東雲結子:「家賃の手残りを株へ入れて、株が上がったら次のアパートを買う。完璧な循環を思いつきました!」
税理士石井:「そうですね。考え方はとても良いです。ただ、外壁工事のお金まで循環へ参加していませんか」
東雲結子:「うーん……通帳は一つなので、少し混ざっています」
税理士石井:「そこを分けないと、株が下がった年に修繕が来て、安値で売ることになります」
東雲結子:「えーっと、それは循環というより、資金繰りがぐるぐる回っているだけですね」
税理士石井:「はい。株へ入れるのは、使う時期を5年以上待てるお金だけにしましょう」
東雲結子:「では、株の利益を物件へ戻す時期も決めておく?」
税理士石井:「その通りです。上がったら考えるのではなく、頭金がいくら貯まったら戻すかを先に決めます」
不動産と株を両方持つ意味は、単に資産を二つに分けることではありません。家賃という比較的定期的なキャッシュフローを株式市場へ送り、株で育った資金を次の物件の自己資金へ戻す。さらに、新しい物件から生まれた家賃をまた株へ回す。うまく設計すれば、不動産の安定収入と株の成長性が互いを押し上げます。
ただし、循環させてよいお金と、絶対に循環へ入れてはいけないお金があります。大規模修繕、納税、返済予備資金まで株へ入れると、相場の都合で大家業が止まります。この記事では、相乗効果を生む循環と、資金繰りを壊す循環を分けます。
家賃の手残りを「三つの仕事」に分ける
例えば、物件から毎月60万円の税引前キャッシュフローが出ているとします。ここから20万円を修繕・納税、20万円を次の物件の現金、20万円を長期の株式投資へ回す設計です。
株式部分を毎月20万円、5年間、年5%で運用できたと仮定すると、元本1,200万円に対して約1,360万円になります。増加は約160万円です。年5%はあくまで説明用で、実際には途中で30%下がることもあります。それでも、修繕費と頭金の現金を別に確保していれば、下落時に売る必要がありません。
大切なのは、株の利回りを高くすることより、株を長く持てる資金構造を先に作ることです。大家さんは家賃収入がある分、下落相場でも積立を続けやすい。この強みは、修繕資金まで株へ入れないことで初めて活きます。
5年後の頭金を株だけに任せない
株式部分が約1,360万円になっていても、物件を買う直前に相場が30%下がれば約952万円です。元本1,200万円を下回ります。したがって、購入時期が1年以内へ近づいた資金は、株から現金へ段階的に移します。
私は「次の物件を探し始めたら3分の1を現金化」「買付けを入れたら必要自己資金を全額現金化」のように、価格ではなく行動段階でルールを決める考え方が分かりやすいと思います。株価の天井は読めませんが、物件購入の予定は自分で決められるからです。
頭金を株だけで作ろうとせず、現金積立と株式積立を並行する。株が伸びれば購入時期が早まり、伸びなければ現金部分で予定を守る。これが無理のない循環です。
NISAは循環を速めるが、損失の使い道はない
2024年からのNISAは、年間投資枠が最大360万円、非課税保有限度額が1,800万円です。毎月20万円、年間240万円の投資なら、対象商品と枠の条件を満たせば成長投資枠の範囲内に収まります。
NISAで得た売却益は非課税なので、次の物件へ戻せる金額は課税口座より多くなります。先ほどの例で、約160万円の運用益が課税口座の譲渡益なら、単純計算の税負担は約32万5,000円。手元へ戻る総額は約1,328万円です。NISAなら制度上の非課税要件を満たす限り、この差が残ります。
一方、NISAの損失は課税口座の利益と損益通算できません。節税だけで投資先を決めず、長く持てる商品を置く器として使うべきです。
株の利益を物件へ戻したら、評価は「次の家賃」で行う
株を売った後にさらに上がると、どうしても「売らなければよかった」と感じます。しかし、その資金で買った物件が毎年120万円のキャッシュフローを生むなら、株の利益は消えたのではなく、家賃を生む資産へ形を変えています。
売却した株のその後ではなく、株から移した自己資金が不動産で何%働いたかを見ます。物件購入後の手残り、元金返済、土地値を合わせて評価すれば、乗り換えの成否を冷静に判断できます。
不動産と株の循環は、相場の当て物ではありません。使う時期が違うお金を分け、資産の役割を切り替える仕組みです。これができると、家賃と企業成長の両方が次の資産を作ってくれます。
| 毎月60万円の配分 | 月額 | 5年間の入金額 |
| 修繕・納税用 | 20万円 | 1,200万円 |
| 次の物件用現金 | 20万円 | 1,200万円 |
| 株式投資用 | 20万円 | 1,200万円 |
| 株式部分が年5%で推移した仮定 | – | 約1,360万円 |
参考資料
※個別銘柄の推奨ではありません。株価、配当、為替、税制、物件条件、融資条件等によって結果は変わります。重要な判断は一次資料と専門家へご確認ください。































