東雲結子:「新築アパートなら、固定資産税がずっと半分なんですよね?」
税理士石井:「“ずっと”ではありません。一般住宅は3年度、3階建て以上の耐火・準耐火住宅は5年度が基本です」
東雲結子:「あれ、6年目から急に本気の税額が来るんですか?」
税理士石井:「そうです。しかも半分になるのは家屋の固定資産税で、土地や都市計画税は別です」
東雲結子:「うわぁ、収支表で納税通知書の合計を半分にしていました」
税理士石井:「そこは直しましょう。減額対象部分だけを分けて計算します」
東雲結子:「来年も延長されるなら、今のままで大丈夫?」
税理士石井:「11月時点では延長要望です。6年目以後の本来税額でも返済できる物件かを先に見ましょう」
新築アパートの事業計画で、意外に大きな影響を持つのが固定資産税の新築軽減です。一定の要件を満たす新築住宅は、居住部分のうち1戸当たり120平方メートルまでに相当する家屋の固定資産税が2分の1になります。一般の住宅は3年度分、3階建て以上の中高層耐火・準耐火住宅は5年度分です。
現行制度は2026年3月31日までに新築された住宅が対象とされ、国土交通省は2026年4月1日から2028年3月31日まで2年間延長するよう要望しています。大家さんには非常に関係の深い制度ですが、軽減期間中の税額だけで収支を作ると、制度が終わった後に手残りが急に減ります。
賃貸アパートも対象になり得る。ただし1戸ごとの床面積を確認する
この制度はマイホームだけのものではありません。2026年3月31日までに新築される現行制度では、住宅部分の床面積が原則50平方メートル以上280平方メートル以下であることが要件で、一戸建て以外の貸家住宅は40平方メートル以上が下限です。共同住宅は、廊下や階段などの共用部分を各戸へ按分した面積で判定します。
ワンルームの専有面積だけを見ると40平方メートル未満でも、共用部分の按分を含めて要件を満たす場合があります。反対に、「10戸のアパートだから建物全体で判定する」と考えるのは誤りです。独立して区画された住戸ごとに確認する必要があります。
半分になるのは「納税通知書の総額」ではない
減額対象は、新築家屋の居住部分に係る固定資産税です。店舗併用住宅なら店舗部分は対象外で、住宅部分も1戸当たり120平方メートルまでが対象です。土地の固定資産税と、家屋・土地の都市計画税は、この新築軽減の対象ではありません。
納税通知書の合計を2分の1にすると、土地分と都市計画税まで誤って減らしてしまいます。新築時の収支表では、土地固定資産税、家屋固定資産税、都市計画税を分け、家屋固定資産税の対象部分だけに軽減を反映します。
10戸の新築アパートなら、軽減効果が数百万円になることもある
説明用に、3階建ての準耐火アパートで、各戸の床面積要件を満たし、減額対象となる居住部分の固定資産税が年180万円だと仮定します。5年間、税額の2分の1が減額されるなら、単純化した軽減額は年90万円、5年間で450万円です。
実際の税額は評価額、評価替え、床面積の按分、端数処理などで変わります。それでも、450万円規模の差が出る可能性があるなら、制度を確認する価値は十分にあります。問題は、この450万円を「恒久的な利益」と思わないことです。
金融機関へ出す収支表は、6年目以後の税額を基準にする
軽減期間中は手残りが多く見えます。しかし、5年軽減の物件なら6年度目から固定資産税が増えます。その時期に大規模修繕や金利見直しが重なることもあります。
私は、新築物件の収支を確認するとき、最初の5年と6年目以後を分けます。融資返済に耐えられるかを見るDSCR(債務返済余裕率)は、本来税額へ戻った後でも確認します。軽減中だけ黒字で、終了後は修繕積立ができない物件なら、価格か融資条件を見直すべきです。
2025年11月の判断は「延長を期待しつつ、延長なしでも成立させる」
国土交通省は2年間の延長を要望していますが、11月時点では確定ではありません。2026年4月以後に完成予定の物件は、延長がなかった場合の税額も資金計画へ入れます。
また、工事完成日を税制だけで無理に前倒しするのも危険です。検査、引渡し、入居募集に無理が生じれば、空室や施工不良のほうが税額差より高くつきます。税制は大切ですが、建築の品質と入居開始の確実性を優先したいところです。
| 確認項目 | 現行制度(2025年11月時点) |
| 減額される税 | 家屋の固定資産税(対象となる居住部分) |
| 減額割合 | 2分の1 |
| 一般住宅の期間 | 新たに課税される年度から3年度分 |
| 3階建て以上の耐火・準耐火住宅 | 新たに課税される年度から5年度分 |
| 対象外 | 土地の固定資産税、都市計画税、店舗等の非居住部分 |
| 国交省要望 | 2026年4月1日から2年間延長 |
参考資料
国土交通省「令和8年度税制改正要望事項」新築住宅に係る税額の減額措置
※ 重要:2025年11月時点では、国土交通省の延長要望は確定した改正ではありません。年末の税制改正大綱、法案、成立法および適用要件を再確認してください。個別の税務判断は、取引日・資産・地域・契約内容により異なります。































