東雲結子:帝国ホテルの売上は2.8%増。ほかの会社より地味ですね。
税理士石井:地味に見えますが、建設仮勘定が110億円あります。決算書の中で京都が開業を待っています。
東雲結子:まだ売上を生まない建物に、お金が先に出ている。
税理士石井:人件費も先に出ています。ホテルは建物が完成した日から、急に一流サービスが生えるわけではありません。
東雲結子:では今の利益だけで評価すると、準備費を損と見間違える?
税理士石井:そうです。ただし、開業後に十分稼げるかは別の検証が必要です。
東雲結子:将来投資と、単なる低収益を分けるんですね。
税理士石井:ええ。貸借対照表と開業計画を読まないと判断できません。
売上は増えたが、ホテル事業の利益は減った
帝国ホテルの中間期売上高は254億2,600万円で2.8%増、連結営業利益は3億1,900万円でした。前年の営業利益が7,200万円と低かったため、増益率は339.9%と大きく見えます。率だけを見れば急回復ですが、営業利益率は1.3%にとどまります。
ホテル事業単体では売上高252億2,700万円、営業利益15億2,300万円で、利益は6.6%減でした。インバウンドで売上は伸びたものの、帝国ホテル京都の開業準備に伴う人件費が先行しています。
利益率より先に、資産と準備費が膨らむ時期
貸借対照表には建設仮勘定110億3,400万円が計上されています。2026年3月5日開業予定の帝国ホテル京都など、まだ営業を始めていない資産への投資です。開業前の採用・訓練費も発生します。
不動産でいえば、新築アパートの建設中に利息と設計費が先に出て、家賃がまだ入らない状態です。この時点の利益率だけで「儲からない」と決めるのは早い。しかし、完成後の想定ADR、稼働率、運営費で投資回収できるかは、厳しく確認する必要があります。
強みは財務余力。自己資本比率66.3%
帝国ホテルの自己資本比率は66.3%で、今回比較した会社の中でも非常に高い水準です。現金・預金116億9,500万円、有価証券107億8,700万円を持ち、長期投資を進める体力があります。

高い自己資本は短期の利益率を直接上げませんが、大規模再開発や景気悪化に耐える力になります。ホテル本館の建替えや街区再開発は、数年単位ではなく十数年単位のプロジェクトです。短期決算と長期資産価値を分けて考える会社です。
成長が遅い理由は、ブランドを守る速度だから
宿泊特化型は、同じ設計と運営方式を複数都市へ展開できます。帝国ホテルは、立地、建築、料飲、人材、サービスを個別に作り込むため、1施設を増やす速度は遅くなります。
これは欠点でもあり、参入障壁でもあります。大量出店できない代わりに、京都祇園で高単価を取れる独自商品を作れるかが勝負です。成長店舗数ではなく、開業後の1室当たり収益とブランド全体への波及を見ます。
今後の確認点は、2026年以降に利益が戻るか
通期予想では売上高6.6%増に対し、営業利益は24.6%減の見込みです。京都開業費用を含むためですが、投資家が確認すべきなのは「先行費用だから仕方ない」で終わらず、開業後に利益率が回復するかです。
京都のADR、稼働率、開業後の固定費、既存ホテルとの送客、本館再開発の資金負担。これらが見え始めるまで、帝国ホテルは現在利益より将来の投資回収を読む会社です。
主な参考資料































