東雲結子:ドーミーインの会社は、学生寮も運営しているんですね。少し意外です。
税理士石井:共立メンテナンスは、むしろ寮事業から始まり、その運営ノウハウをホテルへ広げました。
東雲結子:寮とホテルでは、住む期間がずいぶん違いますよね。
税理士石井:だからこそ、安定収入と成長収入を同じ会社で持てます。
東雲結子:寮は賃貸寄り、ホテルは宿泊寄り。
税理士石井:ええ。寮は年間契約や法人・学校との関係が安定を作り、ホテルは単価上昇と観光需要を取り込みます。
東雲結子:片方だけより、景気の波をならしやすいんですね。
税理士石井:そのうえ、食事や見守りなど共通の運営力を両方へ使える。ここが大きな相乗効果です。
大手ホテル企業と賃貸業の違いを考えるうえで、共立メンテナンスは非常に興味深い会社です。2025年3月期時点で、寮事業は526棟・4万4,908室、ホテル事業は138棟・約2万2,000室。学生寮・社員寮という長期滞在型の事業と、ドーミーイン・共立リゾートという短期宿泊型の事業を同じ企業が運営しています。賃貸の安定性とホテルの成長性を、同じ会社の中で比較できるからです。
寮事業は「入居者」だけでなく、学校と企業を顧客にする
一般のアパートは、入居者一人ひとりを募集します。共立メンテナンスの寮事業では、学校法人や企業との関係が需要の入口になります。2025年3月末時点で、寮事業は全国526棟・4万4,908室。国際交流寮も全国275棟で、約5,900名の留学生が入居していました。
法人・学校との関係が続けば、毎年まとまった需要が入ります。大家さんが法人社宅、大学、病院、工場と関係を作ることが、一般募集だけに依存しない経営につながるのと同じです。
ホテル事業は、需要が強いと単価を一気に上げられる
寮の料金は年度途中で大きく変えにくい一方、ホテルは需要に応じて毎日価格を変えられます。インバウンド、イベント、休日需要が強いと、ADRとRevPARを大きく伸ばせます。
共立メンテナンスのホテル事業は、ドーミーイン、御宿 野乃、ラビスタ、共立リゾートなど、需要層ごとにブランドを分けています。寮事業が安定収入を支え、ホテル事業が成長を取る構造は、大家さんが普通賃貸を基盤に、家具付き社宅や宿泊事業を一部だけ加える考え方に近いでしょう。
「夜鳴きそば」は無料でも、経営的には無料ではない
ドーミーインの夜鳴きそば、大浴場、朝食は、直接料金を取らないサービスも含まれます。しかし、その費用は宿泊単価、再訪率、ブランド力へ回収されます。
大家業でも、無料インターネット、宅配ボックス、見守り、家具家電は「無料サービス」ではありません。家賃上乗せ、空室短縮、退去減少のどこで回収するかを決める必要があります。サービスを付けることより、何の数字を改善するサービスなのかが重要です。
寮の「生活支援」は、高齢者・外国人賃貸へ応用できる
寮長・寮母、食事、RA(レジデント・アシスタント)、国際交流支援は、単に部屋を貸す以上の価値です。これは、高齢者住宅の見守り、外国人入居者への生活案内、社員寮の運営へ応用できます。
ただし、一般賃貸へ全部載せればコスト過多になります。入居者が必要とする支援だけを切り出し、管理会社、居住支援法人、外部サービスと連携する。共立のモデルを、小さく分解して取り入れる発想が現実的です。
同じ建物でも「部屋」ではなく「暮らし」を売ると単価が変わる
寮は家具と食事、ホテルは温泉と朝食、リゾートは景観と体験を提供します。同じ面積の部屋でも、顧客が買っている価値は違います。
一般賃貸の大家さんも、「20㎡のワンルーム」ではなく、駅近の新社会人向け、外国人社員が来日当日から住める部屋、高齢者が安心して暮らせる部屋、という商品へ変えることができます。大手ホテル企業から学ぶべき最も大きな点は、建物のスペックより、顧客の利用場面から商品を作ることです。
| 比較 | 寮事業 | ホテル事業 |
| 契約期間 | 年度・月単位の長期 | 1泊単位の短期 |
| 主な顧客 | 学生・社員・学校・企業 | 個人・法人・旅行者 |
| 価格変更 | 遅い | 速い |
| 売上安定性 | 比較的高い | 需要変動が大きい |
| 共通資源 | 食事・見守り・運営人材・施設管理 | 食事・接客・清掃・予約・施設管理 |
参考資料(掲載前の確認用)































