東雲結子:藤田観光は全事業が増収です。全員そろって絶好調ですね!
税理士石井:売上は全員増えましたが、利益の通知表はかなり違います。
東雲結子:同じホテル会社の中でも?
税理士石井:WHGは約79億円稼ぎ、リゾートは増収でも減益。ラグジュアリーと宴会は利益率が低いです。
東雲結子:売上が増えれば利益も増える、ではないんですね。
税理士石井:人を多く使う部門ほど、賃上げと採用費が重く効きます。
東雲結子:満室でも、人件費で利益が薄くなることがある。
税理士石井:そうです。部門別の損益を見ると、会社の本当の稼ぎ頭が分かります。
藤田観光全体は、売上8.2%増・営業利益14.6%増
2025年1月から9月の藤田観光は、売上高586億4,600万円、営業利益87億9,800万円でした。増収による限界利益の増加が、ベースアップ、賞与、新規採用による労務費増を上回り、営業固定費比率は63.1%から62.1%へ低下しました。
売上が増えたときに固定費の比率が下がるのは、ホテル業の強い局面です。建物と人員の多くは既に存在するため、追加の1泊が大きな追加費用を伴わなければ、その売上は利益へ厚く残ります。
稼ぎ頭はWHG。売上の61%で営業利益の90%
WHG事業の売上高は357億1,700万円、営業利益は79億3,200万円。全社売上高の約61%に対し、全社営業利益の約90%を稼いでいます。単純な事業営業利益率は約22%です。
稼働率を維持しながらADRを10%上げ、インバウンド比率は58.6%に達しました。ホテルグレイスリー新宿では外国人比率94.6%。海外セールスと立地の強さが、高単価を受け入れる需要へ直結しています。
ラグジュアリー&バンケットは、売上の大きさほど利益が残らない
ラグジュアリー&バンケット事業は売上高136億3,800万円、営業利益2億6,000万円で、利益率は約1.9%です。宴会の利用人員増で増収となった一方、ホテル椿山荘東京のようなフルサービス施設は、調理、宴会、婚礼、庭園、料飲など多くの人員と設備を必要とします。
ブランド価値や将来の単価維持には意味がありますが、短期の利益効率ではWHGに大きく劣ります。会社全体の価値を支える「看板」と、現金を稼ぐ「エンジン」は同じでないことがあります。

リゾートは増収減益。値上げを人件費が追い越した
リゾート事業は売上高83億5,100万円と増えましたが、営業利益は前年の7億5,600万円から6億4,100万円へ減少しました。天悠やホテル小涌園のADRと稼働率は上がったものの、賞与等の労務費増加が利益を押し下げています。
これは「値上げできなかった」のではなく、「値上げ以上にコストが増えた」ケースです。ホテル決算では、単価上昇率と人件費上昇率を並べる必要があります。

藤田観光の次の課題は、稼ぎ頭を太くしながら看板部門を改善すること
WHGだけに依存すれば利益効率は上がりますが、インバウンド、都市部、特定ブランドへの依存も高まります。ラグジュアリー、宴会、リゾートには景気分散やブランド形成の役割があります。
したがって経営課題は、利益の薄い部門を単に切ることではありません。価格改定、予約経路、宴会商品の高付加価値化、人員配置の最適化によって、看板部門の利益をどこまで引き上げられるかです。部門別利益を読むと、会社が次に手を入れる場所が見えてきます。
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