東雲結子:先生、市役所から「償却資産申告書」という封筒が届きました。アパートの固定資産税は毎年ちゃんと払っているので、これは何かの間違いですよね。資源ごみの日に出しておきます!

税理士石井:おっと、その封筒をひもで縛るのは、ちょっと待ってください。固定資産税は、土地と家屋のほかに、もうひとつ「償却資産」にもかかるんです。

東雲結子:償却資産……。アパートの建物のほかに、何か持っていましたっけ? 私の持ち物は、物件と電卓くらいです。

税理士石井:ふふ、駐車場のアスファルト、敷地のフェンス、入口の外灯。家屋とは別に、こうした「構築物」なども申告の対象なんです。期限は1月31日ですが、2026年は土曜日なので2月2日(月)までになります。

東雲結子:えっ、地面まで申告するんですか? じゃあ、駐車場の白線にも一本ずつ税金が……。

税理士石井:ははは、白線を数える必要はありませんよ。それに、評価額の合計が150万円未満なら、免税点といって課税はされません。

東雲結子:うちの駐車場、そんなに立派じゃないので、きっと150万円もありません。それなら申告しなくても同じですね!

税理士石井:うーん、そこが落とし穴です。免税点より少なくても、申告書は出すよう案内されています。空室で家賃のない部屋も、家賃の台帳には「0円」と書くでしょう? 数字が小さいことも、申告して初めて市区町村に伝わるんです。

東雲結子:なるほど……。封筒を資源ごみに出していたら、私の駐車場のアスファルトごと、行方不明になるところでした。

税理士石井:そういうことです。アパートのどんな資産が償却資産の申告の対象になるのか、評価額と税額の計算、免税点の考え方まで、順番に確認していきましょう。

「償却資産の申告書が届いたけれど、アパートの固定資産税は毎年払っているし、関係ないですよね?」

毎年この時期になると、大家さんからよく聞かれる質問です。アパートの土地と建物には、毎年固定資産税がかかっています。けれど、駐車場の舗装や敷地のフェンス、外灯といった「建物の外まわり」は、土地でも家屋でもありません。こうした資産は「償却資産」として、大家さん自身が市区町村に申告することになっています。

償却資産の申告は、所得税の確定申告とは別の手続です。しかも期限は1月末と、確定申告より一足早くやってきます。この記事では、アパートや駐車場を貸している大家さん・資産管理法人を念頭に、何が申告の対象になるのか、免税点150万円の考え方、評価額と税額の計算までを確認します。

※この記事は2025年12月時点の法令と、東京都主税局・横浜市などの公表資料にもとづいています。

償却資産の申告は、1月1日に持っている事業用の資産を、1月31日までに

ポイント 内容
何を申告する 土地・家屋以外の、事業に使うことができる資産(構築物・器具備品など)(地方税法341条4号)
いつの時点 毎年1月1日(賦課期日)に持っているもの(地方税法359条)
いつまでに 1月31日まで。2026年は1月31日が土曜日のため2月2日(月)(地方税法383条・20条の5第2項)
どこへ 資産がある市区町村(東京23区は都税事務所)
免税点 同じ市区町村にある償却資産の課税標準額の合計が150万円未満なら課税されない(地方税法351条)。それでも申告は必要
税率 標準税率1.4%(地方税法350条)
対象外 10万円未満で全額をその年の経費にしたもの、20万円未満の一括償却資産、自動車税・軽自動車税がかかる車両など

固定資産税は、毎年1月1日に誰が何を持っているかで、その年度の1年分が決まります(地方税法359条)。土地と家屋は登記などをもとに市区町村が把握できますが、駐車場の舗装や外灯までは、持ち主からの申告がなければ把握しにくいものです。そこで、地方税法383条は、固定資産税の納税義務がある償却資産の所有者に、毎年1月1日現在の資産の所在、種類、数量、取得時期、取得価額、耐用年数などを、1月31日までに資産の所在地の市町村長に申告するよう定めています。

2026年は1月31日が土曜日です。地方税法20条の5第2項と地方税法施行令6条の18は、地方税法の期限(政令で除かれる一部の期限を除く)が土曜日や休日に当たるときは翌日を期限とみなすと定めているので、2026年1月1日現在の資産について出す申告(令和8年度分)の期限は、2月2日(月)になります。

アパートでは、駐車場の舗装・門・塀・フェンス・外灯などが申告の対象

では、アパートでは具体的に何が対象になるのでしょうか。

横浜市の「固定資産税のあらまし」には、昨年アパートを新築した方からの質問に答える形で、「アパートの場合には、門扉、塀、駐車場の舗装路面、屋外給排水設備、外灯などが償却資産として課税の対象となります」と書かれています。不動産貸付業の主な償却資産としては、「門扉、塀、外灯、緑化施設、立体駐車場のターンテーブル及び機器部分、屋外給排水設備、太陽光発電設備等」が挙げられています。

さいたま市のアパート・マンションの経営者向けの案内も、構築物として「門、塀、舗装工事(駐車場舗装含む)、フェンス、外構工事、ゴミ置き場、緑化施設(植栽)、簡易物置、自転車置場」を、電気設備として「受変電設備、外灯」を挙げています。東京都主税局の申告の手引きでも、不動産貸付業の例として、受変電設備や「門・塀・緑化施設等の外構工事」などが示されています。

並べてみると、どれも「建物の外にあって、入居者の暮らしを支えているもの」ばかりです。新築のときに建物と一緒に工事をしたので、建物の一部だと思い込んでいた。そんな方も多いのではないでしょうか。新築アパートの請負契約や、中古物件の売買の資料で、外構工事が建物とは別の項目になっていないか、一度見直してみてください。所得税の減価償却でも、構築物は建物とは別の耐用年数で計算するものですから、両方の申告の整理にもつながります。

建物と一体の設備をどこまで家屋とするかは、市区町村の区分による

少し悩ましいのが、建物の中や建物に付いている設備です。東京都主税局の手引きは、家屋と設備の所有者が同じなら、内装などは一般に家屋として評価するとしたうえで、「独立した機器としての性格が強いもの、特定の生産又は業務の用に供されるもの等」は償却資産として扱うとしています。また、「賃借人(テナント)等が取り付けた事業用の内装・造作及び建築設備等については、償却資産として取扱います」とも書かれています。

たとえば、さいたま市の案内では、アパート・マンションの器具備品の例として「ルームエアコン、ゴミストッカー」が挙げられています。このように、どこまでを家屋に含め、どこからを償却資産とするかは、市区町村(東京23区は都)の区分によって変わることがあります。迷う設備があれば、物件のある市区町村の申告の手引きで確かめるか、資産税の担当に問い合わせるのが確実です。

その資産が申告の対象になるかは、4つの質問で判定できる

ここまでの話を、フローチャートにまとめました。上から順に、すでに土地や家屋として評価・課税されているか、賃貸などの事業に使い減価償却の対象になる資産か、自動車税・軽自動車税がかかる車両か、10万円未満で全額をその年の経費にしたり20万円未満で一括償却資産にしたりしたものか、という4つの質問をたどります。

右側の青い枠に進んだものは、償却資産の申告には含めません。4つの質問をすべて通り抜けたものが、いちばん下のオレンジの枠、償却資産として申告するものです。ここには、駐車場の舗装、門・塀・フェンス、外灯、自転車置場、ゴミ置き場、植栽といった例と、30万円未満の特例で全額を経費にしたものも対象になること、期限が1月31日で2026年は2月2日(月)であることを書いています。最後の緑の枠が免税点です。評価額の合計(課税標準額)が150万円未満なら課税されませんが、それでも申告は必要で、150万円以上なら標準税率1.4%で課税されます。

10万円未満・20万円未満の少額資産は対象外、30万円未満の特例を使ったものは対象

所得税の計算で、取得価額が10万円未満の資産を全額その年の経費にした場合(所得税法施行令138条)と、10万円以上20万円未満の資産を一括償却資産として3年で均等に経費にした場合(同139条)は、償却資産の対象から外れます(地方税法341条4号、地方税法施行令49条。法人は法人税法施行令133条・133条の2の扱いが同じく対象外です)。

ところが、青色申告の中小事業者が取得価額30万円未満の資産を年300万円まで全額経費にできる特例(租税特別措置法28条の2。法人は67条の5)を使ったものは、償却資産の申告の対象です。伊賀市の申告の手引きも、「租税特別措置法(中小企業者等の少額資産特例)を適用して損金算入した資産については、課税対象となります」と明記しています。

所得税ではどちらも「その年に経費にした」資産なのに、固定資産税の扱いは分かれる。ここは、確定申告の帳簿だけを見ていると気づきにくいところです。決算書の減価償却の明細を見ながら、どの方法で経費にしたかを一つずつ確かめておきましょう。

免税点150万円は、市区町村ごと・持ち主ごとの合計で判定する

地方税法351条は、同じ人が同じ市区町村の中に持っている償却資産の課税標準額の合計が150万円に満たない場合、固定資産税を課すことができないと定めています(ただし、財政上その他特別の必要がある場合は、条例で課税できるという例外もあります)。

ポイントは「合計」で判定することです。駐車場の舗装だけなら150万円未満でも、フェンスや外灯を足すと150万円以上になることがあります。逆に、物件が別々の市区町村にあれば、それぞれの市区町村で別に判定します。

そして、免税点未満でも申告は必要です。伊賀市の手引きは「免税点未満であっても、償却資産の申告は必要です」としています。東京都主税局の手引きでは、課税標準額が150万円未満なら課税されず、納税通知書も交付されないこと、償却資産を持っていない場合は「該当資産なし」として申告することが案内されています。

評価額は「取得価額×減価残存率」、税額は課税標準額×1.4%

償却資産の評価額は、取得価額をもとに、耐用年数に応じた減価残存率を掛けて計算します。東京都主税局や伊賀市の手引きによると、前の年の中に取得したものは、取得した月にかかわらず半年分の減価があったものとして「取得価額×(1−減価率÷2)」で計算し、その翌年度からは「前年度の評価額×(1−減価率)」で計算します。評価額は、取得価額の5%まで下がるとそれ以上は下がりません。耐用年数10年の資産なら、減価残存率は前年中に取得したもので0.897、それより前に取得したもので0.794です。

課税標準額は1,000円未満を切り捨て、税額は100円未満を切り捨てます(伊賀市の手引き)。

具体的な数字で計算してみましょう。2025年中に、アパートの駐車場をアスファルトで舗装し(取得価額200万円)、敷地に金属製のフェンスを設けた(50万円)とします。耐用年数は、減価償却資産の耐用年数等に関する省令の構築物の区分で、アスファルト敷の舗装路面が10年、敷地を囲む金属製のフェンスは金属造の塀として10年です。同じ市区町村にほかの償却資産はなく、税率は標準税率の1.4%とします。

年度(賦課期日) 駐車場の舗装(200万円) フェンス(50万円) 課税標準額(合計) 固定資産税(1.4%)
2026年度(2026年1月1日) 200万円×0.897=1,794,000円 50万円×0.897=448,500円 2,242,000円 31,300円
2027年度(2027年1月1日) 1,794,000円×0.794=1,424,436円 448,500円×0.794=356,109円 1,780,000円 24,900円

※課税標準額は1,000円未満切捨て、税額は100円未満切捨て。2026年度は2,242,500円→2,242,000円×1.4%=31,388円→31,300円、2027年度は1,780,545円→1,780,000円×1.4%=24,920円→24,900円。

もし舗装だけだったら、2026年度の課税標準額は1,794,000円で、税額は25,100円(1,794,000円×1.4%=25,116円)。2027年度は評価額が1,424,436円となって150万円を下回るので、免税点により課税されません。それでも、申告は続けて出すことになります。

この計算は、所得税の減価償却とは別物です。所得税では使い始めた月からの月割りで計算しますが、償却資産の評価は、何月に取得しても最初の年度は半年分の減価として扱います。確定申告の帳簿の未償却残高を、そのまま書き写すものではない点に注意してください。

数字にしてみると、年間3万円ほどの税金です。大きな額ではないかもしれません。ただ、毎年の申告を怠ると、その分が後から積み重なって指摘されることにもなりかねません。物件の外まわりも、建物と同じく「持っている以上、税金のかかる資産」なのだと、私は大家業を続けるなかで実感しています。

2年目からは「増えた・減った」を申告する。償却済みの資産も外さない

償却資産の申告は、一度出せば終わりではありません。伊賀市の手引きは、前年度以前に申告した人は「資産の増減を申告してください」としていて、前の年の中に増えた資産と減った資産を、それぞれ明細書に書いて出します。増減がなければ、申告書で「増減なし」と申告します。

減った資産の理由として手引きが挙げているのは、売却、滅失、移動などです。たとえば、古くなったフェンスを撤去した、駐車場の一部を建物の増築で取り壊した、物件そのものを売った。こうした場合に減少の申告をしないと、もう持っていない資産に翌年度も税金がかかったままになりかねません。工事の請求書をしまう前に、「これは増えた資産か、減った資産か」を一言メモしておくと、1月の申告がぐっと楽になります。

もうひとつ見落としやすいのが、所得税の減価償却が終わった資産です。伊賀市の手引きは、申告もれが多い資産として「償却済み資産(税務会計上、減価償却可能限度額まで減価償却した資産)」と「簿外資産(帳簿に記載されていない資産)」を挙げ、どちらも課税の対象としています。償却資産の評価額は取得価額の5%までしか下がらないので、帳簿の上では償却が終わった古い舗装やフェンスでも、敷地に残っているかぎり申告の対象です。

中古の物件を買った場合は、所得税で中古資産の見積耐用年数を使っていれば、償却資産の申告でもその耐用年数を書くよう案内されています(伊賀市の手引き)。さらに、申告もれが過去の年度にさかのぼって見つかった場合は、最大5年度分の修正申告が必要になるとされています(同手引き、地方税法17条の5)。最初の申告を正しく出しておくことが、結局はいちばん手間のかからない方法なのです。

申告しないままにすると、過料の規定もある

地方税法386条は、固定資産の所有者が正当な事由なく申告をしなかった場合に、市区町村が条例で10万円以下の過料を科すことができると定めています。伊賀市の手引きも、「正当な理由がなく申告をされなかった場合には、…過料を科されることがあります」と案内しています。

申告書が手元に届かなかったからといって、地方税法383条の申告の義務がなくなるわけではありません。2025年中に外構工事や駐車場の整備をした方は、ご自分から市区町村の手引きを確認しておくと安心です。

年内に確かめておきたいのは、2025年中の外まわりの工事と、決算書の明細

まずは、2025年中に行った工事を振り返ってください。駐車場の舗装、フェンスや門扉の設置、外灯や防犯カメラの取付けなど、建物の外まわりに手を入れたものがあれば、請求書と金額を集めておきます。

次に、確定申告の決算書(減価償却費の計算の明細)を開き、構築物や器具備品として計上している資産を確かめましょう。そのとき、10万円未満で全額経費にしたもの、一括償却資産にしたもの、30万円未満の特例を使ったものを区別しておくと、申告の対象を選び出すのが楽になります。

そのうえで、物件ごとに、どの市区町村(東京23区は都税事務所)に申告するのかを確認します。これまで申告をしていなかった方は、新築や購入の時点からの資産も含めて、市区町村の手引きに沿って整理してください。期限は2026年2月2日(月)です。年明けの期限を一覧で確認したい方は、当ブログの「2026年1月〜3月の大家さんの税務カレンダー:1月20日・2月2日・3月16日・3月31日、期限と対象者を一覧に」(2025年12月18日)もご覧ください。固定資産税が1月1日の状態で決まる仕組みは、「古家の取壊しは年明けまで待つ? 固定資産税は1月1日の状態で決まります。更地にした翌年度、200㎡以下の住宅用地の固定資産税は「6倍」ではなく最大約4.2倍に」(2025年12月13日)でも取り上げています。

償却資産の申告は、建物の「外まわり」を数える作業。免税点未満でも、1月1日の持ち物を伝える

アパートの固定資産税は、土地と家屋だけではありません。駐車場の舗装、門・塀・フェンス、外灯、自転車置場などは、償却資産として申告の対象になります。毎年1月1日に持っている資産を、1月31日まで(2026年は2月2日(月)まで)に、資産のある市区町村に申告します。

10万円未満で全額経費にしたものや一括償却資産は対象外ですが、30万円未満の特例を使ったものは対象です。評価額は取得価額×減価残存率で計算し、同じ市区町村の課税標準額の合計が150万円未満なら課税されません。ただし、免税点未満でも申告は必要です。

届いた封筒を開いてみると、そこには「あなたの物件の外まわりを教えてください」という問いが書かれています。建物の中の設備や入居者の暮らしばかりに目が向きがちな大家業ですが、年に一度、敷地の端から端までを見渡す機会だと思えば、この申告も悪くありません。

当事務所では、大家さんや資産管理法人の償却資産の申告を、確定申告・決算の減価償却の明細とあわせて整理するお手伝いをしています。お気軽にご相談ください。

 

出典・参考

  • 地方税法 第20条の5、第341条(固定資産税に関する用語の意義)、第350条(固定資産税の税率)、第351条(固定資産税の免税点)、第359条(固定資産税の賦課期日)、第383条(固定資産の申告)、第386条(固定資産に係る不申告に関する過料)(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226
  • 地方税法施行令 第6条の18、第49条(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000245
  • 国税庁 タックスアンサー2100「減価償却のあらまし」(2025年12月時点の内容を参照)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm
  • 東京都主税局「令和5年度 固定資産税(償却資産)申告の手引き」(2022年11月発行)https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/shisan/files/R5_shinkokutebiki.pdf
  • 横浜市「固定資産税のあらまし」償却資産のページ(PDF)https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/koseki-zei-hoken/zeikin/koho/zeimu/aramashi.files/0025_20250326.pdf
  • さいたま市「賃貸アパート・マンション経営者の皆様へ」(PDF)https://www.city.saitama.lg.jp/001/153/004/002/002/004/p007155_d/fil/shoukyakutirashi2.pdf
  • 伊賀市「償却資産(固定資産税)申告の手引き」(2024年8月改訂)https://www.city.iga.lg.jp/cmsfiles/contents/0000004/4890/R7tebiki.pdf
  • 減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第一(構築物)(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/340M50000040015