東雲結子:「株も上がり、不動産も上がりました。両方そのまま持つのが一番ですよね?」

税理士石井:「今の資産配分は、最初に決めた形のままですか」

東雲結子:「えーっと……株が増えて、現金が少し減っています」

税理士石井:「では、資産は増えていても、修繕への耐久力は下がっているかもしれません」

東雲結子:「増えたのに弱くなることもあるんですか」

税理士石井:「あります。上がった資産へ偏りすぎると、次の下落の影響が大きくなります」

東雲結子:「なるほど。売るのは弱い資産ではなく、増えすぎた資産?」

税理士石井:「そうです。価格の予想ではなく、全体のバランスを元へ戻すために売ります」

 

相場が良いときは、何も売らずに持ち続けるのが正解に見えます。株は含み益、不動産は査定上昇。通帳以外の数字が大きくなり、自分の投資判断がすべて正しかったような気持ちにもなります。

しかし、資産が増えた時ほど、どこに偏ったかを確認する必要があります。株式が増えすぎれば価格変動が大きくなり、不動産が増えすぎれば流動性が下がります。売却は相場の天井を当てるためではなく、次の不況でも動ける形へ戻すために行います。

資産額ではなく、三つの比率を見る

当初、物件の純資産1億円、株式3,000万円、現金2,000万円、合計1億5,000万円だったとします。比率は不動産67%、株20%、現金13%です。

その後、物件の純資産が1億500万円、株が5,000万円へ上がり、物件購入や修繕で現金が1,500万円へ減ったとします。合計は1億7,000万円へ増えましたが、株29%、現金9%です。

資産は2,000万円増えているのに、株価下落と急な修繕へ同時に耐える力は低下しています。このようなときは、株の一部を売り、現金または借入返済へ移す意味があります。

株を1,600万円売ると、元の比率へ近づく

合計1億7,000万円に対して、株式比率を20%へ戻すなら目標額は3,400万円です。現在5,000万円なので、単純計算では1,600万円を減らします。

その全額を現金へ移せば、現金は3,100万円。次の物件購入、大規模修繕、株価急落時の再投資へ使える余力が戻ります。もちろん、課税口座で含み益があれば税金が発生します。売却額ではなく税引後資金で計画します。

一度に売らず、四半期ごとに400万円ずつ減らす方法もあります。リバランスは相場観ではなく、偏りを小さくする作業です。

不動産を売る判断は、含み益より「自己資本の働き」で

株は一部売却できますが、不動産は一棟単位です。そのため、売却候補は価格上昇率だけでなく、現在の自己資本に対する手残りで選びます。

購入時に自己資金1,000万円だった物件でも、元金返済と価格上昇で自己資本が4,000万円になっているかもしれません。年間手残りが120万円なら、現在自己資本に対する現金利回りは3%です。売却して3,500万円を回収し、より高い収益の物件や株へ移せるなら、保有継続を見直す余地があります。

「購入時利回りが高かったから残す」ではなく、今ある自己資本が何%働いているかを見ます。

売却後の使い道がなければ、急いで売らない

リバランスは売ること自体が目的ではありません。株を売って現金のまま長期間置くのか、借入を減らすのか、次の物件を買うのか。資金の行き先が曖昧なら、税金だけ先に出ていきます。

私は、売却候補を決める際に「売却後90日以内に何へ移すか」を書く方法が実務的だと思います。借入返済、修繕資金、次の物件、世界株への分散など、目的を先に決めます。

株高・不動産高の局面で大切なのは、もっと上がる資産を当てることではありません。上がった結果、崩れたバランスを直し、次の機会へ動ける現金を作ることです。

資産区分 当初 上昇・支出後 当初比率へ戻す考え方
不動産純資産 1億円 1億500万円 収益性と出口で判断
株式 3,000万円 5,000万円 約1,600万円を減らす案
現金 2,000万円 1,500万円 株売却後3,100万円へ
合計 1億5,000万円 1億7,000万円 –

 

参考資料

金融庁 NISAを知る

国税庁 上場株式等の譲渡課税

国土交通省 令和7年地価公示

※個別銘柄の推奨ではありません。株価、配当、為替、税制、物件条件、融資条件等によって結果は変わります。重要な判断は一次資料と専門家へご確認ください。