東雲結子:先生、固定資産税120万円を、株の配当だけで払えるようにしたいです。毎年の納付書を見るたびに、心が少し遠くへ行くので……。

税理士石井:そうですね。目標としては分かりやすいです。配当利回り4%なら、税引前で3,000万円が必要です。

東雲結子:さ、3,000万円ですか。固定資産税、急にラスボスみたいになりました。

税理士石井:課税口座で手取り120万円にするなら、もう少し必要です。

東雲結子:えーっと、それは……聞かなかったことにはできませんよね?

税理士石井:残念ながら(笑)。でも、最初から120万円全部を目指す必要はありません。30万円、60万円と段階を刻めます。

東雲結子:なるほど。固定資産税の4分の1を株に払ってもらうところから始めるんですね。

税理士石井:はい。配当を再投資する期間と、実際の納税へ使う期間を分けると、無理なく育てられます。

 

大家さんにとって固定資産税は、毎年ほぼ必ずやって来る大きな支出です。家賃から払うのが普通ですが、「配当株を育てて、固定資産税の一部を株に負担してもらえないか」と考えるのは面白い発想です。不動産の安定収入に、株式の配当を重ねることで、支出の受け皿を増やせるからです。

ただし、配当利回り4%と表示されていても、課税口座ではそのまま4%が手元へ残るわけではありません。さらに、高配当株には減配と株価下落のリスクがあります。配当目標を作るなら、税引後の必要資金と、配当の持続性を両方見なければなりません。

税引前120万円なら3,000万円、手取りなら約3,765万円

年間固定資産税120万円を、配当利回り4%で賄うとします。税引前なら120万円÷4%で3,000万円です。ところが課税口座の上場株式配当には、通常20.315%が源泉徴収されます。4%の配当利回りでも、単純な手取り利回りは約3.19%です。

この前提で手取り120万円を作るには、約3,765万円が必要です。3,000万円と考えるか、手取りから逆算するかで約765万円も違います。投資計画では、表示利回りではなく、自分の口座へ実際に入る金額を使います。

高配当だから安全、ではない

株価100円で年間4円配当なら利回り4%です。業績悪化で株価が50円に下がり、配当4円が維持されていれば8%に見えます。しかし、業績悪化が続けば配当が2円へ減るかもしれません。高い利回りが会社の強さではなく、株価下落の結果ということもあります。

大家さんなら、表面利回り12%の物件を見て「なぜ12%なのか」と考えるはずです。高配当株も同じで、利益、営業キャッシュフロー、借入金、配当性向、過去の減配を確認します。

固定資産税専用の受け皿を作る

配当を生活費と混ぜず、固定資産税専用として管理すると、目標が見えやすくなります。年間配当30万円なら、120万円の固定資産税の4分の1。60万円なら半分です。いきなり全額を賄うのではなく、納税額に対する配当カバー率を毎年少しずつ上げていきます。

配当を再投資する期間は、納税に使わず株数を増やします。目標額に近づいたら、一部を税金支払いへ回します。育てる時期と使う時期を分けることで、配当の成長を止めずに済みます。

NISAを使っても、銘柄選びの問題は残る

NISA口座で非課税の条件を満たす配当なら、税引後の必要資金は課税口座より小さくなります。ただし、NISAには投資枠があり、損失は課税口座の利益と通算できません。制度が有利でも、減配する会社を買えば配当目標は崩れます。

配当を長く受け取りたい銘柄をNISAへ置く考え方は合理的ですが、枠を埋めることより、10年持てる企業を選ぶことを優先します。

家賃と配当は、似ているからこそ違いを理解する

家賃も配当も定期収入ですが、家賃は賃貸借契約に基づき、入居者がいる限り比較的安定します。配当は会社の判断で減額・停止されます。一方、株は修繕も入居募集も必要なく、市場で一部だけ売却できます。

家賃で生活と返済を支え、配当で固定資産税や修繕費の一部を支える。私は、こうした役割分担が、大家さんの資産全体を強くすると考えています。

目標 必要資金の目安
税引前120万円・配当4% 3,000万円
課税口座で手取り120万円・配当4%、税率20.315%の仮定 約3,765万円
まず固定資産税の25%=30万円を税引前で賄う 750万円

 

参考資料(掲載前の確認用)

国税庁 配当金を受け取ったとき

金融庁 NISAを知る