはずの資金が、いつの間にか証拠金に回っていた、ということが起こりかねません。

税金の面から見ても、家賃とFXは別々の箱で計算されます。不動産所得は収支内訳書や青色申告決算書で、FXは先物取引に係る雑所得等の計算明細書で。だからこそ、口座も記録も最初から分けておくと、申告のときに迷いません。業者が出す年間の損益報告書は、繰越控除を使い切るまでの数年分を、申告書の控えと一緒に保管しておいてください。繰越損失の残高を、年ごとに一行ずつ書き足していく簡単な表を作っておくのもおすすめです。

年内に確かめておきたいのは、取引の相手と、繰り越している損失

まずは、取引している業者が金融商品取引法の登録を受けているかを、金融庁の登録業者一覧で確認してください。複数の口座を持っている方は、口座ごとに確かめます。ここで、税金の計算の区分が決まります。

次に、2025年の損益の見込みです。国内業者のFX、CFD、日経225先物などは合算して考え、年間で損失になりそうなら、2026年3月16日までの確定申告で付表を添えて繰り越す準備をしておきましょう。2022年分以後の申告で繰り越している損失がある方は、2025年分の申告でも付表の添付を続けることを忘れずに。

そして、海外の無登録業者との取引がある方は、その利益が家賃と合算されて税率が上がることを前提に、納税資金を見込んでおいてください。損失が出ていても、家賃の黒字とも国内FXの利益とも相殺できません。

FXの税金は「誰と取引したか」と「申告を続けたか」で決まる

国内の登録業者とのFXは「先物取引に係る雑所得等」として、税率は一律20.315%。FX・CFD・日経225先物などの間では損益通算できますが、家賃や給与とは通算できません。損失は翌年以後3年間繰り越せますが、損失の年から毎年、付表を添えて確定申告を続けることが条件です。

海外の無登録業者とのFXは、総合課税の雑所得になり、繰越控除もありません。暗号資産の証拠金取引も総合課税です。

同じ「FX」でも、取引の相手が違えば、税金はまったく別のものになります。物件を買うときに、まず登記簿で所有者を確かめるのと同じように、FXもまず取引の相手を確かめる。そのうえで、損が出た年こそ申告を丁寧に。それが、FXと長く付き合う大家さんの基本だと私は思います。

当事務所では、FXや先物取引の損益を含めた大家さんの確定申告と、損失の繰越控除の手続をお手伝いしています。お気軽にご相談ください。

 

※本記事は公表資料をもとにした情報提供を目的としたもので、特定の銘柄の売買や特定の投資商品への投資を勧めるものではありません。税務の取扱いは個別の事情によって変わるため、実行の前に税理士などの専門家にご確認ください。

出典・参考

  • 国税庁 タックスアンサー1521「外国為替証拠金取引(FX)の課税関係」、No.1522「先物取引に係る雑所得等の課税の特例」、No.1523「先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除」、No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」、No.2260「所得税の税率」、No.6213「駐車場の使用料など」(タックスアンサーはいずれも2025年12月時点の内容を参照)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1521.htm
  • 租税特別措置法第41条の14・第41条の15、同法施行令第26条の23・第26条の26、所得税法第35条・第69条・第121条
  • 国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」(令和6年12月20日)https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0025012-067.pdf
  • 金融庁「無登録の海外所在業者による勧誘にご注意ください」(令和6年6月28日更新)https://www.fsa.go.jp/ordinary/kanyu/20090731.html
  • ソニー銀行「所得の計算方法と必要経費|外国為替証拠金取引(FX)の税金」https://sonybank.jp/guide/tax-system/13.html
  • 大和証券「FXの税金について」(平成29年1月1日現在)https://www.daiwa.jp/products/fx/tax_fx/