東雲結子:「借入5億円」と聞くと、数字だけで少し息が止まりそうです。黒田さんは、もう慣れましたか?

メガ大家・黒田:うーん、慣れたつもりではいます。ただ、毎月の返済日は今でも少し緊張しますね。

税理士石井:5億円がすべて変動金利で、金利が0.5%上がれば、単純計算で年250万円の負担増です。

東雲結子:えっ、0.5%で250万円ですか。数字の後ろに、軽自動車が一台ついてきました。

メガ大家・黒田:そうですね。しかも一度ではなく、毎年続きますから、さすがに笑えません。

税理士石井:だから、金利予想を当てるより、借換え時期が同じ年へ固まらないようにするほうが大切です。

東雲結子:なるほど。家賃表だけでなく、借入れの「満期カレンダー」が必要なんですね。

メガ大家・黒田:はい。今日帰ったら、金利より先に満期を並べ直してみます。

 

借入れが数千万円の段階では、金利の変化は「少し返済が増えた」という感覚で済むこともあります。しかし、借入総額が数億円になると、0.25%、0.5%という小さな数字が、会社員一人分の年間人件費に近い金額へ変わります。メガ大家の金利対策で本当に怖いのは、金利が上がることだけではありません。複数の借入れが同じ時期に更新・借換えを迎え、交渉の選択肢が一気に狭くなることです。

金利0.5%は小さく見えても、5億円では年250万円

借入残高5億円に対して、金利が0.25%上がれば年125万円、0.5%なら年250万円、1%なら年500万円です。実際には元金が減ること、固定金利部分があること、金利見直し時期が借入れごとに違うことから、すぐに全額へ反映されるわけではありません。それでも、経営判断としては「全額が再設定されたら、どこまで耐えられるか」を一度計算しておくべきです。

私が決算を見るときは、年間返済額だけでなく、金利1%上昇時の追加負担を、物件別のキャッシュフローと並べます。返済後に年300万円しか残らない物件が、金利上昇で年150万円悪化するなら、利益の半分が消える計算です。全体では黒字でも、一棟ごとに見ると危険な物件が隠れていることがあります。

金利上昇幅 借入5億円に対する年間負担増の単純計算
0.25% 125万円
0.50% 250万円
1.00% 500万円

 

平均金利より怖いのは、借換えの「同時多発」

メガ大家の借入一覧を見ると、金融機関は複数でも、借換え・固定期間終了の時期が2027年、2028年など一つの時期へ集中していることがあります。金利が高い時期と重なれば、複数行との交渉を同時に行わなければなりません。そこで一行から厳しい条件が出ると、他行との交渉にも余裕がなくなります。

私は、借入れを残高順ではなく「期限順」に並べることを勧めています。各借入れについて、残高、現在金利、固定・変動、固定期間終了日、最終返済日、繰上返済手数料、担保物件、個人保証を一枚にします。借換えの山が見えたら、まだ条件が良いうちに一部だけ長期固定へ変える、返済期間をずらす、売却予定物件の借入れを先に整理する、といった選択肢が生まれます。

DSCRは会社全体と物件単体の両方で見る

DSCR(Debt Service Coverage Ratio、債務返済余裕率)は、返済前の純収益を年間返済額で割る指標です。会社全体で1.5倍あっても、物件Aが0.9倍、物件Bが2.1倍ということがあります。A棟はB棟の利益で返済している状態です。

ポートフォリオ経営では、全体最適は大切です。ただ、弱い物件を強い物件が支え続けると、強い物件の修繕や次の投資に使う現金が減っていきます。金利上昇後のDSCRを物件ごとに計算し、1倍を割る物件については、家賃改善、経費削減、返済条件変更、売却のどれで立て直すのかを決めます。

金利を当てるより、選択肢を残す

2025年9月19日の日本銀行の金融政策決定会合では、無担保コールレートを0.5%程度で推移させる方針が維持されました。これから金利が上がるか、どこまで上がるかを正確に当てることはできません。けれど、5億円の借入れを持つ経営者が「上がらない前提」で資金繰りを組むのは危険です。

重要なのは、金利が上がっても、売却を急がず、銀行を選べる状態を保つことです。借換え時期を分散し、1年分の元利返済と大規模修繕の現金を確保し、担保余力のある物件を一つ残す。少し地味ですが、メガ大家にとっての金利対策は、派手な予想ではなく、この地味な準備に尽きると思います。

参考資料(掲載前の確認用)

日本銀行 2025年9月19日「当面の金融政策運営について」