東雲結子:先生、ホテル7社の「総合ランキング表」を作りました! 売上高の大きい順に並べて、1位はマリオット。2024年12月期は251億ドルで、文句なしの横綱です!

税理士石井:おお、表まで作ってくれたんですね。うーん、ただその251億ドルの73.6%は、ホテルのオーナーから「立て替えたお金を返してもらった分」なんです。

東雲結子:えっ……。私、横綱の体重を、ちゃんこ鍋ごと量っていたんですか?

税理士石井:ははは。しかも鍋の中身は、ほとんどよその部屋のちゃんこです。だから今日は売上高ではなく、手数料、調整後EBITDA、FCFで比べます。

東雲結子:わかりました! じゃあ次は純資産で並べます。ヒルトンは2025年9月末でマイナス49億ドル……これはもう、つぶれかけですよね?

税理士石井:えーっと、それがですね、ヒルトンのマイナスは主に赤字ではなく、自社株買いを続けてきた結果なんです。しかも7社とも、ここ数年は稼いだFCF以上を株主に還元しています。チョイスは2022〜2024年の3年間で2.1倍です。

東雲結子:稼いだ以上に配る……。お正月にお年玉を配りすぎて、2月を自分だけもやしで過ごすパターンです。

税理士石井:ふふ。大家さんでいえば、家賃から管理費や修繕費を払って残るお金(ローン返済の前の段階です)以上の分配を続けて、足りない分はローンの借り増しや物件の売却でまかなっている状態ですね。満室のうちは回りますが、空室が増えたときに真価が問われます。

東雲結子:なるほど……。ランキング表は、いったん白紙に戻します。物差しを5本用意して、並べ直しましょう!

税理士石井:いい判断です。成長力、稼ぐ力、キャッシュ、株主還元、財務の健全性。1本ずつ当てていきましょう。

連載の第8回から、いよいよ7社を横に並べます。第2回から第7回まで、マリオット、ヒルトン、ハイアット、IHG、アコー、そしてウィンダムとチョイスの決算書を1社ずつ開いてきました。今日と明日の2回で、その中身を同じ物差しで測り直します。今日は「成長力・稼ぐ力・キャッシュ・株主還元・財務の健全性」の5本。明日の第9回では、株価の割安・割高、リスク、そして日本の個人投資家にかかる税金を扱います。

最初にお断りしておきたいのは、この物差しの目盛りが、会社ごとに少しずつ違うということです。米国会計基準(US GAAP)の5社と、国際会計基準(IFRS)のIHG・アコー。ドルで決算を出す6社と、ユーロのアコー。調整後EBITDAの中身も、手数料の範囲も、RevPAR(販売可能な客室1室あたりの売上)の集計方法も、各社がそれぞれ決めています。ですから今日は、小さな差で順位をつけるのではなく、「大きな傾向」と「その会社らしさ」をつかむことを目標にします。

大家仲間と物件の話をするときも、「利回り8%」が表面利回りなのか実質利回りなのかで、話はまるで変わりますよね。どこまで費用を引いた数字なのかを確かめてから比べる。今日の記事は、その確認作業の積み重ねです。表が多めになりますが、どうかお付き合いください。

売上高ではなく、手数料・調整後EBITDA・FCFで比べる

第1回を読んでいない方のために、前提をおさらいします。大手ホテル会社の多くは、ホテルを自分では持たず、オーナーから運営を任されたり(運営受託)、ブランドの看板を貸したり(フランチャイズ)して手数料を受け取っています。ところが売上高には、運営するホテルの従業員の給料や、会員プログラム・広告の費用など、オーナーに代わって立て替えたお金の回収分(立替収入、コスト償還収入)も入ります。入ってくる分と同じだけ出ていくので、利益はほとんど生みません。管理会社が、預かった修繕費や清掃費を自分の口座に通すたびに「売上」がふくらむようなものです。売上高で並べると、立替の多い会社ほど大きく見えてしまう。そこでこの連載では、稼ぎの元である「手数料収入」、本業の利益の目安である「調整後EBITDA」、手元に残った現金である「FCF」の3つを軸にしています。

会社 基準・通貨 総収入 手数料収入 立替収入の比率 調整後EBITDA
マリオット(MAR) 米国基準・ドル 25,100 5,170 73.6% 4,981
ヒルトン(HLT) 米国基準・ドル 11,174 3,259 57.5% 3,429
ハイアット(H) 米国基準・ドル 6,648 1,099 50.4% 1,096
IHG IFRS・ドル 4,923 1,774 53.0% 1,189
アコー(Accor) IFRS・ユーロ 5,606 1,393 23.6% 1,120
ウィンダム(WH) 米国基準・ドル 1,408 841 40.3% 694
チョイス(CHH) 米国基準・ドル 1,584.8 616.0 40.3% 604.1

※2024年12月期(FY2024)。単位は百万ドル(アコーは百万ユーロ)。立替収入の比率は当ブログの計算で、IHGはシステムファンド収入、ウィンダム・チョイスはマーケティング・予約などの基金収入を含む(チョイスは会社の非GAAPの立替638.2百万ドルをもとにした値)。手数料の範囲も違い、IHGはセントラル収入、ウィンダムはライセンス料を含み、チョイスはロイヤルティ・加盟料・調達のみ。調整後EBITDAは各社定義(アコーは経常EBITDA)。IHGはドルで決算を出しますが、ロンドンではペンス建てで取引されています。

用語メモ:調整後EBITDA=利息・税金・減価償却費などを差し引く前の利益を、各社が独自の定義で調整したもの。会計基準で決められた数字(GAAP)ではありません。FCF(フリーキャッシュフロー)=営業キャッシュフロー(営業CF)−設備投資。この連載では7社とも同じ式で当ブログが計算しています。

5年間の利益の伸びはチョイスが首位。ただし注意書きが何枚もつく

図は、コロナ前の2019年12月期(FY2019)から2024年12月期(FY2024)までの、調整後EBITDAの伸び率です。チョイスが+61.7%(年率10.1%)で首位、ヒルトン+48.6%、ハイアット+45.4%、マリオット+39.3%、アコー+35.8%と続き、ウィンダムは+13.2%にとどまりました。IHGだけは棒が網かけになっていますが、これはFY2019の調整後EBITDAが取れないため、代わりに報告セグメント営業利益(会社定義)の伸び+29.9%を置いているからです。指標が違うので、横並びで比べないでください。

会社 手数料 FY2019→FY2024 伸び/年率 調整後EBITDA 伸び/年率 調整後EPS 伸び/年率
マリオット 3,823→5,170 +35.2%/6.2% 3,575→4,981 +39.3%/6.9% 5.92→9.33ドル +57.6%/9.5%
ヒルトン 2,243→3,259 +45.3%/7.8% 2,308→3,429 +48.6%/8.2% 3.90→7.12ドル +82.6%/12.8%
ハイアット 608→1,099 +80.8%/12.6% 754→1,096 +45.4%/7.8% FY2019は未取得 —
IHG 1,510→1,774 +17.5%/3.3% FY2019なし — 303.3→432.4セント +42.6%/7.4%
アコー 1,026→1,393 +35.8%/6.3% 825→1,120 +35.8%/6.3% 調整後EPSなし —
ウィンダム 868→841 −3.1%/−0.6% 613→694 +13.2%/2.5% 3.28→4.33ドル +32.0%/5.7%
チョイス 477.1→616.0 +29.1%/5.2% 373.7→604.1 +61.7%/10.1% 4.32→6.88ドル +59.3%/9.8%

※百万ドル(アコーは百万ユーロ、IHGのEPSは米セントで基本株数ベース)。伸び率と年率は当ブログ計算。ハイアットとウィンダムのFY2019の調整後EBITDAは当時の定義(その後に変更)。チョイスのFY2019は株式報酬を足し戻す形に組み替えた後の値(当初発表は364.9)で、調整後EPSは当初発表値。アコーは2019年が当時の「EBITDA」、2024年が経常EBITDAで、手数料も区分変更をまたぐ。ウィンダムの2019年の手数料は運営受託・保有ホテルの収入を含む。IHGの2019年のセントラル収入は保険関連を含む。

用語メモ:年率(年平均成長率)=5年間の伸びを、毎年同じ率で伸びたとみなして1年あたりに直した数字。(FY2024÷FY2019)の5乗根−1で計算します。EPS=1株あたり利益。

注意書きを外して中身を見ると、伸び方の質がそれぞれ違います。チョイスの首位には、2022年に買収したRadisson Hotels Americasの上乗せが含まれます。ハイアットの手数料+80.8%も、2021年のApple Leisure Group(ALG)買収などの効果込みです。そのハイアットでEBITDAの伸びが手数料ほど大きくないのは、所有ホテルを売って手数料型へ移ったため、所有ホテルの利益が減った分を差し引いた結果だと私は見ています(所有・リース収入はFY2019の1,848百万ドルからFY2024の1,174百万ドルへ)。

1株あたりで見ると、ヒルトンの調整後EPSが+82.6%(年率12.8%)と頭ひとつ抜けています。EBITDAの伸び(+48.6%)との差には、株数の減少(希薄化後の期中平均で−13.8%)などが効いています。ウィンダムは手数料が−3.1%と見かけ上マイナスですが、主に2019年の数字に保有ホテルや運営受託の収入が入っていたためで、その後に保有ホテルを売却しています。それでもEPSが+32.0%伸びたのには、株数を比較できる6社で最も大きく(−17.1%)減らしたことが大きく効いています。

アパートを買い増して戸数を倍にした大家と、手持ちの物件の稼働を上げて家賃収入を伸ばした大家。同じ+50%でも、中身はまったく違いますよね。成長率の数字だけでなく、「何で伸びたのか」まで確かめたいところです。

2025年は、米国の減速がはっきり数字に出てきた

では、足もとの勢いはどうでしょうか。2025年の数字を並べます。

会社 RevPAR 7〜9月 RevPAR 1〜9月 RevPAR 25年見通し(期初→最新) NUG(直近12か月) NUG 25年見通し 調整後EBITDA 25年見通し(FY2024比)
マリオット +0.5% +2.0% 2〜4%→1.5〜2.5% 4.7% 5%に迫る 5,352〜5,382(+7.4〜8.1%)
ヒルトン −1.1% +0.3% 2〜3%→0〜1% 6.5% 6.5〜7.0% 3,685〜3,715(+7.5〜8.3%)
ハイアット +0.3% +2.5% 2〜4%→2〜2.5% 12.1%(買収除く7.0%) 7.0〜7.7%(Playa除く6.3〜7.0%) Playa除く1,090〜1,110(1,016比+7〜9%)
IHG +0.1% +1.4% 見通しなし 4.4%(Venetian調整後5.2%) 見通しなし 見通しなし
アコー +0.8% +3.2% 3〜4%(7月から据え置き) 2.5% 約3.5% 為替一定で+11〜12%(7月の+9〜10%から上方修正)
ウィンダム −5% −2% 2〜3%→−3〜−2% 3.9%(会社発表は+4%) 4.0〜4.6% 715〜725(+3.0〜4.5%)
チョイス(米国) −3.2% −1.7% 1〜2%→−3〜−2% 2.3% 約1% 620〜632(+2.6〜4.6%)

※RevPARは前年比。マリオット・ヒルトン・ハイアット・IHGは比較可能ホテル・為替一定(ドル)、アコーは既存店・為替一定(ユーロ)、ウィンダムは全体・為替一定(整数%、Super 8中国を除く新基準)、チョイスは米国のみ。NUGの直近12か月はIHG・アコーも9月末まで。最新の見通しはマリオット11月4日、ヒルトン10月22日、ハイアット11月6日、IHG・アコー10月23日、ウィンダム10月22日、チョイス11月5日の公表。期初は各社の2月の公表(アコーは7月31日)。百万ドル。FY2024比は当ブログ計算(ハイアットは2024年に売却したホテル分を除いた1,016に対する会社の比較)。IHGは数値の見通しを出さず、「市場予想の達成に向けて順調」としている。Playa=ハイアットが2025年6月に買収したオールインクルーシブ・リゾート会社。

用語メモ:RevPAR=販売可能な客室1室あたりの売上(客室単価×稼働率)。NUG(Net Unit Growth)=純客室増加率。新しく開業した客室から、契約が切れて抜けた客室を差し引いた増加率です。

7〜9月期の米国のRevPAR(マリオットは米国・カナダ)は、データのある6社すべてでマイナスでした。マリオット−0.4%、ヒルトン−2.3%、ハイアット−1.6%、IHG−1.6%、ウィンダム−5%、チョイス−3.2%。とくにエコノミー・ミッドスケール中心のウィンダムとチョイスは、年初に「プラス」を見込んでいたRevPARの見通しを、年の途中で「−3〜−2%」まで引き下げています。アコーの7〜9月期が+0.8%にとどまったのは、欧州・北アフリカ(ENA)がパリ五輪の反動で−4.6%になったためで、米国減速とは別の理由です。

それでも、マリオット・ヒルトン・ハイアットは、2025年の調整後EBITDAを前年より7〜9%前後伸ばす見通しです。RevPARが横ばいでも客室数の純増で手数料を積み上げ、マリオットでは、提携クレジットカードなどRevPARに連動しない手数料の増加や一般管理費の減少も効いています。フランチャイズ料や基本運営手数料は、大まかに「客室数×RevPAR×手数料率」で決まるので、RevPARが止まった年にはNUGが成長のエンジンになります。家賃相場が横ばいの年に家賃収入を伸ばせるのは、戸数を増やした大家だけ、というのと同じ理屈ですね。

ただし、NUGの中身にも違いがあります。ヒルトンの数字にはSLH(スモール・ラグジュアリー・ホテルズ)との提携ホテルが、ハイアットには買収した客室が含まれます。マリオットは11月9日、Sonderとの契約が相手の債務不履行で終了したと発表しました(9月末で7,688室、客室全体の約0.44%)。チョイスの2025年のNUG見通しは約1%と、見通しを出している6社で最も低い水準です。

「持たない度合い」は、利益の振れやすさにつながる

会社 客室数(2025年9月末) フランチャイズ 運営受託 所有・リース インセンティブ手数料÷手数料(FY2024)
マリオット 1,753,722 66.0% 32.2% 0.8% 14.9%
ヒルトン 1,309,648 79.0% 19.9% 1.2% 8.9%
ハイアット 366,347 37.5% 58.2% 4.3% 22.0%
IHG 1,010,756 72.7% 26.9% 0.4% 10.0%
アコー 859,830 46.3% 51.3% 2.4% 非開示
ウィンダム 855,400 ほぼ全て わずか なし —
チョイス 649,677 99.7%(軒数) 13軒 15軒 —

※客室数ベースの構成比(マリオットはほかにレジデンス0.9%)。ヒルトンのフランチャイズにはSLHの提携ホテル(1.7%)を、ハイアットの所有・リースには売却予定のPlayaのリゾートを含む。ウィンダムは保有ホテルを2022年に売却。チョイスは軒数ベースで、運営受託13軒のうち4軒は保有と重複。インセンティブ手数料の比率は当ブログ計算(マリオット769÷5,170、ヒルトン290÷3,259、ハイアット242÷1,099、IHG178÷1,774)。

7社とも、自分で持っている客室はごくわずかです。いちばん多いハイアットでも4.3%で、しかも売却予定のPlayaのリゾートを含んでいます。ハイアットは手数料ビジネスから生まれる利益の割合を、2017年の47.0%から2024年の79.2%まで高め、2027年に90%以上(プロフォーマ)を目標にしています。アコーも2019年12月に6.3%あった保有・リースの客室を、2025年9月末には2.4%まで減らしました。

違いが出るのは、フランチャイズと運営受託の比率です。看板貸しのフランチャイズは客室売上の一定率をもらう商売で、管理会社にあたる運営受託は、ホテルの利益に応じた成功報酬(インセンティブ手数料)もついてきます。運営受託が58.2%のハイアットでは、手数料に占めるインセンティブ手数料が22.0%。フランチャイズ中心のヒルトンでは8.9%です。景気のよいときには成功報酬が上乗せされ、悪いときには真っ先に消える。この「振れやすさ」の違いは、後の2020年の数字ではっきり見えてきます。

稼ぐ力は、会社の物差しのまま並べるのが正直

会社 物差し(定義) FY2019 FY2024 2025年
マリオット 調整後EBITDA÷(手数料+所有・リース等収入)[当ブログ計算] 65.8% 74.1% —
ヒルトン 調整後EBITDAマージン[会社定義。分母は総収入から立替収入を除き、契約取得費用の償却を足し戻した額。FY2019は当時の定義] 60.8% 71.5% 74.8%(1〜9月)
IHG フィー・マージン[会社定義。フィー事業の営業利益÷フィー事業収入] 54.1% 61.2% 64.7%(1〜6月)
アコー M&F(運営・フランチャイズ)の経常EBITDA÷M&F売上[当ブログ計算] — 70.9% —
ウィンダム 調整後EBITDA÷(fee-related収入−基金収入)[当ブログ計算] 70.6% 82.5% —
チョイス 調整後EBITDA÷立替収入を除く収入[分母は会社定義、当ブログ計算] — 63.8% —
ハイアット 手数料ビジネスから生まれる利益の割合[会社定義。利益率ではない] 2017年47.0% 79.2% 2027年に90%以上が目標

※アコーは本社費用(FY2024は−116百万ユーロ)を差し引く前の値(655+333)÷1,393。ウィンダムの2019年は保有ホテル・運営受託の収入を含み、EBITDAも旧定義。チョイスの調整後EBITDAは基金の赤字を足し戻す定義(ウィンダムは足し戻さない)。

ここは、7社を1本の物差しで測ることを、あえてあきらめました。たとえば調整後EBITDAを手数料で単純に割ると、ヒルトンは105.2%(3,429÷3,259)になります。利益率が100%を超えることはありませんから、これは「手数料以外の稼ぎ」、つまり所有・リースホテルの利益やその他の収入がEBITDAに入っているということです。分母と分子の範囲が会社ごとに違う以上、細かい順位づけには意味がありません。

それでも、各社の物差しのままで見えることが2つあります。ひとつは、どの物差しで測っても、利益率がおおむね6〜8割台に並ぶという水準感。もうひとつは、2019年と比べられる会社が、そろって利益率を上げてきたことです。ヒルトンは60.8%から71.5%(2025年1〜9月は74.8%)、IHGのフィー・マージンは54.1%から61.2%(2025年1〜6月は64.7%)へ。客室が増えても本社の人員や仕組みはそれほど増えない、手数料ビジネスならではの体質です(当ブログの見方)。ただしIHGの2025年の上昇には、ポイント販売収入を手数料事業に計上する割合を50%から100%に変えた影響なども含まれます。

建物を持つ大家業では、家賃から固定資産税や修繕費、ローンの利息が差し引かれていきます。建物を持たずにこの水準を残せる商売の強さは、正直に言ってうらやましいほどです。

FCFへの変わり方には、キーマネーと一時的な支出が効いている

会社 営業CF 設備投資 FCF FCF÷調整後EBITDA(FY2024) 同(FY2022〜24合計) キーマネー キーマネー÷調整後EBITDA
マリオット 2,749 750 1,999 40.1% 50.0% 341 6.8%
ヒルトン 2,013 198 1,815 52.9% 55.9% 105 3.1%
ハイアット 633 170 463 42.2% 50.3% 153 14.0%
IHG 724 78 646 54.3% 63.2% 206 17.3%
アコー 733 293 440 39.3% 40.3%(2年) 未取得 —
ウィンダム 290 49 241 34.7% 46.9% 109 15.7%
チョイス 319.4 145.9 173.6 28.7% 38.9% 112.2 18.6%

※FY2024、百万ドル(アコーは百万ユーロ)。FCF=営業CF−設備投資。転換率とキーマネーの比率は当ブログ計算。キーマネーはアコー以外で営業CFの内側に入っており、FCFからは差し引き済み(IHGは返済控除後)。ハイアットの3年合計の分母は、FY2023を2025年に組み替えた後の1,055(当初1,029)、FY2022は旧定義の908。アコーはIFRSのキャッシュフローがFY2023〜24しか取れていないため2年。チョイスの設備投資は保有ホテルへの投資(FY2024は106.8)を含む。IHG・アコーはIFRSのため、リース負債の返済が財務CFに入り、FCFから引かれていない(アコーのFY2024は106百万ユーロ)。

用語メモ:キーマネー(key money)=運営受託やフランチャイズの契約を結ぶときに、ホテル会社がホテルオーナーに払う協力金。FCF転換率=FCF÷調整後EBITDA(当ブログの計算)。調整後EBITDAのうち、どれだけが手元の現金として残ったかの目安です。

調整後EBITDAのうち、どれだけが現金として残ったか。FY2024の転換率は、IHGの54.3%からチョイスの28.7%まで開きました。単年の数字には一時的な要因が混ざるので、3年合計でも並べています。IHG 63.2%、ヒルトン55.9%、ハイアット50.3%、マリオット50.0%、ウィンダム46.9%、アコー40.3%(2年)、チョイス38.9%です。

差を生んでいる要因は3つあります。1つ目は一時的な支出です。マリオットのFY2024の営業CFには、シェラトン・グランド・シカゴの保証の支払い300百万ドルが含まれ、設備投資のうち約200百万ドルも同じホテル関連でした。2つ目は投資の範囲で、チョイスの設備投資には保有ホテルへの投資が入っています。3つ目がキーマネーです。FY2024は、チョイス(調整後EBITDAの18.6%)、IHG(17.3%、前年の101百万ドルから倍増)、ウィンダム(15.7%)、ハイアット(14.0%)が重く、ヒルトンは3.1%と軽めでした。ただしヒルトンの経営陣は、通常の水準を年150〜200百万ドルと説明しています。

キーマネーは、大家が入居を決めてもらうために仲介会社へ払う広告料(AD)に少し似ています。成長を続ける限り毎年出ていく、事業のための費用です。ウィンダムとチョイスが公表する会社定義の「調整後FCF」(FY2024はそれぞれ397百万ドル、392.5百万ドル)はこれを足し戻しているため、当ブログのFCF(241、173.6)よりかなり大きくなります。私は、キーマネーを引いた後の数字で見るほうが実態に近いと考えています(当ブログの見方)。

もう1つ、足もとで目を引くのがハイアットです。2025年1〜9月の営業CFは66百万ドルと、前年同期の398百万ドルから急減しました。運転資本の動きに、2024年の資産売却益にかかる税金の支払い、利息の増加、Playa買収の関連費用が重なったためです。一時的な要因が多いとみていますが(当ブログの見方)、次の決算で戻り方を確かめたいところです。

7社とも還元がFCFを上回る。差は借入や資産売却で埋めてきた

図は、2022〜2024年12月期の3年合計で、株主還元(配当+自社株買い)をFCFで割った倍率です。7社すべてが、点線の1.0倍(FCFと同額)を超えています。チョイス2.1倍、マリオット1.8倍、アコー1.6倍(2023〜2024年の2年)、ウィンダム1.6倍、ヒルトン・IHG・ハイアットが1.4倍でした。

会社 還元(FY2022〜24) FCF(同) 還元÷FCF 累計の還元÷FCF 累計の対象年 希薄化株数 FY2019→FY2024 2025年の還元計画
マリオット 11,871 6,748 1.8倍 146.4% FY2019〜24 −15.0% 約4,000
ヒルトン 7,252 5,093 1.4倍 134.4% FY2019〜24 −13.8% 約3,300
ハイアット 2,119 1,538 1.4倍 121.6% FY2021〜24 −3.5%(推計) 約350
IHG 2,813 2,004 1.4倍 113.2% FY2019〜24 −11.4% 約1,170
アコー 1,400(2年) 855(2年) 1.6倍 163.7% FY2023〜24 未取得 約843
ウィンダム 1,507 940 1.6倍 152.4% FY2019〜24 −17.1% 数値目標なし
チョイス 1,342.8 631.0 2.1倍 126.9% FY2019〜24 −13.8%(推計) 数値目標なし

※百万ドル(アコーは百万ユーロ)。株主還元はキャッシュフロー計算書の配当と自社株買いの支払額。倍率・累計比率は当ブログ計算。IHGの2019年の還元は特別配当500を含む。株数は希薄化後の期中平均(ハイアット・チョイスは純利益÷EPSによる推計)。2025年の計画は各社の最新の公表で、IHGは自社株買い9億ドル+配当約2.7億ドル。アコーは配当303+自社株買い440+10〜12月期の追加100を当ブログで合計した値。

多くの会社で6年累計の比率が3年合計より低く出るのは、2020〜2021年に自社株買いを止めていたからです。それでもマリオットは6年で約150億ドル(約2.3兆円、1ドル154.04円で換算)を還元し、同じ期間のFCF約103億ドルを大きく上回りました。100%を超えた分は、借入、資産の売却、手元資金でまかなったことになります。ハイアットは2024年に不動産の売却で1,421百万ドルを受け取り、同じ年に1,250百万ドルを還元しました。売却代金も還元の原資になったと見るのが自然でしょう(当ブログの見方)。

その結果、株数はFY2019からFY2024までにウィンダムで17.1%、マリオットで15.0%、ヒルトンとチョイスで13.8%(チョイスは推計)、IHGで11.4%減りました。区分所有のマンションで、管理組合がほかの所有者の持分を買い戻していけば、残った人の持分は大きくなります。自社株買いはそれと同じで、利益が同じでも1株あたりの取り分を増やします。

ただ、2025年もこの流れは続きます。マリオットの約4,000百万ドルという計画は、直近12か月(2024年10月〜2025年9月)のFCF 1,927百万ドルの約2.1倍です(当ブログ計算)。純有利子負債も2024年末の14,051百万ドルから2025年9月末の15,321百万ドルへ増えました。家賃の手取り以上の分配を、借り増しで続けている形です。

借入はEBITDAの3倍前後。マイナス純資産は、すぐに危険信号とは限らない

借入の重さを、純有利子負債が直近12か月の調整後EBITDAの何年分かで比べたのが図です。6社は2.7〜3.6倍に収まり、ハイアットだけが4.7倍に跳ね上がっています。ハイアットの負債にはPlaya買収のつなぎ融資(タームローン)17億ドルが入っている一方、EBITDAにはPlayaの約3.5か月分しか入っていないためです。会社は、Playaの不動産の売却代金でこの融資を返す予定だとしています(会社は11月6日にも年内の売却完了と返済を予定していると説明しましたが、同じ日に公表した連結見通しは、売却が年内に完了しない前提で作られています)。網かけは会社の目標レンジです。最近の資料で数値の目標を示しているのはIHG(2.5〜3.0倍)とウィンダム(3〜4倍)で、アコーは2023年の資料に「S&P方式で3倍未満」とあります。マリオットの4.5倍は目標ではなく、融資契約上の上限です。

会社 時点 純有利子負債 ÷直近12か月の調整後EBITDA 会社の目標 純資産
マリオット 2025年9月末 15,321 2.9倍 記載なし −3,119
ヒルトン 2025年9月末 10,600 2.9倍 記載なし −4,905
ハイアット 2025年9月末 5,265 4.7倍 数値なし(投資適格を維持) 3,808
IHG 2025年6月末 3,361 2.7倍 2.5〜3.0倍 −2,308(2024年末)
アコー 2025年6月末 3,096 2.7倍 数値なし(2023年資料で「S&P方式で3倍未満」) 4,771
ウィンダム 2025年9月末 2,557 3.6倍(会社値3.5倍) 3〜4倍 583
チョイス 2025年9月末 1,865.9 3.0倍 単独の目標なし 149.8(2024年末は−45.3)

※百万ドル(アコーは百万ユーロ)。倍率は当ブログ計算(ヒルトン・IHG・チョイスは会社値と一致、ウィンダムは端数の違い)。IHG・アコーはIFRSでリース負債を含み、IHGは通貨スワップの元本も含む。米国5社は営業リースを含まない。ハイアットの純資産は非支配持分324を含む。アコーの純資産はハイブリッド債991と非支配持分421を含む(親会社の普通株主の持分は3,359)。IHGの2025年6月末の純資産は未取得。

用語メモ:純有利子負債=借入金などの有利子負債から現金を差し引いたもの。純有利子負債÷EBITDAは、いまの稼ぎで借入を何年分抱えているかの目安です。

格付けは、確認できた範囲ではIHGがS&PでBBB・ムーディーズでBaa2、アコーがS&PとFitchでBBB−、ハイアットがBBB−とBaa3(資料に格付会社名の記載なし)です。マリオット、ヒルトン、ウィンダム、チョイスの格付けは、今回の資料では確認できませんでした。

さて、純資産の列を見てください。マリオット、ヒルトン、IHGはマイナスで、チョイスも2024年末はマイナスでした。日本の感覚で「債務超過」と聞くと、すぐに倒産の心配が頭に浮かびますよね。でも、どの会社も黒字で、現金も稼いでいます。マイナスになった主な理由は、自社株買い(IHGは特別配当も)です。マリオットの自己株式(買い戻して手元に置いている株の取得原価)は2025年9月末で268.9億ドル。ヒルトンの純資産は2019年末にすでに−472百万ドルで、2020年の赤字も重なりましたが、その後は自社株買いでマイナスが広がりました(2025年9月末の自己株式は136.7億ドル)。チョイスは自社株買いで2024年末にマイナスになり、2025年7〜9月期にカナダの合弁会社を完全子会社にした際の再評価益100百万ドル(現金の入らない利益)もあって、9月末にはプラスへ戻っています。

一方、ハイアットとアコーの純資産はプラスです。ただしアコーの4,771百万ユーロには、IFRSで資本扱いになるハイブリッド債991百万ユーロが含まれます。ウィンダムもプラスですが、のれんと無形資産(3,059百万ドル)を差し引いた「有形の純資産」で見ると約−25億ドルです(当ブログ計算:583−3,059)。プラスかマイナスかの差は、見た目ほど大きくありません。

大家さんの言葉に置きかえると、こういうことです。何十年も前に安く買ったアパートが、いまは家賃収入の実力に見合った高い評価を受けている。その評価を担保に借り増しして、出資者に払い戻す。帳簿には昔の取得価額しか載っていないので、帳簿上の純資産はマイナスになります。それでも家賃で返済が楽に回っているなら、経営が破綻しているわけではありません。ホテル会社も、自分で育てたブランドの価値は貸借対照表に載りません。だからこそ各社の財務の物差しは、純資産ではなく、EBITDAに対する借入の倍率で決められています。IHGの目標レンジと融資契約上の制限(純有利子負債÷EBITDAが4.0倍未満)、マリオットの融資契約上の上限も、この倍率です。

ただし、ここに落とし穴があります。純資産というクッションがない分、稼ぎが落ちれば、借入の倍率がそのまま悪化します。

RevPARが落ちたとき、自社株買いも配当も止まった

その「稼ぎが落ちたとき」の実例が、2020年です。

会社 調整後EBITDA FY2019→FY2020 増減 株主還元 FY2020 株主還元 FY2021
マリオット 3,575→1,147 −67.9% 306 0
ヒルトン 2,308→842 −63.5% 338 0
ハイアット 754→−177 赤字に転落 89 0
IHG 865→219(報告セグメント営業利益) −74.7% 0 0
アコー 825→−391 赤字に転落 未取得 未取得
ウィンダム 613→327 −46.7% 103 189
チョイス 373.7→240.7 −35.6% 80.7 38.4

※百万ドル(アコーは百万ユーロ)。増減率は当ブログ計算。ハイアット・ウィンダムは当時の定義(ウィンダムの2020年は定義変更後336)。IHGはFY2019の調整後EBITDAがないため、報告セグメント営業利益(会社定義)。アコーの2019年は旧「EBITDA」。

ハイアットとアコーは、調整後EBITDAが赤字に転落しました。アコーの赤字は所有ホテル(ホテル資産・その他部門は+3百万ユーロ)ではなく、主にオーナー向けサービス部門(−282百万ユーロ)と本社費用(−112百万ユーロ)によるもので、運営・フランチャイズ部門は+25百万ユーロの黒字でした(当時の区分)。マリオットとヒルトンも6割以上の減少です。手数料の内訳を見ると、その理由の一端がわかります。マリオットのインセンティブ手数料は637百万ドルから87百万ドルへ−86.3%、ヒルトンも−83.5%と、ほぼ消えました。フランチャイズ料はマリオット−42.5%、ヒルトン−43.8%(いずれも当ブログ計算)で、大きく減ったとはいえ半分以上は残っています。フランチャイズ専業に近いウィンダムとチョイスは、EBITDAの落ち方が比較的小さく、2020〜2021年も還元を続けました。

そして大手3社とIHGは、2021年に還元をゼロにしています。稼ぎが急に落ちたとき、自社株買いだけでなく配当まで止まったということです。

いまの借入のまま、仮に直近12か月の調整後EBITDAが1割減ったとしましょう(当ブログの試算)。倍率は、マリオットとヒルトンが3.2倍、チョイスが3.3倍、IHGが3.0倍(目標レンジの上限)、ウィンダムは3.9倍と、目標の3〜4倍の上限に近づきます。ふだんの小さな振れなら吸収できます。ハイアットはRevPARが1ポイント動くと調整後EBITDAが18〜28百万ドル、チョイスは米国RevPAR1%でロイヤルティが約4.9百万ドル動くと開示しています(いずれも2025年2月時点)。怖いのは、2020年のような大きな下落と、高い借入の倍率が重なることです(当ブログの見方)。

大家業でも、空室が増えて家賃収入が1割減れば、返済比率はそのまま跳ね上がります。そのとき最初にやめるのは、自分への分配のはずです。自社株買いの大きさを魅力に感じて株を持つなら、景気が崩れたときにはそれが真っ先に止まる、と覚悟しておく必要があります。

5本の物差しで並べた7社の通信簿(当ブログの見方)

会社 成長力 稼ぐ力 キャッシュ 株主還元 財務の健全性
マリオット 手数料・EBITDAは年6〜7%と堅実。25年もEBITDA+7〜8%の見通し 手数料+所有収入に対するEBITDAが65.8%→74.1% 3年の転換率50.0%。FY2024は一時支出で約4割 3年でFCFの1.8倍。25年も約40億ドルを計画 2.9倍。純資産−31億ドル。数値目標の公表なし
ヒルトン 調整後EPSは年率12.8%で、比較できる5社で最高。NUGも6.5% 会社定義のマージン60.8%→71.5% 転換率は5割台。FY2024のキーマネーは軽め FCFの1.4倍。株数−13.8% 2.9倍。純資産−49億ドルは7社で最大のマイナス
ハイアット 手数料+80.8%は7社最大(買収込み) 手数料ビジネス由来の利益が79.2%に 25年1〜9月の営業CFが66百万ドルに急減 FCFの1.4倍。資産売却の代金も活用 4.7倍はPlayaのつなぎ融資による一時的な上昇。純資産はプラス
IHG 手数料は年3.3%と緩やか。EPSは年7.4% フィー・マージン54.1%→61.2%(25年上期64.7%) 3年の転換率63.2%は7社最高。ただしキーマネーが倍増 FCFの1.4倍。株数−11.4% 2.7倍で目標レンジ内。純資産−23億ドル(24年末)
アコー 手数料・EBITDAとも+35.8%(ユーロ) M&Fの利益率は約71%(本社費用の前) 転換率は約4割(2年)。リース返済は財務CF 2年でFCFの1.6倍 2.7倍。純資産はプラスだがハイブリッド債を含む
ウィンダム EBITDA+13.2%は比較できる6社で最も低い。25年のRevPARはマイナス見通し 基金を除いた手数料に対し82.5% 転換率は3〜4割台。キーマネーがEBITDAの15.7% FCFの1.6倍。株数−17.1%は比較できる6社で最大 3.6倍(会社値3.5倍)で目標3〜4倍の中ほど。ハイアットに次ぐ高さ。有形の純資産はマイナス
チョイス EBITDA+61.7%は比較できる6社で最高(買収込み)。ただし25年のNUGは約1% 63.8%(基金の赤字を足し戻す定義) FY2024の転換率28.7%は7社で最も低い FCFの2.1倍で7社最大 3.0倍。純資産は24年末のマイナスから9月末にプラスへ

※当ブログの見方。数字は本文の各表と同じ定義・期間。良し悪しの点数づけではなく、各社の特徴をまとめたもの。

並べてみると、5本すべてで1位という会社はありません。成長・稼ぐ力・借入のバランスが最も整って見えるのはヒルトンですが、純資産のマイナスは7社で最大です。IHGは借入の倍率が目標の範囲内で、現金への変わり方は3年合計で7社のトップ。アコーも借入の倍率は低めです。ウィンダムとチョイスは還元に積極的な一方で、米国の減速を正面から受けています。ハイアットは「持つ会社」から「持たない会社」への引っ越しの途中で、数字に一時的な要因が多く混ざっています。

比べてわかったのは、「稼ぐ力」と「借りて配る力」は別物だということ

7社を同じ物差しに当ててみて、私がいちばん強く感じたのは、手数料ビジネスの稼ぐ力そのものはどの会社も高いのに、その稼ぎを上回るペースで株主に配っている、という共通点でした。3年間(アコーは2年間)で還元はFCFの1.4〜2.1倍。差は借入や資産売却で埋め、純資産がマイナスになっても、EBITDAの3倍前後という借入の倍率で規律を保っています。景気のよいときには、これがEPSを押し上げる強力なエンジンになります。けれども、2020年の数字が教えてくれるとおり、稼ぎが落ちたときに最初に止まるのも、このエンジンです。

投資家として次の決算で確かめたいことを、順番に挙げておきます。まず、米国のRevPARのマイナスが10〜12月期に広がるのか、止まるのか。そのうえで、NUGが会社の見通しどおりに積み上がっているか、キーマネーの負担が膨らんでいないかを見てください。株主還元がFCFの何倍になっているかと、純有利子負債÷EBITDAが会社の目標の中に収まっているかは、セットで確認したいところです。ハイアットについては、Playaの不動産の売却が完了し、つなぎ融資17億ドルが返済されて倍率が下がるかどうか。チョイスは、調整後EBITDAで足し戻している基金の赤字がどこまで膨らむかも見逃せません。

大家業でも、いちばん強いのは「満室の年に一番儲かる大家」ではなく、「空室の年にも慌てずにすむ大家」だと私は思っています。7社の決算書は、その当たり前のことを、世界最大級の数字で教えてくれました。

明日の第9回は最終回。7社の株価は割安なのか割高なのか、リスクはどこにあるのか、そして米国株・英国株・フランス株を持つ日本の個人投資家の税金まで、まとめてお届けします。

 

※本記事は公表資料をもとにした情報提供を目的としたもので、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。投資の判断はご自身の責任で行ってください。 ※数値は各社の決算資料(年次報告書・四半期報告書・決算発表資料)をもとに当ブログが集計・計算したもので、四捨五入の関係で合計が合わない場合があります。株価は2025年11月7日の終値、円換算は三菱UFJ銀行の2025年11月6日の仲値(1ドル154.04円)を使っています。

出典・参考

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  • 三菱UFJリサーチ&コンサルティング「外国為替相場情報 2025年11月6日」(三菱UFJ銀行の公表相場、2025年11月6日)https://www.murc-kawasesouba.jp/fx/past/index.php?id=251106