東雲結子:先生、確定申告の相談会の準備ができました! 受付には「外国株の配当の二重課税、すっきり解決します」と札を立てておきました。

税理士石井:ありがとうございます。ただ、「すっきり」は少し言いすぎかもしれませんね。外国株の配当は、まず外国で、次に日本で、税金が二回源泉徴収されるんです。

東雲結子:二回もですか。たとえば韓国の株の配当が100だったら、手元にはいくら残るんですか?

税理士石井:条約の上限どおり韓国で15%が引かれたとして、残りの85に日本で20.315%。何も手続きをしなければ、手取りは67.73です。

東雲結子:えっ、3分の1近くが消えました。配当金って、関所を二つ越えるたびに通行料を払わされる旅人だったんですね……。

税理士石井:ははは、うまい例えです。確定申告で外国税額控除を使えば、一つ目の関所で払った分を、二つ目の通行料から差し引いてもらえる場合があります。ただし、NISA口座ではこれが使えません。

東雲結子:わかりました。じゃあ税金の前に、まず株選びです。PERはSKハイニックスが14.7倍、南亜科技が153.3倍。南亜科技は10倍も高い株なんですね!

税理士石井:おっと、そこが落とし穴なんです。153.3倍は、前半に赤字があった2025年1年分の利益で計算した数字。10〜12月の利益を4倍して計算し直すと、22.8倍まで下がります。

東雲結子:物差しを替えただけで6分の1以下に! ダイエット広告の「ビフォー・アフター」より劇的です(汗)。

税理士石井:ふふ、広告と同じで、アフターの姿がずっと続くとは限りません。大家業でも、空室だらけだった去年の家賃で利回りを計算しても、満室になった月の家賃を12倍しても、物件の本当の力は見えませんよね。今日は7社の物差しをそろえて比べ、最後に配当と売却益の税金を整理しましょう。

この連載では、海外の主なメモリーメーカーの決算書を1社ずつ読んでいます。最終回の第9回は、韓国のサムスン電子とSKハイニックス、米国のマイクロン・テクノロジー(以下マイクロン)とサンディスク、台湾の南亜科技(ナンヤ・テクノロジー)、華邦電子(ウィンボンド)、旺宏電子(マクロニクス)の上場7社を横に並べ、メモリー銘柄を比較します。

並べるのは、営業利益率と最長5年の利益の振れ幅、設備投資と現金、株主還元、そして2026年1月30日の終値で計算したPER(株価収益率)・PBR(株価純資産倍率)と株価の動きです。数字は各社が2026年1月31日までに公表したもので、後半では比べた数字を株式投資の銘柄選びにどうつなげるかも、アナリストの目線で整理します。

最後は税理士として、日本に住む個人が日本の証券会社で外国株を持つときの、配当と売却益の税金を2026年1月31日時点の法令で整理します。外国と日本の二重の源泉徴収、外国税額控除、NISA(少額投資非課税制度)での扱いが中心です。令和8年度税制改正大綱は、まだ法律ではないので方向性として紹介します。

この記事の要点 根拠となる数字
決算期も会計基準もそろわない7社で、最新通期の営業利益率は大きく開いている SKハイニックス48.6%(2025年12月期)〜サンディスク−18.7%(2025年6月期、のれんの減損を含む)
メモリー株は利益の振れが大きく、2023年度は7社中6社が営業赤字だった 年次の営業利益率の振れ幅は中央値37.0ポイント、南亜科技は80.1ポイント
外国株の配当は外国と日本で二度源泉徴収され、外国税額控除は確定申告をしたときだけ使える 配当100の手取り(申告不要)は米国71.72、韓国67.73(条約の15%の場合)、台湾71.72(取決めの10%の場合)
銘柄選びの目線:実績PERはサイクルの転換点で逆に見える。株価は次の利益を先取りしている 2025年の株価+99.2%〜+559.8%、南亜科技の実績PER153.3倍は直近四半期×4で22.8倍、マイクロンの39.4倍はガイダンス×4で12.7倍

メモリー銘柄を比較する前に、決算期・会計基準・通貨のずれを確かめる

7社を同じ表に並べる前に、物差しのずれを確かめておきます。決算期、会計基準、そして2026年1月31日の時点で手に入る最新の数字が、会社ごとに違うからです。

会社(市場・通貨) 会計基準 比較に使う最新通期 カットオフ時点の最新四半期
サムスン電子(KRX・ウォン) K-IFRS 2025年12月期(2025年1〜12月、監査前) 2025年10〜12月
SKハイニックス(KRX・ウォン) K-IFRS 2025年12月期(2025年1〜12月、監査前) 2025年10〜12月
マイクロン(ナスダック・ドル) US GAAP 2025年8月期(2024年8月30日〜2025年8月28日) 2025年8月29日〜11月27日
サンディスク(ナスダック・ドル) US GAAP 2025年6月期(2024年6月29日〜2025年6月27日) 2025年10月4日〜2026年1月2日
南亜科技(TWSE・台湾ドル) TIFRS 2025年12月期(2025年1〜12月、監査前) 2025年10〜12月
華邦電子(TWSE・台湾ドル) TIFRS 2024年12月期(2024年1〜12月) 2025年7〜9月
旺宏電子(TWSE・台湾ドル) TIFRS 2025年12月期(2025年1〜12月、監査前) 2025年10〜12月

※KRX=韓国取引所、TWSE=台湾証券取引所。監査前=決算発表の時点の数字で、南亜科技と旺宏電子は会社が自ら集計した数字です。監査済みの財務諸表は、2026年1月31日の時点ではまだ公表されていません。華邦電子の2025年10〜12月期と2025年12月期の決算も、この時点では公表されていません。

決算期は、韓国の2社と台湾の3社が12月期です。マイクロンは8月31日に最も近い木曜日、サンディスクは6月30日に最も近い金曜日で1年を締めます。そのため、マイクロンの2025年8月期は2024年8月30日〜2025年8月28日、サンディスクの2025年6月期は2024年6月29日〜2025年6月27日です。

華邦電子は、2025年の通期決算がカットオフ(この連載の情報の締め切り、2026年1月31日)までに出ていないため、最新の通期は2024年12月期になります。2025年12月期を使う4社とは、比べる1年がちょうど1年ずれます。

会計基準も3種類です。韓国の2社はK-IFRS、米国の2社はUS GAAP、台湾の3社はTIFRSで、営業利益の中身が少しずつ違います。US GAAPの営業利益には減損やリストラの費用も入り、サンディスクの2025年6月期の営業赤字は、のれんの減損18.3億ドルを含んだ数字です。

サンディスクは2025年2月21日にウエスタンデジタル(WD)から分離した会社で、それより前の期間は、WDの一部門を切り出して作った「カーブアウト財務」です。マイクロンとサンディスクは会社独自の調整後の数字(non-GAAP)も出していますが、この記事の比較はGAAPでそろえ、non-GAAPを使うときは名前を付けて分けます。

金額は各社の報告通貨のままにしました。円に直すのは見出しになる数字だけで、2026年1月30日の三菱UFJ銀行の公示仲値(TTM)で当ブログが換算しています。1ドル153.66円、100ウォン10.72円、1台湾ドル4.88円です(台湾ドルは、同行のドルの仲値を、台湾銀行のドルの直物の買値と売値の中間(31.465台湾ドル)で割って計算)。

用語メモ:K-IFRS=韓国が採用する国際会計基準(IFRS)。TIFRS=台湾が採用するIFRS。US GAAP=米国の会計基準。non-GAAP=会社が一時的な費用などを除いて示す独自の数字。のれん=会社や事業を買ったときに、純資産を上回って払った分。減損=資産の価値が下がったときに帳簿の金額を下げ、その分を損失にする処理。TTM(仲値)=銀行が外貨を売る相場(TTS)と買う相場(TTB)の真ん中の相場。

最新通期の営業利益率は48.6%から−18.7%まで開き、直近の四半期は7社とも通期を上回った

まず、稼ぐ力です。最新通期の営業利益率を高い順に並べ、最新四半期の営業利益率、ROE(自己資本利益率)、研究開発費の重さを添えます。

会社(最新通期) 売上(現地通貨) 営業利益率 最新四半期の営業利益率 ROE 研究開発費÷売上
SKハイニックス(2025年12月期) 97.1兆ウォン 48.6% 58.4% 44.1% 7.2%※
マイクロン(2025年8月期) 373.8億ドル 26.1% 45.0% 17.2% 10.2%
サムスン電子(2025年12月期) 333.6兆ウォン 13.1% 21.4% 10.8% 11.3%
南亜科技(2025年12月期) 665.9億台湾ドル 7.9% 39.1% 3.9% 10.6%
華邦電子(2024年12月期) 816.1億台湾ドル 0.6% 17.0% 0.7% 20.1%※
旺宏電子(2025年12月期) 288.8億台湾ドル −12.8% −5.1% −7.4% 19.9%※
サンディスク(2025年6月期) 73.6億ドル −18.7% 35.2% −16.2% 15.4%
中央値(7社) — 7.9% — 3.9% 11.3%

※最新四半期の期間は前の表のとおり。ROE=純利益÷期首と期末の平均の資本(当ブログの計算。サムスン電子とSKハイニックスは非支配持分を含む純利益と資本合計、南亜科技は2025年末の資本が推定値、旺宏電子は純損失の合計で計算した近似値)。研究開発費÷売上は、SKハイニックスと旺宏電子が2025年1〜9月の値、華邦電子は集計サイトの値(二次資料)。

首位はSKハイニックスです。2025年の売上は97.1兆ウォン(約10.4兆円)、営業利益は47.2兆ウォン(約5.1兆円)で、営業利益率は48.6%に達しました(円は2026年1月30日の為替レート100ウォン10.72円で当ブログが換算)。ROEも44.1%です。会社は、2025年のHBMの売上が前年の2倍を超えたと説明しています。

マイクロンの26.1%は、2025年8月までの1年の数字です。期間を直近4四半期(2024年11月29日〜2025年11月27日)にずらすと32.5%、最新の2025年8月29日〜11月27日の四半期は45.0%まで上がりました。測る期間をずらすだけで、同じ会社の利益率がこれだけ変わるのです。

サムスン電子の13.1%は、スマートフォンや家電(DX部門)、ディスプレイ(SDC)、子会社のHarmanまで入った会社全体の数字です。メモリーは半導体部門(DS)の一部で、メモリーだけの営業利益は開示されていません。DS部門の営業利益率は2025年で19.1%、10〜12月期にはDSが全社の営業利益の81.6%を占めました。

台湾の3社は、ここ1年で姿が大きく変わりました。南亜科技は2025年の前半が営業赤字でしたが、10〜12月期は営業利益率39.1%。華邦電子の通期の0.6%は2024年の数字で、2025年7〜9月期は17.0%でした。旺宏電子は10〜12月期も−5.1%で、赤字の幅を縮めている途中です。

サンディスクの−18.7%には、先に触れたのれんの減損が入っています。一方で、最新の2025年10月4日〜2026年1月2日の四半期は35.2%で、データセンター向けの売上は前の四半期より64%増えたと会社は説明しています。

並べてみると、7社とも、最新四半期の営業利益率が最新通期を上回っていました。旺宏電子を除く6社では、当ブログが集めた範囲で最も高い四半期です。大家業でいえば、年間の家賃収入より直近の月の家賃のほうがずっと高い状態。相場が上がっている最中に去年1年の帳簿だけで物件を比べると、今の姿を見誤ります。

用語メモ:DRAM=電源を切るとデータが消える半導体メモリーで、PC・スマホ・サーバーの作業用の記憶に使う。NAND(NAND型フラッシュ)=電源を切ってもデータが残るフラッシュメモリーで、NOR型より大容量にしやすく、SSD(記憶装置)やスマホのストレージに使う。NOR(NOR型フラッシュ)=フラッシュメモリーのもう一つの方式。HBM(広帯域メモリー)=DRAMを縦に積み重ねてGPU(画像処理半導体)などの横に置く、AI向けの高速なメモリー。ROE=純利益÷自己資本。

利益の振れ幅は中央値で37.0ポイント、2023年度は7社中6社が営業赤字だった

メモリー株を比べるとき、私がいちばん大事だと思うのが利益の振れです。年次の営業利益率の最高と最低、そして四半期の最低を並べます。

会社 年次の営業利益率の最高(年度) 最低(年度) 振れ幅 四半期の最低(期間)
南亜科技 31.8%(2021年) −48.4%(2023年) 80.1ポイント −46.5%(2023年10〜12月)
SKハイニックス 48.6%(2025年) −23.6%(2023年) 72.2ポイント −66.9%(2023年1〜3月)
マイクロン 31.5%(2022年9月期) −37.0%(2023年8月期) 68.5ポイント 3.3%(2023年12月〜2024年2月)※
旺宏電子 21.9%(2021年) −15.2%(2024年) 37.0ポイント −29.6%(2024年10〜12月)
サンディスク −7.0%(2024年6月期) −33.4%(2023年6月期) 26.4ポイント −111.0%(2024年12月28日〜2025年3月28日)※
華邦電子 18.5%(2021年) −2.2%(2023年) 20.7ポイント −6.2%(2025年4〜6月)
サムスン電子 18.5%(2021年) 2.5%(2023年) 15.9ポイント 6.3%(2025年4〜6月)※
中央値(7社) — — 37.0ポイント —

※年次は2021〜2025年度(サンディスクは2023〜2025年6月期の3年、華邦電子は2021〜2024年12月期の4年)。マイクロンの2022年9月期は2021年9月3日〜2022年9月1日、2023年8月期は2022年9月2日〜2023年8月31日。サンディスクの2023年6月期は2022年7月2日〜2023年6月30日で、カーブアウト財務です。四半期は当ブログが集めた範囲の値で、※印の3社は2023年の底の四半期を含みません。サンディスクの最低は、のれんの減損を含む値です。

振れ幅が最も大きいのは南亜科技で、2021年の31.8%から2023年の−48.4%へ、80.1ポイント動きました。SKハイニックスは72.2ポイント、マイクロンは68.5ポイント。7社の中央値でも37.0ポイントあります。

四半期で見ると、振れはさらに激しくなります。SKハイニックスの営業利益率は、2023年1〜3月期の−66.9%から2025年10〜12月期の58.4%へ。3年足らずで125.3ポイントの差です(当ブログの計算)。

2023年度(各社の決算期)は、7社のうち6社が営業赤字でした。黒字だったサムスン電子も、半導体部門(DS)だけを見ると14.9兆ウォンの営業赤字です。それでも全社で6.6兆ウォンの黒字を保てたのは、DX部門が14.4兆ウォン、SDCが5.6兆ウォンを稼いでいたからだと読めます(当ブログの見方)。

業界全体の数字も、同じ波を描いています。WSTS(世界半導体市場統計)によると、メモリーの世界市場は2023年に28.9%減の923億ドルまで落ち、2024年は79.3%増の1,655億ドルへ戻りました。2025年は27.8%増の2,116億ドル、2026年は39.4%増の2,948億ドルという予測です(2025年12月2日公表の秋季予測)。

大家業でいえば、家賃相場が1年で3割下がり、翌年に8割上がるような市場です。ローンや固定資産税は空室でも減らないので、相場が下がった年は一気に赤字、戻った年は一気に大きな黒字になります。メモリーの決算の振れ方はそれによく似ていて、今の利益率が波のどこにあるかを必ず確かめたいところです(当ブログの見方)。

設備投資は売上の2.8%から42.4%まで。現金の厚さも7社でまったく違う

次は、お金の出入りです。メモリーは工場への投資が大きい事業で、利益が出ても、その多くが次の設備に回ります。最新通期の設備投資の重さとFCF(フリー・キャッシュ・フロー)、財務の厚さを並べます。

会社(最新通期) 設備投資÷売上 FCFマージン 自己資本比率 ネットキャッシュ(最新の期末)
マイクロン(2025年8月期) 42.4% 4.5% 65.4% 2.6億ドル(2025年11月27日)
SKハイニックス(2025年12月期) 28.3% 26.8% 68.5% 12.7兆ウォン(2025年12月末)
華邦電子(2024年12月期) 20.9% −7.3% 51.6% −320.7億台湾ドル(2025年9月末)
南亜科技(2025年12月期) 20.2% 7.2% 77.7% 385.0億台湾ドル(2025年12月末)
サムスン電子(2025年12月期) 14.2% 11.3% 77.0% 100.6兆ウォン(2025年12月末)
旺宏電子(2025年12月期) 6.4% 10.3% 58.4% −93.2億台湾ドル(2025年12月末)
サンディスク(2025年6月期) 2.8% −1.6% 71.0% 9.4億ドル(2026年1月2日)
中央値(7社) 20.2% 7.2% 68.5% —

※FCF=営業CF−有形固定資産の取得で、7社同じ定義(当ブログの計算。旺宏電子の2025年の設備投資は無形資産を含む会社の値)。FCFマージン=FCF÷売上。自己資本比率は期末の資本÷総資産で、南亜科技は2025年9月末の値。ネットキャッシュ=現金等−有利子負債(当ブログの計算)で、現金と負債の範囲は会社ごとに違います。華邦電子は集計サイトの値(二次資料、リースを含む)。

マイクロンは、2025年8月期に売上の42.4%を設備投資に回しました。158.6億ドルの投資に対してFCFは16.7億ドルで、売上の4.5%しか残っていません。会社は2026年9月期の設備投資を約180億ドルから約200億ドルに引き上げたと説明しています(2025年12月17日の決算説明会。第三者の議事録による)。

それでも財務は持ち直しています。マイクロンは2025年11月27日時点で、ネットキャッシュが2.6億ドルと、わずかながらプラスに戻りました。SKハイニックスも、2024年末の−8.5兆ウォンから2025年末には12.7兆ウォンのプラスに転じています。

SKハイニックスの設備投資は売上の28.3%ですが、利益率が高いので、FCFマージンは26.8%と7社で最も高い値です。会社は、設備投資を3年の移動平均で売上の30%台半ばに保つ目安を示しています(2025年11月の企業価値向上計画)。

サムスン電子の手元の現金は、金額で見れば7社で最も厚く、2025年末のネットキャッシュは100.6兆ウォンで、総資産の17.7%にあたります。会社発表の2025年の施設投資(発生ベース)は52.7兆ウォンで、うち半導体部門が47.5兆ウォンです。

サンディスクの2.8%は、ほかの6社と同じ物差しでは比べにくい数字です。NANDの工場はキオクシアとの合弁(Flash Ventures、サンディスク49.9%・キオクシア50.1%)で、会社の年次報告書は、合弁の投資の一部がリースでまかなわれ、生産量にかかわらず合弁の固定費の半分を負担する義務があると説明しています。

さらに両社は2026年1月29日(キオクシアの日本語の発表は1月30日)、四日市の合弁契約を2034年12月31日まで5年延ばし、サンディスクが製造サービスと供給確保の対価として11.65億ドルを2026〜2029年に分けて払うと発表しました。自社の設備投資は小さくても、工場の固定費は抱えている形です(当ブログの見方)。

台湾の3社は、これから投資を増やす計画を示しています。南亜科技は2026年の設備投資を最大500億台湾ドル(取締役会の承認前)とし、2025年の134.5億台湾ドルの約3.7倍です(当ブログの計算)。華邦電子は「設備投資は2026〜2027年に400億台湾ドルに近づく見通し」としています(会社資料の英文を当ブログが訳出)。

旺宏電子は、2025年12月18日に取締役会が承認した2026年の新しい設備投資の予算が8.35億台湾ドルです。一方、2026年1月27日の決算説明会では220億台湾ドルを投じると説明したと報じられています(報道による)。基準の違う二つの数字なので、並べて読むときは注意が要ります。

業界全体では、調査会社TrendForceが、2026年のDRAMの設備投資を537億ドルから613億ドルへ14%増、NANDを211億ドルから222億ドルへ5%増と推計しています(2025年11月13日)。会社の計画ではなく推計です。大家業でいえば、家賃相場が上がった年に近所で新築の計画が一斉に動き出すようなもので、新しい部屋が市場に出るのは何年か後です(当ブログの見方)。

用語メモ:設備投資(capex)=工場や製造装置への投資。FCF=営業CF(本業で稼いだ現金)から設備投資を引いた、会社に残るお金の目安。大家業でいえば、ローンの返済と大規模修繕を払ったあとに手元に残るお金。ネットキャッシュ=現金等から借入金などを引いた額。合弁=複数の会社が出資して共同で事業を行う会社。

株主還元は、FCFの50%を返すサムスン電子から、直近の配当がない3社まで

株主還元の考え方も、7社でずいぶん違います。会社の方針と、最新通期に実際に払ったお金を並べます。

会社 株主還元の方針(会社の説明の要旨) 最新通期の配当支払 自社株買い 総還元性向
サムスン電子 2024〜2026年はFCFの50%を還元。通常配当は年9.8兆ウォン 9.9兆ウォン 8.2兆ウォン 40.8%
SKハイニックス 2025〜2027年は固定配当を1株1,500ウォンに。累積FCFの50%を還元の原資に 1.7兆ウォン 0 3.9%
マイクロン 四半期配当は1株0.115ドル 5.2億ドル 0 6.1%
サンディスク 配当は支払っていない 0 0 —
南亜科技 2024年12月期分は無配。2025年12月期分は未決議 0 0 —
華邦電子 2024年12月期分の配当は確認できず 0 — —
旺宏電子 2024年12月期分は無配。2025年12月期分は未決議 0 — —

※最新通期は表1の期間(華邦電子は2024年12月期)。配当支払と自社株買いはキャッシュ・フロー計算書の値。総還元性向=(配当支払+自社株買い)÷純利益(当ブログの計算)。未決議はカットオフの時点。南亜科技の自社株買い、華邦電子の配当支払は集計サイトの値(二次資料)。

サムスン電子は、2024年1月31日に発表した2024〜2026年の方針で、FCFの50%を株主に戻すとしています。2025年は配当9.9兆ウォンに自社株買い8.2兆ウォンが加わり、還元は純利益の40.8%に当たります。2024年11月15日には10兆ウォンの自社株買いも発表していました。2025年10〜12月期の配当には、約1.3兆ウォンの特別配当分が含まれます。

SKハイニックスは、2025年1月の決算発表で、2025〜2027年の固定配当を1株1,200ウォンから1,500ウォンへ25%引き上げると示しました。2025年12月期の配当は、追加配当1,500ウォンを含めて1株3,000ウォンです。ただ、2025年中に実際に払った配当は1.7兆ウォンで、純利益に対しては3.9%にとどまります。

会社は、FCFのうち還元に回していた5%分を、ネットキャッシュと十分な現金に届くまで財務の改善に回すとも説明しています。利益の大きさに比べて還元が小さいのは、この方針の表れと読めます(当ブログの見方)。

マイクロンの配当は四半期1株0.115ドルで、2023年8月期から変わっていません。2025年8月期の自社株買いはゼロで、2025年8月29日〜11月27日の四半期に3億ドルを買っています。米国の半導体補助金(CHIPS法)の協定には、5年間の特別配当の制限などの条件が付いています。

サンディスクは投資家向けのFAQで、「現在、配当を支払っていない」(会社資料の英文を当ブログが訳出)と説明しています。台湾の南亜科技と旺宏電子は2024年12月期分を無配とし、2025年12月期分はカットオフの時点で決まっていません。華邦電子の2024年12月期分の配当は、当ブログが調べたデータでは確認できませんでした。

大家業でいえば、家賃が大きく増えた年でも、建替えの資金や借入の返済を優先して、出資者への分配は控えめにする物件オーナーがいるのと同じです。メモリー株の多くは、配当より次の工場への投資が先に来る株だと私は見ています(当ブログの見方)。

用語メモ:自社株買い=会社が市場から自社の株を買うこと。大家業でいえば、共有持分を買い戻して共有者を減らすようなもので、残った株主1人あたりの持分が増える。総還元性向=配当と自社株買いの合計が純利益の何%かを示す指標。

2026年1月30日の株価指標は、PERの「土台」を3つに分けて読む

いよいよ株価指標です。株価は2026年1月30日の各市場の終値(株価データサイトなどの二次資料)で、指標はすべて当ブログの計算です。メモリー株のPERは、どの利益を土台にするかで数字がまったく変わるので、3つに分けて並べます。

会社 終値 時価総額(円換算・参考) 実績PER 直近四半期×4のPER ガイダンス×4のPER PBR
サムスン電子 160,500ウォン 110.4兆円 24.3倍 13.8倍 — 2.65倍
SKハイニックス 909,000ウォン 68.3兆円 14.7倍 10.4倍 — 5.28倍
マイクロン 414.88ドル 71.8兆円 39.4倍 22.5倍 12.7倍(GAAP) 7.94倍
サンディスク 576.25ドル 13.1兆円 赤字 28.0倍 11.1倍(non-GAAP) 8.33倍
南亜科技 326.50台湾ドル 4.9兆円 153.3倍 22.8倍 — 5.94倍
華邦電子 128.50台湾ドル 2.8兆円 赤字 49.4倍 — 6.10倍
旺宏電子 92.80台湾ドル 8,736億円 赤字 赤字 — 3.91倍
中央値(社数) — — 31.9倍(4社) 22.7倍(6社) 11.9倍(2社、GAAPとnon-GAAPの混在・参考) 5.94倍(7社)

※実績PER=終値÷直近4四半期のEPS(1株あたり利益。米国の2社はGAAPの希薄化EPS、韓国・台湾は基本EPS)。直近4四半期は、マイクロンが2024年11月29日〜2025年11月27日、サンディスクが2024年12月28日〜2026年1月2日、華邦電子が2024年10月〜2025年9月、ほかの4社は2025年1〜12月。直近四半期×4は最新四半期のEPSを4倍した参考値、ガイダンス×4は次の四半期の会社予想EPSの中央値を4倍した参考値で、どちらも会社の年間予想ではありません。PBR=終値÷最新の1株あたり純資産(サムスン電子と華邦電子は2025年9月末、マイクロンは2025年11月27日、サンディスクは2026年1月2日、ほかは2025年12月末)。サムスン電子の時価総額は普通株と優先株の合計、SKハイニックスは約7.013億株(2025年11月30日、当ブログの逆算)で計算。

実績PERは、直近1年の実際の利益で計算した値です。赤字の3社は計算できず、計算できる4社の中央値は31.9倍。南亜科技の153.3倍が飛び抜けて高く、SKハイニックスは14.7倍です。

直近四半期×4は、いちばん新しい3か月の利益が1年続いたら、という仮定の数字です。南亜科技は22.8倍、SKハイニックスは10.4倍まで下がり、計算できる6社の中央値は22.7倍。利益が急に伸びている会社ほど、実績PERとの差が開きます。

ガイダンス×4は、会社が示した次の四半期の利益予想を4倍した数字で、数値の予想を出しているのは米国の2社だけです。マイクロンは2025年12月17日に、2025年11月28日〜2026年2月26日(期間は決算期のルールから当ブログが計算)の四半期のGAAPのEPSを8.19ドル(±0.20ドル)と予想し、4倍するとPERは12.7倍です(non-GAAPなら12.3倍)。

サンディスクは2026年1月29日に、2026年1月3日〜4月3日(期間は決算期のルールから当ブログが計算)の四半期のnon-GAAPのEPSを12.00〜14.00ドルと予想しました。中央値13.00ドルの4倍で11.1倍ですが、GAAPのEPSの予想は示されていないので、会社独自の調整後の利益が土台です。GAAPの実績はのれんの減損で赤字で、non-GAAPの実績なら77.8倍(参考)になります。

PBRの中央値は5.94倍で、最も低いのはサムスン電子の2.65倍、最も高いのはサンディスクの8.33倍でした。次の表は、株価に対する利益・配当・現金の割合です。

会社 益回り(実績) EPS÷BPS 配当利回り FCF利回り 株主還元利回り ネットキャッシュ÷時価総額
サムスン電子 4.12% 10.9% 1.04% 3.67% 1.76% 9.77%
SKハイニックス 6.82% 36.0% 0.33% 4.09% 0.26% 1.99%
マイクロン 2.54% 20.1% 0.11% 0.36% 0.11% 0.06%
サンディスク — −11.0% 0.00% −0.14% 0.00% 1.10%
南亜科技 0.65% 3.9% 0.00% 0.47% 0.00% 3.81%
華邦電子 — −0.1% — −1.03% 0.00% −5.55%
旺宏電子 — −7.5% 0.00% 1.66% 0.00% −5.20%
中央値(社数) 3.33%(4社) 3.9%(7社) 0.06%(6社) 0.47%(7社) 0.00%(7社) 1.10%(7社)

※益回り=1÷実績PER。EPS÷BPS=実績EPS÷1株あたり純資産で、PBR÷実績PERと同じ。配当利回りの基準は、サムスン電子が2025年12月期の普通株の配当(特別配当を含む)、SKハイニックスが2025年12月期の1株3,000ウォン、マイクロンが年0.46ドル(四半期0.115ドル×4)、南亜科技と旺宏電子は2024年12月期分(無配)で、華邦電子はデータなし。FCF利回りと株主還元利回りは最新通期の実額÷時価総額(サンディスク・華邦電子・旺宏電子の還元は配当だけで計算)。ネットキャッシュは最新の貸借対照表の日付。SKハイニックスの株主還元利回りが配当利回りより低いのは、前者が2025年中に実際に払った額、後者が2025年12月期の1株3,000ウォン(追加配当1,500ウォンを含む)で計算しているためです。

益回りは、PERを逆さにした「株価に対する利益の割合」です。大家業でいえば物件価格に対する1年の手取り家賃、つまり実質利回り。SKハイニックスの6.82%と南亜科技の0.65%では、同じメモリー株で10倍以上の開きがあります。

配当利回りが1%を超えるのはサムスン電子の1.04%だけで、中央値は0.06%。FCF利回りも中央値0.47%と低めです。この7社の株価は、今の配当や現金ではなく、これからの利益に値段がついていると私は見ています(当ブログの見方)。

用語メモ:PER=株価÷1株あたり利益(EPS)。PBR=株価÷1株あたり純資産(BPS)。益回り=PERの逆数。ガイダンス=会社が示す業績の予想。FCF利回り=FCF÷時価総額。株主還元利回り=配当と自社株買いの合計÷時価総額。中央値=値を小さい順に並べたときの真ん中の値(数が偶数のときは真ん中の2つの平均)。

7社の株価は2025年に99〜560%上がり、上昇率は利益率の順と一致しない

図は、7社を最新通期の営業利益率の高い順に並べ、左から営業利益率、2025年の株価の騰落率、2026年1月30日終値の実績PERを横に並べたものです。右の列の薄い棒は、マイクロン(GAAP)とサンディスク(non-GAAP)のガイダンス×4のPERで、南亜科技の153.3倍は棒を途中で省いて描いています。

左の列と真ん中の列を見比べると、順番がまるで合っていません。営業利益率がいちばん高いSKハイニックスの上昇率は274.4%で、7社の中央値と同じ。いちばん上がったのは営業利益率7.9%の南亜科技の559.8%で、2番目は2024年の営業利益率が0.6%の華邦電子の458.1%でした。

会社 2025年の株価 2026年1月の株価 最新通期の純利益の伸び 最新四半期の営業利益(前年同期比)
SKハイニックス +274.4% +39.6% +116.9% +137.2%
マイクロン +239.1% +45.4% +997.6% +182.2%
サムスン電子 +125.4% +33.9% +31.8% +209.2%
南亜科技 +559.8% +69.2% 前期は赤字 前年同期は営業赤字
華邦電子 +458.1% +55.6% 前期は赤字 +1,261.4%
旺宏電子 +99.2% +135.2% 2期とも赤字 前年同期は営業赤字
サンディスク +388.4%(上場初日から) +142.8% 2期とも赤字 +446.2%
中央値(7社) +274.4% +55.6% — —

※株価は終値の騰落率(当ブログの計算、株価は二次資料)。2025年は2024年の最終取引日から2025年の最終取引日まで(最終取引日は韓国が12月30日、米国・台湾が12月31日)。サンディスクは通常取引の初日(2025年2月24日)の終値から。2026年1月は2025年の最終取引日から2026年1月30日まで。純利益の伸びは最新通期(表1の期間。華邦電子は2024年12月期で、前期の2023年12月期が赤字)。最新四半期の営業利益は、表1の最新四半期の前年同期比。

株価と利益の向きはそろっていても、大きさは合いません。サムスン電子は純利益が31.8%増えた年に株価が125.4%上がり、マイクロンは2025年8月期の純利益が997.6%増えた一方で、株価は239.1%の上昇でした。マイクロンの伸び率が大きいのは、前の2024年8月期の純利益が7.8億ドルと小さかったためです。

株価は暦年、利益は各社の決算期で、期間はそろっていません。それでも、株価は今の利益率の高さより、利益がどれだけ急に戻るかに反応したと私は読んでいます(当ブログの見方)。赤字や低い利益から一気に持ち直した南亜科技と華邦電子の上昇率が大きいのも、その表れだと見ています。

2026年1月の1か月でも、7社すべてが上がりました(サムスン電子の33.9%〜サンディスクの142.8%)。2025年の上昇率が7社で最も低かった旺宏電子は、1月だけで135.2%上がっています。

株式投資の目線では、7社のメモリー株は「何に賭けるか」で5つの型に分かれる

ここからは、比べてきた数字を株式投資の銘柄選びにつなげます。目的は順位づけではありません。それぞれの株価が何を前提にしているかを読むことです。当ブログでは、株価が主に映しているものから、7社を5つの型に分けて見ています。

型(当ブログの見方) 会社 株価が主に映しているもの 前提を確かめる数字(2026年1月30日)
HBMとAI向けのDRAM SKハイニックス、マイクロン AI向けのHBMとDRAMの需要と価格 実績PER14.7倍・EPS÷BPS36.0%(SKハイニックス)、ガイダンス×4のPER12.7倍(マイクロン、GAAP)
メモリーを抱える総合電機 サムスン電子 メモリーの回復とHBMの巻き返し、スマホ・家電を含む会社全体 PBR2.65倍、配当利回り1.04%、ネットキャッシュ÷時価総額9.77%
NAND専業 サンディスク NANDの値上がりとデータセンター向けの伸び ガイダンス×4のPER11.1倍(non-GAAP)、PBR8.33倍
汎用DRAM専業 南亜科技 汎用DRAMの値上がりが続くこと 実績PER153.3倍、直近四半期×4で22.8倍、PBR5.94倍
NORなど特定の用途のメモリー 華邦電子、旺宏電子 NORや特殊なDRAMの値上がりと、黒字の定着 直近四半期×4のPER49.4倍(華邦電子)、赤字でPBR3.91倍(旺宏電子)

一つ目の型は、SKハイニックスとマイクロンです。SKハイニックスは2025年10月29日に「主要顧客と来年のHBM供給の協議をすべて完了した」と説明しました(会社資料の韓国語を当ブログが訳出)。マイクロンも2025年12月17日の決算説明会で、2026年のHBMの供給すべてについて価格と数量の合意を終えたと述べています(第三者の議事録による)。

大家業でいえば、HBMは1年前に法人契約で埋まった部屋です。SKハイニックスは、HBMの供給量を顧客と1年前に取り決めると説明しています。一方、汎用のDRAMは、毎月の相場で家賃が決まる部屋に近いものです。

SKハイニックスの実績PER14.7倍は、営業利益率48.6%という5年で最も高い年の利益で計算した数字です。EPS÷BPSは36.0%で、PBR5.28倍は30%台の資本の効率が続くことを前提にした値段だと私は見ています(当ブログの見方)。

マイクロンは、実績の39.4倍がガイダンス×4では12.7倍まで下がります。会社は2025年11月28日〜2026年2月26日の四半期に、売上187億ドル(±4億ドル)、GAAPの粗利益率67.0%(±1.0ポイント)を見込んでいます。株価は、この予想が当たり、その水準が続くことをかなり織り込んだ値段だと読めます(当ブログの見方)。

時価総額では、マイクロンの71.8兆円がSKハイニックスの68.3兆円を上回ります(円換算・参考)。最新通期の営業利益はマイクロンが97.7億ドル(約1.5兆円)、SKハイニックスが47.2兆ウォン(約5.1兆円)です。決算期が違う点に注意は要りますが、マイクロンの株価のほうが先の伸びを多く前提にしていると読めます(当ブログの見方)。

二つ目の型は、サムスン電子です。2025年の全社の営業利益のうち、半導体部門は57.1%で、残りはスマホ・家電やディスプレイなどが稼いでいます。会社は2026年1〜3月期に新しい世代のHBM4の出荷を始める予定で、高性能なHBMの市場で「主導的な地位を取り戻す」ことを目指すと説明しています(会社資料の英文を当ブログが訳出)。

PBR2.65倍は7社で最も低く、配当利回り1.04%は最も高い値です。ネットキャッシュは時価総額の9.77%あります。メモリーの波を、ほかの事業と厚い現金で薄めた株というのが私の見立てで、そのぶんメモリーの回復が株価に表れる度合いも薄まります(当ブログの見方)。

三つ目の型は、NAND専業のサンディスクです。2026年1月3日〜4月3日の四半期について、会社は売上44〜48億ドル、GAAPの粗利益率64.9〜66.9%を見込んでいます(2026年1月29日)。実績のGAAPは赤字なのに、non-GAAPのガイダンス×4では11.1倍。PBRは8.33倍で7社で最も高く、大きく改善した予想が続くことが前提の値段です(当ブログの見方)。

四つ目の型は、汎用DRAM専業の南亜科技です。2024年の用途別の売上は、民生向けが約63%、低消費電力のLPDDRが約21%、PC向けが約13%でした。会社は、2025年10〜12月期の平均販売単価が前の四半期から30%台上がったと説明しています。

南亜科技のPBR5.94倍に対し、2025年のROEは3.9%です。ところが、直近四半期×4のPER22.8倍で計算し直すと、EPS÷BPSは約26%に跳ね上がります(当ブログの計算)。株価は、10〜12月期の稼ぎがこの先も続くことを前提にしていると読めます(当ブログの見方)。

五つ目の型は、特定の用途に強いメモリーの華邦電子と旺宏電子です。華邦電子は、カスタムメモリー(DRAM)とフラッシュ(NOR型など)に、ロジックIC(演算などを担う半導体)の子会社の新唐科技(Nuvoton)を連結しています。旺宏電子は、2025年10〜12月期の売上(親会社ベース)の約6割がNOR型フラッシュでした(会社資料の並びから当ブログが読み取った概数)。

華邦電子は2025年11月5日の資料で、NORの価格は2025年7〜9月期以降に上がる見通しと述べています(会社資料の英文を当ブログが訳出)。華邦電子の直近四半期×4のPERは49.4倍、旺宏電子は10〜12月期も赤字でPBRは3.91倍。黒字が定着するかどうかが、この型の株価の前提です(当ブログの見方)。

銘柄選びの目線では、実績PERはサイクルの転換点で逆に見え、7社を持っても波は分散しにくい

景気の波で利益が大きく動く株では、実績PERの読み方に注意が要ります。ここからは特定の会社の話ではなく、アナリストとしての一般的な見方です(当ブログの見方)。

利益が底にあるときは、分母の利益が小さいか赤字なので、PERはとても高くなるか、計算できなくなります。反対に、利益が山にあるときは分母が大きいので、PERは低く見えます。つまり、高いPERが波の底を、低いPERが波の山を示していることがあるのです。

7社の数字にも、その形が出ています。南亜科技の実績PER153.3倍は、前半の赤字を含む2025年の利益で計算した値です。一方、SKハイニックスの14.7倍は、5年で最も利益率の高い年の利益で計算した値で、2023年は9.1兆ウォンの純損失でした。

ですから、実績PERの低さだけで「利益に比べて値段がついていない」と考えるのは危ういと私は思います。確かめたいのは、今の利益が波のどこにあるかと、次の数四半期で利益がどちらに動くかです(当ブログの見方)。

PBRも同じ目で読めます。PBRを実績PERで割るとEPS÷BPSになります。EPS÷BPSは赤字の会社でも計算でき、7社の中央値は3.9%です。PBRの中央値5.94倍と並べると、株価が今の利益ではなく、これから上がる利益を前提にしていることが見えてきます(当ブログの見方)。

もう一つ見落としやすいのが、7社が同じ波に乗っていることです。7社の株価は2025年も2026年1月もすべて上がり、2023年度は7社のうち6社が営業赤字でした。会社や国を分けて持っても、メモリーという一つの業界の波からは逃げにくいのです(当ブログの見方)。

大家業でいえば、同じ駅前にワンルームを7室持つようなものです。部屋の向きや広さが違っても、駅の周りの需要が落ちれば一緒に空きます。メモリー株を何社か組み合わせることと、業界の波を分散することは、別のことだと考えておきたいところです。

株価が動くきっかけになりそうなのは、まず会社の予想です。米国の2社は次の四半期の数値の予想を出し、韓国・台湾の5社は定性的な見通しだけです。次に契約価格で、調査会社TrendForceは2026年1〜3月期の汎用DRAMの契約価格を前の四半期比55〜60%上昇、NANDを33〜38%上昇と予測しています(2026年1月5日)。

HBMでは、サムスン電子のHBM4の出荷が始まるかどうか。設備投資では、マイクロンの約200億ドル、南亜科技の最大500億台湾ドルのような計画の行方です。政策では、米国がサムスン電子とSKハイニックスの中国工場向けの包括的な輸出許可(VEU)を2025年12月31日付で取り消しました(2025年9月2日の官報)。2026年分は、装置の出荷に年間の許可が出たと報じられています(2025年12月30日の報道)。

株の需給も材料になります。ウエスタンデジタルは2026年1月2日時点でサンディスク株を約751万株(5.1%)持ち、南亜科技では台湾プラスチックグループの3社が2025年10〜12月に保有株を売ったと報じられました。大株主の売却は、業績と関係なく株価を動かすことがあります(当ブログの見方)。

下振れのリスクは、何といっても波の反転です。2023年度のように売上が落ちた年には、利益は売上以上の速さで落ちました。業界の設備投資が増えて供給が追いつけば今の利益率の前提が崩れ、PBRの高い株ほど振れが大きくなりやすいと私は考えます。輸出規制の行方、日本の投資家にとっては円高も、円で見た株価を押し下げる要因です(当ブログの見方)。

銘柄選びで確かめる点 7社の数字(時点) 当ブログの見方
株価と利益の向き 2025年の株価+99.2%〜+559.8%(中央値+274.4%)、2026年1月+33.9%〜+142.8% 7社そろって上昇。上昇率は利益率の順と一致しない
PERの土台 実績PERの中央値31.9倍(4社)、直近四半期×4は22.7倍(6社)、ガイダンス×4はマイクロン12.7倍(GAAP)・サンディスク11.1倍(non-GAAP)(2026年1月30日) 土台の違うPERを同じ列で比べない
転換点の読み違い 南亜科技の実績PER153.3倍→直近四半期×4で22.8倍。SKハイニックスの14.7倍は営業利益率48.6%の年の利益 高いPERが底、低いPERが山を示すことがある
PBRとROE PBRの中央値5.94倍、EPS÷BPSの中央値3.9%(7社) 高いPBRは、これからの利益の回復を前提にしている
利益の振れ 年次の営業利益率の振れ幅の中央値37.0ポイント、2023年度は7社中6社が営業赤字 何社に分けても、業界の波は避けにくい
株主に戻るお金 配当利回りの中央値0.06%(6社)、株主還元利回りの中央値0.00%(7社)、サムスン電子の配当利回り1.04% 配当より、利益の伸びと株価の動きが主役の株

この株の性格が合うかどうかは、投資の目的で分かれます。配当で収入を得たい人にとって、1%を超える配当利回りはサムスン電子だけで、税引き後の手取りはさらに小さくなります(このあとの税理士の項で計算します)。

業界の成長を取りにいくなら、値動きの大きさを受け止められるかが分かれ目です。2025年に、旺宏電子を除く6社の株価は2倍以上になりました(サンディスクは上場初日から)。同じ勢いは逆向きにも働きうることを、5年の利益の振れが教えてくれます(当ブログの見方)。

日本から買えるかどうかも市場で違います。米国株は主要なネット証券が扱い、韓国株はSBI証券がインターネットで扱っています(同社の手数料ページ、2025年2月14日現在の表示。銘柄ごとの取扱いまでは確かめていません)。台湾の個別株は、当ブログが調べた範囲では主要なネット証券での取扱いが見当たりません。詳しくは、このあと税理士の項で整理します。

税理士から:外国株の配当は、外国と日本で二度源泉徴収される

ここからは税理士として、日本に住む個人(居住者)が、日本の証券会社の特定口座やNISA口座で7社の株を持つ場合の税金を整理します。2026年1月31日時点の法令にもとづく内容で、令和8年度税制改正大綱は最後に方向性として紹介します。

その前に、買える場所の確認です。マイクロンとサンディスクはナスダック上場の米国株で、主要なネット証券は米国株を扱っています(銘柄ごとの取扱いまでは確かめていません)。SBI証券の手数料は、米国株が約定代金の0.495%(税込、上限22ドル)です(同社の手数料ページ、2025年2月14日現在の表示)。

韓国株は、SBI証券がインターネットで扱っていて、手数料は約定代金の0.99%(税込、最低9,900ウォン)です(同じページ、2025年2月14日現在)。サムスン電子とSKハイニックスにはロンドンやルクセンブルクの預託証券(GDR)もありますが、日本での税務上の扱いを示す資料も、日本のネット証券での取扱いも見つからなかったので、韓国市場の株そのものを前提に話を進めます。

台湾株は、SBI証券の手数料ページ(2025年2月14日現在)にも、外国株式取引の説明書(2026年1月)にも台湾が入っていません。当ブログが各社のサイトで調べた範囲では(日付の表示があるのはSBI証券の2つの資料だけ)、主要なネット証券で台湾の個別株を扱うところは見当たりませんでした。

外国株の配当には、まず現地の税金がかかります。日本と相手国の取り決めで上限が決まっていて、一般の投資家の場合、米国は日米租税条約で配当の10%、韓国は日韓租税条約で15%、台湾は日台民間租税取決めで10%です。

日本では、外国の税を引いた後の金額に、20.315%(所得税と復興特別所得税で15.315%、住民税5%)が源泉徴収されます。租税特別措置法9条の2は、国外株式の配当の源泉徴収を「当該国外株式の配当等の額から当該外国所得税の額に相当する金額を控除した後の金額とする。」と定めています。

ケース(配当100あたり) 外国の税 日本の税(20.315%) 手取り(申告不要) 税負担の合計 NISA口座の手取り
米国:日米租税条約の上限10% 10.00 18.28 71.72 28.28% 90
韓国:日韓租税条約の上限15% 15.00 17.27 67.73 32.27% 85
韓国:仮に16.5%で源泉徴収された場合 16.50 16.96 66.54 33.46% 83.5
台湾:日台民間租税取決めの上限10% 10.00 18.28 71.72 28.28% 90
台湾:国内法の21%で源泉徴収された場合 21.00 16.05 62.95 37.05% 79

※配当100(現地通貨)あたり。手取り(申告不要)=100×(1−外国の税率)×(1−0.20315)で、特定口座で受け取り、確定申告で外国税額控除を使わない場合の計算です。NISA口座の手取り=100−外国の税(韓国16.5%の場合の83.5は当ブログの計算)。

米国株の配当は、SBI証券の説明書(2026年1月)にも「現地での課税は租税条約により、原則として 10%と定められています。」とあります。配当100が手元で71.72になり、税負担は合わせて28.28%になります。

韓国は少し複雑です。日韓租税条約の対象となる税には韓国の「住民税」が含まれていて、15%は地方の税も込みの上限と読めます。ただ、実際に15%で源泉徴収されるのか、地方所得税が上乗せされて16.5%になるのかは、当ブログでは一次資料で確かめられませんでした。SBI証券の説明は「原則として 15%」です。実際の税率は、取引報告書や配当金の通知で確かめてください。

台湾との間は国どうしの条約ではなく、交流協会と亜東関係協会の民間の取決めで、台湾側では2017年1月1日以後に支払われる配当から適用されると読めます(取決めの規定と発効の時期から当ブログが導いた日付)。取決めを使わない台湾の国内法の税率は21%です(KPMG台湾の資料、2018年1月)。

日本の証券会社を通じて受け取る配当に、取決めの10%が自動で使われるかは、扱う証券会社が見当たらないこともあり、確かめられていません。なお、条約の上限を超えて外国で引かれた分は、外国税額控除の対象になりません(所得税法施行令222条の2)。台湾についても、国税庁のタックスアンサー(No.1240)は、外国居住者等所得相互免除法の条件と同等の条件で軽減されるはずの部分を控除の対象外としていて、取決めの10%を超えて引かれた分は控除できないと読めます。

直近の年度に配当を出しているのは、7社のうちサムスン電子、SKハイニックス、マイクロンの3社です(華邦電子は確認できませんでした)。たとえばサムスン電子の配当利回り1.04%は、韓国で15%、日本で20.315%が引かれると、申告不要の手取りでは約0.70%まで下がります。NISA口座なら約0.88%です(いずれも当ブログの計算)。

用語メモ:源泉徴収=支払いの時点で税金を差し引いて納める仕組み。租税条約=二重課税を防ぐために国どうしが結ぶ取決めで、配当にかける税の上限などを定める。特定口座(源泉徴収あり)=証券会社が税金の計算と納付をしてくれる口座。

外国税額控除は、確定申告をしたときだけ使える。配当控除は使えない

外国で引かれた税金を、日本の税金から差し引いて二重課税を調整する仕組みが外国税額控除です。ただし、マネックス証券や三菱UFJ eスマート証券は「外国税額控除の適用は、確定申告をして総合課税または申告分離課税を選択した場合に限られます。」と説明しています。

上場株式の配当は、申告不要、総合課税、申告分離課税の3つから選べます。申告不要を選んだ配当は確定申告に含めないので、外国税額控除の計算にも入らず、二重課税はそのまま残ります(条文と控除限度額の計算式から当ブログが整理した結論で、証券会社の説明とも一致します)。日本の源泉税も、国税庁が「確定申告不要制度を選択した配当所得に係る源泉徴収税額は、その年分の所得税額から差し引くことはできません。」とするとおり、源泉徴収で終わりです。

総合課税を選んでも、国内の会社の配当のような配当控除はありません。国税庁も「外国法人から受ける配当等は、配当控除の対象となりません。」としています。申告分離課税(20.315%)を選べば、上場株式等の譲渡損失と通算できます。申告するときの収入金額は、外国の税と日本の源泉徴収税を差し引く前の金額です。

控除できる額には上限があります。所得税では「所得税の控除限度額=その年分の所得税額×(その年分の調整国外所得金額/その年分の所得総額)」です。所得税で引ききれない分は、同じ割合で計算した枠の範囲で復興特別所得税から引き、住民税からも、所得税の控除限度額の30%(道府県民税12%・市町村民税18%、指定都市では6%・24%)を上限に差し引けます。

控除しきれなかった額(控除限度超過額)や、枠の余り(控除余裕額)は3年間繰り越せます。繰越しを使うには、もとになった年から各年分の明細書を申告書と一緒に出しておく必要があります。控除を受けるには、「外国税額控除に関する明細書(居住者用)」と、外国の税を課されたことを証明する書類を申告書に添えます。SBI証券のFAQによると、同社が2022年以降に交付した配当の通知は、外国の税額を示す書類として使えます。

ここで、注意したい点が二つあります。一つ目は、控除の枠が所得税額に比例することです。所得税額が小さい人ほど枠が小さく、外国の税を全額は差し引けないことがあります(超えた分は3年間繰り越せます)。

二つ目は、住民税と社会保険料です。令和6年度(2023年分)以後、「上場株式等の所得について、所得税と個人住民税(市民税・県民税)とで異なる課税方式を選択することはできなくなり」ました(鹿児島市のFAQ)。所得税で配当を申告すると、住民税でも申告したことになり、扶養の判定や国民健康保険料・介護保険料などに響くことがあります。

配当が少額なら、取り戻せる外国の税より、申告の手間と保険料の増加のほうが大きいこともあります。大家業の確定申告と同じで、「申告すれば得」とは限りません。不動産所得など、ほかの所得とあわせて毎年確かめる価値があります(当ブログの見方)。

もう一つ、特定口座の仕組みについて。源泉徴収ありの特定口座では、配当を口座で受け取ると、口座内の譲渡損失と通算されて国内の源泉税が戻りますが、外国で引かれた税は口座の中では調整されません。国内の投資信託やETF(上場投資信託)にある「分配時調整外国税相当額控除」は、外国株そのものには使えない仕組みです。

用語メモ:申告不要=源泉徴収で課税を終わらせ、確定申告に含めない方式。総合課税=給与などほかの所得と合わせて税額を計算する方式。申告分離課税=ほかの所得と分けて20.315%で計算する方式。配当控除=国内の会社の配当を総合課税で申告したときに、税額から差し引ける仕組み。

NISAでも外国の税金は差し引かれ、外国税額控除は使えない

NISA口座で外国株を持つと、国内の所得税と住民税はかかりません。ただし金融庁は、「NISA口座で買付けた株式の配当金を非課税にするには、受取方法を株式数比例配分方式にする必要があります。」としています。

外国の税金は、NISAでも差し引かれます。三菱UFJ eスマート証券は「NISA預り銘柄の配当金は国内非課税となりますが、現地課税分を非課税にすることはできません。」(2025年8月28日更新のページ)と説明しています。

さらに、マネックス証券は「非課税取引(NISA)については確定申告をすることができず、外国税額控除の適用を受けることができません。」としています。この2点は証券会社の説明によるもので、金融庁や国税庁の資料では、当ブログは確かめられていません。

その結果、NISA口座での最終的な負担は外国の税率と同じになり、配当100の手取りは米国90、韓国85(条約の15%の場合)、台湾90(取決めの10%の場合)です。特定口座で申告不要にしたときの手取り(米国71.72、韓国67.73)より多く残ります。

大家業でいえば、海外の物件の家賃に現地で税金がかかり、日本の非課税の仕組みでは現地の分までは消せない、という形です。NISAの非課税は、日本の税金に限った話だと覚えておくと迷いません。

売却益は20.315%の申告分離課税、円に直すときには為替の動きも入る

株を売って出た利益(譲渡益)は、外国株でも日本の上場株と同じ扱いです。国税庁は、上場株式等に「外国金融商品市場において売買されている株式等」を含めています。税率は20.315%(所得税15%、復興特別所得税として所得税額の2.1%、住民税5%)の申告分離課税で、復興特別所得税は2026年1月31日時点の法律では令和19年(2037年)までです。

現地での課税はどうか。米国は日米租税条約で、売った人が居住している国(日本)だけが課税します。韓国と台湾も原則は日本だけで、韓国は25%以上を持つ株主が5%以上を売る場合や不動産が中心の会社の株など、台湾は資産の50%以上が台湾の不動産である会社の株などが例外です。売るときに韓国や台湾の市場でかかる取引税などの費用は、この記事では調べていません。

利益は円で計算します。原則は、取引日の電信売買相場の仲値(TTM)で、買ったときの値段と売ったときの値段をそれぞれ円に直します(所得税基本通達57の3-2)。ただし、円で外貨を買ってすぐ株を買った場合は、「現にその支出し、又は受け入れた本邦通貨の額をその円換算額とすることができる。」とされています(同じ通達の注4)。売った代金をすぐ円にした場合は、TTBで円に直した額を売った値段にできるというのが、国税庁の質疑応答事例(外貨建ての不動産の例、令和7年8月1日現在)の考え方です。

実務では、たとえばSBI証券は外貨で決済する場合について、「お買付時は国内約定日の東京外国為替市場の TTS 為替レートを、ご売却時は同 TTB 為替レート を用いて計算を行います。」としています(説明書、2026年1月)。米国株の国内約定日は、米国で約定した日の翌国内営業日です。

買ったときと売ったときの相場でそれぞれ円に直すので、円で計算した利益には、株価の動きと為替の動きの両方が入ります。株価が変わらなくても、円安になれば利益が出て、円高になれば損が出ることがあります。

別の扱いになるのが、売った代金を外貨のまま持ち、あとで円に替えたときの為替差益です。法律事務所の解説(西村あさひ、2025年1月8日)によると原則として雑所得で、2023年11月30日の東京高裁の判決も雑所得と判断しています。雑所得は、株の損失とは通算できません。

損失が出た年の扱いは、日本株と同じです。外国株と日本株はどちらも上場株式等なので、損益を通算できます。配当と通算できるのは、申告分離課税を選んだ配当に限られます。通算しきれない損失は翌年以後3年間繰り越せますが、国税庁は「上場株式等の譲渡がなかった年も、譲渡損失を翌年へ繰り越すための申告が必要です。」としています。

源泉徴収ありの特定口座なら、口座内の譲渡益は申告不要にできます。ほかの証券会社の口座と損益を通算したり、損失を繰り越したりするときは、確定申告が必要です。外国株を複数の証券会社に分けて持つ人は、通算は自分で申告しないと起きないことを覚えておいてください。

用語メモ:TTS=銀行が客に外貨を売るときの相場(円→外貨)。TTB=銀行が客から外貨を買うときの相場(外貨→円)。国内約定日=証券会社が円換算などに使う日付で、米国株は米国の約定日の翌国内営業日。雑所得=ほかのどの所得にも当たらない所得で、総合課税の対象。

令和8年度税制改正大綱は、株の税率20.315%を変える方向ではない

2025年12月26日に閣議決定された令和8年度税制改正大綱には、上場株式等の20.315%の税率や、居住者の外国税額控除、国外株式の配当についての改正項目は見当たりません。大綱は方向性で、2026年1月31日の時点ではまだ法律ではありません。

税率に関係するのは、防衛特別所得税です。大綱は「防衛特別所得税額は、その年分の基準所得税額に1%の税率を乗じて計算した金額とする。」とし、令和9年(2027年)以後に設けるとしています。同時に、「復興特別所得税の税率を1.1%(現行:2.1%)に引き下げる。」とし、期間を令和29年まで延ばす方向です。

上場株式に当てはめると、15%×(1+1%+1.1%)=15.315%に住民税5%で、合計は20.315%のままです(当ブログの計算。大綱自体はこの合計に触れていません)。外国税額控除の控除限度額に防衛特別所得税の分をどう組み込むかは、大綱には書かれていません。

NISAについては、金融庁の整理で「つみたて投資枠の年齢要件を撤廃し、0~17歳の間の年間投資枠及び非課税保有限度額を設定する。」とされ、2027年からの方向です。成長投資枠の対象商品は変わりません。所得がきわめて大きい人への追加の負担も、特別控除額を1億6,500万円(現行3億3,000万円)に下げ、税率を30%(現行22.5%)に上げる方向が示されています(令和9年分から)。いずれも、今後の法改正で決まる内容です。

メモリー株は「今の利益」より「次の波」に値段がつく。数字は波の位置と一緒に読む

7社を並べてわかるのは、同じメモリーという看板の下に、まったく違う形の株が並んでいることです。決算期も会計基準もそろわず、最新通期の営業利益率は48.6%から−18.7%まで開いていました。

それでも、7社の株価は2025年にそろって大きく上がりました。上昇率は今の利益率の順ではなく、利益がどれだけ急に戻ったかに沿っているように見えます。実績PERの高い会社が波の底から戻る途中にいて、低い会社が波の山にいることもある。メモリー株のPERは、波の位置と一緒に読むのが基本だと私は考えています(当ブログの見方)。

次の決算でまず確かめたいのは、米国の2社が予想どおりの数字を出せるかです。マイクロンは2025年11月28日〜2026年2月26日の四半期に売上187億ドル、サンディスクは2026年1月3日〜4月3日の四半期に44〜48億ドルを見込んでいます。韓国の2社は、HBM4の出荷と、高い利益率がどこまで続くかが焦点になると見ています。

台湾では、華邦電子の2025年10〜12月期と通期の決算、南亜科技と旺宏電子の2025年12月期分の配当、南亜科技の設備投資の取締役会の承認、旺宏電子の黒字化が、次の材料です。契約価格の動きと、業界の設備投資が供給をいつ押し上げるかも、波の位置を測る手がかりになります(当ブログの見方)。

大家業を長く続けていると、満室の年ほど次の空室に備え、空室の年ほど次の入居の準備をするものだと実感します。メモリー株も同じで、利益がいちばん大きく見えるときほど次の波を、赤字の年ほど回復の芽を探すことが大切だと思います。そして配当や売却益を受け取るときには、外国と日本の二つの関所を、確定申告とNISAの仕組みでどう通るかまで考えておきたいところです。

7社それぞれの決算の中身は、各社を取り上げる回で詳しく読んでいます。メモリーの種類や市場の大きさ、中国勢の動きは、業界の地図を取り上げる回もあわせてどうぞ。

 

※本記事は公表資料をもとにした情報提供を目的としたもので、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。業績や株価に関する記述は当ブログの見方や試算で、将来の業績や株価を予想・保証するものではありません。

※数値は各社の決算資料・年次報告書・米国証券取引委員会(SEC)への提出書類などの公表資料をもとに当ブログが集計・計算したもので、四捨五入の関係で合計が合わない場合があります。数値は2026年1月31日までに公表されたもので、時点は本文・表に記載しています。円換算は2026年1月30日の為替レートによる参考値です。税制は2026年1月31日時点の法令にもとづき、令和8年度税制改正大綱の内容は今後の法改正で決まります。

出典・参考

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  • FY 2025 CAPEX Results(Samsung Electronics、2026年1月29日)https://www.samsung.com/global/ir/reports-disclosures/public-disclosure-view.84547/
  • Year-End Dividend for FY 2025(Samsung Electronics、2026年1月29日)https://www.samsung.com/global/ir/reports-disclosures/public-disclosure-view.84546/
  • Earnings Presentation 4Q 2024(Samsung Electronics、2025年1月31日)https://images.samsung.com/is/content/samsung/assets/global/ir/docs/2024_4Q_conference_eng.pdf
  • Earnings Presentation 4Q 2022(Samsung Electronics、2023年1月31日)https://images.samsung.com/is/content/samsung/assets/global/ir/docs/2022_4Q_conference_eng.pdf
  • Samsung Electronics Announces Shareholder Return Program for 2024-2026(Samsung Electronics、2024年1月31日)https://news.samsung.com/global/samsung-electronics-announces-shareholder-return-program-for-2024-2026
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  • SK하이닉스 2023년 4분기 경영실적 발표(SK hynix、2024年1月25日)https://file.alphasquare.co.kr/media/pdfs/company-ir/20240125SK%ED%95%98%EC%9D%B4%EB%8B%89%EC%8A%A4_2023%EB%85%84_4%EB%B6%84%EA%B8%B0_%EA%B2%BD%EC%98%81%EC%8B%A4%EC%A0%81_%EB%B0%9C%ED%91%9C.pdf
  • SK하이닉스 기업가치 제고 계획(SK hynix、2025年11月)https://file.alphasquare.co.kr/media/pdfs/company-ir/20251128SK%ED%95%98%EC%9D%B4%EB%8B%89%EC%8A%A4_%EA%B8%B0%EC%97%85%EA%B0%80%EC%B9%98%EC%A0%9C%EA%B3%A0%EA%B3%84%ED%9A%8D.pdf
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  • タックスアンサー1330 配当金を受け取ったとき(配当所得)(国税庁)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1330.htm
  • タックスアンサー1250 配当所得があるとき(配当控除)(国税庁)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1250.htm
  • タックスアンサー1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)(国税庁。閲覧したのは令和8年4月1日現在の版で、復興特別所得税の期間は改正後の令和29年まで。2026年1月31日時点の法律では令和19年まで)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1463.htm
  • タックスアンサー1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除(国税庁)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1474.htm
  • タックスアンサー1476 特定口座制度(国税庁)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1476.htm
  • 『外国税額控除に関する明細書』書き方(居住者・恒久的施設を有する非居住者用)(国税庁)https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/pdf/6-033-6-2025-ki.pdf
  • 所得税基本通達 外貨建取引の換算(57の3-1、57の3-2)(国税庁)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/11a/01.htm
  • 質疑応答事例 外国通貨で支払が行われる不動産を譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算の際の円換算(国税庁、令和7年8月1日現在)https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/joto/03/09.htm
  • 日台民間租税取決めに定める相互協議手続について(国税庁)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kokusai/nichitai/01.htm
  • 租税特別措置法 第9条の2(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/api/1/articles;lawId=332AC0000000026;article=9_2
  • 所得税法施行令 第222条の2(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/api/1/articles;lawId=340CO0000000096;article=222_2
  • 日米租税条約(英文)(財務省、2003年11月6日署名)https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/press_release/sy151107a2.pdf
  • 日韓租税条約 統合条文(和文)(財務省)https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/tax_convention/200710kor_j.pdf
  • 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための公益財団法人交流協会と亜東関係協会との間の取決め(交流協会、2015年11月26日署名)https://www.koryu.or.jp/Portals/0/images/news/20160615/sozei-J.pdf
  • Japanese Practice News 2018年1月2(KPMG台湾、2018年1月)https://home.kpmg.com/content/dam/kpmg/tw/pdf/2018/01/Kpmg-News201802J.pdf
  • 令和8年度税制改正の大綱(1/9)一 個人所得課税(財務省、2025年12月26日閣議決定)https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/08taikou_01.htm
  • 令和8年度税制改正の大綱(5/9)五 国際課税(財務省、2025年12月26日閣議決定)https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/08taikou_05.htm
  • 令和8年度税制改正の大綱(6/9)六 防衛力強化に係る財源確保のための税制措置(財務省、2025年12月26日閣議決定)https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/08taikou_06.htm
  • 令和8年度税制改正の大綱の概要(財務省、2025年12月26日閣議決定)https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/08taikou_gaiyou.htm
  • 令和8(2026)年度税制改正について ―税制改正大綱における金融庁関係の主要項目―(金融庁、2025年12月)https://www.fsa.go.jp/news/r7/sonota/20251226-2/01.pdf
  • NISAを利用する皆さまへ(金融庁、令和6年6月・令和7年9月改訂)https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/nisa2024/slide_202406.pdf
  • よくある質問(市民税)上場株式等の配当所得等の課税方式(鹿児島市、2025年10月1日更新)https://www.city.kagoshima.lg.jp/faq-kurashi/shiminzei/q75.html
  • 外国株式取引に関する説明書(対面取引)(SBI証券、2026年1月)https://search.sbisec.co.jp/v2/popwin/info/home/bm/bm_260124_6_footc.pdf
  • 外国株式 手数料(SBI証券、2025年2月14日現在)https://search.sbisec.co.jp/v2/popwin/info/home/pop690_price_int.html
  • 外国株式の配当金は、外国税額控除の適用を受けられますか?(SBI証券 FAQ、日付の記載なし)https://faq.sbisec.co.jp/answer/5ed9d6a550df500012206b8b/
  • 米国株式 配当金について(三菱UFJ eスマート証券、2025年8月28日更新)https://kabu.com/item/foreign_stock/us_stock/dividend.html
  • 米国株の配当でかかる税金と二重課税(マネックス証券、日付の記載なし)https://info.monex.co.jp/us-stock/caution/tax_3.html
  • 居住者に対する為替差損益課税の実務と近時の裁判例〔上〕(西村あさひ法律事務所、2025年1月8日)https://www.nishimura.com/sites/default/files/newsletters/file/business_tax_law_250108_ja.pdf