東雲結子:石井先生、賃貸併用住宅のモデルハウスを見てきました! 1階に賃貸のお部屋が2つ、2階が自宅です。家賃でローンを返せて、住宅ローン控除も全部のローンにつくなんて、夢のおうちです!
税理士石井:素敵なおうちでしたね。うーん、ただ、住宅ローン控除が全部のローンにつくかどうか、その答えは間取り図の中に書いてあるんです。
東雲結子:えっ、間取り図にですか? 私、キッチンの広さと収納の数しか見ていませんでした……。
税理士石井:ふふ、キッチンも大事です。でも賃貸併用住宅は、ひとつの建物に「自宅」と「賃貸」が同居しているので、税金も二つの部分に分けて考えるのが基本なんです。自宅60%・賃貸40%なら、住宅ローン控除の対象はローン残高の60%の部分だけ。この記事の例では、2025年分の控除額は16万3,800円です。
東雲結子:じゃあ、残りの40%のローンは、控除の輪に入れてもらえずに、ひとりで壁際に立っているんですか?
税理士石井:ははは、壁際どころか、ちゃんと別の席が用意されています。賃貸部分のローンは控除の対象にならない代わりに、その利子が不動産所得の必要経費になるんです。同じローンでも、自宅の部分と賃貸の部分で、座る席が違うんですね。
東雲結子:なるほど……。それなら、いっそ賃貸のお部屋を増やして自宅を小さくすれば、家賃も増えてもっとお得では?
税理士石井:おっと(汗)、そこが落とし穴です。自宅部分が建物の半分未満になると、住宅ローン控除そのものが受けられません。家賃でローンを返す計画と、税金の「2分の1以上」は、別々に確かめる必要があるんです。
東雲結子:間取り図は、おうちの設計図であると同時に、税金の設計図でもあったんですね。
税理士石井:そういうことです。経費の按分、住宅ローン控除、相続の小規模宅地等の特例、固定資産税の4つを、一つのモデルケースで順番に見ていきましょう。
「1階を2部屋の賃貸にして、2階を自宅に。家賃でローンを返せるし、税金の特例も使えるんですよね?」
賃貸併用住宅は、ひとつの建物に「自宅」と「賃貸」が同居しています。そのため、税金も「自宅の部分」と「賃貸の部分」に分けて考えるのが基本です。分け方を間違えると、経費の入れすぎや、住宅ローン控除の使いすぎにつながります。
住みながら家賃収入も得られる賃貸併用住宅は、大家業の入口としても魅力のある選択肢だと私は思います。ただ、賃貸併用住宅の税金は、所得税・相続税・固定資産税と、かかわる税目が多いのが特徴です。しかも、税目ごとに「割合」の使い方が少しずつ違います。建ててから慌てないように、できれば設計の段階で全体像をつかんでおいていただきたいところです。
この記事では、次のモデルケースを使って、4つの税金をまとめて確認します。モデルケースは、2025年に新築・入居した木造2階建て(省エネ基準適合住宅)です。延床面積150㎡のうち、自宅90㎡、賃貸2戸60㎡(自宅60%・賃貸40%)。建築費4,000万円(税込)を住宅ローンで借入れ、2025年末の残高は3,900万円です。土地300㎡は、親から相続して所有済みという設定です。
※この記事は2025年12月時点の法令と国税庁・国土交通省・自治体の公表資料にもとづいています。
賃貸併用住宅の税金は、自宅部分と賃貸部分に分けて考える
| 税金 | ポイント |
| 家賃の申告(所得税) | 建物の減価償却費・借入金利子・固定資産税などは、床面積の割合で按分した賃貸部分だけが必要経費 |
| 住宅ローン控除 | 床面積50㎡以上で、その2分の1以上が自宅なら対象。控除の対象は居住用の割合の部分だけ(おおむね90%以上なら全体) |
| 相続(小規模宅地等の特例) | 自宅部分は特定居住用(330㎡・80%減額)、賃貸部分は貸付事業用(200㎡・50%減額)。併用するときは限度面積を調整 |
| 固定資産税 | 賃貸部分も住宅なら、敷地全体が住宅用地。店舗などがあれば居住部分の割合で判定 |
4つの税金のどれを見ても、出発点は「自宅と賃貸の割合」です。ただ、その割合をどう使うかは税金ごとに違います。家賃の申告では賃貸割合で経費を按分し、住宅ローン控除では居住用の割合で対象を絞り、相続では敷地を床面積の割合で分け、固定資産税では居住部分の割合で住宅用地を判定する、という具合です。
モデルケースを一枚の図にしました。2階は全部が自宅、1階は賃貸2戸と自宅の一部で、自宅部分90㎡(60%)を左に、賃貸部分60㎡(40%)を右に振り分けています。左の自宅部分には、住宅ローン控除(ローン残高×60%が対象)、相続の特定居住用宅地等(330㎡まで80%減額)、固定資産税(敷地は住宅用地)が並びます。右の賃貸部分には、家賃の申告(減価償却費・利子・固定資産税×40%が必要経費)、相続の貸付事業用宅地等(200㎡まで50%減額)、そして固定資産税(賃貸住宅も住宅なので、敷地は住宅用地)です。

経費になるのは、床面積の割合で按分した賃貸部分だけ
自宅部分の費用は、家事上の費用なので必要経費になりません。自宅と賃貸の両方にかかわる費用は、賃貸部分に当たる金額が明らかに区分できる場合に限り、その部分だけが必要経費になります(所得税法45条1項1号、所得税法施行令96条)。建物の費用は、床面積の割合で区分するのが基本です。共用の廊下・階段がある場合は、その面積を自宅と賃貸の専用部分の割合で振り分けて計算します。これは、国税庁が住宅ローン控除の居住用割合の計算(質疑応答事例)で示している方法と同じ考え方です。
| 費用 | 按分の方法 | モデルケース(1年分) |
| 建物の減価償却費 | 建築費×賃貸割合を取得価額として償却 | 4,000万円×40%=1,600万円、木造(住宅用)22年・定額法0.046で73万6,000円 |
| 借入金利子 | その年の利子×賃貸割合 | 利子39万円なら15万6,000円 |
| 固定資産税・都市計画税(土地・建物) | 税額×賃貸割合 | 20万円なら8万円 |
| 賃貸部分だけの修繕費・広告費など | 全額 | - |
入居した年の減価償却費は、賃貸を始めた月からの月割りです。また、賃貸部分で赤字が出た場合、土地の取得のための借入金利子に当たる部分は給与などと損益通算できません(不動産所得の赤字と損益通算を取り上げる記事で詳しく扱います)。
按分が必要なのは、自宅と賃貸の両方にかかわる費用です。入居者募集の広告費や賃貸部分だけの修繕費は、はじめから賃貸のための支出なので、表のいちばん下の行のとおり全額が経費になります。逆に、自宅のための費用を賃貸の経費に紛れ込ませてしまうと、それが「経費の入れすぎ」です。領収書を受け取ったときに、自宅の分か、賃貸の分か、両方にかかわるものかを書き添えておくだけで、年末の仕分けはずいぶん楽になります。
表の金額は1年分なので、年の途中で賃貸を始めた年は、減価償却費が月割りになる点にも気をつけてください。また、モデルケースのローンは建築費のために借りたものですが、土地も借入れで買う場合は、損益通算の制限も頭に入れておきましょう。
住宅ローン控除は、自宅が床面積の2分の1以上あることが条件
対象になるかは、床面積・合計所得金額・省エネ基準で決まる
まず家屋の条件です。家屋の床面積(賃貸部分も含めた全体)が50㎡以上で、その2分の1以上が専ら自分の居住用であることが必要です(合計所得金額1,000万円以下で、2025年12月31日までに建築確認を受けた新築住宅は40㎡以上)。次に所得の条件として、その年の合計所得金額が2,000万円以下であること(40㎡以上50㎡未満の特例は1,000万円以下)。そして、2024年以後に建築確認を受けた新築住宅は、省エネ基準に適合していることが求められます(「その他の住宅」は原則として対象外)。
自宅部分が建物の半分未満なら、住宅ローン控除は受けられません。設計の段階で確認しておきましょう。
床面積は、賃貸部分も含めた建物全体で見ます。賃貸の部屋を一つ増やすか、自宅を少し広く取るか。間取りを考える段階でのちょっとした違いが、控除を受けられるかどうかの分かれ目になることもあります。モデルケースは、延床面積150㎡のうち自宅が90㎡なので、2分の1以上の条件を満たしています。
2025年入居の新築は、控除率0.7%・控除期間13年
控除率は0.7%、新築住宅の控除期間は13年です(その他の住宅で一定のものは10年)。
| 新築住宅の区分 | 借入限度額 | 子育て世帯・若者夫婦世帯 |
| 認定住宅(長期優良住宅・低炭素住宅) | 4,500万円 | 5,000万円 |
| ZEH水準省エネ住宅 | 3,500万円 | 4,500万円 |
| 省エネ基準適合住宅 | 3,000万円 | 4,000万円 |
| その他の住宅 | 0円(2023年12月31日までに建築確認を受けたものなどは2,000万円・10年) | - |
※子育て世帯・若者夫婦世帯は、2025年12月31日時点で、40歳未満で配偶者がいる人、40歳以上で40歳未満の配偶者がいる人、または19歳未満の扶養親族がいる人。中古住宅は、省エネ基準適合住宅以上が3,000万円、その他が2,000万円で、控除期間は10年です。
モデルケースは省エネ基準適合住宅なので、借入限度額は3,000万円(子育て世帯・若者夫婦世帯なら4,000万円)です。表のいちばん下の「その他の住宅」の行も見ておいてください。2024年以後に建築確認を受けた新築で省エネ基準を満たさないものは、原則として控除の対象から外れます。建物の性能は、住み心地だけでなく税金にもつながっているのです。
控除の対象は「居住用の割合」の部分だけ
控除額は、年末のローン残高(家屋の取得対価が少なければその額)に居住用の割合を掛けた金額をもとに計算します。居住用の割合がおおむね90%以上なら、全体を居住用として計算できます(租税特別措置法関係通達41-29)。
モデルケースでは、3,900万円×60%=2,340万円が対象で、借入限度額3,000万円の範囲内です。2025年分の控除額は2,340万円×0.7%=16万3,800円で、所得税から引ききれない分は、住民税から一定の上限(所得税の課税総所得金額等の5%、最高9万7,500円)まで差し引けます。賃貸部分の40%のローンは、控除の対象にならない代わりに、その利子が不動産所得の必要経費になります。
ここは、賃貸併用住宅のよくできたところだと私は思います。自宅の部分は住宅ローン控除で、賃貸の部分は利子を必要経費にすることで、それぞれ税金の上で扱われる。ローンを一本で組んでいても、税金の上では二つの顔を持っているわけです。だからこそ、どちらか一方で使いすぎないように、割合をきちんと押さえておく必要があります。
夫婦で建物を共有したり、ペアローンを組んだりする場合は、持分ごとに考えます。共有の注意点は、当ブログの「共有名義の不動産の注意点とは?」(2025年7月26日)もご覧ください。
相続では、小規模宅地等の特例の「2つの枠」を調整して使う
賃貸併用住宅の敷地は、建物の床面積の割合で、自宅部分(180㎡)と賃貸部分(120㎡)に分けて考えます。
自宅部分は、配偶者や同居していた親族などが取得すれば、特定居住用宅地等として330㎡まで80%減額されます。賃貸部分は、取得した親族が申告期限まで貸付けを続け、土地を持ち続ければ、貸付事業用宅地等として200㎡まで50%減額されます。
両方を使うときは、「特定居住用の面積×200/330+貸付事業用の面積≦200㎡」の範囲に収める必要があります。モデルケースで、自宅部分の土地は1㎡あたり20万円、賃貸部分の土地は貸家建付地として1㎡あたり16万4,000円(借地権割合60%・借家権割合30%・賃貸割合100%)と仮定して比べてみます。
| 選び方 | 特定居住用 | 貸付事業用 | 減額の合計 |
| 自宅部分を先に選ぶ | 180㎡×20万円×80%=2,880万円 | 残りの枠 約90.91㎡(200−180×200/330)×16.4万円×50%=約745万円 | 約3,625万円 |
| 賃貸部分を先に選ぶ | 残りの枠 132㎡((200−120)×330/200)×20万円×80%=2,112万円 | 120㎡×16.4万円×50%=984万円 | 3,096万円 |
この例では、自宅部分を先に選ぶほうが減額が約529万円多くなります。どちらが有利かは、土地の評価額や面積で変わります。
この例では、自宅部分の土地のほうが1㎡あたりの評価額も減額の割合も高く、その差が結果に表れています。ひとつの敷地の中に二つの特例が同居している。建物と同じように、土地もまた「自宅」と「賃貸」の二つの顔を持っているのです。どちらを先に使うかは相続のときに決めることですが、ご家族と早めに話しておけば、いざというときに迷わずにすみます。
ただし、相続開始前3年以内に新たに貸付けを始めた部分は、原則として貸付事業用宅地等の対象外です(事業的規模の貸付けを3年を超えて続けている場合などは例外)。2025年に貸付けを始めた賃貸部分は、貸付開始から3年以内の相続(遅くとも2028年中まで)では、この制限に当たる可能性があります。詳しくは小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)を取り上げる記事で扱います。
相続はまだ遠い先のことと思いがちですが、建てた直後の数年間は、このように扱いが変わりうる期間でもあります。賃貸併用住宅を建てたばかりの方は、この一文をぜひ覚えておいてください。
固定資産税は、賃貸部分も住宅なら敷地全体が住宅用地
固定資産税の住宅用地の特例では、人の居住の用に供する部分の割合(居住部分の割合)で判定します。賃貸住宅の部屋も居住部分に含まれます。
| 家屋 | 居住部分の割合 | 敷地のうち住宅用地になる割合 |
| 専用住宅 | 全部 | 1.0 |
| 併用住宅(地上5階以上の耐火建築物以外) | 1/4以上1/2未満 | 0.5 |
| 同上 | 1/2以上 | 1.0 |
| 地上5階以上の耐火建築物の併用住宅 | 1/4以上1/2未満/1/2以上3/4未満/3/4以上 | 0.5/0.75/1.0 |
住宅用地のうち、住戸1戸あたり200㎡までの部分は小規模住宅用地(課税標準は固定資産税が価格の6分の1、都市計画税が3分の1)、それを超える部分は一般住宅用地(同じく3分の1、3分の2)です。
モデルケースは自宅と賃貸2戸の計3戸なので、200㎡×3戸=600㎡まで小規模住宅用地になり、土地300㎡の全体が6分の1の対象です。もし賃貸部分が店舗(40%)なら、居住部分は60%で住宅用地の割合は1.0ですが、住戸は1戸なので、200㎡が小規模住宅用地、残り100㎡が一般住宅用地になります。
所得税では「自宅か賃貸か」で分けて考えましたが、固定資産税では、賃貸の部屋も自宅と同じ「住宅」の仲間です。賃貸部分を住宅として貸せば、住戸の数が増えるぶん、小規模住宅用地の枠も広がります。同じ建物の同じ40%でも、住宅として貸すか店舗として貸すかで、土地の固定資産税の計算が変わってくるわけです。
年内に、図面の床面積から確かめておく
まずは図面を広げて、自宅・賃貸・共用部分の床面積を確認し、賃貸割合を計算してください。すべての税金の出発点になる数字です。そのうえで、減価償却費・借入金利子・固定資産税を賃貸割合で按分して、必要経費に入れます。
住宅ローン控除については、要件(床面積50㎡以上・自宅が2分の1以上・合計所得金額2,000万円以下・省エネ基準)を確認し、住宅ローン控除の計算明細書で居住用の割合を反映しておきましょう。
少し先の話も、年末のうちに一度だけ。将来の相続で、自宅部分と賃貸部分のどちらに小規模宅地等の特例を使うか、家族で共有しておいてください。店舗などがある場合は、固定資産税の住宅用地の割合を、市区町村の課税明細書で確認しておくと安心です。
自宅と賃貸の「割合」が、4つの税金すべての出発点になる
賃貸併用住宅の経費は、床面積の割合で按分した賃貸部分だけが必要経費です。住宅ローン控除は、床面積の2分の1以上が自宅であることが条件で、控除の対象は居住用の割合の部分だけ(おおむね90%以上なら全体)。2025年入居の新築は控除率0.7%・13年で、借入限度額は省エネ基準適合住宅で3,000万円(子育て世帯等は4,000万円)です。相続では、特定居住用(330㎡・80%)と貸付事業用(200㎡・50%)を、限度面積を調整しながら選びます。そして固定資産税は、賃貸部分も住宅なら敷地全体が住宅用地で、小規模住宅用地は住戸の数×200㎡までです。
ひとつの屋根の下に、暮らしと大家業が同居する。それが賃貸併用住宅の魅力であり、税金の上ではいつも「どこまでが自宅で、どこからが賃貸か」を問われる理由でもあります。モデルハウスで間取り図を眺めるとき、キッチンや収納と一緒に、自宅と賃貸の割合にも目を向けてみてください。その数字が、これから長く付き合っていく税金の設計図になります。
当事務所では、賃貸併用住宅の確定申告(不動産所得と住宅ローン控除)から、将来の相続税の試算までお手伝いしています。建築前の段階でのご相談も歓迎です。お気軽にご相談ください。
出典・参考
- 所得税法第45条第1項、所得税法施行令第96条(家事関連費)
- 租税特別措置法第41条(住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除)
- 国税庁 タックスアンサー1211-1「住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」(2025年12月時点の内容を参照)
- 国税庁 質疑応答事例「居住の用に供する部分の敷地の面積」(令和7年8月1日現在の法令・通達等にもとづくもの)、租税特別措置法関係通達41-27・41-29
- 国税庁「令和6年分(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」の書き方
- 国土交通省 報道発表「住宅ローン減税の子育て世帯等に対する借入限度額の上乗せ措置等を令和7年も引き続き実施します!」(令和6年12月27日)
- 財務省「住宅ローン控除の見直し(令和4年度改正)」
- 港区「住宅ローン控除制度の見直しおよび延長」(2023年2月27日更新、住民税の控除限度額)
- 国税庁 タックスアンサー4124「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」(2025年12月時点の内容を参照)
- 地方税法第349条の3の2、京都市「固定資産税等 住宅用地認定基準」(令和7年度課税分から適用)、東京都主税局「固定資産税の住宅用地等申告書」の案内































