東雲結子:8社読んだら、ホテル株が分かった気がします。あとは一番伸びた会社を買えば……。
税理士石井:そこで最初に戻らないでください。
東雲結子:すみません。では、毎回何を見れば迷わないですか?
税理士石井:七つに絞りましょう。ADR、稼働率、RevPAR、利益率、固定費、借入、出店の質です。
東雲結子:大家さんが家賃、空室、NOI、返済、修繕を見るのと似ています。
税理士石井:ホテルは一泊単位の賃貸業です。基本の構造は驚くほど似ています。
東雲結子:数字の名前が英語になっただけで、怖がる必要はない。
税理士石井:はい。ただし、M&Aとのれん、会員権の繰延べはホテル会社特有なので別枠で見ます。
ADRは「家賃」、稼働率は「入居率」
ADRが上がっても稼働率が大きく落ちれば、売上は増えません。反対に満室でも安売りでは利益が残りません。二つを掛けたRevPARが上がっているかを確認します。2025年の好決算企業は、ワシントンホテル、グリーンズ、ポラリス、共立メンテナンスのように、単価と稼働の両方を改善した会社が多くなりました。
営業利益率は、ホテルの種類をそろえて比べる
ABホテルの40%と帝国ホテルの1%台をそのまま順位付けせず、宿泊特化型同士、フルサービス型同士で比較します。さらに、のれん償却前後、全社費用配賦前後など、会社ごとに数字の定義が違う点も確認します。
増分利益率で「値上げが本当に儲けになったか」を見る
売上増加額に対する営業利益増加額を見ると、固定費を活用できたかが分かります。ワシントンホテルやABホテルでは増収分の半分以上が営業利益増へつながった一方、M&A直後のポラリスでは利益の伸びが売上に追いついていません。
一時的なイベント、改装終了、前年の低い利益なども影響するため、1期だけでなく2年から3年追うことが必要です。
固定費比率と人件費。ホテルは売上より先に人を見ます
フルサービスホテル、宴会、リゾートは人件費比率が高く、賃上げが利益を圧迫します。藤田観光では増収による限界利益が労務費増を上回りましたが、リゾート部門は増収減益でした。単価上昇率が人件費上昇率を上回っているかが重要です。
貸借対照表は「次のホテルを増やせるか」を示す
自己資本比率、現預金、借入金、建設仮勘定、差入保証金を確認します。帝国ホテルは利益率が低くても自己資本比率66.3%。ABホテルは49.8%。ワシントンホテルは32.8%まで改善しました。財務余力があれば、不況時にも改装や出店を続けられます。

出店数ではなく、契約形態と1室当たり投資額
自社所有は資産価値を持てますが、多額の資金が必要です。賃借は少ない初期資金で拡大できますが、売上が落ちても固定賃料が残ります。運営受託は資本負担が軽い一方、得られる利益は運営報酬中心です。
ポラリスのように複数形態を使う会社では、ホテル数の増加だけでなく、所有・賃借・運営受託の内訳を見ます。
調整後利益を使うときほど、法定利益へ戻る
リゾートトラストの評価利益、ポラリスののれん償却前利益は、事業実態を理解するために有用です。しかし、調整後数字だけを信じると、実際の会計利益や資金負担を軽く見てしまいます。
まず法定開示の営業利益とキャッシュフローを確認し、次に調整項目の理由を理解する。この順番なら、会社に都合のよい数字だけを見てしまう失敗を避けられます。
結論|2025年に最も良かった会社は一社ではない
利益効率ではABホテル、既存店の改善速度ではワシントンホテルとグリーンズ、安定性と事業分散では共立メンテナンスとリゾートトラスト、都市型インバウンド収益では藤田観光、規模拡大ではポラリス、長期資産とブランド投資では帝国ホテルが特徴的でした。
投資先を選ぶときは、自分が何を求めるかで評価が変わります。高成長、高利益率、財務安全性、配当、資産価値。全部を最高水準で持つ会社はほとんどありません。大家さんが物件ごとの役割を決めるように、株にも役割を持たせることが大切です。
主な参考資料































