東雲結子:先生、AI、半導体、防衛、造船。国策なら、やっぱり主役の会社を買うのが一番ですよね?

税理士石井:うーん、主役はすでに期待をかなり織り込んでいることがあります。

東雲結子:では、もう遅いのでしょうか……。

税理士石井:そうとは限りません。政策のお金が次に流れる部材、設備、工事、保守の会社を見ます。

東雲結子:えーっと、映画の主役ではなく、撮影を止められない裏方さんを探す感じですか?

税理士石井:まさにそれです。なくなると計画が止まる会社は、受注も価格交渉力も持ちやすいんです。

東雲結子:そういうことか。私は「AI」と書いてある会社を全部同じ箱に入れていました。

税理士石井:テーマ名ではなく、発注経路を追いましょう。大家さんの見積書を読む力が、そのまま使えますよ。

 

政策相場では、最初に大型株や知名度の高い主役銘柄が買われ、その後に関連企業へ資金が広がることがあります。2025年10月の高市政権発足後も、AI・半導体、防衛、造船、国土強靱化、サイバーセキュリティなどが意識されました。主役がすでに上がったあと、次に狙える会社をどう探すか。ここでは政策の名前からではなく、実際の発注先をたどります。

大家さんはこの考え方に向いています。建物の修繕では、元請け会社だけでなく、材料、設備、施工、点検、保守へお金が流れることを知っているからです。政策投資も同じで、一社だけが利益を独占するわけではありません。

政策資料を読んだら、次は「誰が注文書を出すのか」を見る

政府の方針に分野名が載っただけでは、上場企業の利益は増えません。予算が成立し、省庁、自治体、大企業が設備やサービスを発注して、初めて仕事が生まれます。まず、政府から直接受注する会社なのか、大手の下で部材や設備を供給する会社なのか、発注経路を図にします。

半導体なら製造装置、材料、検査、工場空調、電力。造船ならエンジン、ポンプ、塗料、鋼材、航海機器。防衛なら電子部品、通信、保守、サイバー。主役の一段下には、投資家からまだ注目されていない会社が残ることがあります。

受注残が増えても、供給できなければ利益にならない

仕事が多くても、工場が満杯、人手不足、原材料不足なら売上へ変換できません。受注残の増加だけでなく、生産能力、設備投資、納期、採用数を確認します。設備投資が大きい会社では、利益が出る前に借入と減価償却が増えることもあります。

物件の満室想定家賃が高くても、募集できない部屋があれば収入にならないのと同じです。受注残は将来売上の候補であって、現金ではありません。

「2番手」=小型株という意味ではない

2番手銘柄というと小さな会社を想像しがちですが、ここでいう2番手は政策資金の流れの二段目という意味です。大企業でも、政策の恩恵がまだ業績予想へ十分反映されていない会社はあります。反対に小型株でも、テーマ事業が売上の数%しかなければ、株価だけが先に走ることがあります。

私は、テーマ事業の売上構成、主要顧客、利益率、受注残を確認します。「関連している」ではなく、「会社全体の利益を動かす大きさか」を見ます。

買う前に、期待が何年分入っているかを考える

政策が数年間続くとしても、株価はその利益を先に織り込みます。PERや過去の利益成長率、株価上昇率を見て、今の価格が何年先まで期待しているのかを考えます。良い会社でも、買値が高ければ投資収益は低くなります。

主役銘柄が急騰した後、関連株も一斉に上がる局面では、監視リストへ入れて決算を待つ選択もあります。買わないことは機会損失ではなく、高値で資金を拘束しない経営判断です。

請求書を、株の一次情報に変える

大家さんは、設備の納期、見積価格、採用メーカーの変化を現場で見ています。給湯器が手に入りにくい、特定の管理システムが急に広がった、電気設備工事が増えた。こうした変化は、政策需要の現れかもしれません。

ただし、自分の一物件の経験を全国市場と混同しないよう、複数業者、決算資料、業界統計で確認します。現場感覚と数字をつなげることが、大家さんの株式投資を一段深くします。

追う順番 確認するもの 注意点
政策 予算・制度・期限 分野名だけで判断しない
発注 元請け・部材・設備・保守 誰が注文するか
供給 工場・人員・納期 受注を売上へ変えられるか
利益 利益率・CF・借入 株主に現金が残るか

 

参考資料

首相官邸 高市内閣基本方針

首相官邸 2025年10月21日記者会見