東雲結子:先生、株が500万円もプラスです。これで次のアパートが買えます!

税理士石井:うーん、その500万円は、まだ証券口座の画面の中ですよ。

東雲結子:売れば500万円ですよね?

税理士石井:課税口座なら税金も一緒に計算されます。それに、必要なのは頭金全部ですか、それとも不足分だけですか?

東雲結子:えーっと、現金が450万円あって、必要なのは800万円なので……不足は350万円です。

税理士石井:そうですね。なら、株を全部売る必要はありません。

東雲結子:あっ。私はいつも「全部売るか、全部持つか」の二択にしていました。

税理士石井:投資は途中まで売ることもできます。株価の天井より、使い道から利確額を決めるほうが再現しやすいですよ。

 

株高になると、証券口座の含み益が大きくなります。大家さんにとって、その利益は生活費だけでなく、次の物件の自己資金へ変えられるお金です。ただ、「もっと上がるかもしれない」と思うと売れませんし、売った直後に上がれば悔しくなります。

そこで私は、株価の予想ではなく、使い道から利確ラインを決める方法を勧めています。相場の天井は分かりませんが、次の物件に必要な自己資金、修繕額、繰上返済額は比較的分かります。分かる数字を基準にするほうが、判断がぶれにくくなります。

含み益500万円でも、使える利益は約398万円

課税口座で上場株式の譲渡益500万円が出ると仮定します。税率20.315%で単純計算すると税額は約101万5,750円、利益の手取りは約398万4,250円です。物件の自己資金へ使うときは、「含み益500万円」ではなく、「売却後に使える現金はいくらか」で考えます。

NISA口座で非課税の条件を満たす売却益なら扱いは異なりますが、取得口座や取得単価を混ぜて考えないようにします。

頭金800万円でも、売るべき株は不足額の350万円分かもしれない

自己資金800万円が必要で、現金450万円があるなら不足は350万円です。株の含み益が500万円あるからといって、全部を現金化する必要はありません。税引後350万円を作るために必要な分だけ売る方法があります。

もちろん、売却額のすべてが利益ではなく、元本と利益が混ざっています。証券会社の取得単価を確認し、実際の税引後入金額を見積もります。「利益だけを売る」という感覚ではなく、必要な現金を作るために何株売るかを計算します。

株を売らず、物件を見送るほうが良いこともある

長期保有したい優良企業の株を持っていて、候補物件の利回りが低く、修繕リスクも高いなら、無理に株を売って買う必要はありません。反対に、株価が大きく上がって割高感が強く、物件が適正価格なら、株から不動産へ資金を移す意味があります。

比べるのは、過去にどれだけ儲かったかではなく、これから先、株と物件のどちらが自分の資産を増やすかです。買値への愛着や含み益への執着ではなく、将来の期待収益とリスクで比較します。

利確後に株が上がっても、判断が失敗とは限らない

売った株がその後20%上がると、誰でも悔しくなります。でも、売却資金で買ったアパートから家賃が入り、借入元金が減っているなら、利益は形を変えて働き続けています。株のその後だけを見て判断を評価すると、いつまでも売れません。

利確は利益の終了ではなく、資産の配置換えです。株から不動産へ、不動産から株へ。自分の得意な機会へ資金を移せることが、複数の資産を持つ強みです。

私なら「使い道」と「資産比率」で二重に線を引く

私は、次の物件の自己資金が確保できたら一部を売る、大規模修繕の1年前になったら必要額を現金化する、株式比率が総資産の一定割合を超えたら戻す、というように、価格以外のルールを使います。

株価の天井を当てようとすると、感情に振り回されます。必要資金と資産配分なら、自分で決められます。儲かった株を売ることは負けではありません。その利益を、次の収益資産へ送り出す経営判断です。

譲渡益の仮定 500万円
税率の仮定 20.315%
税額の単純計算 約101.6万円
利益の手取り 約398.4万円
次の物件の自己資金800万円、現金450万円の場合の不足 350万円

 

参考資料(掲載前の確認用)

国税庁 上場株式等の譲渡所得等

金融庁 NISAを知る