東雲結子:「資産は十分あります(言ってみたかったこのセリフ。。。)。アパートを売れば、いつでも現金になります」

税理士石井:「売却まで何か月を見ていますか?」

東雲結子:「うーん、良い買主が現れればすぐに……」

税理士石井:「融資、契約、決済があります。明日300万円必要でも、玄関だけ売ることはできません」

東雲結子:「それはそうですね。株なら一部だけ売れます」

税理士石井:「ただし、修繕費まで株にすると、暴落時に安値売りになります」

東雲結子:「現金、不動産、株を一緒の財布にしない?」

税理士石井:「そうです。使う時期ごとに三層へ分けると、不動産の弱点を株が補いやすくなります」

 

不動産の最大の強みは、毎月家賃を生み、融資を使って長期資産を作れることです。一方、必要なときにすぐ売れないという弱点があります。売却には査定、募集、交渉、買主融資、契約、決済が必要です。価格を下げれば早く売れるかもしれませんが、その代償は大きくなります。

株は市場が開いていれば一部を売却でき、現金化しやすい資産です。ただし、値動きがあります。そこで、不動産の流動性不足を株で補うためには、修繕資金まで株に入れるのではなく、使う時期に応じた三層の資金管理が必要です。

第一層は、1年以内に使う現金

固定資産税、保険料、原状回復、給湯器、当面のローン返済など、1年以内に使う可能性があるお金は現金で持ちます。株で増やす対象ではありません。

例えば年間固定支出が600万円、予定修繕が400万円なら、最低でも1,000万円程度は値下がりしない形で確保する考え方があります。もちろん必要額は戸数、築年数、借入条件で変わります。

この現金は利回りが低く見えますが、相場が下落した日に株を売らずに済むという大きな役割があります。現金の収益は利息ではなく、選択肢です。

第二層は、3年以上使わない上場資産

すぐには使わないものの、物件売却より早く現金化したい資金は、分散した株式やETFなどで運用する余地があります。

ただし、3年後に必ず使う頭金を株へ全額入れるのは危険です。株式市場は3年間でも大きく下落する可能性があります。購入時期を延ばせる資金、下落しても使わずに待てる資金に限ります。

上場資産の役割は、緊急資金ではなく「不動産よりは換金しやすい長期資産」です。この位置づけを曖昧にすると、株価が下がった日に修繕と物件購入が重なります。

第三層は、長期保有する不動産

不動産は、短期で売らず、家賃と元金返済で資産を育てる層です。売却まで時間がかかることを前提に、第一層と第二層で日々の資金需要を支えます。

この三層を作れば、不動産の価格が一時的に下がっても売らずに済みます。株が下がっても現金があるため待てます。どの資産にも弱い時期がありますが、役割を分けることで、弱い時期に無理な売却をしなくて済みます。

株は流動性が高いが、価格は安定していない

株を持っているから流動性が十分、と考えるのも危険です。1,200万円の株が30%下落すれば840万円です。1,000万円の工事予定があるなら、必要額を満たせません。

株式資産を「現在価値100%」で資金計画へ入れず、70%や60%へ下落したケースで確認します。特に、物件と同じ日本景気に連動する株だけを持っていると、不動産価格と株価が同時に悪化する可能性があります。

換金しやすさと、値下がりしにくさは別の性質です。現金と株を一緒に「流動資産」と呼んで終わらせず、役割を分けます。

資産額より「何年売らずに持てるか」を見る

総資産が大きくても、現金が少なく、返済と修繕が集中していれば経営は不安定です。反対に、資産額がまだ小さくても、2年間の固定支出と修繕を現金で払い、株と不動産を売らずに待てる人は強いです。

私は、資産配分を考えるとき「相場が悪い状態が2年続いても、どの資産も売らずに経営できるか」を確認します。不動産の弱点を株で補うというのは、株で一発利益を狙うことではなく、売却の自由度を少し増やすことです。

三層資金管理 主な役割 目安となる使途
第一層:現金 値下がりを避ける 1年以内の税金・返済・修繕
第二層:上場株式・ETF等 不動産より換金しやすい長期資産 3年以上使わず、延期できる資金
第三層:不動産 家賃と元金返済で長期成長 長期保有し、急いで売らない資産

 

参考資料

日本取引所グループ ETFの売買制度

金融庁 NISAを知る

※個別銘柄の推奨ではありません。株価、配当、為替、税制、物件条件等によって結果は変わります。重要な判断は一次資料と専門家へご確認ください。