東雲結子:「証券口座に3,000万円あります。自己資金3,000万円として見てもらえますよね?」
税理士石井:「中身は何ですか」
東雲結子:「現金500万円、世界株1,500万円、個別株1,000万円です」
税理士石井:「その個別株が40%下がったら、合計はいくらになりますか」
東雲結子:「うーん……2,600万円くらい?」
税理士石井:「世界株も20%下がるケースなら、2,300万円です」
東雲結子:「同じ3,000万円でも、預金とは見え方が違うんですね」
税理士石井:「はい。評価額より、必要時にいくら確実に使えるかを説明します」
株式投資をしている大家さんは、金融資産を融資審査のプラス材料として使いたいと考えるでしょう。実際、現預金や上場有価証券は、返済余力や追加自己資金の背景になります。
ただし、証券口座の3,000万円と普通預金3,000万円は同じではありません。株は価格が動き、売却時には税金が発生し、信用取引や担保設定があれば自由に使えないこともあります。金融機関ごとに評価方法は異なりますが、銀行が理解しやすい形へ整理することはできます。
時価3,000万円を、そのまま自己資金と考えない
現金500万円、世界株インデックス1,500万円、個別株1,000万円を持っているとします。世界株が20%下落し、個別株が40%下落すると、1,200万円+600万円+現金500万円=2,300万円です。
評価額3,000万円に対して700万円減ります。さらに、課税口座で含み益がある株を売れば税金も考慮します。金融機関がどの程度評価するかは一律ではありませんが、現金化した場合の金額を保守的に示すほうが信頼されます。
「今の時価」だけでなく、「30%下落時」「売却税引後」「担保設定控除後」の三つを用意すると、流動性の説明ができます。
NISAは税務上有利でも、値下がりしない口座ではない
NISA口座の利益は非課税ですが、株価変動は課税口座と同じです。銀行へ説明する際、NISAだから安全資産と考えないようにします。
一方、NISA資産を売却しても制度上の利益課税がないため、税引後の現金化額を読みやすいメリットがあります。ただし、売却した簿価分の非課税保有限度額が再利用できるのは翌年以降です。
NISA、課税口座、預金を分けた一覧にし、売却可能額と取得目的を記載します。
信用取引・証券担保ローンは必ず負債側へ書く
証券口座に3,000万円あっても、信用取引の建玉や証券担保ローンが1,000万円あれば、純資産は別です。融資審査で証券資産だけを見せ、関連借入を後から説明すると、資料全体の信頼性を落とします。
銀行は価格変動リスクだけでなく、株安時に不動産側の現金を追加投入する可能性を見ます。株の借入を使っていないことは、大家さんにとって立派な信用材料です。
金融資産一覧には、時価、取得価額、含み損益、口座区分、担保・借入の有無を記載します。
証券資産を見せる目的は、頭金の代わりだけではない
株を売って頭金へ入れなくても、手元流動性が厚いことは、空室・修繕・金利上昇への耐性を示します。自己資金を多く入れるか、金融資産を残して安全余力を見せるかは、融資条件と物件収支を比較して決めます。
例えば、金利を下げるために株を全て売り頭金へ入れた結果、購入後の現金がほとんど残らなければ、経営としては弱くなります。金融機関へ「購入後もこれだけ流動性が残る」と説明できることに価値があります。
証券資産は、売るためだけの資産ではありません。融資後の安全性を証明する背景資産としても働きます。
| 金融資産3,000万円のストレス例 | 現在 | 下落ケース |
| 現金 | 500万円 | 500万円 |
| 世界株インデックス | 1,500万円 | 1,200万円(20%下落) |
| 個別株 | 1,000万円 | 600万円(40%下落) |
| 合計 | 3,000万円 | 2,300万円 |
参考資料
※個別銘柄の推奨ではありません。株価、配当、為替、税制、物件条件、融資条件等によって結果は変わります。重要な判断は一次資料と専門家へご確認ください。































