東雲結子:「利回り9%! 新しい物件より高い。これは掘り出し物ですね」

管理担当:「築年数と耐震資料は?」

東雲結子:「利回り表の下に小さく……昭和?」

管理担当:「急に歴史の授業が始まりましたね」

東雲結子:「教科書より先に、耐震診断を開きます!」

築古物件は価格が低く、高利回りに見えることがあります。特に旧耐震の物件は、表面利回りだけを見ると魅力的です。ただし、耐震性、修繕、保険、融資、将来売却まで考えると、「安く買えた」と「安い物件だった」は同じ意味ではありません。

5,000万円で家賃450万円なら、表面利回り9%

旧耐震の物件Aが5,000万円、年間満室家賃450万円なら表面利回りは9%です。

比較する新しい物件Bが6,000万円、年間家賃450万円なら7.5%。

この数字だけを見るとAが圧勝です。しかし、Aについて耐震・設備更新などで購入直後に600万円必要だと仮定すると、実質的な投下資金は5,600万円になります。単純な家賃利回りは約8.0%まで下がります。

物件 価格等 年間家賃 単純利回り
旧耐震A 5,000万円 450万円 9.0%
A+初期工事600万円 5,600万円 450万円 約8.0%
比較物件B 6,000万円 450万円 7.5%

「旧耐震」は1981年だけ覚えると、少し雑

国土交通省は、1981年6月1日以降に着工したものを現行の耐震基準に適合するものとして整理する資料を示しています。

一方、木造住宅については、2000年以前の新耐震建物でも、接合部等の規定が明確化される前の建物に地震被害が見られたことから、検証法が示されています。

「1981年を超えたから全部安心」ではなく、構造と建築時期に応じて資料を確認する必要があります。

耐震工事600万円より怖いのは、工事を読めないこと

築古物件で怖いのは、高い工事費そのものより、「何がいつ必要になるか分からない」状態です。

購入前には、少なくとも次の資料を確認したいところです。

・耐震診断の有無
・大規模修繕履歴
・屋上・外壁・給排水管の状況
・消防設備やエレベーター等の保守履歴
・今後5~10年の工事見込み

「とりあえず年間50万円修繕費」と置くより、工事項目ごとに年を割り振ったほうが資金繰りは現実的になります。

出口価格は、買うときの利回りより厳しく見る

築古物件は、自分が買うときより、次の買主が融資を受けにくくなる可能性があります。

その結果、売却時には自己資金を多く持つ買主へ対象が絞られたり、高い利回りを求められたりすることがあります。

購入価格5,000万円で利回り9%だったから、10年後も同じ9%で売れるとは限りません。出口の利回りを厳しく置いたシミュレーションも作ってください。

高利回りはご褒美ではなく、リスクの値札かもしれない

利回りが高い物件には、高い理由があります。

立地、築年数、空室、修繕、権利関係、融資の付きにくさ。そのどれかを市場が値段に織り込んでいる可能性があります。

「9%だから買う」ではなく、「なぜ9%なのかを説明できたら買う」。

この順番にするだけで、築古物件の選び方はかなり変わります。

参考資料

国土交通省 耐震性についての解説

国土交通省 新耐震基準の木造住宅の耐震性能検証法