東雲結子:「同じ物件なのに、A銀行は2%、B銀行は2.5%でした。0.5%なら誤差ですよね?」
税理士石井:「1億円を25年で借りると、年間返済は約30万円違います」
東雲結子:「えっ、毎年30万円?」
税理士石井:「単純な返済総額では、約740万円の差です」
東雲結子:「うわぁ……属性って、見えない自己資金みたいですね」
税理士石井:「まさにそうです。信用力が高いほど、同じ物件から残る現金が増えます」
東雲結子:「では、年収を上げればいい?」
税理士石井:「年収だけでなく、現金、返済実績、決算の透明性まで含めて育てます」
不動産投資では、物件の利回りばかりが注目されます。しかし、同じ物件でも、誰が借りるかによって金利、期間、自己資金、保証条件が変わります。大家さんの属性・信用力は、購入価格には表示されないものの、毎年の手残りへ直接効く「無形の自己資本」です。
信用力を最大化するとは、無理に借入額を増やすことではありません。安い金利、長い期間、柔軟な担保条件を引き出しながら、次の融資余力も残すことです。
金利0.5%差は、利回り0.5%差より重いことがある
1億円を25年、元利均等で借りると仮定します。金利2%の年間返済は約509万円、2.5%では約538万円。差は年約30万円です。
25年間の単純な支払差は約743万円です。物件の年間手残りが200万円なら、30万円は15%を占めます。表面利回りを0.3%上げるために価格交渉する一方、融資条件を詰めずに0.5%高い金利を受け入れると、努力の方向が逆になります。
さらに、融資期間が20年か30年かで毎月返済は大きく変わります。信用力は金利だけでなく、期間と自己資金にも現れます。
金融機関が見たいのは、年収より「返せる物語」
会社員の年収は重要ですが、それだけで何棟も借りられるわけではありません。物件のNOI、既存借入の返済、手元流動性、過去の空室・滞納、修繕計画、税金の支払い状況を合わせて見られます。
銀行担当者へ「年収1,200万円です」と伝えるだけでは、個人の給与で物件赤字を埋める計画に見えることがあります。物件単体で返済でき、給与は最後の安全余力であることを示したほうが強い説明になります。
信用力とは、収入の大きさより、返済原資とリスク管理を一貫して説明できる力です。
一棟目で属性を使い切らない
最初の物件で頭金をほとんど使い、返済比率の高い短期融資を組むと、二棟目の選択肢が狭くなります。一棟目の購入価格だけでなく、購入後に残る現金、DSCR、次の銀行へ見せられる実績まで考えます。
一棟目は、利益を得る物件であると同時に「私はこの規模の賃貸経営を管理できる」という実績資料です。入居率、家賃回収、修繕、月次試算表を整え、1年後に良い成績を見せられれば、次の融資条件へつながります。
高いレバレッジで一気に買うより、信用力を落とさず、融資の選択肢を増やす買い方が、結果として規模拡大を速めることがあります。
属性を守る日常管理が、最も利回りの高い投資
税金や社会保険料の滞納、カード・ローンの延滞、決算書の未払金放置、個人と法人の資金混同は、融資時に説明が難しくなります。大きな設備投資より、毎月の帳簿、納税、返済を乱さないことのほうが融資条件へ効く場合があります。
また、証券資産や預金がある場合も、株価上昇時の評価額だけでなく、下落時にどれだけ現金が残るかを示します。信用力は一度作って終わりではなく、決算と返済実績の積み重ねです。
利回りを上げる方法は、家賃を上げる、経費を下げるだけではありません。借入条件を良くすることも、確実に手残りを増やす経営改善です。
| 1億円・25年返済 | 金利2.0% | 金利2.5% | 差 |
| 年間返済額 | 約509万円 | 約538万円 | 約30万円 |
| 25年間の単純支払総額 | 約1億2,716万円 | 約1億3,459万円 | 約743万円 |
参考資料
※個別銘柄の推奨ではありません。株価、配当、為替、税制、物件条件、融資条件等によって結果は変わります。重要な判断は一次資料と専門家へご確認ください。































