東雲結子:先生、日曜の朝からいい話です! ウィンダムもチョイスも、株価が年初から3割前後も下がっています。ホテル株の3割引セール、開幕ですね!

税理士石井:うーん、東雲さん。値引きシールは、たいてい賞味期限が近い商品に貼られるものなんですよ。

東雲結子:えっ、株にも賞味期限が……? でも2社とも、ホテルをほとんど持たない「看板貸し」ですよね。建物がないなら、傷むところもないのでは?

税理士石井:それがですね……。看板代はホテルの客室売上の5%前後。大家さんでいえば、家賃に連動して管理料をもらう管理会社なんです。2025年1〜9月の米国の客室1室あたりの売上は、ウィンダムが前年比−3%、チョイスが−1.7%でした。

東雲結子:あっ、空室が増えると管理料も減る……。看板貸しも、景気の雨には一緒に濡れるんですね。そういえばこの2社、チョイスがウィンダムに何度もプロポーズして、振られた仲だと聞きました!

税理士石井:ええ。2023年に1株80ドル、85ドル、90ドルと花束を大きくして、最後は相手の株主に直接「株を譲ってください」と申し込むところまで行きましたが、2024年3月に幕切れです。

東雲結子:花束を2回も大きくしてくれるなんて……。私なら85ドルの時点で、指輪のサイズを測りに行っています。

税理士石井:ははは。ウィンダムの取締役会は、90ドルでも首を縦に振りませんでした。東雲さんのほうが、ずいぶん決断が早いですね。

東雲結子:じゃあ今日は、振った側と振られた側の家計簿を、並べて見比べるんですね!

税理士石井:そうです。勝ち負けではなく、どこが違うか。キーマネー(オーナーへの協力金)の出し方、借入の重さ、「調整後」の数字の作り方まで。3割安の値札の裏側を、決算書で確かめていきましょう。

第7回は、ウィンダム・ホテルズ&リゾーツ(ティッカー〈銘柄コード〉WH)とチョイス・ホテルズ・インターナショナル(同CHH)を一度に読みます。どちらもニューヨーク証券取引所に上場し、米国のエコノミー(低価格帯)からミッドスケール(中価格帯)を中心に、ほぼすべてのホテルをフランチャイズで展開する「看板貸しの専業」です。

2社をまとめるのは、稼ぎ方が似ているうえに、チョイスがウィンダムに買収を仕掛けた間柄でもあるからです。2025年は米国の需要が弱く、株価は2024年末から11月7日までにウィンダムが−26.8%、チョイスが−30.6%。連載の7社のなかで、EV/EBITDA(企業価値が調整後EBITDA〈利払い・税金・償却前の利益〉の何年分か)もPER(株価収益率)も、低いほうから2社が並びます。

大家の目で見れば、2社の本当のお客さまは、土地と建物を持って看板を借りる「オーナー」です。オーナーに選ばれ続けるために何を払い、払った後に何が残るのか。似ているようで中身の違う2社の決算書を、並べて確かめていきます。

どちらも「看板を貸す」専業。自前のホテルはほとんど持たない

ウィンダムは2025年9月末で約8,300軒・855,400室、25のブランドを約100か国に広げています。ブランドはSuper 8(2024年末で2,616軒、中国分を含む)、Days Inn、La Quinta、Ramadaなどです。保有ホテルは2022年に売却し、事実上すべてがフランチャイズです。チョイスは7,515軒・649,677室。ミッドスケールのComfort(2024年末で2,159軒)とQuality(同1,899軒)を柱に、長期滞在型のWoodSpring、エコノミーのEcono Lodge、2022年8月に買収したRadisson Hotels Americas(米州のラディソン事業)のブランドが並びます。保有15軒・運営受託13軒(一部重複)のほかはフランチャイズで、軒数の約99.7%を占めます。

項目 ウィンダム(WH) チョイス(CHH)
客室数(2025年9月末) 855,400室・約8,300軒 649,677室・7,515軒
うち米国 503,400室(約59%) 498,307室(約77%)
米国のうちエコノミー帯 223,200室(米国の約44%) 59,442室(米国の約12%)
契約形態 ほぼ全てフランチャイズ(保有ホテルは2022年に売却) 軒数の約99.7%がフランチャイズ(保有15軒・運営受託13軒、一部重複)
ロイヤルティ(契約上の料率) 客室売上の約5% 客室売上の5〜6%
実効ロイヤルティ率(2025年1〜9月) 米国4.8%、国際2.6% 米国5.12%
会員プログラム 約1.21億人(2025年9月) 約6,900万人(2024年末)
パイプライン(2025年9月末) 約257,000室 86,441室
客室の純増率(NUG) 前年比+3.9%(2025年9月末)、2025年見通し+4.0〜4.6% 前年比+2.3%(同)、2025年見通し約1%
従業員(2024年末) 約2,200人 1,695人(運営受託ホテルの従業員を除く)

※ウィンダムは2025年4〜6月期から中国のSuper 8(マスターライセンス:現地の1社に中国での展開権をまとめて与える契約)を客室数から除外(2024年末の旧基準は902,987室)。エコノミー帯は各社の区分で、チョイスは差し引きによる計算値。比率は当ブログ計算。出典:各社の2025年7〜9月期決算発表・10-Q(米国の四半期報告書)、2024年12月期の10-K(同じく年次報告書)。

用語メモ:フランチャイズ=オーナーが自分の建物でホテルを営み、ブランド・予約の仕組み・会員プログラムを借りて本部に対価を払う契約。NUG(Net Unit Growth)=客室の純増率。パイプライン=契約済みで開業前の客室。

図は、2社を4つの物差しで並べたものです。客室数は85.5万室対65.0万室、2024年12月期の調整後EBITDA(利払い・税金・償却前の利益を会社が独自に調整したもの)は694百万ドル対604.1百万ドル、2025年1〜9月の米国のRevPAR(販売可能な客室1室あたりの売上)の前年比は−3%対−1.7%、9月末の借入の重さ(純有利子負債÷調整後EBITDA)は3.6倍対3.0倍。規模はウィンダムが上ですが、米国の落ち込みと借入の重さもウィンダムが上回ります。

顔ぶれも違います。ウィンダムは米国の客室の約44%がエコノミー帯で、全客室の約41%が米国の外。チョイスは米国が約77%で、米国のなかのエコノミー帯は約12%です。「手ごろな価格帯を世界に広く」のウィンダムに対して、チョイスは「米国の中価格帯に厚く」。

成長の仕込みにも差があります。ウィンダムのパイプラインは約257,000室で客室数の約30%(うち58%が米国の外)。ただし75%が新築で、着工済みはその36%、全体の約27%にとどまります。チョイスは86,441室で客室数の約13%。2024年末の97,325室から減っており、2025年の客室純増の見通しも約1%です(比率は当ブログ計算)。管理会社でいえば、パイプラインは「まだ建っていない新築の管理契約」。リストが長いことと、来年の管理料が増えることは同じではありません。

稼ぎの源は「客室売上の約5%」。料率はじわりと上がっている

収入の柱は、加盟ホテルの客室売上に一定率を掛けたロイヤルティ(ブランド使用料)です。契約上の率は、ウィンダムが約5%(マーケティング・予約の料金は別に3〜5%、契約期間は10〜20年)、チョイスが5〜6%(同3〜4%)。家賃の一定割合を受け取る管理会社と同じで、空室が増えれば取り分も減ります。

実際に受け取った率(実効ロイヤルティ率)は、ウィンダムの米国がFY2019(2019年12月期)の4.5%から2025年1〜9月の4.8%へ、チョイスの米国がFY2023の4.99%から2025年1〜9月の5.12%へと上がってきました。チョイスの資料(2025年2月)によると、料率1bp(0.01ポイント)でロイヤルティは約1百万ドル、米国RevPAR 1%で約4.9百万ドル動きます。1〜9月の料率は前年同期より7bp高く、年間の感応度を当てはめた粗い試算では約7百万ドル分。米国RevPAR −1.7%の影響(約8.3百万ドル)の大半を、料率の引き上げで打ち消している計算です(当ブログの試算)。

RevPARに連動しない収入も育っています。ウィンダムは、ブランド名をタイムシェア(別荘などの共有利用権)事業のTravel + Leisureに貸すライセンス料などがFY2024に119百万ドル、提携クレジットカードなどのパートナーシップ収入が2025年1〜9月に71百万ドル(前年同期53百万ドル)。チョイスも提携カードなどのパートナーシップ・サービス収入が1〜9月に81.3百万ドル(同71.5百万ドル)です。

2025年、米国の「1室あたりの売上」がはっきり落ちた

項目 ウィンダム チョイス
米国RevPAR FY2024 横ばい −1.2%
米国RevPAR 2025年1〜9月 −3% −1.7%(54.94ドル)
米国RevPAR 2025年7〜9月 −5% −3.2%(60.33ドル)
7〜9月の米国の内訳 稼働率−3.0ポイント、ADR−2% 稼働率−0.8ポイント(60.3%)、ADR−2.0%(100.03ドル)
米国の価格帯別(1〜9月) エコノミー−3%、ミッドスケール−2%、アップスケール−14% エコノミー+0.8%、長期滞在+1.4%、ミッドスケール−2.0%、アップスケール−4.2%
米国の価格帯別(7〜9月) エコノミー−5%、ミッドスケール−3%、アップスケール−23% エコノミー−3.3%、長期滞在−1.2%、ミッドスケール−3.2%、アップスケール−3.1%
国際(7〜9月) −2% +9.5%(為替一定で+5.1%)

※ウィンダムは為替一定の前年比で1%単位の開示(7〜9月の稼働率・ADRは決算発表の本文の記述)。チョイスは米国のシステム全体。価格帯の区分は各社の定義で、そろっていない。

ウィンダムの米国RevPARは1〜9月の−3%から7〜9月は−5%へ、チョイスも−1.7%から−3.2%へ悪化しました。ウィンダムの7〜9月は稼働率が3.0ポイント、ADR(平均客室単価)が2%下落。100室のホテルなら、毎晩3室ずつ空室が増え、単価も下がった計算です。

チョイスは1〜9月で見ると、エコノミー帯(+0.8%)と長期滞在型(+1.4%)が持ちこたえましたが、7〜9月はエコノミー帯−3.3%、ミッドスケール−3.2%とそろって悪化しています。客室数の伸びも米国の外が中心で、2025年9月末の前年比はウィンダムが米国+1%に対し国際+9%、チョイスが米国+0.6%に対し国際+8.3%です。

影響は手数料にも出ました。7〜9月のウィンダムのロイヤルティ・フランチャイズ料は159百万ドルから147百万ドルへ、チョイスの米国のロイヤルティは131.6百万ドルから126.7百万ドルへ減っています(チョイスの前年値は会社の説明からの逆算)。

用語メモ:RevPAR=ADR×稼働率。為替一定=為替レートの変動の影響を除いた伸び率。

見通しは2社とも引き下げ。それでも調整後EBITDAは前年を上回る計画

項目 期初 夏の修正 最新
ウィンダム:RevPAR(全体・為替一定) +2〜3% −2〜+1% −3〜−2%
ウィンダム:調整後EBITDA 745〜755 730〜745 715〜725
ウィンダム:調整後EPS(ドル) 4.66〜4.78 4.60〜4.78 4.48〜4.62
ウィンダム:客室数の伸び 3.6〜4.6% 4.0〜4.6% 4.0〜4.6%
チョイス:米国RevPAR +1〜2% −3〜0% −3〜−2%
チョイス:調整後EBITDA 625〜640 615〜635 620〜632
チョイス:調整後EPS(ドル) 6.98〜7.24 6.88〜7.20 6.82〜7.05
チョイス:世界の客室純増 約1% 約1% 約1%

※単位:百万ドル(EPSはドル)。ウィンダムは2025年2月12日→7月→10月22日、チョイスは2月20日→8月→11月5日の発表。

RevPARの見通しは、2社とも年初のプラスからマイナスへ下がりました。調整後EBITDAの中央値は、ウィンダムが750百万ドルから720百万ドルへ4.0%減、チョイスは632.5百万ドルから626百万ドルへ1.0%減です。それでも2024年と比べると、ウィンダム+3.7%、チョイス+3.6%の増益計画です(当ブログ計算)。客室の増加、料率の引き上げ、RevPAR以外の収入、チョイスは7月に残り50%を取得して連結したカナダ事業(Choice Hotels Canada)が支えています。ただしチョイスの数字には、後で触れる「基金の赤字の足し戻し」が効いています。

用語メモ:調整後EBITDA・調整後EPS(1株あたり利益)=会社が一時的と判断した項目などを除いた会社独自の指標で、米国会計基準(US GAAP)の数字ではありません。

ウィンダムは売上が縮んで利益が増え、チョイスは買収で一段上がった

ウィンダム FY2019 FY2020 FY2021 FY2022 FY2023 FY2024 2025年1〜9月 2024年1〜9月
純収益(総収入) 2,053 1,300 1,565 1,498 1,397 1,408 1,095 1,067
うち基金収入(マーケティング・予約・ロイヤルティ) 562 370 468 544 578 563 431 429
うちコスト償還収入 623 350 320 144 13 4 0 4
手数料収入(上の2つを除く) 868 580 777 810 806 841 664 634
調整後EBITDA 613 327 590 650 659 694 553 527
営業利益 307 −46 446 558 503 495 438 366
純利益 157 −132 244 355 289 289 253 204
希薄化EPS(ドル) 1.62 −1.42 2.60 3.91 3.41 3.61 3.26 2.54
調整後EPS(ドル) 3.28 1.03 3.16 3.96 4.01 4.33 3.64 3.29
希薄化株数(百万株) 96.6 93.4 93.9 90.8 84.9 80.1 77.6 80.5

※単位:百万ドル(EPSはドル)。FY=12月期、米国会計基準。FY2019の調整後EBITDAは旧定義(キーマネーの償却を足し戻す前)、FY2020は当初の発表値(定義変更後は336)。手数料収入は当ブログ集計で、FY2019〜FY2022は運営受託・保有ホテルの収入を含む。1〜9月の調整後EBITDAは四半期の合計。

ウィンダムの総収入は2,053百万ドルから1,408百万ドルへ3割以上減りましたが、減った分の大半は、運営受託ホテルの費用を立て替えて回収する「コスト償還収入」(623百万ドル→4百万ドル)です。利益をほとんど生まない売上が抜けただけで、その間に調整後EBITDAは+13.2%(旧定義を含むので目安)、調整後EPSは+32.0%伸びました。EPSが大きく伸びた主な理由は、希薄化株数を17.1%減らしたことです(調整後純利益の伸びは317百万ドル→347百万ドルの+9.5%)。基金とコスト償還を除いた手数料収入841百万ドルに対し、調整後EBITDAの比率は82.5%(FY2024、当ブログ計算)。FY2024の純利益は、チョイスへの防衛費用47百万ドルなどの特別項目で押し下げられています。

チョイス FY2019 FY2020 FY2021 FY2022 FY2023 FY2024
総収入 1,114.8 774.1 1,069.3 1,401.9 1,544.2 1,584.8
手数料収入(ロイヤルティ+加盟料+調達) 477.1 334.5 474.0 563.6 616.3 616.0
調整後EBITDA 373.7 240.7 403.6 478.6 540.5 604.1
営業利益 318.6 121.7 428.9 478.6 375.0 463.8
純利益 222.9 75.4 289.0 332.2 258.5 299.7
希薄化EPS(ドル) 3.98 1.35 5.15 5.99 5.07 6.20
調整後EPS(ドル) 4.32 2.21 4.29 5.27 6.11 6.88
希薄化株数(百万株、推計) 56.0 55.8 56.1 55.5 51.0 48.3

※単位:百万ドル(EPSはドル)。手数料収入は2024年までの旧表示による当ブログ集計。FY2019の調整後EBITDAは翌年の組替後(当初364.9)、FY2020の営業利益・調整後EPSも組替後。FY2022からRadisson Hotels Americasを含む。株数は純利益÷希薄化EPSで推計。

チョイス(2025年からの新表示) 2025年1〜9月 2024年1〜9月
総収入 1,206.6 1,195.1
手数料収入(フランチャイズ・運営受託フィー+パートナーシップ・サービス) 597.2 582.9
償還対象の費用に対応する収入 460.2 477.1
償還の収支(収入−費用) −44.2 −24.8
調整後EBITDA 484.7 463.7
営業利益 346.9 344.6
純利益 306.3 223.9
希薄化EPS(ドル) 6.52 4.61
調整後EPS(ドル) 5.36 5.32

※手数料収入の範囲が年度の表と違うため、年度の数字とは比べない。2025年1〜9月の純利益はカナダ事業の取得に伴う評価益100.0を含む。

チョイスの調整後EBITDAは+61.7%、調整後EPSは+59.3%と大きく伸びましたが、2022年のRadisson Hotels Americasの買収(支出550.4百万ドル)を含みます。ウィンダムが「薄い売上を手放して」利益率を上げたのに対し、チョイスは「買って」一段上がった形です。会社が示す償還収入を除く収入946.6百万ドルに対する調整後EBITDAは63.8%(FY2024)ですが、分母に保有ホテルの売上113.5百万ドルなどを含み、EBITDAの作り方も違うので、ウィンダムの82.5%との差を実力差と読むのは早計です。

2025年1〜9月の調整後EBITDAは、チョイス+4.5%、ウィンダム+4.9%(当ブログ計算)。チョイスの純利益306.3百万ドルには、カナダ事業の残り50%を約114.5百万ドルで取得した際、もともと持っていた50%を時価で評価し直して生じた評価益100.0百万ドル(現金が入らず、税金もかからない)が入っており、除くと206.3百万ドルで前年同期の223.9百万ドルを下回ります(当ブログ計算)。

用語メモ:希薄化EPS=将来増えうる株数も含めて計算した、米国会計基準の1株あたり純利益。

「調整後」の物差しが違う。チョイスは基金の赤字を足し戻す

オーナーはロイヤルティとは別に、広告・予約・会員プログラムのための料金を本部に払い、本部はそれを基金として使います。2社とも収入と費用を総額で計上し、規模は売上の約4割。FY2024でウィンダムは563百万ドル(純収益の40%)、チョイスは638.2百万ドル(総収入の40.3%、会社の非GAAP集計)です。

違うのは赤字の扱いです。ウィンダムは基金の収支の振れを調整後EBITDAに含めます(FY2024は10百万ドルの押し下げ、2025年は約5百万ドルの支出超過の見込み)。チョイスは赤字を調整後EBITDA・EPSで足し戻し、その額はFY2024の18.2百万ドルから、2025年1〜9月は44.2百万ドル(前年同期24.8百万ドル)、通期の見通しでは60〜70百万ドル(期初は50百万ドル。会社の調整表から当ブログ計算)に膨らんでいます。

チョイスは「長期で収支をとんとんにし、赤字はフランチャイジーから回収できる」と説明しており、基金が黒字だったFY2021(83.9百万ドル)とFY2022(52.1百万ドル)は差し引いていました。一方的な調整ではありません。それでも現金は今出ていき、10-Kも回収できないリスクを挙げています。マンションでいえば、管理組合の赤字を立て替えた管理会社が、調整後の数字の上で、それを自社の費用とみなすか(ウィンダム)、「あとで返してもらう立替金」とみなして足し戻すか(チョイス)の違いです。なお、米国会計基準の営業利益・純利益では、2社ともこの赤字を費用として差し引いています。

物差しをそろえてみます。チョイスの赤字を費用とすると、1〜9月の調整後EBITDAは440.5百万ドル(前年同期438.9百万ドル)で伸びは+0.4%、2025年の見通しは550〜572百万ドル(中央値561百万ドル)になります(当ブログの試算。ほかの調整は会社定義のまま)。逆にウィンダムは、1〜9月の基金の収支が前年同期の−6百万ドルから−1百万ドルへ改善し、約5百万ドルが増益を支えました(当ブログ計算)。基金は、2社の数字を逆の方向に動かしているのです。

用語メモ:非GAAP=米国会計基準で定められていない、会社独自の指標。

会社の「調整後FCF」は、キーマネーを足し戻した数字

キーマネー(key money:ホテルオーナーに払う契約時の協力金)は、オーナーに看板を選んでもらうために出すお金で、ウィンダムでは「開発前渡金」と呼びます。2社とも契約期間にわたって収入から差し引いていきます。テナント誘致のための内装協力金やフリーレントと同じで、新しい契約を取るために必要になりうる支出です。

ウィンダム FY2019 FY2020 FY2021 FY2022 FY2023 FY2024 2025年1〜9月
営業CF 100 67 426 399 376 290 215
うちキーマネー(開発前渡金)の支払い — 16 30 48 72 109 73
設備投資 50 33 37 39 37 49 30
FCF(営業CF−設備投資) 50 34 389 360 339 241 185
配当 112 53 82 116 118 122 96
自社株買い 242 50 107 448 393 310 223
株主還元の合計 354 103 189 564 511 432 319

※単位:百万ドル。FY2019の営業CFはLa Quinta買収で引き継いだ税金195の支払いを、FY2024は買収防衛費用47の支払いを含む。

チョイス FY2019 FY2020 FY2021 FY2022 FY2023 FY2024 2025年1〜9月
営業CF 270.6 110.1 383.7 367.1 296.6 319.4 184.8
うちキーマネーの支払い 38.9 36.5 38.2 54.5 98.3 112.2 62.4
設備投資(保有ホテルへの投資を含む) 57.3 33.6 74.3 90.0 116.3 145.9 112.2
FCF(営業CF−設備投資) 213.2 76.5 309.4 277.1 180.3 173.6 72.5
配当 48.1 25.3 25.0 52.5 56.5 55.5 40.2
自社株買い 50.6 55.5 13.4 434.8 362.8 380.7 113.0
株主還元の合計 98.7 80.7 38.4 487.3 419.3 436.2 153.2

※単位:百万ドル。FY2020は翌年の組替後。FY2019〜FY2022の設備投資は1行で、保有ホテル分を分けていない。FY2023のウィンダム株の取得112.4はFCFにも還元にも含めない。

2社とも、キーマネーは営業CF(営業キャッシュフロー)の中に入っているので、営業CF−設備投資で計算した当ブログのFCF(フリーキャッシュフロー)は「キーマネーを払った後」の数字です。そのキーマネーは、ウィンダムがFY2020の16百万ドルからFY2024の109百万ドルへ、チョイスがFY2019の38.9百万ドルから112.2百万ドルへ膨らみました。ウィンダムは2025年も約110百万ドルを見込みます。ところが、会社が示す「調整後FCF」は、このキーマネーを足し戻しています。

項目(FY2024) ウィンダム チョイス
FCF(営業CF−設備投資、当ブログ) 241 173.6
会社の調整後FCF 397 392.5
差 156 218.9
差の中身 キーマネー109+買収防衛費用の支払い47 キーマネー112.2+保有ホテルへの投資106.8
調整後EBITDAに対する割合(当ブログのFCF) 34.7% 28.7%
調整後EBITDAに対する割合(会社の調整後FCF) 57.2% 65.0%

 

※単位:百万ドル。ウィンダムの会社定義のFCFは2024年から「キーマネーを除いた営業CF−設備投資」に変更(FY2023は旧定義339、新定義411)。チョイスの調整後FCFは「営業CF+キーマネー−維持の設備投資」。割合は当ブログ計算。

FCF利回り(FCF÷時価総額)は、会社の調整後FCFならチョイス8.6%(FY2024)、ウィンダム7.1%(直近12か月)ですが、当ブログのFCFではウィンダム4.3%、チョイス3.8%(いずれもFY2024)です。この差にこだわるのは、キーマネーが「やめられる支出」ではないからです。チョイス自身も10-Kで、オーナー獲得の競争にキーマネーや貸付、保証が必要になりうると書いています。毎年欠かせない支出を「成長投資」として外せば、手残りは大きく見える。フリーレントを経費から外して手残りを計算した大家さんの帳簿が、通帳と合わなくなるのと同じです。しかもキーマネーの償却は、調整後EBITDAでも足し戻されています。調整後EBITDAも調整後FCFも、キーマネーを払う前の数字なのです。

お金を出す以上、回収のリスクも背負います。ウィンダムの開発前渡金の残高は2024年末の308百万ドルから2025年9月末の370百万ドルへ増えました。10-Qによれば、開発前渡金・貸付金・売掛金のうち約155百万ドルが、恒久的な資金調達を探している1社の大口フランチャイジー向けで、担保の実行もありうるとしています。直近12か月の調整後EBITDA(720百万ドル)の約2割です(当ブログ計算)。チョイスは、保有ホテルへの投資(2025年1〜9月に85.3百万ドル)、関連会社・合弁会社への出資(同90.0百万ドル)、カナダ事業の取得(取得した現金を差し引いた純額で同73.4百万ドル)、出資先の借入への保証(最大36.5百万ドル)など、自らの貸借対照表で成長を後押ししています。保有ホテルは育てて売る方針で、1〜9月には資産売却の収入52.0百万ドルもありました。

用語メモ:FCF=営業CF−設備投資。借入の元本返済は差し引いていません。調整後FCF=会社が独自に調整したFCFで、定義は会社ごとに違います。

借りてでも買い戻す。株数は5年で1割以上減った

FY2024の株主還元(配当+自社株買い)は、ウィンダムが432百万ドルでFCFの179.3%、チョイスが436.2百万ドルで251.3%。FY2019〜FY2024の累計でも、ウィンダムはFCF 1,413百万ドルに対して還元2,153百万ドル(152.4%)、チョイスは1,230.1百万ドルに対して1,560.6百万ドル(126.9%)で、超えた分は借入などでまかなってきました。2025年9月末までの9か月でも、純有利子負債はウィンダムが197百万ドル、チョイスが137.6百万ドル増えています(当ブログ計算)。こうした買い戻しで、希薄化株数はFY2019からFY2024の5年で、ウィンダムが17.1%、チョイスが13.8%(推計)減りました。共有物件で共有者が減れば、残った人の持分が増えるのと同じ理屈です。

2025年は動きが分かれました。ウィンダムは1〜9月に223百万ドル(250万株、平均87.70ドル)を買い戻し、四半期配当を8%増の0.41ドルに。発行済株式数は2024年1月末の約8,100万株から2025年10月の約7,560万株へ6.7%減りました。ただ、11月7日の株価73.73ドルは2025年1〜9月の平均取得単価(87.70ドル)を約16%下回っており、自社株買いの「買値」も成績表の一部です(当ブログの見方)。チョイスは1〜9月の自社株買いを113.0百万ドルと前年同期(349.0百万ドル)の約3分の1に落とし、カナダ事業や合弁会社、保有ホテルに現金を回しました。株数は2024年2月の約4,956万株から2025年10月末の約4,627万株へ6.6%減っています。

自社株買いを続けると、純資産は細ります。チョイスの純資産はFY2024末に−45.3百万ドルとマイナスで、2025年9月末に149.8百万ドルへ戻ったのは評価益100.0百万ドルの助けです。ウィンダムも純資産は583百万ドルのプラスですが、無形資産3,059百万ドルを除いた有形純資産は−2,476百万ドル(当ブログ計算)。ただ、チョイスのマイナスは赤字の積み重ねではなく、買い戻した自己株式(FY2024末で2,411.5百万ドル)が積み上がった結果です。ウィンダムの有形純資産のマイナスも、自社株買い(自己株式は2025年9月末で1,892百万ドル)で純資産が薄くなる一方、のれん・商標などの無形資産が3,059百万ドルあるためです。持分を買い戻すほど、帳簿上の自己資金は薄くなる。日本の「債務超過」のイメージで危ない会社と決めつけないことが大切です。裏を返せば、貸し手が頼りにしているのは土地や建物ではなく、将来の手数料の流れだということでもあります。

用語メモ:有形純資産=純資産から、のれんや商標などの無形資産を差し引いたもの。

借入はウィンダム3.6倍、チョイス3.0倍。担保になる建物はほとんどない

項目(2025年9月末) ウィンダム チョイス
借入 2,627 1,918.5
現金 70 52.6
純有利子負債 2,557 1,865.9
直近12か月の調整後EBITDA 720 625.1
純有利子負債÷調整後EBITDA(当ブログ) 3.6倍(3.55倍) 3.0倍(2.98倍)
会社の公表値 3.5倍 3.0倍
目標 3〜4倍 単独の目標は確認できず
主な借入 ターム・ローンB 1,504(2030年5月満期)、社債497(2028年8月満期)、ターム・ローンA 345(2027年4月満期)、融資枠281 社債397.5(2029年満期)・446.8(2031年満期)・589.6(2034年満期)、融資枠484.4

 

※単位:百万ドル。直近12か月=2024年10月〜2025年9月(FY2024−2024年1〜9月+2025年1〜9月)。営業リースの負債は含まない(チョイスの固定負債分は109.8)。

ウィンダムは当ブログの計算で3.55倍、小数1桁に丸めて3.6倍。会社は3.5倍と公表しており、端数の扱いの違いです。目標3〜4倍の中ほどで、借入の平均金利は5.38%。2025年の支払利息は138〜140百万ドルの見込みで、FY2024の124百万ドルから増えます。10月には融資枠を10億ドルに広げ、期限を2030年10月に延ばしました。チョイスは2.98倍(会社3.0倍)。単独の目標は確認できず、買収提案時のS-4(交換買付の目論見書)では統合会社の長期目標を約3〜4倍としていました。基金の赤字を費用とみなせば、倍率はもう少し高く見えます。2社とも米国会計基準で、IFRS(国際会計基準)のIHGやアコーと違って営業リースは純有利子負債に入りません。格付は今回の資料では確認できていません。

大家さんには、借入が稼ぎの3〜4年分というのは軽く見えるかもしれません。でも、この2社には担保になる建物がほとんどありません。ウィンダムの総資産4,346百万ドルのうち、のれんと無形資産が3,059百万ドル。看板だけを持つ会社の3〜4倍は、建物を持つ大家の3〜4倍と同じ重さではない、と私は考えています(当ブログの見方)。

チョイスによる買収提案は、1年近い攻防の末に失効した

日付 出来事
2023年4月28日 チョイスが非公開で1株80ドル(現金40%・株式60%)を提案。ウィンダムは5月9日に拒否
2023年5月15日 85ドル(現金55%・株式45%、取締役2席)に引き上げ。5月下旬に拒否
2023年8月21日 90ドル(現金55%・株式45%)を「最善かつ最終」として書面で提示。ウィンダムは9月26〜27日に拒否
2023年10月17日 チョイスが提案を公表(現金49.50ドル+チョイス株0.324株)。ウィンダムは同日に拒否
2023年11月14日 取締役2席、逆解約金4.35億ドル(約6%)、承認が遅れた場合のティッキング・フィーを加えた提案。21日にウィンダムが公開書簡で拒否
2023年12月12日 交換買付を開始(期限は2024年3月8日)。独占禁止法の届出も提出。チョイスはウィンダム株1,447,264株(約1.78%)を保有
2023年12月18日 ウィンダムの取締役会が全会一致で拒否を推奨
2024年1月中旬 FTCが追加情報を要求(セカンドリクエスト。正確な日付は未確認)
2024年1月22日 チョイスがウィンダムの取締役候補8人の指名を通知
2024年3月8日 交換買付は延長されずに失効。応募された株の買付はなし
2024年3月11日 チョイスが候補者の指名を撤回し、自社株買いの枠を500万株増やす

 

※出典:チョイスの8-K(臨時報告書)とS-4(交換買付の目論見書)、ウィンダムのSchedule 14D-9(買付への意見表明書)とその追補資料、ウィンダムのプレスリリース。

公表時の90ドルは、2023年10月16日の終値69.10ドルに30%を上乗せした値で、株式価値は約78億ドル、EV(企業価値)は約98億ドル。チョイスは年約1.5億ドルのコスト削減を見込み、EVで見て2023年の調整後EBITDAの市場予想の14.9倍だと説明しました。必要な現金は約42億ドル、統合時の純有利子負債は調整後EBITDAの約5.25倍となる計画でした。

ウィンダムの取締役会は、過小評価であること、対価のチョイス株が割高に見え統合後の借入も重いこと、独占禁止法の審査が最長24か月に及びうるのに、そのリスクを自社の株主が負わされることを理由に拒否しました。ウィンダムの意見表明書(14D-9)によると、審査期間の見込みはウィンダム側の弁護士が12〜18か月以上、チョイス側は60日と食い違っていました。結局FTCがセカンドリクエストを出し、交換買付は過半数の応募などの条件を満たせないまま失効しました(応募の割合は非公表)。ウィンダムは防衛費用を2023年に11百万ドル、2024年に47百万ドル計上。チョイスの費用は「企業結合・デューデリジェンス・移行費用」(2023年55.8百万ドル、2024年17.2百万ドル)に含まれ、Radissonの統合費用と分けて開示されていません。

結果論ですが、株式部分の40.50ドルは当時のチョイス株価(逆算で約125ドル)が前提でした。11月7日の終値98.53ドルで計算し直すと、対価は49.50ドル+0.324株×98.53ドル=約81.42ドル(当ブログ計算)。ウィンダムが挙げた「株式部分のリスク」は、数字の上ではこう表れています。一方のウィンダム株も73.73ドルで、公表時の90ドルには届いていません。

同じ地域で客付けを争う2つの管理会社の合併話に置きかえると、オーナーから見れば選択肢が減る話でもあります。FTCが本格的な審査に入ったのは、2社が同じ価格帯のオーナーを奪い合う直接の競争相手と見られたからでしょう(当ブログの見方)。

用語メモ:交換買付=現金や自社株を対価に、相手の株主から直接株を買う申し出(日本のTOBに近い)。FTC=米連邦取引委員会。セカンドリクエスト=合併審査での追加の情報要求。逆解約金=買い手側の事情で買収が実現しなかったとき、買い手が相手に払う違約金。

株価は年初から3割安。値札はどこまで悲観を織り込んだか

指標 ウィンダム(WH) チョイス(CHH)
株価(2025年11月7日終値) 73.73ドル 98.53ドル
時価総額 5,570(約8,580億円) 4,559(約7,023億円)
EV(時価総額+純有利子負債) 8,127 6,425
EV/EBITDA 11.3倍 10.3倍
PER 16.2倍 14.2倍
FCF利回り(FY2024) 4.3% 3.8%
株主還元利回り(直近12か月) 6.8% 4.3%
配当利回り 2.2% 1.2%
株価騰落率(2024年末→11月7日) −26.8% −30.6%
株価騰落率(2019年末→11月7日) +17.4% −4.7%

 

※単位:百万ドル。時価総額=株価×発行済株式数(ウィンダム約7,560万株、チョイス約4,627万株)、円は1ドル154.04円で換算。EV=時価総額+9月末の純有利子負債。EV/EBITDAとPERは2025年の調整後EBITDA・調整後EPSの見通しの中央値(ウィンダム720・4.55ドル、チョイス626・6.935ドル)で計算。FCF利回り=FY2024のFCF÷時価総額、株主還元利回り=直近12か月の配当+自社株買い÷時価総額、配当利回り=四半期配当×4÷株価。騰落率は配当を含まない。いずれも当ブログ計算。

同じ期間のS&P500は、2024年末から+14.4%、2019年末から+108.3%。2社は大きく引き離され、値札は連載の7社で最も安い2社になりました。EV/EBITDAはチョイス10.3倍、ウィンダム11.3倍で、3番目のアコーが11.8倍、最も高いヒルトンが20.0倍。PERも2社が低いほうから1位と2位です。逆数にすると、EV/EBITDA 11.3倍は企業価値に対して年8.8%、10.3倍は9.7%、ヒルトンは5.0%の調整後EBITDAを生む計算。利回り9%前後の物件と5%の物件が並んでいる感覚です。ただしEBITDAは、利息・税金・設備投資・キーマネーを払う前の数字で、物件のNOI(純収益)とは中身が違います。

では、市場は何を織り込んだのか。期初から最新までの見通しの中央値は、ウィンダムの調整後EBITDAで4.0%、調整後EPSで3.6%、チョイスはそれぞれ1.0%、2.5%しか下がっていません(当ブログ計算)。それでも株価は3割前後下がった。下げの大半は、利益に何倍の値段をつけるかという「倍率」の縮小です。市場は今年の利益より、来年以降の伸びを疑っている。米国のエコノミー・ミッドスケール帯の需要はさらに弱るのか、客室を伸ばすためのキーマネーはどこまで膨らむのか、借入でまかなう還元をいつまで続けられるのか。値札の安さは、そうした問いへの市場なりの答えだと私は読んでいます(当ブログの見方)。

物差しも効いてきます。チョイスの基金の赤字を費用とみなし、2025年の調整後EBITDAを先ほどの中央値561百万ドルとすると、EV/EBITDAは約11.5倍でウィンダムを上回ります。直近12か月の当ブログのFCFで見たFCF利回りも、ウィンダム5.3%、チョイス2.7%です(いずれも当ブログの試算)。「どちらが安いか」は、物差しで入れ替わりうるのです。

用語メモ:EV=時価総額+純有利子負債。PER=株価÷1株あたり利益。株主還元利回り=配当と自社株買いの合計÷時価総額。

次の決算では、RevPARと同じくらい「客室の伸びとその代償」を見たい

10-Kのリスク要因を見ると、ウィンダムは米国エコノミー帯の需要、OTA(オンライン旅行会社)や民泊サイトによる送客コスト、全ホテル数の12%(2024年12月期の10-K)を占めた中国のSuper 8のマスターライセンシー、オーナーへの前渡金・貸付の回収、敵対的買収などを挙げています。チョイスは、オーナー獲得のためのキーマネー・貸付・保証、オーナーの財務悪化と契約解除、基金の立替金の回収などです。

次の決算(10〜12月期)では、まず米国RevPARの悪化が10〜12月も続いたか、2026年の見通しをどう置くかを確かめたいところです。そのうえでウィンダムなら、客室純増が4.0〜4.6%に収まるかと、その代償であるキーマネー(2025年は約110百万ドルの見込み)、開発前渡金の残高(9月末370百万ドル)、約155百万ドルの大口与信の行方。チョイスなら、基金の赤字が60〜70百万ドルに収まり、回収の道筋が示されるか。減っているパイプラインをどう立て直すか。保有ホテルや合弁会社に出したお金が売却で戻るか。そして、落とした自社株買いのペースをどうするかです。

看板貸しは身軽。でも、景気の雨には濡れる

2社は、ホテルをほとんど持たず、客室売上の5%前後の看板代で稼ぐ身軽な会社です。それでも2025年の決算書は、看板貸しも景気の雨に濡れることを示しました。ウィンダムは規模と国際展開、高めの客室純増を持つ代わりに、借入とオーナーへの与信が重い。チョイスは米国の中価格帯に厚く料率も高い一方、成長の一部を買収と自らの貸借対照表で支え、基金の赤字を足し戻した利益を示しています。良し悪しではなく、こうした特徴を知ったうえで数字を読むことが大切です。

大家業を長く続けていると、空室の少ない年は、どの管理会社も優秀に見えるものだと感じます。差が出るのは、空室が増えたときに何を削り、何にお金を出し続けるか。会社の「調整後」をうのみにせず、キーマネーを払った後の現金と、物差しをそろえた利益で見比べる。3割安の値札を前にしたときこそ、そのひと手間が効いてくるはずです。

明日の第8回では、7社を横に並べて、成長力・稼ぐ力・キャッシュ・株主還元・財務の健全性を比べます。どうぞお楽しみに。

 

※本記事は公表資料をもとにした情報提供を目的としたもので、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。投資の判断はご自身の責任で行ってください。 ※数値は各社の決算資料(年次報告書・四半期報告書・決算発表資料)をもとに当ブログが集計・計算したもので、四捨五入の関係で合計が合わない場合があります。株価は2025年11月7日の終値、円換算は三菱UFJ銀行の2025年11月6日の仲値(1ドル154.04円)を使っています。

出典・参考

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  • Wyndham Hotels & Resorts Form 10-Q(2025年9月期)(Wyndham Hotels & Resorts、2025年10月)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1722684/000172268425000054/wh-20250930.htm
  • Wyndham Hotels & Resorts Form 10-K(2024年12月期)(Wyndham Hotels & Resorts、2025年2月)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1722684/000172268425000005/wh-20241231.htm
  • Wyndham Q4 and Full-Year 2024 results(Wyndham Hotels & Resorts、2025年2月12日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1722684/000172268425000003/exhibit99120241231.htm
  • Wyndham Q4 and Full-Year 2023 results(Wyndham Hotels & Resorts、2024年2月14日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1722684/000172268424000003/exhibit99120231231.htm
  • Wyndham Q4 and Full-Year 2022 results(Wyndham Hotels & Resorts、2023年2月15日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/0001722684/000172268423000002/exhibit99120221231.htm
  • Wyndham Q4 and Full-Year 2021 results(Wyndham Hotels & Resorts、2022年2月15日)https://investor.wyndhamhotels.com/financial-information/all-sec-filings/content/0001722684-22-000002/exhibit99120211231.htm
  • Wyndham Q4 and Full-Year 2020 results(Wyndham Hotels & Resorts、2021年2月10日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1722684/000172268421000004/exhibit99120201231.htm
  • Wyndham Q4 and Full-Year 2019 results(Wyndham Hotels & Resorts、2020年2月13日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1722684/000172268420000004/exhibit99120191231.htm
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  • Choice Hotels Q4 and Full-Year 2024 results(Choice Hotels International、2025年2月20日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1046311/000104631125000005/exhibit991earningspressrel.htm
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  • Choice Hotels International Form 10-K(2023年12月期)(Choice Hotels International、2024年2月)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1046311/000104631124000010/chh-20231231.htm
  • Choice Hotels International Reports 2022 Fourth Quarter and Full Year Results(Choice Hotels International、2023年2月15日)https://media.choicehotels.com/2023-02-15-Choice-Hotels-International-Reports-2022-Fourth-Quarter-and-Full-Year-Results
  • Choice Hotels International Reports 2021 Fourth Quarter And Full Year Results(Choice Hotels International、2022年2月16日)https://media.choicehotels.com/2022-02-16-Choice-Hotels-International-Reports-2021-Fourth-Quarter-And-Full-Year-Results?asPDF=1
  • Choice Hotels International Reports 2020 Fourth Quarter And Full Year Results(Choice Hotels International、2021年2月17日)https://media.choicehotels.com/2021-02-17-Choice-Hotels-International-Reports-2020-Fourth-Quarter-And-Full-Year-Results
  • Choice Hotels International Exceeds Top End Of Full-Year Guidance For EPS(Q4・通期2019年決算)(Choice Hotels International、2020年2月18日)https://media.choicehotels.com/2020-02-18-Choice-Hotels-International-Exceeds-Top-End-Of-Full-Year-Guidance-For-EPS-And-Expands-Domestic-Upscale-Room-Portfolio-By-Over-40
  • Choice Hotels Proposes to Acquire Wyndham Hotels & Resorts for $90.00 per Share(Choice Hotels International、2023年10月17日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1046311/000119312523257245/d512528dex992.htm
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  • Choice Hotels Form S-4(交換買付の目論見書)(Choice Hotels International、2023年12月12日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1046311/000119312523293048/d615790ds4.htm
  • Wyndham Schedule 14D-9(Wyndham Hotels & Resorts、2023年12月18日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1722684/000114036123058002/ny20016614x1_sc14d9.htm
  • Choice Hotels nominates eight director candidates to Wyndham board(Choice Hotels International、2024年1月22日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1046311/000119312524011642/d728772dex991.htm
  • Wyndham 14D-9 amendment Exhibit (a)(1)(O):CEOメモ(Wyndham Hotels & Resorts、2024年1月)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1722684/000114036124003126/ny20016614x15_exa1o.htm
  • Choice Hotels provides update on exchange offer(Choice Hotels International、2024年3月11日)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1046311/000119312524064327/d772647dex991.htm
  • Wyndham Comments on Expiration of Choice’s Unsolicited Exchange Offer and Withdrawal of Director Nominees(Wyndham Hotels & Resorts、2024年3月11日)https://investor.wyndhamhotels.com/news-events/press-releases/detail/314/wyndham-comments-on-expiration-of-choices-unsolicited
  • 他社(ヒルトン、アコーなど)の数値:各社の決算資料(第2回〜第6回の出典欄に個別に記載)
  • 株価:Yahoo Finance(WH・CHH・S&P500の日次履歴)https://finance.yahoo.com/quote/WH/history/ 、https://finance.yahoo.com/quote/CHH/history/ 、https://finance.yahoo.com/quote/%5EGSPC/history/
  • 年末の株価:digrin(WH・CHH)https://www.digrin.com/stocks/detail/WH/price 、https://www.digrin.com/stocks/detail/CHH/price
  • 年末のS&P500:StatMuse Money https://www.statmuse.com/money/ask/s-and-p-500-chart-by-year
  • 為替:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「外国為替相場情報 2025年11月6日」https://www.murc-kawasesouba.jp/fx/past/index.php?id=251106