東雲結子:ABホテルの営業利益率、約40%です。ホテルは全部この形にすれば大儲けでは?

税理士石井:そう単純なら、帝国ホテルも明日から朝食会場と宴会場を閉めています。

東雲結子:あっ……売っているものが違うんですね。

税理士石井:ええ。ABホテルは「必要なものを高効率で」、帝国ホテルは「人と空間を厚く使って特別な体験を」です。

東雲結子:利益率だけならABホテル、ブランド価値なら帝国ホテル?

税理士石井:その整理も少し乱暴です。ブランド価値が将来の単価や不動産価値にどう返るかまで見ます。

東雲結子:決算書の利益が低いから、経営が弱いとは限らない。

税理士石井:はい。ただし、立派なブランドでも現金を生まなければ投資家には厳しい。両方を見ます。

 

40%の正体は、単価より「余計な固定費を持たないこと」

ABホテルの2025年4月から9月の売上高は60億3,300万円、営業利益は24億1,700万円で、営業利益率は40.1%でした。既存34店舗の平均稼働率は85.6%。稼働率を無理に満室へ近づけるのではなく、宿泊単価とのバランスを取るレベニューマネジメントを行い、さらに一部店舗で自社清掃を拡大してコストを削減しています。

宿泊特化型では、宴会場、大型レストラン、婚礼部門などの固定費が少なく、客室販売の増加が利益へつながりやすくなります。設備とサービスを標準化し、少人数で運営できることも強みです。大家業でいえば、共用施設を豪華にせず、入居者が本当に必要とする設備へ集中した高稼働物件に近いでしょう。

帝国ホテルの連結利益率1.3%は、ホテル現場だけの利益ではない

帝国ホテルの中間期は売上高254億2,600万円、営業利益3億1,900万円で、連結営業利益率は1.3%です。しかし、ホテル事業だけを見ると売上高252億2,700万円、営業利益15億2,300万円で、事業利益率は約6.0%あります。連結では本社費用などの全社費用が加わるため、見かけの利益率がさらに低くなっています。

さらに2026年3月開業予定の帝国ホテル京都に向けた人件費が先行しています。今の売上を生まない人員を先に採用し、サービス品質を作り込むフルサービスホテルでは、開業前に利益が落ちるのは構造的です。

同じ客室単価でも、サービス原価が違う

宿泊特化型は、客室清掃、フロント、朝食などに業務を絞れます。フルサービス型は、レストラン、宴会、婚礼、調理、ベル、コンシェルジュ、設備管理など多くの専門人材が必要です。高い単価を取れても、その価値を提供するための人件費が大きくなります。

したがって、ABホテルと帝国ホテルを営業利益率だけで順位付けするのは、ワンルームマンションと高級旅館を「1室当たりの管理費」だけで比較するようなものです。重要なのは、各モデルの中で利益率が改善しているか、投下資本に対して十分な利益を出せるかです。

高利益率にも弱点がある

ABホテルの利益率は非常に高い一方、規模は37ホテル・4,804室で、大手に比べるとまだ小さい会社です。特定地域やビジネス需要への依存、出店用地の確保、建築費上昇が成長制約になります。また、サービスを削りすぎれば競合との差が薄くなり、価格競争に入りやすくなります。

帝国ホテルは利益率が低くても、自己資本比率66.3%と財務余力が厚く、大規模な再開発や京都への新規投資を長期で進められます。利益率は「今の効率」、貸借対照表は「次の一手を打てる体力」です。両方を合わせて評価する必要があります。

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