東雲結子:入居者満足を上げるために、朝食、清掃、タオル交換、宅配受取まで付けたいです。
税理士石井:それは、アパートではなくホテルへ近づいています。
東雲結子:満足度が高いなら良いことでは?
税理士石井:もちろん良いのですが、誰が毎日働き、いくらで回収するかが必要です。
東雲結子:あっ、サービスは設備と違って、毎月コストが続くんですね。
税理士石井:ええ。しかも止めると不満が出やすい。始める前に継続費用まで見ます。
東雲結子:では、ホテル会社はどう選んでいるんでしょう。
税理士石井:顧客層と価格へ効くサービスだけを残し、運営しやすい仕様へ改善しています。
ホテルはサービス業です。厚生労働省も、旅館業を「究極の人によるサービス業」と説明しています。賃貸業は、基本的には部屋を長期で貸す資産事業です。大家さんがホテルの付加価値を学ぶことは有益ですが、サービスを増やしすぎると、人件費と継続コストで賃貸の利益率が失われます。重要なのは、満足度の高そうなものを何でも付けることではなく、家賃、入居速度、退去率のどれを改善するかを決めることです。
ドーミーインは、無料サービスで「また泊まりたい」を作る
共立メンテナンスは、温泉大浴場、地元食材の朝食、夜鳴きそばなどを差別化要素にしています。これらは単独で料金を請求しなくても、宿泊単価、再訪、口コミへ効きます。
一般賃貸へ置き換えるなら、無料インターネット、宅配ボックス、防犯、家具付き、見守りなどです。導入前に「家賃をいくら上げるか」だけでなく、「空室を何日短くするか」「退去を何件減らすか」を決めます。
アパは、サービスより「運営しやすい仕様」も磨く
アパホテル〈渋谷道玄坂上〉の改良例には、椅子の生地を布からビニルレザーへ変え、汚れを拭き取りやすくするものがあります。派手ではありませんが、清掃時間と交換頻度を下げる可能性があります。
大家業でも、見栄えだけでなく、清掃性、交換のしやすさ、部品の共通化を重視します。賃料が同じでも、10年の維持費が低い設備は利益を増やします。
三井ガーデンホテル札幌は、顧客構成に合わせて客室タイプを変える
三井不動産は、三井ガーデンホテル札幌の2026年リニューアルで、3~4名利用可能な客室を20室から140室へ大幅に増やすと発表しました。インバウンドや家族・グループ需要へ客室構成を合わせる投資です。
賃貸住宅も同じです。単身者が減り、外国人家族や法人社宅が増える地域なら、間取りや家具を変える。流行の設備を入れるのではなく、実際の顧客構成が変わったときに部屋の商品設計を変えます。
毎月続くサービスは、設備投資より慎重に
20戸の物件で、入居者向けサービスの費用が1戸月2,500円なら、年間60万円です。家賃を1戸月3,500円上げられれば年間84万円、差額24万円。これだけでは、管理の手間や故障対応まで十分とは限りません。
設備は一度払えば数年使えることがありますが、サービスは人件費とともに毎月増えます。入居者が増えても利益が増えない構造になっていないか、規模別に計算します。
ホテル化する部屋と、静かな賃貸を分ける
全棟をサービス付きにする必要はありません。駅前の家具付き法人向け、病院近くの高齢者対応、観光地の宿泊型など、需要がある一部だけを運営型へ寄せます。
残りは、長期入居、低い運営費、標準化を優先する。ホテルのように付加価値を作る物件と、賃貸の強みである静かな収益を守る物件を分けることで、経営全体が安定します。
| 施策 | 改善したい数字 | 継続コスト |
| 無料インターネット | 家賃・空室期間 | 通信費・保守 |
| 家具家電 | 家賃・法人需要 | 故障・交換・清掃 |
| 見守り | 高齢者受入れ・退去防止 | 月額サービス費 |
| 宅配ボックス | 競争力・満足度 | 保守・故障・長期滞留対応 |
| 定期清掃サービス | 満足度・高単価 | 人件費・日程管理 |
参考資料































