東雲結子:「不動産は融資、株は信用取引。両方レバレッジを使えば、資産形成が倍速ですね!」

税理士石井:「うーん、倍速になるのは利益だけではありません」

東雲結子:「損も倍速?」

税理士石井:「それに加えて、株は値下がりすると追加資金を求められることがあります」

東雲結子:「えっ、物件の空室と株の追加入金が同じ月に来ることも?」

税理士石井:「あります。しかも、どちらも大家さんの現金を見ています」

東雲結子:「ああ……借金を二つ持つというより、同じ財布へ二方向から請求が来るんですね」

税理士石井:「そうです。不動産で十分に借りているなら、株は現物で持つほうが全体は安定します」

 

不動産投資の大きな魅力は、金融機関の融資を使えることです。自己資金2,000万円で1億円規模の資産を持ち、入居者の家賃から返済を進められる。これほど強い仕組みは、株式投資にはなかなかありません。

だからこそ、株でも信用取引や証券担保ローンを重ねると、資産全体が一気に不安定になります。不動産の空室・修繕と株の急落が同時に起きたとき、どちらにも現金が必要になるからです。不動産と株を組み合わせるなら、レバレッジの役割分担まで設計したいところです。

不動産だけでも、すでに十分なレバレッジが掛かっている

1億2,000万円の物件を、自己資金2,400万円、借入9,600万円で購入すると、LTVは80%です。年間NOIが600万円、年間返済が約426万円なら、DSCRは約1.41倍、返済後の現金は約174万円です。

ここで家賃下落や空室によりNOIが10%下がると540万円。返済後は約114万円まで減ります。それでも返済は続きますし、大規模修繕があれば別に現金が必要です。

この状態で株にも借入を使うと、不動産の収支悪化を補うはずの金融資産まで、逆に現金を要求する側へ回ります。

株の30%下落が、自己資金を60%減らすこともある

株式2,000万円を、自己資金1,000万円と借入1,000万円で保有したとします。株価が30%下がると、時価は1,400万円。借入1,000万円を差し引いた自己資本は400万円です。

株価は30%しか下がっていないのに、自分の1,000万円は400万円となり、60%減っています。実際の信用取引では保証金率、銘柄規制、証券会社の条件によって追加保証金や強制決済の可能性があります。下落を待ちたいのに、待てないことが最大の弱点です。

不動産は毎日値洗いされませんが、株の信用取引は市場価格がその日の資金繰りへ直結します。二つのレバレッジは性格が違うのです。

不動産の借金は長期、株は無借金で持つ

私は、大家さんが不動産で大きな借入を使っているなら、株は原則として現物で持つ設計が分かりやすいと思います。株の役割は、流動性、成長性、地域・業種の分散です。そこへ借金まで重ねる必要はありません。

株を現物で持てば、30%下落しても売るか待つかを自分で決められます。配当が続き、企業価値が毀損していなければ、家賃から買い増す選択肢もあります。

不動産の借入で資産形成を加速し、株は無借金で資産全体を安定させる。役割を分けるほうが、ハイブリッド投資の強みが残ります。

例外は「返済原資が株価と無関係」と説明できる場合だけ

証券担保ローン等を使う場面が全くないとは言いません。納税まで数週間、売却代金の入金まで一時的に橋渡しするなど、返済原資と時期が明確な場合は検討余地があります。

しかし、「株が上がったら返す」「配当で何とかする」という返済計画は、相場次第です。借入期間、担保掛目、株価下落時の追加担保、途中返済条件まで確認しなければなりません。

借金を使うかどうかは期待利回りではなく、最悪の月に現金を出せるかで決めます。不動産と株の両方が苦しい月でも、売却を迫られない設計が、長く儲けるための土台です。

株式投資の例 当初 株価30%下落後
株式時価 2,000万円 1,400万円
株式取得の借入 1,000万円 1,000万円
自己資本 1,000万円 400万円
自己資本の減少率 – 60%

 

参考資料

日本取引所グループ 信用取引関係の約諾書・規制

日本取引所グループ 信用取引に関する規制

※個別銘柄の推奨ではありません。株価、配当、為替、税制、物件条件、融資条件等によって結果は変わります。重要な判断は一次資料と専門家へご確認ください。