東雲結子:「ローン金利も修繕費も上がっています。大家さんだけ逆風ではありませんか」
税理士石井:「その逆風で利益が増える企業もあります」
東雲結子:「銀行株を買えば、返済増を全部取り返せます?」
税理士石井:「そこまできれいには相殺しません。銀行株が下がって、金利だけ上がることもあります」
東雲結子:「うーん、完全な保険ではないんですね」
税理士石井:「はい。ただ、金利や物価の上昇が追い風になる企業を少し持つと、資産全体の偏りは和らぎます」
東雲結子:「不動産の損を株で埋めるのではなく、違う風向きの資産を持つ?」
税理士石井:「その表現が近いです。まず借入を管理し、その上で株を補助的に使います」
2025年10月30日時点で、日本銀行は無担保コールレートを0.5%程度で推移させる方針を維持しました。物価や金利の先行きには不確実性がありますが、長く低金利を前提としてきた大家さんにとって、金利上昇は無視できないリスクです。
また、外壁、防水、給湯器、保険、人件費など、賃貸経営のコストも上昇しやすくなっています。家賃はすぐ上げられませんから、支出だけ先に増えることがあります。この弱点を株で完全に消すことはできませんが、金利上昇や価格転嫁が追い風となる企業を持つことで、資産全体の方向を分散できます。
借入3億円なら、0.5%で年150万円の差
変動金利の借入残高が3億円あり、金利が単純に0.5%上がれば、概算では年間利息負担が150万円増えます。実際の返済額への反映は契約と返済方式で異なりますが、規模感を把握するには有効です。
150万円を配当利回り4%の株式だけで補うなら、税引前で3,750万円の投資が必要です。課税口座なら手取りはさらに減ります。銀行株を少し買えば解決、という金額ではありません。
最初に行うべきは、借入一覧を作り、変動・固定、残高、固定終了日、金利1%上昇時の負担増を確認することです。株はその後です。
銀行株は金利上昇の恩恵を受ける場合があるが、完全ヘッジではない
一般に、貸出金利が上がり、預金金利との差が広がれば、銀行の収益に追い風となる可能性があります。一方、保有債券の評価損、貸倒れ、預金獲得競争、景気悪化という逆風もあります。
大家さんのローン金利が上がる局面で、銀行株も下がることはあります。だから、返済増と銀行株利益を1対1で相殺する商品ではありません。
それでも、資産の大半が「金利上昇に弱い不動産」である場合、金利上昇が利益機会となり得る銀行や保険の株を一部持つ意味はあります。完全な保険ではなく、方向性の分散です。
物価高には、値上げしても顧客が離れない会社を探す
建材や設備会社の売上が増えても、原材料費が同じだけ上がれば利益は残りません。物価高に強いのは、コスト上昇を販売価格へ転嫁し、数量を落とさず、利益率を維持できる会社です。
大家さん自身が、値上げされても使い続けているサービスはヒントになります。保証、管理システム、通信、防犯、設備保守など、解約しにくく、継続課金がある事業は価格転嫁力を持つ場合があります。
ただし、自分の物件で値上げされたから全国で強いとは限りません。決算で売上数量、粗利益率、解約率、営業キャッシュフローを確認します。
資源・エネルギー株は、物価高の反対側に立つことがある
電気、燃料、建材価格の上昇は大家さんの負担です。その上流で利益を得る資源・エネルギー企業を持てば、資産全体の感応度を分けられる可能性があります。
ただし、資源価格は上下が激しく、好況時の利益を基準に高値で買うと危険です。配当も市況次第で大きく変わることがあります。
大家さんの支出増を完全に取り戻す目的ではなく、物価上昇が利益になる企業を少量組み合わせる程度に留め、業種集中を避けます。
株を買う前に、物件側でできる対策を済ませる
借換え、固定化、返済期間、家賃改定、共用電気、保険、修繕発注。物件側でできる対策を行わず、銀行株や資源株を買って安心するのは順番が逆です。
株による補完は、あくまで資産全体の分散です。ローン金利1%上昇、修繕費20%上昇、家賃据置きという厳しいケースを作り、それでも経営できる現金を確保したうえで、追い風の違う株を組み合わせます。
不動産の弱点を株で補うという考え方は面白いですが、最も強い対策は、株がなくても耐えられる賃貸経営を作ることです。
| 不動産側の弱点 | 補完候補となる株の性質 | 注意点 |
| 変動金利の上昇 | 銀行・保険など金利上昇が追い風となり得る業種 | 完全相殺ではなく、景気悪化時は株も下がり得る |
| 建材・修繕費の上昇 | 価格転嫁力のある企業、資源・設備関連 | 売上増より利益率と現金を確認 |
| 家賃改定の遅さ | 継続課金・高い切替コストを持つ企業 | 高値づかみと規制リスクに注意 |
| 国内資産への集中 | 海外売上・世界株 | 為替・外国税を確認 |
参考資料
※個別銘柄の推奨ではありません。株価、配当、為替、税制、物件条件等によって結果は変わります。重要な判断は一次資料と専門家へご確認ください。































