東雲結子:「地方の空き地を450万円で売れそうです。安く売るので、税金はほとんど出ませんよね?」

税理士石井:「取得費が分からず概算取得費5%になると、譲渡益は意外に大きくなります」

東雲結子:「あっ、450万円の5%だと取得費は22万5,000円……」

税理士石井:「測量や仲介費を引いても、利益が残る可能性があります」

東雲結子:「そこで100万円控除が使える?」

税理士石井:「要件を満たせば使えます。ただし、市区町村の確認書と買主の利用意向が必要です」

東雲結子:「売ってから“空き地でした”と説明するだけでは足りないんですね」

税理士石井:「はい。低額物件ほど、税金より先に書類の準備が勝負になります」

 

地方の空き地、老朽空き家、空き店舗は、売却価格が低い一方で、測量、解体、仲介などの費用負担が重く、市場に出しにくいことがあります。こうした低未利用土地の流通を促すため、個人が一定の土地等を売却した場合、長期譲渡所得から最大100万円を控除する特例があります。

現行制度は2025年12月31日までの譲渡が対象です。国土交通省は、2026年1月1日から2028年12月31日まで3年間延長するよう要望しています。制度が延びるかは重要ですが、それ以上に、対象要件と市区町村の確認手続きを早く知っておく必要があります。

売値が低くても、取得費が不明なら譲渡益は大きく見える

親から相続した古い土地などで、購入時の契約書が見つからないことがあります。取得費が分からない場合、譲渡価額の5%相当額を概算取得費として計算する取扱いがあります。450万円で売った土地なら、取得費は22万5,000円です。

仮に仲介・測量等の譲渡費用が30万円なら、単純な譲渡益は397万5,000円です。売値が450万円だから利益が小さいとは限りません。低未利用土地の100万円控除を使えれば、課税対象となる長期譲渡所得を297万5,000円まで減らせる計算です。

最大100万円控除の税額効果は、一般の長期譲渡なら最大約20万3,150円

一般の長期譲渡所得に所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%、合計20.315%を用いる単純計算では、100万円控除による税負担の差は最大20万3,150円です。

100万円そのものが戻る制度ではありません。譲渡益が60万円なら控除できるのは60万円までです。また、適用する税率や他の特例との関係で実際の差額は変わります。とはいえ、売却価格が数百万円の土地で20万円前後の差は無視できません。

価格要件は原則500万円以下。一部区域は800万円以下

現行制度では、都市計画区域内の一定の低未利用土地等を500万円以下で売ることが基本です。市街化区域、用途地域設定区域など一定の場合は800万円以下まで対象が拡充されています。

この価格は手取り額ではなく譲渡対価で判定します。解体費を売主が負担したから実質500万円以下、という考え方がそのまま通るとは限りません。売買契約書の金額と負担関係を整理します。

「空き地だった」だけでは使えない。買主の利用と市区町村の確認が必要

特例の対象は、譲渡前に低未利用土地等であり、譲渡後に買主が利用する意向を持つ土地です。市区町村が発行する低未利用土地等確認書を確定申告へ添付します。

売った後に買主が何へ使うか分からない、親族間売買である、所有期間が5年以下である、といった場合は対象外となることがあります。買付けが入った段階で市区町村へ必要書類を確認し、契約書、現況写真、広告資料、買主の利用計画を揃えておくと手続きが進みやすくなります。

2026年に売るなら、延長待ちだけでなく保有コストも比較する

2025年内に売れば現行期限内、2026年に売れば延長が成立するかを確認する必要があります。では、税制を待って売却を遅らせればよいのか。ここは保有コストとの比較です。

固定資産税、草刈り、倒壊防止、火災保険、近隣対応が年15万円かかる土地なら、1年待つだけで100万円控除による税効果約20万円の多くが消えます。逆に、買主がいない土地で急いで値下げすれば、税効果以上に売値が下がることもあります。税制の期限だけでなく、売値、保有費、買主の確実性を一緒に見ます。

説明用の売却例 金額
譲渡価額 450万円
概算取得費(5%) 22万5,000円
譲渡費用 30万円
100万円控除前の譲渡益 397万5,000円
100万円控除後 297万5,000円
税額差の目安(20.315%の単純計算) 20万3,150円

 

参考資料

国土交通省「令和8年度税制改正要望事項」低未利用地の特例措置

国税庁「低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の100万円控除」

国土交通省「低未利用土地の100万円控除制度の利用状況」

※ 重要:2025年11月時点では、国土交通省の延長要望は確定した改正ではありません。年末の税制改正大綱、法案、成立法および適用要件を再確認してください。個別の税務判断は、取引日・資産・地域・契約内容により異なります。