東雲結子:佐藤さん、次の物件の頭金500万円を株で運用するんですか?
副業大家・佐藤:はい。3年間寝かせるより、少しでも増やしたくて。
税理士石井:3年後に株が30%下がっていたら、物件はどうしますか?
副業大家・佐藤:えっ……500万円が350万円。自己資金が足りません。
東雲結子:株は下がっても待てますが、良い物件は待ってくれませんね。
税理士石井:使う日が決まっているお金は、運用期間ではなく、下落を待てるかで考えます。
副業大家・佐藤:なるほど。NISA枠が空いていることと、頭金を入れてよいことは別ですね。
東雲結子:増やしたい気持ちは分かりますが、頭金まで相場の気分に任せないほうがよさそうです。
次の物件を買うため、3年後に500万円必要。普通預金へ置いておくのはもったいないから、株で増やしたい。株式市場が好調なときほど、そう考えたくなります。長期の余剰資金なら、株は有力な選択肢です。しかし、購入時期が決まっている頭金は、長期資金ではありません。株価が下がれば回復を待てても、売主、銀行、契約期限は待ってくれません。
500万円が30%下落すると、150万円足りない
500万円を株へ投資し、3年後に30%下落していれば350万円です。自己資金500万円を前提に融資を組んでいた場合、150万円を給与や借入れで補う必要があります。補えなければ、物件を見送るか、手付金を含む契約条件へ影響します。
株式市場では30%程度の下落は、長期投資の中では起こり得ます。3年後に必ず回復している保証はありません。頭金の目的は、最大化ではなく、必要な日に確実に使えることです。
| 3年後の株価変化 | 500万円の評価額 |
| +20% | 600万円 |
| 変化なし | 500万円 |
| ▲20% | 400万円 |
| ▲30% | 350万円 |
NISAは非課税の器で、元本保証ではない
NISAでは一定の投資枠の中で売却益や配当が非課税になります。しかし、値下がりを防ぐ制度ではありません。また、NISA内の損失は、課税口座の利益と損益通算できません。
「NISA枠が余っているから頭金を入れる」という考え方は順番が逆です。まず、そのお金が10年以上待てる余剰資金かを確認し、余剰ならNISAを使う。制度は投資の器であり、資金の性格を変えてはくれません。
頭金を三層に分ける
3年後に500万円必要でも、全額を普通預金に置くしかない、ということではありません。例えば、最低限必要な350万円は現金・定期預金など値動きの小さい資産で確保し、購入時期を延ばせる150万円だけを株へ回す考え方があります。
ただし、150万円が下がった場合は、物件価格を下げる、購入時期を延ばす、自己資金を追加する、という選択を受け入れられることが前提です。必要額と希望額を分けると、投資できる範囲が見えます。
株で増やすより、購入条件を良くするほうが効くこともある
500万円を年5%で3年運用できても、単純な増加は税引前で約79万円です。一方、物件価格を100万円下げる、金利を0.2%下げる、空室を一か月短くすることで、同等以上の効果が出ることがあります。
頭金を運用することだけに集中せず、金融機関との関係、物件情報、エリア調査へ時間を使う。副業大家の強みは、給与から毎月積み立てながら、条件の良い物件を待てることです。投資を急いで頭金を危険にさらすより、買う力を高めるほうが再現性があります。
株は「次の次の物件」のお金で始める
私は、3年以内に使う頭金は現金中心、10年以上使わない資金は株、というように時間で分ける方法を勧めます。次の物件の頭金を守り、その後の余剰資金を株へ積み立てる。株が育てば、次の次の物件や大規模修繕を支える資産になります。
不動産と株は相性が悪いのではありません。使う時期の違うお金を混ぜることが問題です。頭金は約束の日に働くお金。株は時間を味方につけるお金。それぞれの仕事を分けると、両方を落ち着いて続けられます。
参考資料































