東雲結子:「1億円の土地を買うので、登録免許税は150万円ですね」

税理士石井:「その1億円は売買価格ですか。それとも固定資産税評価額ですか?」

東雲結子:「えっ、売買価格に1.5%ではないんですか?」

税理士石井:「原則として、土地の固定資産税評価額を基礎に計算します」

東雲結子:「そう言われると、最初から計算の土台が違いました」

税理士石井:「さらに、1.5%は2026年3月末までの特例です。4月決済なら延長確認が必要です」

東雲結子:「では、延長を信じて50万円少なく用意しておけば……」

税理士石井:「いえいえ。決済日に足りないと困ります。本則2%で用意して、軽減が続けば余る形にしましょう」

 

不動産購入の諸費用は、仲介手数料や不動産取得税に目が向きがちですが、決済日に必要となる登録免許税も小さくありません。売買による土地の所有権移転登記は、本則2%に対し、現行の特例では1.5%に軽減されています。

この特例の現行期限は2026年3月31日です。国土交通省は、2026年4月1日から2029年3月31日まで3年間延長するよう要望しています。土地評価額が大きい一棟物件では、0.5ポイントの差でも数十万円、数百万円になります。

税率を掛けるのは、売買価格ではなく固定資産税評価額が基本

登録免許税の計算で最初に確認したいのは課税標準です。土地売買の所有権移転登記では、原則として固定資産課税台帳に登録された価格、いわゆる固定資産税評価額を基礎にします。

売買価格1億円、固定資産税評価額6,000万円なら、1.5%を掛けるのは原則6,000万円側です。物件概要書の売値だけで諸費用を計算せず、評価証明書や名寄帳で土地・建物の評価額を確認します。

評価額1億円なら、1.5%と2%で50万円違う

土地の固定資産税評価額が1億円と仮定します。軽減税率1.5%なら登録免許税は150万円。本則2%なら200万円です。差額は50万円になります。

この50万円は、物件価格に比べれば小さく見えるかもしれません。しかし、決済時には司法書士報酬、融資手数料、仲介手数料、火災保険料などが同時に出ていきます。手元資金が薄い計画では、50万円の見込み違いが運転資金へ響きます。

軽減は「土地」の登記。建物部分まで1.5%になるわけではない

国土交通省の延長要望は、土地の所有権移転登記等の軽減です。建物の所有権移転登記には別の税率と特例があり、土地と同じ計算にはなりません。

土地・建物をまとめて1億円で買う場合でも、土地評価額、建物評価額、登記原因、法人・個人、住宅用家屋の要件などを分けます。「土地建物すべて1.5%」という資金計画にしないことが大切です。

期限判定は、売買契約日より登記の受付時期が重要

2026年3月に売買契約を結び、4月に決済・所有権移転登記を行う場合、契約が3月だから現行軽減を使えるとは限りません。登録免許税は登記申請時に納付する税金であり、適用期限内に受け付けられる登記かを確認します。

年度またぎの決済では、司法書士へ「延長されない場合の税額」と「延長された場合の税額」を早めに出してもらうのが実務的です。融資実行額や自己資金の準備も、この二つを見て決めます。

50万円の税差で、悪い物件を急いで買わない

税制の期限が近づくと、「3月までに決済したほうが得」と考えます。確かに税額差はあります。ただ、賃料の確認、境界、越境、土壌、接道、融資条件の調査を急いで省略する理由にはなりません。

家賃が月5万円低かっただけで、年間60万円です。登録免許税50万円の差より、1年で大きくなります。税制は決済日を調整する材料にはなりますが、購入判断の主役は物件収支とリスクです。

土地の固定資産税評価額1億円の例 登録免許税
特例税率1.5% 150万円
本則税率2% 200万円
差額 50万円

 

参考資料

国土交通省「令和8年度税制改正要望事項」土地の所有権移転登記等に係る特例措置

※ 重要:2025年11月時点では、国土交通省の延長要望は確定した改正ではありません。年末の税制改正大綱、法案、成立法および適用要件を再確認してください。個別の税務判断は、取引日・資産・地域・契約内容により異なります。