東雲結子:1泊のホテルと2年契約の賃貸。その間にいるお客さんも多そうですね。

税理士石井:出張、研修、治療、引っ越し、来日直後など、1週間から数か月住みたい人がいます。

東雲結子:マンスリーマンションのような需要ですか。

税理士石井:そうですね。ホテルのサービスと、住まいの設備を組み合わせた市場です。

東雲結子:東急ステイの洗濯乾燥機も、そのためなんですね。

税理士石井:ええ。マリオットにもResidence InnやMarriott Executive Apartmentsなどの長期滞在ブランドがあります。

東雲結子:普通賃貸より高く、ホテルより手間が少ないなら理想的です。

税理士石井:そこは慎重に。契約形態、清掃頻度、光熱費、許可の境界を整理しないと、どちらの長所も失います。

 

ホテルと賃貸の間には、中長期滞在という市場があります。東急ステイは客室内の洗濯乾燥機を強みに、中長期滞在プランを提供しています。マリオットもResidence Inn、TownePlace Suites、Marriott Executive Apartmentsなど、住まいに近い設備を持つブランドを展開しています。大家さんにとっては、普通賃貸より高い単価を狙いながら、毎日清掃するホテルより運営を軽くできる可能性があります。ただし、実態が宿泊業なのか賃貸業なのかは、名称ではなく運営形態で判断されます。

中長期客が買うのは「広さ」より生活機能

1週間以上滞在する顧客にとって、毎日の豪華な清掃より、洗濯機、キッチン、冷蔵庫、収納、仕事机が重要になることがあります。東急ステイは客室内洗濯乾燥機を前面に出し、マリオットの長期滞在ブランドも生活機能を備えます。

賃貸住宅の大家さんは、すでに生活機能のある部屋を持っています。家具、寝具、Wi-Fi、短期の契約・清掃体制を追加できれば、中長期需要へ近づけます。

高い月額でも、費用を引くと普通賃貸との差は小さい

説明用に、普通賃貸を月12万円・稼働率95%・運営費月1万5,000円とすると、期待月収は約9万9,000円です。

中長期滞在を月18万円・稼働率80%、利用中の光熱・清掃等3万5,000円、固定費1万円とすると、期待月収は約10万6,000円。表面上は6万円高くても、差は月7,000円です。

家具の故障、空室変動、予約・契約の手間まで考えると、立地によっては普通賃貸のほうが強いこともあります。

宿泊業と賃貸業は、日数だけで自動的に分かれない

厚生労働省は、旅館業を「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」とし、生活の本拠を置くアパート等の貸室業は旅館業に含まれないと説明しています。判断では、施設の衛生管理責任が営業者側にあるか、利用者がその部屋を生活の本拠としているかなど、実態が重要です。

1か月契約と書けば必ず賃貸、長期なら許可不要、という単純な話ではありません。地域の保健所、建築・消防、賃貸借契約の専門家へ、開始前に確認する必要があります。

中長期需要は「需要の発生源」から探す

観光客だけを狙う必要はありません。大規模工事、企業研修、大学、病院、スポーツ大会、外国人社員、住宅の建替え、災害復旧など、一定期間だけ住居が必要な人がいます。

ホテル予約サイトで広く売るより、企業や病院、保険会社、リロケーション会社と関係を作るほうが、長期予約を取りやすい場合があります。

ハイブリッドは、中途半端ではなく専門商品として作る

普通賃貸の部屋へ家具を置いただけでは、ホテル並みの価格は取りにくい。一方、毎日清掃や24時間対応を付ければ、運営費がホテル化します。

対象顧客、最低契約期間、清掃頻度、光熱費上限、退去精算、鍵の受渡し、緊急対応を一つの商品として設計する。ホテルと賃貸の中間だからこそ、曖昧にせず運営ルールを細かくする必要があります。

説明用の月次比較 普通賃貸 中長期滞在型
表示単価 12万円 18万円
稼働率 95% 80%
変動・固定費 1.5万円 利用中3.5万円+固定1万円
期待月収 約9.9万円 約10.6万円
主な強み 安定・低運営費 高単価・法人需要
主な弱み 単価上限 空室変動・家具・運営

 

参考資料(掲載前の確認用)

東急ステイ 公式サイト(中長期滞在・客室内洗濯乾燥機)

Marriott International 2023 Annual Report(Extended Stay Brands)

厚生労働省 旅館業法の概要

厚生労働省 民泊サービスと旅館業法Q&A