東雲結子:「外壁工事が1,000万円から1,150万円へ上がりました。150万円、株で取り返します!」

税理士石井:「どの株で、いくら投資しますか」

東雲結子:「その工事会社の親会社を買えばいい?」

税理士石井:「値上げしても利益が残っている会社か、確認が必要です」

東雲結子:「ああ、材料費が上がっただけなら会社も苦しいんですね」

税理士石井:「そうです。大家さんの負担増が、そのまま株主利益になるとは限りません」

東雲結子:「では、値上げ後も利益率が落ちない会社を探す?」

税理士石井:「そこが価格転嫁力です。請求書を銘柄探しの入口にします」

 

建築費、外壁、防水、給湯器、エアコン、保険料。大家さんが払う金額は、ここ数年で上がりやすくなりました。不動産はインフレで資産価値が上がる可能性がある一方、保有中の現金支出も増えます。

そこで、修繕費を受け取る側の企業へ株式投資し、支出増の一部を利益として取り戻す考え方があります。ただし、請求額が上がった会社の株を買えば自動的に儲かるわけではありません。価格を上げても数量が落ちず、利益率が維持される会社を見極めます。

150万円の修繕費増を、株だけで埋める難しさ

予定していた1,000万円の大規模修繕が、15%上がり1,150万円になったとします。不足は150万円です。

株式ポートフォリオ2,500万円で150万円を作るには、税引前で6%の利益が必要です。課税口座で利益に20.315%の税がかかる単純仮定なら、手取り150万円には約7.5%のリターンが必要です。

この数字を見ると、株は修繕費の保険ではないことが分かります。相場次第で損失になるため、修繕資金そのものは現金で確保し、株の利益は不足を補う可能性のある第二の収益源と考えます。

値上げできる会社と、値上げしないと赤字の会社を分ける

同じ10%値上げでも意味は違います。原材料費が15%上がり、販売価格を10%しか上げられない会社は利益率が悪化します。反対に、ブランド、シェア、特許、施工網、保守契約を持ち、値上げ後も数量が落ちない会社は利益を残しやすいでしょう。

決算では売上高だけでなく、粗利益率、営業利益率、販売数量、受注残、営業キャッシュフローを見ます。値上げ後に売上が増えても、在庫と売掛金だけ増えて現金が残らない会社には注意が必要です。

大家さんは顧客として、代替品があるか、納期は長いか、値上げされても使い続けるかを知っています。この現場感覚は株式分析の強みになります。

修繕の種類ごとに、株の利益源を分ける

外壁・防水なら塗料、建材、施工。給湯器・エアコンなら住宅設備、部品、保守。共用電気なら電力・省エネ機器。火災保険なら損害保険。修繕費と同じ会社を買う必要はなく、費用上昇の原因から利益を得る企業を探します。

例えば、材料メーカーが値上げできても施工会社は人件費を吸収できず苦しいかもしれません。反対に、保守・交換需要を継続課金で取れる会社は、工事量の増加を利益へつなげやすい場合があります。

支出項目を分解し、どの段階に価格決定力があるかを確認します。

株の利益は、修繕積立口座へ移して初めて役に立つ

株が上がっても、含み益のままでは工事代を払えません。修繕予定の2年前から、必要額の一部を段階的に現金化します。利益が出ていれば修繕積立へ移し、出ていなければ家賃からの積立で予定を守ります。

「修繕費が上がったから建材株を買う」のではなく、日頃から価格転嫁力のある企業へ分散し、利益が出たら物件へ戻す。時間をかけた仕組みにすることが大切です。

大家さんが払う側と、株主として受け取る側の両方へ立つ。これが修繕費インフレを完全ではなくても和らげる考え方です。

修繕費増加の例 金額・率
当初見積り 1,000万円
15%上昇後 1,150万円
不足額 150万円
株式2,500万円で必要な税引前利益率 6.0%
課税後150万円を得る単純必要利回り 約7.5%

 

参考資料

日本銀行 展望レポート・ハイライト(2025年10月)

総務省 消費者物価指数

金融庁 NISAを知る

※個別銘柄の推奨ではありません。株価、配当、為替、税制、物件条件、融資条件等によって結果は変わります。重要な判断は一次資料と専門家へご確認ください。