2025年の日本のホテル市場には強い追い風が吹いています。日本政府観光局によれば、2025年10月の訪日外客数は389万6,300人で前年同月比17.6%増、1月から10月の累計は3,554万7,200人で17.7%増でした。ところが、同じ需要環境にいるホテル会社でも、営業利益率は1%台から40%台まで大きく開いています。

この差は、単に「人気があるホテル」と「人気がないホテル」の差ではありません。宿泊特化型かフルサービス型か、建物を所有するのか借りるのか、会員権や寮などの定期収入があるのか、改装・新規開業・買収の途中なのか。売っている商品と固定費構造が違えば、同じ1万円の売上でも手元に残る利益はまるで違います。

比較表の営業利益率は、各社の最新公表期の売上高と営業利益から当方で計算したものです。四半期の長さと季節性が異なるため、「会社の優劣」ではなく「利益が生まれる仕組み」の比較に使ってください。

会社 最新公表期 売上伸び率 営業利益伸び率 営業利益率 主な成長要因
共立メンテナンス 2025/4-9 +7.4% +6.1% 9.4% ドーミーインの単価・稼働、寮の高稼働
藤田観光 2025/1-9 +8.2% +14.6% 15.0% WHGのADR上昇、インバウンド
リゾートトラスト 2025/4-9 +3.0% +8.6% 11.2% 会員権、年会費・室料・飲食の改定
帝国ホテル 2025/4-9 +2.8% +339.9% 1.3% 低い前年利益から回復、京都開業準備
ワシントンホテル 2025/4-9 +19.0% +132.9% 16.6% 全館改装、万博、ADRと稼働率の同時上昇
グリーンズ 2025/7-9 +13.0% +45.9% 17.5% リブランド・新店、単価と稼働率
ABホテル 2025/4-9 +16.3% +25.3% 40.1% 宿泊特化、価格最適化、自社清掃
ポラリスHD 2025/4-9 +122.7% +55.8% 8.4% ミナシア買収、新規開業、RevPAR上昇

最も目立つのはABホテルの営業利益率40.1%です。ただし、帝国ホテルの1.3%と並べて「ABホテルが40倍優秀」と考えるのは早計です。ABホテルは宿泊特化型で、サービスと設備を標準化しやすい一方、帝国ホテルはレストラン、宴会、婚礼、迎賓機能まで抱えるフルサービス型です。利益率の差は経営力だけでなく、提供する価値とコスト構造の差でもあります。

一方、成長率だけを見るとポラリスが突出しますが、これはミナシア買収によって会社の大きさ自体が変わった影響が大きい数字です。売上が2倍になっても、のれん償却や統合費用を含む利益の伸びはそれより小さくなります。ここに「良い成長か、買ってきた成長か」を分ける必要があります。

主な参考資料