東雲結子:「日本の人口、また減ったそうですね。うーん……もう不動産投資は控えたほうがいいんでしょうか」
税理士石井:「心配になるのは分かります。ただ、人口が減った、だから賃貸需要も同じ割合で減る、と一気に結論づけるのは少し早いです」
東雲結子:「人が減るのに、部屋の需要は減らないんですか?」
税理士石井:「減る地域はあります。でも賃貸住宅を借りる単位は“人”ではなく“世帯”です。そこを分けて見ないと、判断を誤ります」
東雲結子:「ああ、家族4人が1世帯なのと、一人暮らしが4世帯なのでは、必要な部屋数が違いますね」
税理士石井:「そうです。しかも、人口減少と同時に単身世帯、高齢単身世帯、外国人世帯が増える地域もあります」
東雲結子:「では、人口減少は怖がらなくてもいい?」
税理士石井:「いえ、怖がるべきところはあります。ただし“日本全体が減るから全部ダメ”ではなく、“どの世帯が、どこへ集まるか”を見る時代になった、ということです」
日本の人口減少は、もう遠い将来の話ではありません。2024年10月1日現在の総人口は1億2380万2千人で、前年から55万人減りました。日本人人口は89万8千人減っています。数字だけを見れば、賃貸住宅の市場が縮んでいくように感じます。私も、何も考えず全国一律に物件を増やしてよいとは思いません。
ただ、私は人口減少を理由に不動産投資そのものをやめる必要はないと考えています。むしろ今後は、どこを買っても同じように家賃が入った時代から、場所と商品を丁寧に選んだ大家さんに需要が集まる時代へ変わります。最初に押さえたいのは、「人口」と「世帯」と「住宅供給」は別の数字だということです。
人口は人の数、賃貸需要は世帯の数から生まれる
住宅を一戸借りるのは、通常、一人の人間ではなく一つの世帯です。親子4人で一戸を借りる場合もあれば、4人がそれぞれ単身で暮らし、4戸必要になる場合もあります。
2020年の一般世帯数は約5570万世帯でした。人口が減っても、一世帯当たりの人数が小さくなれば、世帯数はすぐには同じ速度で減りません。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2045年から2050年にかけては全都道府県で世帯数が減少する見通しですが、2050年でも東京、沖縄、千葉、埼玉、愛知、神奈川、滋賀の7都県は2020年より世帯数が多いとされています。
ここから分かるのは、人口減少は確実でも、賃貸需要が同じ時期、同じ場所、同じ物件タイプで一斉に消えるわけではない、ということです。人口の減り方より世帯形成の動きが緩やかな地域では、賃貸需要も残りやすくなります。
世帯が増えても、住宅が増えすぎれば空室は増える
一方で、「世帯数だけ見れば安心」という話でもありません。2023年の総住宅数は6504万7千戸、総世帯数は5621万5千世帯でした。住宅は一世帯当たり1.16戸あります。空き家は900万2千戸、空き家率は13.8%です。
つまり、日本の住宅市場では、人口減少だけでなく、住宅の供給過剰も同時に進んでいます。人が減っているのに新築住宅が増え、古い住宅も市場から退出しない地域では、大家さん同士の競争が激しくなります。
私は人口推計を見るとき、必ず住宅供給も一緒に見ます。人口が横ばいでも新築賃貸が大量供給されれば、既存物件は苦しくなります。反対に人口が少し減っていても、新規供給が少なく、駅周辺や雇用拠点へ世帯が集まっているなら、入居需要は維持されることがあります。
人口減少は「需要がなくなる」より「需要が集中する」現象
人口が増えていた時代は、多少立地が弱くても街全体の成長に助けられました。人口が減る時代は、その反対です。住民は、仕事、交通、医療、買物、教育がそろう場所へ集まりやすくなります。
市全体では人口が減っていても、駅前や中心部ではマンションが増え、郊外の古い住宅地では空き家が増える。今後はこのような二極化が、同じ市内でもはっきりしてくるでしょう。
だから人口減少時代の不動産投資では、「市の人口が減っているか」だけで終わらせてはいけません。市の中で、どのエリアへ世帯が移動しているか。どの学校区、駅、病院、雇用拠点の周辺に住民が集まっているか。そこまで見る必要があります。
私の結論は、投資をやめることではなく、買う場所を狭くすること
人口減少を無視してよいとは思いません。全国平均を楽観視して、地方のどこでも高利回りなら買うという投資は、今後さらに危険になります。
ただ、人口が減るから不動産投資をやめる、という判断も極端です。2025年の地価公示と都道府県地価調査では、全国平均の住宅地は上昇を続けています。人口が減る日本でも、資金と人が集まる場所の地価は上がり、選ばれない場所との差が広がっています。
今後の大家業で大切なのは、投資対象を広げることではなく、むしろ狭めることです。人口、世帯、雇用、交通、住宅供給を見て、「この生活圏なら20年後にも人が住む理由がある」と説明できる場所だけを買う。私は、その選別さえできれば、人口減少下でも不動産投資を続けられると考えています。
| 見る数字 | 意味 | 大家さんの判断 |
| 総人口 | 街に住む人の総数 | 長期的な市場規模を見る |
| 世帯数 | 住宅を必要とする生活単位 | 賃貸需要へより直接的 |
| 平均世帯人員 | 一世帯の人数 | 小さくなるほど戸数需要を支えやすい |
| 住宅数・空き家 | 供給と余剰住宅 | 需要が残っても供給過剰なら競争が激化 |
参考資料
国立社会保障・人口問題研究所 日本の世帯数の将来推計(2024年推計)































