東雲結子:「人口が増える県だけを買えばいいんですよね。ランキング上位を探します!」

税理士石井:「うーん、県単位では少し大きすぎます。同じ県でも、人が集まる街と流出する街があります」

東雲結子:「では市の人口ですか?」

税理士石井:「市の人口も大切です。ただ、年齢と移動理由まで見たいですね」

東雲結子:「移動理由……就職、進学、結婚などですか?」

税理士石井:「そうです。賃貸需要につながるのは、特に若年・現役世代が仕事や学校のために入ってくる動きです」

東雲結子:「人口が少し減っていても、働く人が入ってくる街なら候補になる?」

税理士石井:「ええ。逆に総人口が多くても、若い世帯が出ていき、住宅だけ増えている街は慎重に見ます」

東雲結子:「なるほど。人数の多さではなく、人口が動く方向を見るんですね」

 

人口減少時代のエリア選定で、最も危険なのは「人口が多い県だから安心」「政令指定都市だから大丈夫」と、行政区域の名前だけで判断することです。賃貸需要を生むのは、県庁所在地という看板ではありません。仕事、大学、病院、交通、工場、行政機能など、そこで暮らす理由です。

2024年の住民基本台帳人口移動報告では、東京圏は13万5843人の転入超過でした。大阪圏も2679人の転入超過へ転じています。一方、名古屋圏は1万8856人の転出超過でした。三大都市圏の中でさえ、同じ動きではありません。人口減少時代には、人が日本中へ均等に減るのではなく、選ばれる都市と選ばれない都市の差が大きくなります。

まず見るのは人口総数ではなく、転入超過の中身

転入超過と聞くと、人数だけ見たくなります。しかし、賃貸需要へ効くのは、誰が入ってきたかです。

20代前半の学生が多い街では、ワンルーム需要が強くなります。20代後半から30代の就業者が入る街では、1LDKや2LDK、法人社宅の需要が生まれます。子育て世帯が入る街では、学校区、駐車場、収納が重要です。高齢者が中心の転入なら、駅より病院や買物環境が重くなることがあります。

自治体の人口が増えていても、短期滞在者や特定の住宅開発による一時的な増加かもしれません。少なくとも直近5年の年齢別人口移動を見て、増加が続いているかを確認します。

雇用は一社ではなく、複数の需要源があるか

地方都市で人口を支えるのは、雇用です。ただし、大規模工場一社だけに依存する街は、投資先として慎重に見ます。工場の閉鎖や縮小が起これば、賃貸需要と売買価格が同時に下がる可能性があるからです。

私が安心を感じるのは、行政、病院、大学、複数の製造業、物流、観光など、雇用源が分散している街です。景気の悪化で一業種が弱っても、他の需要が残ります。

物件を見る前に、街の主要雇用先を10社程度書き出してみてください。従業員数、採用計画、通勤圏、寮や社宅の有無を確認します。賃貸需要を作っている会社が分からない街へ投資するのは、顧客を知らずに店舗を出すのと同じです。

大学・病院・物流拠点は強い。ただし、移転計画まで調べる

大学、総合病院、工業団地、物流拠点は、安定した賃貸需要を生むことがあります。ただし、「今ある」だけでは不十分です。

キャンパス統合、病院移転、工場再編、バイパス開通によって、人の流れは大きく変わります。自治体の総合計画、都市計画、企業のニュースリリース、大学の中期計画を確認します。

人口減少時代は、新しい施設ができる場所と、機能が撤退する場所がはっきりします。現在の賃料よりも、10年後もその需要源が残るかを重視します。

外国人居住者の増加は、地域需要を読み替える重要な材料

2025年6月末の在留外国人数は395万6619人で、過去最高でした。東京、大阪、愛知、神奈川、埼玉に多く住んでいますが、特定技能や製造業・介護・物流の雇用を通じて、地方都市でも外国人住宅需要が増えています。

市全体の日本人人口が減っていても、工場や介護施設の周辺では外国人従業員の社宅需要が増えることがあります。逆に、外国人可と表示するだけでは足りません。雇用企業、登録支援機関、日本語学校、仲介会社とつながり、どの国籍、人数、家賃帯、家具ニーズがあるかを確認します。

人口減少時代のエリア選定では、「日本人の人口推計」だけで市場を閉じないことが大切です。

私は7項目を同じ表へ並べて、感覚を数字に変える

エリア候補を比較するとき、私は総人口だけで点数を付けません。人口移動、世帯、雇用、交通、生活機能、住宅供給、出口の7項目を並べます。

すべてが満点の街はありません。大事なのは、弱点がどこにあり、自分の物件運営で補えるかです。たとえば車社会の地方都市なら駅距離は弱くても、駐車場2台と幹線道路アクセスが強みになります。逆に東京近郊でも駅から遠く、バスが減便し、スーパーが撤退した住宅地は、将来需要を慎重に見ます。

人口減少時代の投資は、人口増加都市を当てるゲームではありません。減少の中でも、世帯と雇用が残り、周辺から人を吸い寄せる生活圏を探す仕事です。

確認項目 見るデータ 注意点
人口移動 年齢別の転入・転出 一時的な開発効果でないか
世帯 世帯数・単独世帯・平均世帯人員 人口と同じ速度では動かない
雇用 主要企業・病院・大学・行政 一社依存を避ける
交通 駅利用、道路、バス、通勤時間 将来の減便・路線再編も確認
住宅供給 新築着工、空室、募集戸数 需要があっても供給過剰なら弱い
外国人需要 在留外国人、雇用企業、学校 法人社宅・家具需要まで確認
出口 地価、買主層、金融機関評価 売却できる価格と期間を見る

 

参考資料

総務省統計局 住民基本台帳人口移動報告 2024年結果

国立社会保障・人口問題研究所 日本の地域別将来推計人口

出入国在留管理庁 令和7年6月末現在における在留外国人数

地域経済分析システム RESAS