東雲結子:利回り7%。前に見た物件と同じなので、今回も黒字ですね。

税理士石井:融資期間は何年ですか?

東雲結子:15年です。

税理士石井:うーん、同じ利回りでも返済速度が別競技です。

東雲結子:えーっと、返済が早いのは良いことでは?

税理士石井:借金は早く減ります。ただ、毎年の現金は苦しくなります。

東雲結子:あっ、そうか。黒字でも通帳が空になることがあるんですね。

税理士石井:はい。表面利回りより、返済後CFとDSCRを見ましょう。

 

表面利回り7%でも、返済期間が短ければ毎月返済額が大きくなり、現金収支が赤字になることがあります。築古物件では融資期間が短くなりやすいため、利回りが高いだけで安心できません。

7,000万円、満室家賃490万円、80%融資、金利2.5%、稼働率95%、運営費25%という同じ物件を、15年、20年、25年で比べます。

返済前のNOIは約349万円

家賃490万円×稼働率95%で465万5,000円。そこから運営費25%を引くと、返済前純収益は約349万1,000円です。物件が生む力は、返済期間に関係なく同じです。

違いは、銀行へ毎年いくら返すかです。

15年返済では、年間約99万円の赤字

借入5,600万円、金利2.5%、15年返済では年間返済が約448万円となり、税引前現金収支は約99万円の赤字です。

家賃が満室想定どおりでも赤字ですから、空室や修繕が出ればさらに現金が必要です。

25年返済なら約48万円の黒字

25年返済では年間返済約301万円、税引前現金収支は約48万円です。同じ価格、家賃、金利でも、融資期間だけで約147万円違います。

ただし年間50万円を大規模修繕用に確保すれば、自由に使える現金はほぼゼロです。税金も別に必要です。

短期返済には、元金が早く減る良さもある

15年返済は現金収支が苦しい一方、借入元金が早く減り、純資産は増えます。手元資金に十分な余裕があり、早く無借金へ近づきたい人には意味があります。

問題は、修繕と納税資金を別に用意できない状態で短期返済を選ぶことです。黒字でも現金不足になる、いわゆる黒字倒産に近い状態になり得ます。

DSCRが1倍を下回る物件は、収益だけでは返せない

DSCRはNOIを年間返済額で割る指標です。1倍未満なら物件の収益だけでは返済できません。15年返済では約0.78倍、25年返済では約1.16倍です。

融資回答が出たら、返済後CF、修繕積立後CF、税引後CFの3段階を作ります。表面利回りは入口でしかありません。

返済期間 年間返済額 税引前CF
15年 4,480,823円 ▲989,573円
20年 3,560,947円 ▲69,697円
25年 3,014,704円 476,546円