東雲結子:ホテルは満室にすれば勝ちですよね。空室ゼロ、気持ちいいです!

税理士石井:満室にするため半額で売ったら、気持ちよく赤字になることもあります。

東雲結子:では単価を上げれば?

税理士石井:上げすぎて空室だらけでも困ります。ADRと稼働率を掛けたRevPARで見ます。

東雲結子:家賃と入居率を一緒に見る、大家さんの実効賃料みたいですね。

税理士石井:まさにそれです。2025年は両方を上げた会社の利益が大きく伸びました。

東雲結子:値上げしてもお客様が離れなかった会社が強い。

税理士石井:はい。値上げではなく、価値に合った価格へ戻せた会社、と考えると分かりやすいです。

 

ADR、稼働率、RevPAR。三つを混ぜない

ADRはAverage Daily Rate、つまり平均客室単価です。稼働率は販売可能な客室のうち実際に売れた割合。RevPARはRevenue per Available Roomで、販売可能客室1室当たりの売上です。大まかにはADR×稼働率で求められます。

満室でも安売りすればADRは下がり、高単価でも部屋が売れなければ稼働率が下がります。RevPARは二つを同時に見るため、ホテルの「家賃金額稼働率」に近い指標です。

ワシントンホテルは、単価と稼働率が同時に動いた

ワシントンホテルの中間期は、稼働率が前年同期より5.1ポイント上昇して72.4%、ADRは12.3%上昇して8,516円、RevPARは20.7%増でした。売上高は19.0%増なのに対し、営業利益は132.9%増。改装を終えた4ホテルの販売再開、大阪・関西万博の特需、デジタル販売、公式会員56万人への拡大が重なりました。

この決算で重要なのは、単なる万博特需だけではありません。全館改装で販売できなかった部屋が戻り、商品力も上がり、単価も上昇しました。供給量、商品価値、販売力の三つが同じ方向へ動いたため、利益が跳ねています。

グリーンズは大規模リブランドを利益へ変えた

グリーンズは全体の稼働率81.4%、客室単価10,331円。主力のチョイスブランドでは稼働率82.2%、客室単価10,761円となりました。前期にコンフォートイン22店舗をリブランドし、新築・ブランド転換の効果が加わっています。第1四半期の売上高は13.0%増、営業利益は45.9%増でした。

既存店の単価上昇に加え、リブランドで客室商品を作り替えたことが効いています。ただ看板を掛け替えるだけでなく、予約網、ブランド認知、運営ノウハウを一体で変えたからこそ、増収が利益へつながりました。

藤田観光と共立メンテナンスは、高稼働のまま単価を上げた

藤田観光のWHG事業は、稼働率をおおむね維持しながらADRを前年比10%上昇させ、事業売上高357億円、営業利益79億円へ伸ばしました。インバウンド比率はグループ全体で56.3%、WHGでは58.6%に達しています。

共立メンテナンスのドーミーインは、第2四半期の稼働率が86.7%から89.1%へ上昇し、ADRも1万6,200円から1万6,600円へ上昇しました。RevPARは1万4,000円から1万4,800円へ増えています。高稼働だから単価を下げるのではなく、温泉、朝食、夜鳴きそばなどの体験価値が価格を支えています。

単価上昇の質を見分ける

単価が上がった理由が、円安と一時的なイベントだけなら、翌年に反動が出ます。反対に、改装、会員基盤、直販、ブランド力、商品差別化による単価上昇なら持続性が高まります。

決算を見る際は、ADRだけでなく、稼働率、RevPAR、直販比率、会員数、改装後の評価、外国人比率を並べてください。大家さんが家賃を上げた後の退去率を見るのと同じです。値上げに成功したかは、値段を変えた日ではなく、その後も選ばれたかで決まります。

主な参考資料