
東雲結子:先生、高齢の方から申込みが来たのですが、うーん、少し心配で……若い方が来るまで待とうかと思っています。
税理士石井:何か月くらい待つ予定ですか?
東雲結子:えーっと、決まるまで……でしょうか。
税理士石井:その間の空室家賃は、毎月きっちりゼロになります。
東雲結子:あっ、そういうことか(汗)。空室は何もしないのに、家賃を全部持っていきますね。
税理士石井:そうですね。高齢者の不安は、滞納、緊急時、孤独死、残置物に分けると対策が見えます。
東雲結子:「高齢だから怖い」と一袋に入れていたから、何をすれば良いか分からなかったんですね。
税理士石井:はい。無条件に受け入れる必要はありません。管理できる仕組みを作れた人を受け入れる、という考え方です。
高齢単身者の入居に不安を感じるのは自然です。家賃滞納、緊急時の連絡、孤独死、死亡後の残置物。ひとつひとつが重い問題に見えます。ただ、高齢者を一律に断れば、地域によっては空室期間が長くなり、物件の収益力そのものが下がります。
2025年10月1日から改正住宅セーフティネット法が施行され、見守り等のサポートを行う「居住サポート住宅」の認定制度も始まりました。すべての物件を認定住宅にする必要はありませんが、大家さん一人で抱えていた仕事を、居住支援法人、保証会社、管理会社へ分けられる選択肢は増えています。
家賃6万円なら、2か月待つだけで12万円が消える
家賃6万円の部屋で、若い入居者を待つため空室が2か月延びれば12万円、3か月なら18万円の機会損失です。高齢者受入れの準備に10万円かかっても、その準備で2か月早く入居が決まるなら、家賃だけの単純比較では2万円残ります。
もちろん、入居後の見守り費や保険料もあります。だからこそ、感覚で「高い」「怖い」と判断せず、空室損失と対策費を同じ表に並べます。費用が見えると、どの対策までなら採算が合うかが分かります。
高齢者リスクは4つに分けると、急に管理できる形になる
家賃滞納には保証会社、緊急時の連絡には緊急連絡先や見守り、孤独死の早期発見にはセンサーや定期連絡、死亡後の残置物には事前の委任契約があります。問題によって担当者も契約も違います。
「高齢者は不安」という言葉だけでは、対策は一つも決まりません。「家賃保証が利用できる」「見守り契約を結べる」「緊急連絡先を更新する」と条件化すれば、受け入れられる範囲が見えてきます。
大家さん自身が24時間見守る仕組みは、続かない
やさしい大家さんほど、入居者本人から直接連絡を受け、何でも自分で対応しようとします。しかし夜間や旅行中まで大家さん一人が窓口になると、物件を増やせません。善意で始めた仕組みが続かなければ、入居者にとっても不安です。
本人、家族、管理会社、見守り事業者、居住支援法人の連絡順を決めます。誰が安否確認を行い、誰が現地へ行き、費用は誰が負担するのか。契約前に役割を紙へ落とすことで、大家さんの精神的負担も小さくなります。
設備より先に、「住み続けられる仕組み」を作る
高齢者向けというと手すりや段差解消を思い浮かべます。もちろん本人の身体状況に合う改修は大切です。ただ、緊急連絡先が明確で、保証会社が使え、見守りがあり、管理会社の窓口が分かりやすいことも、本人と家族にとって大きな価値です。
家賃を下げて募集する代わりに、安心を付けて現在の家賃を維持する。地域によっては、そのほうが大家さんにも入居者にも良い結果になります。
人口構成が変わるのに、入居者像だけ昔のままでよいのか
若者だけを対象にして満室になる地域なら、無理に変える必要はありません。しかし高齢者が増え、若者が減る地域で、募集対象だけを変えなければ空室は長くなります。物件は動かせませんが、誰に選ばれる商品にするかは変えられます。
高齢者を無条件に受け入れることが答えではありません。リスクを分け、外部へ任せ、採算が合う範囲を決める。仕組みを作った大家さんにだけ見える市場が、これから広がる可能性があります。
| 仮定 | 金額 |
| 家賃 | 月6万円 |
| 空室2か月 | 12万円 |
| 受入れ準備費 | 10万円 |
| 空室が2か月短縮した場合の単純差額 | +2万円 |
参考資料(掲載前の確認用)































