東雲結子:先生、実家の月極駐車場が3台分も空いているんです。看板を「RVパーク」に掛け替えれば、今日から車中泊のお宿ですよね! ベッドもフロントも要らない、夢のホテルです!
税理士石井:うーん、ベッドは要りませんが、100V 20A以上の電源と24時間使えるトイレ、それに車で15分以内のお風呂は要りますよ。日本RV協会がRVパークの認定で求める条件です。
東雲結子:えっ、お風呂まで……。では、実家のお風呂を開放します!
税理士石井:ははは。お父さまの入浴中に、見知らぬご一行が「お世話になります」と入ってくる宿ですね。口コミより先に、家族会議が荒れそうです。
東雲結子:……銭湯の回数券を付けることにします。でも先生、RVパークは2020年の168か所から2024年には501か所。約3倍ですよ。この波に乗らなきゃ!
税理士石井:そうですね、数はたしかに伸びています。ただ、同じ4年間でキャンピングカーの保有台数は約1.3倍。しかも協会の資料では、予約サイトを通すと、利用者が払ったお金の25%が手数料です。
東雲結子:25%! 4泊していただいたら、1泊分はサイトさんのお泊まり代……。
税理士石井:賃貸に置きかえると、毎年、家賃の3か月分を客付けの会社に払い続けるのと同じ割合です。
東雲結子:3か月分も! それはもう、仲介会社さんが共同オーナーです。
税理士石井:ふふ、言い得て妙ですね。今日は「車で泊まる・外で泊まる」商売を、場所を貸す人、予約をつなぐ人、車や小屋を作って売る人、自分で宿を営む人の4つに分けて、誰がどこで稼いでいるのかを数字で確かめていきましょう。
連載の第4回は、車中泊・RVパーク・グランピングです。第2回・第3回では、コンテナやトレーラーハウスという「客室そのもの」を置いて泊める商売を見てきました。今日は、第1回で紹介した4つの型のうち後半の2つ、お客さんが自分の車で寝泊まりする場所と、自然の中に置いた小屋やテントで過ごす時間を売る商売です。中心になるのは、日本RV協会が認定する車中泊施設「RVパーク」。その数は、2025年11月1日時点で588か所と報じられています。
用語メモ:RV=Recreational Vehicle(レクリエーショナル・ビークル)の略で、キャンピングカーなどレジャー用の車のこと。RVパーク=日本RV協会が認定した車中泊施設。温泉や道の駅などが、区画を有料で提供しています。
この車中泊ビジネスは、大家業とよく似た顔をしています。RVパークは、土地の区画を一晩ずつ貸す商売です。空いた土地を持つ方なら「うちでもできないか」と一度は考えるのではないでしょうか。ただ、同じ「外で泊まる」市場でも、稼いでいるのは場所を貸す人だけではありません。予約をつなぐプラットフォーム、車や小屋を作って売るメーカー、自ら宿を営む運営会社。お金の入り方も、背負うリスクも、まるで違います。
この分野は非上場の会社が多く、会社の説明や業界団体の試算に頼らざるを得ない数字が少なくありません。そうした数字は、そのつど出どころを書き分けていきます。
キャンピングカー市場は16.5万台・1,126.5億円。台数より金額が速く伸びた
まず、需要の側から見ます。日本RV協会によると、国内のキャンピングカーの保有台数は2024年に16万5,000台で、前年から1万台増えました。2005年の5万台からは約3.3倍です(当ブログの計算)。新車と中古車を合わせた販売総額は、2024年に1,126.5億円と過去最高でした(同協会の年次報告書を引用した報道による)。
| 年 | 保有台数(累計) | 販売総額(新車・中古車の合計) |
| 2017年 | ― | 424億円 |
| 2018年 | ― | 458億円 |
| 2019年 | ― | 526億円 |
| 2020年 | 12万7,400台 | 582億円 |
| 2021年 | 13万6,000台 | 635億円 |
| 2022年 | 14万5,000台 | 762億円 |
| 2023年 | 15万5,000台 | 約1,053億円(逆算) |
| 2024年 | 16万5,000台 | 1,126.5億円 |
※2023年の販売総額を除き、日本RV協会の公表値。保有台数は同協会の広報誌(2025年春号)と「キャンピングカー白書2021」による。販売総額は、2017・2018・2020年が同協会のプレスリリース(キャンピングカー白書2021)、2019年と2021〜2024年は報道による(2024年は同協会の年次報告書を引用)。2023年は2024年の「前年比107%」から当ブログが逆算した値で、比率の丸めにより約1,048億〜1,058億円の幅がある。
2020年から2024年にかけて、保有台数は約1.3倍、販売総額は約1.9倍になりました(いずれも当ブログの計算)。台数より金額のほうが速く伸びています。ただ、保有台数は積み上がった累計、販売総額は1年ごとの売上(中古車を含む)で、物差しが違います。年間の販売台数は今回の資料にないため、1台あたりの値段が上がったのか、集計の範囲が変わったのかは切り分けられません。とくに2022年から2023年は、逆算した値で1年に約38%の急増です。集計の範囲が変わった可能性も含めて確認できていないことは、正直に書いておきます。
中古車の取引にも厚みがあります。2020年の販売総額582億円の内訳は、8ナンバーの新車336億円・中古137億円、8ナンバー以外の新車90億円・中古17億円。中古は合わせて154億円で、全体の約26%でした(当ブログの計算。4項目の合計は580億円で、総額582億円とは端数が合いません)。
用語メモ:8ナンバー=特種用途自動車(キャンピング車などの特別な用途の車)として登録された車のナンバー。分類番号が8から始まります。
オートキャンプ人口は2023年で「約600万人」と「240万人」。定義で数字が倍以上変わる
次は、キャンプをする人の数です。ここは物差しに注意が要ります。
日本オートキャンプ協会(JAC)の推計では、オートキャンプの参加人口は2022年に650万人(前年比86.7%)、2024年に590万人(前年比−1.7%)でした。2022年の前年比から逆算すると2021年は約750万人で(当ブログの計算)、そこから毎年減っています。
ところが、日本生産性本部の「レジャー白書2024」では、2023年のオートキャンプ参加人口は240万人(前年比85%)です。同じ年のJACの推計(約600万人)とは調べ方も定義も違い、2倍以上の開きがあります。どちらかが間違っているというより、物差しが違うのです。「キャンプ人口○○万人」という数字を見かけたら、まず誰の推計かを確かめてください。
| 年 | 参加人口(JACの推計) | キャンプ場の平均稼働率 | 平均キャンプ回数 |
| 2019年 | ― | 17.5% | ― |
| 2020年 | ― | 16.3% | ― |
| 2021年 | 約750万人(逆算) | 20.4% | ― |
| 2022年 | 650万人 | 20.7% | 5.4回 |
| 2023年 | 約600万人(逆算) | 19.6% | 5.5回 |
| 2024年 | 590万人 | ― | 5.0回 |
※日本オートキャンプ協会の公表資料と、「オートキャンプ白書2025」を紹介した報道(2024年の値)による。2021年と2023年の参加人口は、前年比から当ブログが逆算した値。
キャンプ場の平均稼働率は2022年の20.7%が過去最高で、2023年は19.6%。裏返せば、区画のおよそ8割は空いている計算です。2024年のキャンプ1回あたりの平均費用は23,258円で、前年から2,865円上がりました。参加する人も回数も減ったのに、1回にかける金額は増えています。
オートキャンプの参加人口が減る間も、キャンピングカーとRVパークの数は増え続けました。同じ「外で泊まる」需要でも、動き方は一様ではありません(当ブログの見方)。ただ、JACの参加人口にキャンピングカーでの宿泊がどこまで含まれるのかは、わかりませんでした。
RVパークは4年で約3倍、2025年11月には588か所に。キャンピングカーの伸びを大きく上回る
次は供給の側です。図の左は、日本RV協会が認定したRVパークの数です。2019年の144か所から毎年増え、2024年12月末には501か所になりました。2020年から2024年の4年で約3.0倍、平均すると毎年約83か所ずつ増えた計算です(当ブログの計算)。2025年に入っても、1月に500施設の突破が発表され、7月末に563か所、10月1日に580か所、11月1日に588か所と報じられています。2019年と比べると約4.1倍です。なお、2021年と2023年は資料によって数が少し違うため、図の注のとおり同協会の広報誌(2025年春号)の値にそろえました。
図の右は、キャンピングカーの保有台数です。同じ2020年から2024年で、12.7万台から16.5万台へ約1.3倍。車の伸びより、泊まる場所の伸びのほうがずっと大きいのです。
保有台数をRVパークの数で割ってみると、2020年は1か所あたり約758台、2024年は約329台でした(当ブログの計算)。すべてのキャンピングカーがRVパークを使うわけではなく、1か所あたりの区画数も今回の資料ではわからないので、需要と供給のバランスが「どちらへ動いたか」を見るための粗い物差しです。賃貸でいえば、世帯数の伸びより速いペースでアパートが建っている街に近い姿。すぐに空室が増えるとは限りませんが、1か所あたりのお客さんの取り分は、薄くなる方向に動いています(当ブログの見方)。
RVパークの条件は電源・24時間トイレ・15分圏内の風呂。担い手は温泉や道の駅
では、RVパークになるには何が要るのでしょうか。日本RV協会の開設説明資料(施設数は2023年11月時点のもの)は、認定の要件として、100V 20A以上の電源、24時間使えるトイレ、車で15分圏内の入浴施設、ゴミの処理などを挙げています。費用は、初回登録料が3万円、年間登録料が1万円です。
実際に区画を出しているのは、温泉、旅館、道の駅、遊園地などです(同協会の広報誌)。2025年7月には、千葉でコンビニのRVパークも始まりました(報道による)。料金は、報道で紹介された例では1泊1区画3,000円から(HESTA富士河口湖)、3,300円から(奄美・嘉鉄)といった水準です(2025年8月時点)。
顔ぶれを並べると、共通点が見えてきます。温泉や旅館、道の駅は、トイレや入浴、駐車場といった「人が一晩過ごすための設備」を本業ですでに持っていることが多い施設です。敷地の一角に区画を足せば、新しく建物を建てずに夜の売上を作れる。RVパークは、既存の施設の「すき間」を貸す商売として広がってきた、というのが私の見立てです(当ブログの見方)。裏を返すと、何もない空き地から始めるなら、トイレや電源をゼロから用意することになります。その費用は、今回の資料には出てきません。
予約サイトの手数料は25%。RVパークの手取りはここで決まる
日本RV協会の開設説明資料には、予約サイト「RV-Park.jp」の手数料は、利用者の税込支払額の「25%」と書かれています。2024年4月までは、キャンペーンで10%でした。資料に公表日の記載はなく、その後の料率は今回の調査では確かめられていません。
| 仮に利用者の支払いが税込3,000円の場合 | 手数料25%(開設説明資料の記載) | 手数料10%(2024年4月までのキャンペーン) |
| 利用者の支払い(税込) | 3,000円 | 3,000円 |
| 予約サイトの手数料 | 750円 | 300円 |
| 施設に残る金額 | 2,250円 | 2,700円 |
※当ブログの計算。1泊1区画3,000円は報道で紹介された料金の例で、税込かどうかは確認していない。施設側の消費税、電気代や清掃などの費用は考えていない。
手数料が10%から25%に変わると、施設に残る金額は1泊あたり450円減ります。ホテルの予約サイト(OTA)と比べてみましょう。2016年の衆議院の質問主意書には、国内のOTAの手数料は「宿泊料金の10%程度」、海外からの送客は15〜25%と書かれています(議員の記載で、政府のデータではありません)。2014年のコラムでは、楽天トラベル・じゃらんなどについて「概ね予約額の8〜10%程度」とされていました。どちらも古い資料ですが、RV-Park.jpの25%は国内のホテル予約の水準よりかなり高く、海外送客の上限と同じ水準です。
用語メモ:OTA=Online Travel Agent。楽天トラベルやじゃらんのように、インターネットで宿泊予約を仲介するサイトのこと。
高いか安いかは、何と引き換えかで決まります。区画を出す施設にとっては、車で旅する人に見つけてもらうこと自体に価値があり、予約サイトはその「看板」を貸している、と考えることもできます(当ブログの見方)。それでも大家の感覚でいえば、25%は1年の家賃のうち3か月分を、毎年、客付けの会社に払い続ける割合です。入居が決まったときに一度払う広告料とは違い、泊まるたびにかかる。ここは軽く見ないほうがいいと思います。
一方、年間登録料1万円は、手数料を引いた手取り2,250円で割ると約4.4泊分にすぎません(当ブログの計算)。予約サイトを通す場合、協会に払う年間登録料より、泊まるたびにかかる手数料のほうが、手取りへの影響はずっと大きくなります(土地や設備、清掃などの費用は別)。しかも、キャンペーンの10%と通常の25%があったように、手数料の条件は相手が決め、相手が変えられるものです。
Carstayは車中泊スポット約300か所・車両約500台をつなぐプラットフォーム
予約をつなぐ側の代表が、Carstay(カーステイ)です。報道によると、2018年9月に車中泊スポットのシェアリングを始め、2019年9月からはキャンピングカーのシェアリングも手がけています。2023年5月からは「Mobi Lab.」でキャンピングカーの製造・架装を始め、EV(電気自動車)のキャンピングカーも販売しています。2025年10月31日の報道で、登録車両は約500台、車中泊スポットは約300か所。会社は2026年末に会員15万人という目標を掲げています。
用語メモ:架装=車の車体に、ベッドやキッチンなどの装備を取り付けること。
| 時点 | 資金調達と計画(報道による) |
| 2023年9月 | 累計調達は約3.6億円(VC・事業会社・金融機関)。株式投資型クラウドファンディング(FUNDINNO)で約1億円を目標に募集(9月9〜22日) |
| 2023年9月時点の計画 | 売上高は2025年5月期に7億円、2027年5月期に30億円(実績は未確認) |
| 2025年10月31日 | プレシリーズAの追加として約5,000万円を第三者割当で調達(スタートアップファクトリー1号投資事業有限責任組合)。累計調達は約5億3,000万円(金融機関からの借入を含む) |
※トラベルボイス(2023年9月13日)、THE BRIDGE(2025年10月31日)、創業手帳(2025年11月4日)による。
用語メモ:VC=ベンチャーキャピタル。成長途中の未上場企業に出資する投資会社です。プレシリーズA=スタートアップの資金調達の段階を表す呼び名の一つ。第三者割当=特定の相手に新しい株式を引き受けてもらう増資。株式投資型クラウドファンディング=インターネットを通じて、多くの個人から少額ずつ出資を募るしくみ。
プラットフォーム型の一般的な稼ぎ方は、場所も車も自分では持たず、貸したい人と使いたい人をつないで、取引から手数料を受け取ることです。ただ、Carstayの手数料率や売上の内訳は、今回の調査では確認できませんでした。2023年に掲げた「2025年5月期に売上7億円」という計画がどうなったのかも、確かめられていません。累計調達額も、2023年の約3.6億円は「VC・事業会社・金融機関」から、2025年の約5.3億円は「金融機関からの借入を含む」と、報道ごとに書き方が違い、出資と借入の内訳もわかりません。単純に引き算して「出資が1.7億円増えた」とは読めません。
大家の言葉でいえば、プラットフォームは客付けの仲介会社です。物件を持たないので身軽ですが、物件を持つ側が集まらなければ商売になりません。約300か所の車中泊スポットが集まったことは、「場所を貸したい人」がそれだけいることの表れでもあります。
なお、Carstayは2023年、EVや自動運転をベースにした新しい「可動産」(動く不動産)の開発を計画していると報じられました。この言葉は、調べた範囲ではソラナリゾートとCarstayが使っているものです。
スノーピークは住箱を「売る」と「泊める」の両方で使う。2024年のMBOで非上場に
作って売り、自分でも泊める。その両方を手がけてきたのが、アウトドア用品のスノーピークです。建築家の隈研吾氏と共同開発したモバイルハウス「住箱-JYUBAKO-」を2016年9月に発売し(有価証券報告書の沿革)、一般にも販売しています。
宿としての使い方も報じられてきました。2019年5月18日に開業した「五十嵐邸ガーデン」(新潟県阿賀野市)は住箱5棟で、1泊2食15,000円から(平日)、20,000円から(土曜・休前日)。2022年4月に開業した本社の「FIELD SUITE SPA HEADQUARTERS」では、住箱ルームが1泊2食42,900円からです(いずれも報道による)。直営のキャンプフィールドは2023年12月時点で11か所あり、ほかにフランチャイズが1か所(2023年4月、油山福岡)ありました。
| 項目 | 2022年12月期 | 2023年12月期 |
| 連結売上高 | 30,773 | 25,728 |
| 連結経常利益 | 3,606 | 1,192 |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 1,946 | 1 |
※単位:百万円。スノーピーク「有価証券報告書 第60期」(2024年3月29日提出)による。事業はアウトドアライフスタイル事業の単一セグメントで、宿泊・キャンプ場・住箱の売上は開示されていない。
2023年12月期は、売上高が前期比16.4%減、経常利益は約3分の1に減り、純利益は100万円前後まで落ちました(増減は当ブログの計算)。押さえておきたいのは、上場していた時期でさえ、住箱やキャンプ場の宿泊でいくら稼いでいたのかは、外からはわからなかったことです。
そのスノーピークは2024年、MBOで上場をやめる道を選びました。報道によると、2024年2月20日に発表し、ベインキャピタル系のBCJ-80が1株1,250円で公開買付け(TOB)を実施。期間は2月21日から4月12日までで、議決権の59.55%にあたる22,708,815株の応募を集めて成立しました。上場廃止の日付は、今回の調査では確認できていません。
用語メモ:MBO(Management Buyout)=経営陣が投資ファンドなどと組んで、自社の株式を株主から買い取る取引。TOB(公開買付け)=買い取る価格と期間を公表して、市場の外で株主から株式を買い集めること。
株を見る立場から正直に言うと、日本で移動式の宿泊を独立した事業として開示している上場会社は、今回の調査では見つかりませんでした。西武ホールディングスも、子会社を通じたアースボートへの出資を事業の区分としては開示していません。
アースボートとBLANCは、トレーラーハウスで「泊まる体験」を売る運営型
自分で宿を営む運営型の、新しい顔ぶれも見ておきます。アースボート(Earthboat)は、サウナ付きのトレーラーハウスの宿泊施設を、土地を借りたり取得したりして直営で開いている会社です。2025年3月の報道によると、総額2億5,000万円を調達しました(3月21日発表)。出資したのは、八十二インベストメント、第四北越キャピタルパートナーズ、ALL-JAPAN観光立国ファンド2号、そして西武ホールディングスの子会社ブルーインキュベーションです。
拠点は2024年に長野・群馬で5拠点、2025年1月に7拠点目(みなかみほうだいぎ)を開き、2025年に20拠点を目標としていました。平均客単価は5万円、2月の全拠点の平均稼働率は70%超と、会社は説明しています。20拠点に届いたかどうかは、今回の調査では確認できていません。観光庁の統計で簡易宿所の客室稼働率が2024年に29.0%だったことを思うと目を引く数字ですが、会社が語った1か月の値で、年間の公的統計と同じ物差しではありません。
トレーラーハウスを使った自然共生型ホテルの全国展開を掲げるBLANCは、沖縄・来間島の「RuGu Glamping Resort」や、山梨・富士吉田の「BLANC FUJI」を手がけています。2024年2月の記事では、BLANC FUJIは建築ができない土地に置いた例として紹介され、MX(モバイルトランスフォーメーション)やオフグリッド型のホテルといった構想も語られていました。
用語メモ:オフグリッド=電力会社の送電網につながず、太陽光発電などで電気をまかなうこと。
建築できない土地に宿を置けるのか。大家なら真っ先に気になるところです。トレーラーハウスが建築物に当たるかどうかは、置き方や使い方で判断が分かれ、最終的には特定行政庁が判断します。宿として営むなら旅館業法の許可も絡みます。ここは第6回で、建築基準法・旅館業法・都市計画法の「ねじれ」として詳しく見ます。
遊休地の活用という点では、藤和那須リゾートが運営する栃木県那須町の「ミワタス ナス」の資料も参考になります。タイトルは「遊休地だった展望地を、絶景オフグリッドグランピング施設へ再生」。太陽光・蓄電池・V2H(電気自動車の電気を建物で使うしくみ)を積んだトレーラーハウスで、優先宿泊会員権や宿泊権を小口で販売する予定とされていました。宿泊料を受け取る前に、権利の販売でお金が入る形です。
グランピング市場「600億〜1,000億円」は、業界団体の試算と予測として読む
グランピングの市場規模は、よく目にする割に確かな数字が少ない分野です。今回の調査で見つかったのは、一般社団法人全国グランピング協会の試算を紹介した2022年1月の記事でした。
| 時点 | 市場規模(全国グランピング協会の試算) |
| 2020年12月時点 | 600億〜800億円 |
| 2022年1月時点 | 800億〜900億円 |
| 2023年(予測) | 1,000億円 |
※@DIME(2022年1月10日)による。同じ記事では、2022年に開業予定のグランピング施設は約200とされている。
用語メモ:グランピング=「グラマラス(魅力的な)」と「キャンピング」を合わせた言葉。設備の整ったテントや小屋に泊まり、手ぶらでキャンプを楽しむ宿泊のこと。
業界を盛り上げる立場の団体の試算で、幅も大きく、2023年の数字は予測です。実際に1,000億円に届いたのかを確かめる資料はなく、調査会社による別の推計も見つかりませんでした。テントだけを数えるのか、トレーラーハウスや小屋の宿まで含めるのかでも、数字は大きく変わりうるはずです。事業計画の前提に置くより、空気感をつかむ程度に使うのが安全だと私は考えています(当ブログの見方)。
車中泊ビジネスの稼ぎ方は4つ。場所貸し・プラットフォーム・製造販売・運営
ここまでの顔ぶれを、お金の入り方で並べ直してみます。
| 型 | この記事で見た例 | お金の入り方 | 主な費用・持つもの | 大家業に置きかえると |
| 場所貸し | RVパーク(温泉・旅館・道の駅など) | 1泊1区画の料金(例:3,000円〜) | 土地と電源・トイレなどの設備、登録料(初回3万円・年1万円)、予約サイトを通せば手数料25% | 1泊ごとに貸す駐車場 |
| プラットフォーム | Carstay、予約サイトRV-Park.jp | 予約や利用をつないで受け取る手数料 | システムと集客。場所や車は持たない | 客付けの仲介会社 |
| 製造販売 | キャンピングカー(販売総額1,126.5億円、2024年)、住箱、Carstayの架装 | 売ったときの代金 | 工場・在庫・開発 | 建売の分譲 |
| 運営 | スノーピークのキャンプフィールド・住箱の宿、アースボート、BLANC | 宿泊料(例:住箱ルーム1泊2食42,900円〜、アースボートの平均客単価5万円〈会社の説明〉) | 土地(賃借・取得)、客室、人手 | 自主管理で営むホテル |
※当ブログの整理。手数料率が資料でわかるのはRV-Park.jpだけで、Carstayの手数料率は確認できていない。
場所貸しは、いちばん大家業に近い型です。本業の設備を生かせば新しい投資は小さく済みますが、単価は1泊数千円で、予約サイトを通せば4分の1が手数料に消えます。プラットフォームは身軽さが強みですが、取引の量が集まるまでの資金を、出資や借入でまかなう必要があります。Carstayの累計約5.3億円の調達も、その一例と読めます(当ブログの見方)。製造販売は売上の金額が大きい代わりに、売ったら終わりで、次の一台が売れるかは景気や流行に左右されます(当ブログの見方)。運営は単価を高くとれる一方、人手も稼働の上下もすべて自分で受け止めます。
実際には、スノーピークは製造販売と運営を、Carstayはプラットフォームに製造・架装を、温泉や道の駅は本業に場所貸しを重ねています。会社を見るときは「どの型で、いくら稼いでいるのか」を分けて考えると、見通しがよくなります。
遊休地をRVパークにする前に、大家が確かめたいこと
では、あなたが使っていない土地を持っていたとして、RVパークを考えるなら何を確かめればいいでしょうか。
まず、設備の条件です。電源、24時間使えるトイレ、15分圏内の入浴施設、ゴミの処理。店舗や温泉などの本業がある土地と、何もない空き地とでは、スタートラインがまったく違います。そのうえで、お金の流れを手取りで考えてください。1泊3,000円の区画でも、予約サイトを通せば残るのは2,250円。ここから電気代や清掃、ゴミ処理の費用が出ていきます。
次に、需要と競合です。RVパークの稼働率や1か所あたりの売上を示す公表データは、今回の調査では見つかりませんでした。ですから、この記事では「年間いくら稼げるか」「利回りは何%か」という試算はしません。手がかりは、キャンプ場の平均稼働率が2割前後だったことと、キャンピングカー1台あたりのRVパークの数がこの4年で大きく増えたことです。周りにいくつあるのかは、地図と現地で確かめるしかありません。
そして税金です。RVパークの区画料がどの所得になるのかを直接示した国税庁の資料は、今回の調査では見つかりませんでした。近い規定として、所得税基本通達27-2は、有料駐車場などの所得について、「自己の責任において他人の物を保管する」場合は事業所得または雑所得、そうでない場合は不動産所得としています。電源やトイレ、ゴミ処理まで付けた区画貸しがどう扱われるかはサービスの中身によるはずで(当ブログの見方)、実際の判断は税務署や税理士に確認してください。
キャンピングカーをシェアリングで貸す側に回る場合も、注意が要ります。所得税法26条1項が不動産所得として挙げるのは、土地や建物などの不動産、不動産の上に存する権利、船舶・航空機の貸付けによる所得です。車両は列挙に入っていないため、キャンピングカーを貸して得る所得は、不動産所得ではなく事業所得または雑所得になると整理できます(国税庁がキャンピングカーを名指しした見解は見つかっておらず、調査の整理です)。事業所得か雑所得かは、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定され、取引を記録した帳簿書類の保存や収入の規模なども判断の材料になります(所得税基本通達35-2の注、2022年10月改正)。そして雑所得の損失は、給与所得などと損益通算できません(所得税法69条)。アパートの赤字と同じ感覚でいると、計算が狂います。くわしくは第7回で取り上げます。
旅館業法との関係も、すっきりとはしていません。2019年の規制のサンドボックス(新技術等実証制度)では、申請者の株式会社DADAが「一定の所在地になく、貸出し後は営業所に戻すキャンピングカーの貸出しは、旅館業法の施設に当たらず許可は不要」と主張しましたが、これは申請者の主張で、厚生労働省の結論はその資料には書かれていません。
ブームの反動、手数料、見えない数字。3つのリスクを先に見ておく
一つ目は、ブームの反動です。オートキャンプの参加人口は2021年の約750万人(逆算)から2024年の590万人へ減り、キャンプ場の平均稼働率は2割前後です。スノーピークの減益の理由までは今回の調査の範囲外ですが、キャンプの参加人口が減っていた時期と重なっています。それでもRVパークは4年で約3倍に増えました。需要が伸び続ける前提で区画を増やせば、賃貸の供給過剰と同じことが起こりえます(当ブログの見方)。
二つ目は、手数料です。RV-Park.jpの手数料は、資料の上ではキャンペーンの10%(2024年4月まで)から25%になる設定でした。プラットフォームに集客を頼るほど、条件の変化をそのまま受けます。特定の客付け会社だけに頼る大家の怖さと、根は同じです。
三つ目は、数字の見えにくさです。アースボートの稼働率70%超は会社の説明、Carstayの売上7億円は2023年時点の計画、グランピングの1,000億円は業界団体の予測でした。決まった物差しで毎年確かめられる数字が、この分野にはほとんどありません。相手の説明は出発点にとどめ、自分で確かめられる数字に置きかえていく作業が欠かせません。
車中泊の稼ぎ方は分業でできている。大家に近い場所貸しは、手数料で手取りが決まる
キャンピングカーは16.5万台、販売総額は1,126.5億円で過去最高。RVパークは2020年から2024年で約3.0倍の501か所になり、2025年11月1日には588か所と報じられました。数字だけを見れば、車中泊ビジネスは伸び盛りです。
ただ、中をのぞくと、場所を貸す人、予約をつなぐ人、作って売る人、自ら宿を営む人で、稼ぎ方はくっきり分かれていました。大家業にいちばん近い場所貸しは、単価が1泊数千円で、予約サイトの手数料25%が手取りを大きく左右する商売です。
大家業を長く続けていると、家賃の額面より、手元に何が残るかのほうがずっと大事だと身にしみます。RVパークも同じです。区画の数を数える前に、設備の条件と手数料と近くの競合を数えてみてください。そのうえで、税金と法律の扱いを専門家と一緒に確かめる。夢のある分野だからこそ、地に足のついた順番で考えたいものです。
次回の第5回は海を渡り、RVリゾートを持つ米国のREIT(不動産投資信託)であるEquity LifeStyleとSun Communities、そしてRVメーカーの決算から、「動く宿」の経済学を読み解きます。
※本記事は公表資料をもとにした情報提供を目的としたもので、特定の銘柄の売買や特定の投資商品への投資を勧めるものではありません。税務・法律の取扱いは個別の事情によって変わるため、実行の前に税理士・建築士・行政の窓口などの専門家にご確認ください。 ※数値は各社・各機関の公表資料をもとに当ブログが集計・計算したもので、四捨五入の関係で合計が合わない場合があります。
出典・参考
- 日本RV協会「広報誌 2025 SPRING」p26-29(RVパーク稼働数の推移・キャンピングカー保有台数)(一般社団法人日本RV協会、2025年春)https://jrva.com/media/koho2025/2025spring_p26-29.pdf
- 「キャンピングカー白書2021」を発行(一般社団法人日本RV協会、@Press、2021年6月7日)https://www.atpress.ne.jp/news/260919
- RVパーク開設説明資料(一般社団法人日本RV協会 RVパーク推進部、公表日の記載なし・施設数は2023年11月時点)https://www.kurumatabi.com/about/images/rvpark_material202403.pdf
- 2024年のキャンピングカー総販売額は過去最高の5億円を記録(@DIME、2025年2月6日)https://dime.jp/genre/1922272/
- キャンピングカー白書2022 紹介記事(グーネットマガジン、2022年7月25日)https://www.goo-net.com/magazine/?p=146101
- 762億円超え! 日本でキャンピングカー人気が止まらない!(くるまのニュース、2023年2月2日)https://kuruma-news.jp/post/608538
- キャンピングカー関連記事(渡部竜生、東洋経済オンライン、2020年10月31日)https://toyokeizai.net/articles/-/384782
- 日本RV協会、RVパーク新規登録で500施設突破(トラベル Watch、2025年1月13日)https://travel.watch.impress.co.jp/docs/news/1653694.html
- 日本RV協会、RVパーク24か所を新規認定(7月末時点)(トラベル Watch、2025年8月13日)https://travel.watch.impress.co.jp/docs/news/2038179.html
- RVパークが全国で増加中!ついに500件超え(ベストカーWeb、2025年8月17日)https://bestcarweb.jp/news/1297836
- 【全国580か所以上】…日本RV協会認定「RVパーク」(JAF Mate Online、2025年11月1日)https://jafmate.jp/car/traffic_topics_20251101_1198283.html
- 全国588カ所に拡大! 話題の「RVパーク」(ベストカーWeb、2025年11月24日)https://bestcarweb.jp/news/1368832
- 2022年のオートキャンプ概況(一般社団法人日本オートキャンプ協会、2023年7月)https://www.autocamp.or.jp/2020/wp-content/uploads/2023/07/3386ebc35ae3adf45ceb3427a89ac9e8.pdf
- 「オートキャンプ白書2024」発売のお知らせ(一般社団法人日本オートキャンプ協会、2024年7月11日)https://www.autocamp.or.jp/post-18260/
- キャンプの根強い支持が続く ペット可のキャンプ場が増加(オートキャンプ白書2025)(旅行新聞新社、2025年7月22日)https://www.ryoko-net.co.jp/?p=152557
- 「レジャー白書2024」に見るオートキャンプの動向(一般社団法人日本オートキャンプ協会、2024年11月1日)https://www.autocamp.or.jp/post-19022/
- グランピング市場に関する記事(全国グランピング協会の試算)(@DIME、2022年1月10日)https://dime.jp/genre/1297803/
- 宿泊旅行統計調査 2024年確定値(観光庁、2025年6月27日)https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/002026765.pdf
- 旅行業者の送客手数料に関する質問主意書(衆議院、2016年5月11日)https://www.shugiin.go.jp/Internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a190270.htm
- 宿泊施設はなぜ最安値保証を打ち出すのか(トラベルボイス、2014年10月9日)https://www.travelvoice.jp/20141009-28350
- Carstay、FUNDINNOで約1億円の調達開始(トラベルボイス、2023年9月13日)https://www.travelvoice.jp/20230913-154179
- Carstay、プレシリーズAで約5,000万円を追加調達(THE BRIDGE、2025年10月31日)https://thebridge.jp/2025/10/carstay-raises-50-million-pre-series-a
- Carstayが約5000万円の資金調達(創業手帳、2025年11月4日)https://sogyotecho.jp/news/20251104carstay/
- 有価証券報告書 第60期(2023年1月1日~12月31日)(株式会社スノーピーク、2024年3月29日)https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100T6KE.pdf
- スノーピークMBOの背景(高橋克英、現代ビジネス、2024年3月15日)https://gendai.media/articles/-/125620
- スノーピーク TOB情報(株価の総合情報 kabukiso、2024年)https://kabukiso.com/apply/tob/2024/snowpeak.html
- スノーピークTOB結果(BCJ-80)(日本M&Aセンター、2024年4月13日)https://www.nihon-ma.co.jp/news/20240413_7816-5/
- スノーピーク「住箱」の宿泊施設 五十嵐邸ガーデン(FASHION PRESS、2019年5月)https://www.fashion-press.net/news/49831
- スノーピークの「東京ドーム10個分」本社がすごい(横山耕太郎、Business Insider Japan、2022年7月26日)https://www.businessinsider.jp/post-257136
- スノーピーク本社に複合リゾート、住箱設置予定(BCN+R、2021年7月9日)https://www.bcnretail.com/market/detail/20210709_234476.html
- トレーラーハウス宿泊施設のアースボート、5億円を調達(THE BRIDGE、2025年3月26日)https://thebridge.jp/2025/03/earthboat-operating-trailer-house-accommodations-nationwide-raises-250-million-yen
- トレーラーハウスを活用、全国で自然共生型の宿泊施設を展開するBLANC(THE BRIDGE、2024年2月21日)https://thebridge.jp/2024/02/blanc-02event-mugenlabo-magazine
- 遊休地だった展望地を、絶景オフグリッドグランピング施設へ再生(ミワタス ナス)(藤和那須リゾート・プライム ライフ テクノロジーズ・ミサワホーム、日付の記載なし)https://lifull.com/doc/2024/04/0aa8cf29819bc777bc9687ad692b0ef9.pdf
- キャンピングカーの「空間」の活用に関する実証(新技術等実証制度、資料1-①)(内閣官房、2019年10月17日)https://www.cas.go.jp/jp/houdou/pdf/191017shiryo1-1.pdf
- 所得税基本通達 26-1〜26-9、27-2(国税庁)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/04/02.htm
- タックスアンサー1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)(国税庁)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1370.htm
- 今週のFAQ(4/10/31)<事業所得への該当性に係る「僅少と認められる場合」>(税務通信3726)(税務研究会、2022年10月31日)https://www.zeiken.co.jp/zeimutusin/article/no3726/TA00037262001.php
- タックスアンサー2250 損益通算(国税庁)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2250.htm































