東雲結子:「インフレなら不動産は値上がりします。大家さんは安心ですね!」
税理士石井:「家賃は今月から上がりますか」
東雲結子:「うーん、更新までは難しいです」
税理士石井:「修繕費と電気代は?」
東雲結子:「そちらは待ってくれません」
税理士石井:「金利が上がれば返済も先に増えることがあります」
東雲結子:「あれ? インフレに強いはずなのに、通帳は先に弱くなる?」
税理士石井:「不動産は長期では強くても、家賃が追いつくまでの時間差を耐える必要があります」
不動産は一般に、インフレに強い資産といわれます。建築費や土地価格が上がれば既存物件の希少性が高まり、家賃を改定できれば収入も増えます。固定金利の借入なら、返済額は名目上変わらず、物価上昇によって実質負担が軽くなる面もあります。
しかし、実務では家賃より先に修繕費・保険・光熱費が上がります。変動金利なら返済も増えます。不動産は自動的なインフレヘッジではなく、家賃がコストへ追いつくまでの時間を管理できる人にとって強い資産です。
経費10%上昇、家賃据置きでNOIは4%減る
年間家賃700万円、運営費200万円、NOI500万円の物件を考えます。運営費が10%上がり220万円になり、家賃を据え置けばNOIは480万円。4%減少します。
家賃を3%上げて721万円にできれば、NOIは501万円となり、ほぼ元へ戻ります。インフレ率と同じだけ家賃を上げればよいのではなく、経費構成と家賃総額の比率で必要な改定率が決まります。
家賃改定が1年遅れれば、その間の20万円は戻りません。更新月と相場家賃を一覧にし、改定できる部屋から順番に進めます。
固定金利はインフレヘッジ、変動金利は逆回転する
固定金利の借入は、物価と家賃が上がっても返済額が変わりません。時間とともに返済負担の比率が下がるため、インフレ局面では強い構造です。
一方、変動金利は、物価上昇に対応して金融政策が引き締まると返済負担が増える可能性があります。2025年10月末、日本銀行は政策金利を0.5%程度で維持しましたが、会合では0.75%への引上げ意見も出ていました。今後の金利経路は不確実です。
家賃改定の速度より返済増の速度が速い物件は、インフレに弱くなります。固定・変動、残高、次回見直し日を確認します。
土地価格上昇と、賃貸収益の増加は別の話
2025年の地価公示では、全国の住宅地・商業地等が4年連続で上昇し、上昇幅も拡大しました。物件価格が上がると、保有者の含み益は増えます。
しかし、含み益は返済や修繕に使えません。家賃が上がらず、金利と経費だけ増えれば、価格は高いのに手残りが少ない物件になります。
インフレヘッジを評価するときは、資産価格、NOI、返済後キャッシュフローを分けます。売らない限り、経営を支えるのはNOIです。
株を組み合わせるなら、家賃が追いつくまでの収益源を持つ
不動産の弱点は、家賃改定に時間がかかることです。株式では、価格転嫁が早い企業、エネルギー・資源、金融、インフラなど、インフレ局面で利益が伸びる可能性のある企業を組み合わせる方法があります。
ただし、インフレ関連株も買値が高ければ損をしますし、金利上昇や景気後退で下がることがあります。株で不動産の損失を完全に相殺するのではなく、収益源の反応速度を分けると考えます。
不動産は家賃がゆっくり追いつく。株は企業利益が先に動く場合がある。この時間差を組み合わせることが、ハイブリッドのインフレ対策です。
| 年間収支の例 | 通常 | 経費10%上昇・家賃据置 | 家賃3%上昇+経費10%上昇 |
| 家賃 | 700万円 | 700万円 | 721万円 |
| 運営費 | 200万円 | 220万円 | 220万円 |
| NOI | 500万円 | 480万円 | 501万円 |
参考資料
※個別銘柄の推奨ではありません。株価、配当、為替、税制、物件条件、融資条件等によって結果は変わります。重要な判断は一次資料と専門家へご確認ください。































